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第3話 儀式

 それから体感で半年ほどが経ち、俺はラ・プラスの島での暮らしを続けていた。


 村長にして島の南部の指導者である老人には何度か日本に帰りたいと伝えたが、老人は我々にはあなたを元の場所に帰す力がないと言うだけだった。


 島民たちは何らかの理由で俺を日本に帰したくないのかも知れないと思ったが、海岸から目視できる範囲に他の島はなく、島民たちの木造の漁船は確かに長距離を移動するには心もとなかった。


 生殺与奪の権を握られている立場であることにも変わりはないので、俺は日本に帰りたいとしつこく言うことはせず、今は島民の一人として平和に暮らしていこうと決めていた。



「神の使いさん、お疲れ様です。この果物美味しいので食べてみてください」


「ありがとう。島の皆さんには本当によくして貰っていて、感謝が尽きないよ」


 朝の農作業を終えて海岸で一休みしていると、村長の孫娘がパパイヤのような果物を持ってきてくれた。


 彼女は俺がこの島に来た時から身の回りの世話をしてくれていて、今では彼女からの恩に報いようと俺は農作業や家事労働を頑張っている。


 20代前半ぐらいに見える彼女は古びたナイフで果物の皮をむいてくれて、そう言えば交際していた歯科衛生士の恋人はどうしているだろうと思った。



「こういうこと聞いていいのか分からないけど、君は結婚とかしないの? この島の女の子って結構早く結婚するみたいだけど」


「ええ、私はおじいさまから結婚はしないようにと言われてるんです。……あの、ここから先は、秘密にしておいて欲しいんですけど」


「もちろん、勝手に人に話したりはしないよ」


 少し表情を固くして言った彼女に、俺は頷きながらそう答えた。


 すると彼女は寂しそうに微笑んで、



「私は、神々に捧げられる身なんです。三柱の女神への信仰を続けるために、私は神々に身を捧げるんです」


 と言った。



 どういう意味か分からずに沈黙していると、彼女は続けた。



「月に1回、この辺りに済んでいる人を集めてお祈りの儀式をしていますよね。その時は、誰でも絶対そこにいなきゃいけないって」


「そうだね。僕も何度も参加してる」


「今度のお祈りの日、海に面した女神像がある海岸までどうにか来てください。私もそこにいます」


 彼女はそう言うと両目から涙を流し、そのまま村へと走り去っていった。



 彼女が何を伝えたかったのかは分からなかったが、そこには必ず俺が日本へと帰るヒントがあると思った。

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