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第拾話 好きな人に姉妹扱いされるのが嫌なのは当たり前だよなぁ

リシュナちゃんとマオちゃんが頭なでなでに満足してくれたくらいで二人から手を離したら、マオちゃんが少しピリッとした雰囲気になった。



「カナデさん、ワタシの話を聞いてもらって良いですか?」



「もちろん良いわよ。ちゃんと姿勢を正した方が良いかな?」



「いえ、そこまではしていただかなくても大丈夫です。

 そして、ワタシの事と元居た世界での事を聞いて欲しいです」



「わかったわ。ちゃんと聞かせてもらうわね」



「ありがとうございます。それでは・・・」



マオちゃんの話は思っていた以上に重いものだった。


マオちゃんが生まれた時に、何か特別な事があって先代魔王の因子を持って生まれたことがわかると高位魔族がマオちゃんを魔王なるための教育をひたすら行わせていたらしい。


物心が着いた時には帝王学とも言える強い魔王になるための特訓や勉強ばかり行ってきていて、元の世界の暦で1年半くらい前のマオちゃんが13歳になった時に正式に魔王になるための儀式を行ったそうだ。しかし、その魔王になるための儀式というのは周囲から無理やり魔素を吸収し続けるもので身体への負担がとても大きく、強さと引き換えに常に痛みのような疼きが伴うようになってしまうものだったのだそうだ。


それだけでも十分業腹ものだけれど、その儀式のドサクサに高位魔族に逆らえなくなる呪いも掛けられてしまっていて、マオちゃんの本心とは関係なく人間族の領土への侵略で陣頭指揮を執らされていたのだという。


元々受けていた魔王教育で最初の頃はどれだけの人間を殺しても気にならなかったそうだけれど、次第に本能的に忌避感が生まれていて苦しんでいたとのこと。そんな苦しみが強くなっていた時にリシュナちゃんたち勇者パーティーからの襲撃を受け戦ったのだという。


その際に勇者と魔力をぶつけ合って爆発しそうになりリシュナちゃんがなんとか制御したところで話が繋がった。


マオちゃんはその魔力の衝突による爆発の時には何が起きたのかをよく把握できていなくて、狼狽えている間に爆発するほどのエネルギーの激流に呑まれて気が付いたらこの世界に来てしまっていて、お腹が空いたので何か食べたいと出会った時の人の家に無断で入ってはいけないものとは知らず土足で踏み入って騒動に発展してしまったとのこと。



そして、あたしが昼寝をしている間にリシュナちゃんが高位魔族に掛けられていた呪いを解呪して、周囲の魔素を吸収する仕組みもマオちゃんの身体への負担がかからない様に改変したというのだ。ただ、改変したとは言え、いくら天才のリシュナちゃんでも魔王のための魔術など門外漢だし、そもそも魔素の少ない地球にいるから予測できない問題が起こる可能性があると言うことで、しばらくは側で様子を見続けてくれるというのだ。



「リシュナちゃん、えらいわね。

 いくらマオちゃんに事情があったとは言っても、気持ちはそう簡単に割り切れるものではないでしょ?」



「うーん、私の場合も結局は都合よく教育され魔王や魔族と戦うための生贄にされていたようなものなので、人間に対して良い感情は持っていないし、むしろ環境に似ているところがある魔王に親近感を持つまでありますよ」



「そんなものかぁ。でも、こうして見るとリシュナちゃんがお姉さんで、マオちゃんが妹みたいですごくよく映えるわね」



「よし、魔王!お前は今から私の妹だ!」



「わかりました。ワタシは今から魔女の妹になります」



「それでいいのならあたしは歓迎だけど、ふたりとも即決し過ぎじゃない?」



「いいのです。カナデさんの言う通りにしたい気持ちなので」



「元の世界のしがらみもないし、むしろ魔王と一緒にいる方が私も楽なんですよ」



この瞬間気持ちが高まってリシュナちゃんとマオちゃんを一気に抱き寄せて強く抱きしめた。



「カ、カナデさん!?」「おい、奏!」



「じゃあ、あたしも姉妹に加えてね!」



「それは奏の願いでも聞けないですね」「カナデさん、ごめんなさい。それはなんか嫌です」



「ええ!?あたしだけ仲間はずれなの???」



あたしも姉妹に加えてほしかったのにふたりから即答で拒否されて泣きたくなった。なんとか堪えて泣かずには済んだけど、とてもさみしいよ・・・

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【別作品】学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

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