ヲタッキーズ47 脱走と追跡のミリィ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"が秋葉原の平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第47話"脱走と追跡のミリィ"。さて、今回は蔵前橋重刑務所の脱獄囚による爆弾テロが発生!
万世橋警察署と合同で事件解明に奔走するヲタッキーズの前に、警視庁麻薬課のサイキックが現れて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 脱走と追跡のルンバ
見上げるような高い壁が続く。
壁の上には何重も鉄条網が張られ、ショットガンを持った看守が警備している。
ココは、蔵前橋重刑務所だ。ブザーが鳴って看守達が見守る中、ゲートが開く。
「止まるな!」
「…」
「サッサと乗車しろ」
鮮やかなオレンジ色の囚人服を着た女囚達がうなだれて護送車に乗り込む。
全員が手錠に足錠、腰と腰を互いに鎖で結ばれ、文字通りゾロゾロと歩く。
「席に座れ。全員点呼」
「施錠を確認。女囚6名を引き継ぐ」
「了解。移送スル」
看守がチェックした書類を運転手に渡す。
運転手は仏頂面のママで、護送車を発車。
「良い旅を」
再びブザーが鳴りゲートが閉じる。
塀の上から武装した看守が見送る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
蔵前橋通りを走る護送車は、チタニウム装甲で窓は防弾仕様に鉄格子という重武装だ。
運転席と隔てられた護送エリアには、武装した看守が乗り込み…男性雑誌を読んでるw
「見ろよ。今どき引きこもった過去ぐらいじゃ地下アイドルにもなれねぇ。完全に素人がアイドルを食ってるw」
"フレンドリーな看守を演じる自分"が好きな看守が女囚にグラビアページを見せる。
モチロン、その行為が"女囚へのセクハラ"に該当スルなどとは夢にも思っていない。
「お前達も"女囚アイドル"とか目指せょ」
「…」
「ナンなら推してやっても良いぜ」
その時!
インコースから無理矢理割り込んで来た白いワゴン車が護送車の前に飛び出すw
「危ねぇ!」仏頂面をかなぐり捨てた運転手が血相を変えて急ハンドルを切る!
がっしゃーん!ゴロゴロ!
ハンドルを切り損ねた護送車は横転し、蔵前橋通りを派手に転がり横倒しだw
続いて車内から銃声が1発、2発…その度に護送車の窓が光り、割れた窓から…
「チャンス!ズラかれ!」
「アンタ、一緒に来るかい?」
「ソコの車、止まれ!」
オレンジ色の囚人服を着た女囚が護送車の非常出口から這い出る。
先頭の女囚は拳銃を手にしてて、後続のセダンを止め大声で叫ぶ。
「車から降りろ!ホラ、急いで!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
事故から30分後の現場。
「ラギィ警部。休みなのにすみません」
「脱走した女囚は?」
「2人です。事故で護送車が横転。銃声の後2人が脱走。セダンに乗り込みお茶の水方面へ逃走」
現場を歩きながら説明を受けるは、万世橋警察署特捜班のラギィ警部。
最近転勤して来たが、前任地では"新橋鮫"の異名を取る敏腕警部だ。
「死者が出たの?」
「護衛官が」
「脱走犯の情報は?」
「ココに」
渡された書類を警部より先に見てるルイナは史上最年少の首相官邸アドバイザー。
彼女は…まぁ話し出すと長くナルのだが、万世橋にも色々と協力スル立場にアル。
「Vは速度のコト?」
「YES。衝突後の速度です」
「fは抵抗係数ね?」
「ねぇ貴女、保険会社の事故解析課辺りからの転職組?」
鑑識女子が胡散臭そうな顔でルイナを見る。
ルイナは全く意に解さズ、無邪気に答える。
「私?私は大学で教えてる」
「教授なの?何処で教えてるの?」
「アキバ工科大学」
「え。元夫もソコを卒業して、今、保険会社で事故解析やってるわ。私とは、事故現場で出会ったの…会えてよかったわ」
