攻略者たる者
世界で最も広大な面積を誇る中央大陸には、大昔に神に等しい力によって造られた迷宮,ダンジョンが無数に現れた。ダンジョン内には古代の遺物や財宝があり,最奥に居るダンジョンの主を倒すことでダンジョン攻略の証を得られる。ダンジョン攻略を目的とし,組合を作り冒険をするものを攻略者と言う。
中央大陸の中心部に位置する国『フルガ』,その中のギルド本部では新たなギルドの作成や,攻略ダンジョンの選別を行える。
「いらっしゃいませ,本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付嬢の問いに,特徴的な赤毛で2本の短剣を持つ青年は答える。
「新しくギルドを作りたい、ギルド名は『フィンブルヴェト』,団長は俺『ファルタ・レイリオ』」
「了解しました。新しいギルドの作成には最低限の実力があるかを確認するため,お客様方の団体が最低ランクのダンジョンでも構いませんのでダンジョンを攻略した証をお持ちである必要があるのですが。」
「え、そうなの?持ってねーな...分かった、じゃあすぐ行って取ってくるから少し待ってて」
「了解致しました。ではオススメのダンジョンの情報を提供いたします。他の団員の方にも共有していただきたいのですが、どちらに?」
「あー、まだ団員俺しかいないから大丈夫」
ファルタと名乗った青年の発言に本部の中にいたほぼ全員が青年を見た。それもそのはず,初めてのダンジョン攻略に一人で挑むなど無謀なことだからだ。どれだけ低いランクのダンジョンにも死の危険は隣り合わせな状態が続く。
「じゃあチャチャっと攻略して帰ってくるとするか」
ファルタは周りの視線など一切気にせず本部を出て行った。
本部を出るとファルタは自分のすぐ後に出てきた男性に呼び止められた。
「君、さっきダンジョンを一人で攻略するって言ってたよな?もしそれが本気ならやめておいた方が良い。俺は初心者が調子に乗ってダンジョンに挑んで後悔していたやつを何人も見た。誰か一人でも連れて行った方が良い。」
「ん?あー、まぁそれはそうなんだけどさ、俺直感で仲間にしたいって思ったやつをギルドに入れるつもりだからさ。」
どうやらさっきの発言に嘘はなかったらしい。
「あと、それ弱い奴の話でしょ?だったら俺は大丈夫だろ。なんなら今から少し闘り合ってみる?えーと、」
「俺の名前はバルテだ。そんなに言うなら一度自分の弱さを実感してもらおうか」
彼らの周りには既に数人の観客が集まっていた。どうやらバルテはそれなりに名のある攻略者だったらしい
数分後、バルテは惨敗していた。少し余裕を出して構えていたら、いつのまにかバルテはファルタの打撃をくらいその後も反応できずに負けてしまった。
「な、言っただろ。俺は弱くねぇってさ。じゃ、俺急いでるから、じゃあな。」
戦闘が終わるとファルタはどうでもいいかのようにバルテを振り切った。
「地図のダンジョンってこれのことか。」
しばらくしてファルタは受付嬢がおすすめしてきたダンジョンに辿り着いた。
「まぁよく分かんねえしとりあえず入るか。」
ファルタは何の警戒もせずにダンジョン内部に入って行く。その背後から静かに足音が付いてきていると知らずに。
内部には決して強くない、どちらかというと弱い部類のモンスターが何体かいた。ゴブリンっぽいやつとか。これぐらいのモンスターならダンジョンの外でも普通に見るので特に警戒する必要はない。警戒すべきなのは...
