大量殺人兵器の孤独
窓を、できるだけ音を立てないように割ると、そっと屋内に侵入した。
ここは子供部屋だ。
子供が一人で寝ている、まずは一人。
私は、持っていたナイフで、できるだけ血の出ない箇所を、ただし致命傷になるように確実に突き刺す。
すやすやと眠っていた子供は、急な刺激に目を見開くと、声にならない声を振り絞り叫ぼうとして、そのまま絶命した。
あんなに可愛らしい寝顔だったのに、最後の顔は見られたものではなかった。
続いてゆっくりとドアを開ける。
両親も寝ているようで、廊下は静かだ。
私は寝室をめがけてゆっくりと歩く。
面倒くさいのでとっとと片付けてしまおう。
寝室のドアを開けるとベッドで寝ている子供の両親を見つけた。
とりあえず一人は音を立てないようにさっさと刺し殺す。
もちろん血が飛ばないように、隣で寝ている片方にも気付かれないように。
刺殺したときの表情は先程の子供の寝顔にそっくりだった。
「んん・・」
もうひとりがちょっと違和感を感じたのか寝返りをとうろとして・・・。
すぐに刺殺した。
もちろん血が飛ばないように。
汚れるのは嫌だから。
これで静かになった。
私は今まで感じていたイライラが少し収まるのを感じた。
今日はこの家で軽く一休みしてから家に帰ろう。
もう少し長居したいが、こればかりは仕方がない。
私はゆっくりと目をつぶった。
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生まれつき人が嫌いだった。
家族からは異常だと言われたがこればかりは仕方がない。
両親はともに愛情を私に注ごうとしたが、鬱陶しくて仕方がなかった。
心配性の家族は、私を精神科に連れて行った。
結果はパーソナルスペース肥大シンドローム。
正式な病名ではなく、パーソナルスペースが人一倍広いという言葉は覚えている。
その日の晩、両親を殺した。
10歳のときだったと思う。
あのとき初めて自分の心が軽くなったのを感じた。
殺したのは私だとバレなかった。
その時から人一倍慎重だったのもあるが、まさか10歳の子供が殺したとは思わなかったのもあるだろう。
身寄りのなくなった、私は施設に入れられたが、そこはまさに地獄だった。
ズカズカと人のスペースに入ってくる子供、大人すべてが不快だった。
だから全員殺した。
毒で、ガスで、包丁で。
あらゆる手段を尽くし殺し尽くした。
もちろん幸運は続くことなく、すぐに私の仕業だとバレた。
私は年齢が規定に達していないにも関わらず、大量殺人者の入れられるような施設に送られた。
そこは過酷な環境にも関わらず少しはマシだった。
誰も好き好んで私に関わろうとしなかったからだ。
このまま寿命までこの施設にいることになるとその時は思っていた。
ある人物が私のところに来るまでは。
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私はとても希少な例らしい、通常このような症例を持っている人は、人から離れていって勝手に孤独死するか、自分のパーソナルスペースが侵されていることに発狂して死んだりすることが殆どらしい。
彼は熱に浮かされたように行った。
「君は大量殺戮兵器になれる素養がある」
つまりこういうことらしい、一般的な人間のように見えて、人をそれと気づかれずに殺すことに非常に長けているらしい。
気づいたときには手遅れ、ほとんどの人間が死亡したあとだと。
彼はまくし立てる。
「君を訓練すれば更に素晴らしい成果を上げてくれるだろう。しかも年々君のパーソナルスペースは肥大していくのだそうじゃないか。君を特定の街などにこっそりと送り込めば、気づかれずしかも我々は手を汚さずに、その街をきれいに滅ぼすことができる。」
そう行って彼に同意を求められた。
内容は彼らに協力すること。彼らについて漏らさないこと。ある訓練を受けること。特定の街に送り込むことを了承すること。戸籍について抹消すること。
私は全てに了承した。
このままこの施設にいても不快感が増すだけと言うなら、彼らに協力したほうが自分も幸せになれるだろう。
そうして私は訓練を受けた。
内容は人の殺し方について。
