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始まり
2016年 8月10日。
この日私は死んでしまったらしい。
何と言うことはない。
いつもの様に外回り営業をしていたら、余りの暑さでつい立ち眩みを起こしてしまい、そこを大型トラックに轢かれてしまったというだけの話だ。
死んだときのことはよく覚えていない。唯一記憶に残っているのは、自身の吹き飛ばされた腕が宙を舞っている様子と、人々の悲鳴のみだ。
こんな酷い死に方をするなんて。童貞卒業もまだだったのに。
神よ、ただのしがないセールスマンである私の一体何が気に入らなかったのですか。
薄れゆく意識の中、私はこんなことを願った。
「次に生まれ変われたら、もう少しましな人生を送りたい」。
そんな願い誰かに届いたのか。
『仕方がないな』という声が聞こえた気がした。