「最奥にいるっていう主だけど、強いのか?まあ考えてもわかんないからとりあえず挑んでみるか。」
持ち前のスピードで駆け抜けたファルタは意外とあっさり最奥にたどり着いた。
「さてと、さっさと倒すとするか。」
Dランクダンジョン《ソルチカ》の主《リトリア》は、宝石のように輝く剣を持つ少女のような見た目をしていた。ファルタも武器に手をかけ戦闘を始めようとしたとき、
背後から短剣が勢いよくファルタの首元めがけて飛んできた。刃が飛んできた方向を見ると、そこには指定いる人物が立っていた。
「バルテだっけ、急に襲うとかどういう要件?」
「別にただの逆恨みだ」
「逆恨みって、俺はただ強いっていうことを信じてもらうためにやっただけで何も悪くないだろ。」
「確かにな、だがギルドっていうのは実績だけでなく、信頼も大切になるのさ、信頼度が低いと本部から支給される資金も減るもんだからな。」
ギルド本部は多くのダンジョンを攻略しているギルドや市民に貢献しているギルドに資金や必需品の提供を行っている。しかし、信頼の低いギルドには当然資金が減ってしまう。信頼とは人間性や実力に伴ってつくものである。
「公の場で初心者に負かされた俺の評価はだだ下がりなんだよ。今度入るはずだった資金も減っちまった。だから、その分をお前に払ってもらわないとな」
「とんでもねえ理不尽だな。拒否権もどうせないんだろ、何を払えばいいんだよ?」
「お前のその双剣をくれよ、見えたのは一瞬だがかなり質の良いモンだった。たかが双剣一組で済むって考えたら安いもんだろ?」
バルテがその言葉を放った瞬間、ファルタの表情は一気に凍りついた。
「お前今この剣のことたかがって言ったか?だとしたらお前見る目ねえよ。この剣はな、俺の...」
そこまで言いかけた所で突如目の前に何かが降ってきた。そしてファルタの感情の変化に戸惑っていたバルテは眼の前の状況に安堵した。
「は、ハハハ、どうやらリトリアはさっさとケリを付けたいらしいな!お前ら!もう隠れなくていいぞ。リトリアを援護してあいつを殺せえ!」
バルテの掛け声と同時に彼のギルドの団員らしき人物が出てきた。ざっと6〜7人はいそうだ。
「数の暴力でぶっ潰せー!って、は?」
そのときバルテは信じられないものを見るかのような目をした。その目には多くの斬撃をくらい既に倒されているリトリアの姿があったからだ。リトリアは低レベルとはいえダンジョンの主である存在、決して生半可な気持ちで挑んで勝てる相手じゃない。そしてリトリアのさらに奥には双剣を両手に手にして立つファルタの姿があった。
「あいつがやったのか?いやそれはあとだ。」
(あいつとはそれなりに距離がある。遠距離で攻めて行動範囲を狭めれば)
バルテがそう思った次の瞬間、一瞬にして目の前にファルタが現れた。物理法則を無視したかのような速度で迫って来た。
そしてファルタに殴られたバルテは吹き飛ばされた。
「何だ今のは?あの距離を1秒にも満たない速度で動くなんて...まさかお前、神術者なのか?」
神術者とは遠い昔の攻略者の者たちが持っていたとされる異能力を持つ者の事であり、そのの者の血筋を少量でも引き継いでいる者に発現し、世界の約5割の人が所有している。その能力は似通っているものはあれど、個人によって内容は異なる。
「正解。俺の神術はどんな状況体制でも最高秒速300mの速度を出せる爆進、移動だけでなく剣を振るう速度なんかにも適用できる。」
バルテのような無能力の生半可な力しか持ち得ていない者は神術者に勝つ術がない。結果再びバルテ率いる複数のギルドメンバーはファルタにフルボッコにされた。
「はあ、無駄に時間がかかったな。でも約束通り攻略して来たぜ。」
「はい、確かに攻略の証、確認しました。ではこれより新ギルド『フィンブルヴェト』を作成します。」
ファルタは新たなギルドを作成しダンジョン攻略に挑むのだった。
「ギルド作ったはいいけど、やっぱ一人だと限界あるよな...よし、仲間探すか。」
初の投稿で色々書きすぎた気がする。今後はもう少し一話一話を短くしたいです。第一話は世界観や主人公の特徴を書き込みすぎました。初心者ですが今後もよろしくお願いします。主人公について補足しときます。
ファルタ・レイリオ
16歳 男
好きなもの 冒険
装備 二刀流(元の所有者は別の人?)
一言でいうと自由奔放なキャラ