大量の言語とどうすれば人は死ぬか、効率的に殺せるか。
これでもかと頭と体に植え付けられた。
そして初めての仕事が始まった。
私が済んでいる国の敵対国の街で暮らし、その街の人間をすべて殺し尽くせという内容だった。
私は喜んで了承した。
報酬は滅ぼした街で約1ヶ月自由に暮らせること。
本当はもっと暮らしたかったが、それ以上は秘匿が難しいという理由での1ヶ月だったので渋々了承した。
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新しい暮らしが始まった。
潜入してしばらくは普通に暮らす必要があるらしい。
正直苦痛で仕方がないが、『作業』に必要な生活基盤を最低限築けということらしい。
仕方がなく私はその街での生活基盤を築くことに腐心した。
これも『報酬』のためだ。
ある程度生活基盤が整ってきたときについ少しだけフライングをしてしまった。
ちょっとだけ休憩する場所が欲しくてある家庭の家族をすべて殺した。
やった当初は気分が良かったが。
急に飛んできた彼の「君本当にやってない?」という追求の言葉には少しドキドキした。
知らぬ存ぜぬで通したものの、多分疑いは晴れていないだろう。
ただすごく心地よい時間だったので今度からはもっとうまくやろうと思う。
当然平穏な生活は長く続かずにすぐに破綻した。
ある程度生活基盤が整った時点で許可が降りたからだ。
簡単な許可だった。
「やっても良い」というだけ。
もちろん拒否などするわけがない。
私は喜んで殺し尽くした。
炎で、毒で、ガスで、ナイフで。
ありとあらゆる手段で殺し尽くした。
結果小さな街とはいえ、人は全員死んだ。
『報酬』は格別だった。
こんなにも自由な時間があるなんて夢のようだ。
私は夢のような時間を過ごしたあと。
当然のように彼らから姿を消した。
こんな簡単にすべてがうまくいくなんて思いもしなかった。
彼らから授かった技術には非常に感謝している。
だからもっと殺そうと思う。
私のパーソナルスペースは年々肥大している。という言葉が繰り返し聞こえる。
一つの街では物足りなくなったのだ。
身を隠したあと、私は名前を変え当然のように同じことを繰り返した。
次は街よりも大きく、次は市よりも大きく、次は州よりも大きく。
兵器で、炎で、毒で、ガスで、ナイフで。
私は繰り返す。
繰り返していくうちに私はいつの間にかもともと住んでいた国を滅ぼしていた。
一人残らずというのは難しいと思う人もいるだろうが、私には幸か不幸か、非常に肥大したパーソナルスペースがあった。
不快な気持ちがどこに人がいるのか教えてくれる。
いつの間にか繰り返していっていたときだ、生活基盤を整えているうちにある国の要人として登用され。
それを利用して戦争を起こした。
私は殺した。
扇動で、兵器で、炎で、毒で、ガスで、ナイフで。
ある時気づいた。
もう殺す必要がなくなったことに。
私は真の自由を手に入れたのだ。
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それからは幸せな日々が続いた。
私は自由を満喫していた。
病気や怪我などの心配もあったが、彼らに叩き込まれた技術でどうにかなった。
こんな自由が続くと本当に信じていた。
『地球上には誰一人として私を除いた人間はいないのだから』
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ある時気づいた私の世界の彼方に私が不快に思うものがあることに。
私はそれから狂いそうな気持ちで排除しようとしたが、どうしたら解決するのか一向にわからなかった。
兵器で?、炎で?、毒で?、ガスで?、ナイフで?
どれも届きはしないのはわかりきっていた。
そして今日記を書いている。
遺書と言ってもいいかもしれない。
私は耐えきれない。この感覚に。
そうして私は終わった。
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もともと書いてた小説を二次創作に改変して投稿していたのですが、なろうにはそぐわなさそうなので削除予定。
そのためオリジナルに書き直しました。