ラギィ警部が割って入る。
「脱走した女囚の内の1人は、仮釈放ナシの終身刑だわ」
「あぁ失うモノがナイ女って厄介ょね」
「こりゃ全員招集だわ。逃亡犯専門の捜査官も呼ばなきゃ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに30分後。万世橋警察署の捜査方針会議。
「脱走したマノンは、麻薬の売人を客とする殺し屋。桜田門の情報屋を殺して1年半前に逮捕された」
「となると…当時の証人の安全確保が最優先ですね」
「免許証やIDがナイから高跳びの可能性は低いけど、密航の恐れもアル…神田川の飛行艇空港とかも見張って」
ソコへショートボブの女が入って来る。
「大丈夫。その辺にいるわょ」
「あらあら。みんな!コイツは脱獄犯専門のミリィ捜査官ょ」
「よろしくね!脱獄犯は、慣れた場所を好むわ。2人は秋葉原出身だから、そう遠くへは行かない」
「でも、遠くへ逃げた方が利口なのでは?」
「ソレが違うの。そもそも、利口なら捕まってないし」
「とにかく!危険な連中ょ!先ずは、家族や仲間から当たって。見つけ出す鍵だから。必ず捕まえるわょ!」
捜査員達が一斉に散り現場へ出掛けて逝く。
「ラギィ、久しぶりね!」
「おや?警部とは、お知り合いですか?」
「昔、彼女と組んでたの」
「1週間トイレにこもれば深い仲にもなるわ」
「楽しそうですね。よろしくです」
「コチラこそ。で、ラギィ。捜査方針は?」
「そうね。先ずは脱獄囚2人を追わなきゃね」
「マノンを刑務所送りにした証人も命を狙われる可能性がアル」
「証人保護プログラムを薦めてみるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
妻恋坂にあるアキバ市民病院。
「Dr.ミュゼ?」
「診察なら、先ず受付で手続きを…あら?」
「万世橋警察署です。お話が」
「わかりました…何かあったら呼んで」
ナースがうなずき去って逝く。
「もう、マノンの話は聞かれましたか?」
「その名前は聞きたくなかったわ」
「私達も手を尽くして探しています」
「前にも聞いたセリフなの」
「お気持ちはわかります」
「本当に?マノンの殺人を目撃し、それを証言したら…彼女は法廷で私を見て、ニヤリと笑って喉を掻き切る仕草をしたのょ?」
「センセは勇敢な方です。おかげでマノンは終身刑になった。でも、今回は警戒しないと」
「証人保護プログラムはもうイヤ。受けたくないの」
「少しの間です。脱獄犯は、必ズ私達が捕まえます」
「患者を放ってはおけないの」
「他のセンセに任せれば?」
「前回は、ソレで半年も無駄にしたわ。その間に亡くなった患者さんもいる。ねぇ私を狙うと言う根拠はあるの?」
「特に根拠はありません」
「ソレなら仕事に戻らせてもらうわ」
「では、病院と自宅を警備させてください」
「モノホンの自宅警備隊ね」←
ラギィ警部に電話が入る。
「失礼…何?直ぐ行くわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"潜り酒場"は、本来バックヤードだが改装したら居心地が良くて常連達が吹き溜まる。
かく逝う僕も"48時間休暇"で吹き溜まりに来たらルイナが見知らぬメイドとダベリ中。
「ココがわからないの。なぜこんなトコロにタイヤの痕がアルのかしら?」
「ルイナ」
「あ、テリィたん。コチラはモリナ巡査ょ。"潜り酒場"の流儀でメイド服を着てるからワカラナイだろうけど。万世橋の交通課」
「え。ルイナ、またスピード違反か?」
僕の軽口に楽しそうに笑う巡査。
クラシックなメイド服が似合う。
「ルイナ博士に、担当事故の解析を手伝ってもらってルンです」
「事故調査にも協力を?どんな事件?」
「護送車ナンです」
「あ。ニュースで見た!巨乳女囚が逃げたって?」
「テリィたん、何で巨乳かな」
「別に。ただ、前にも巨乳犯が逃げたコトがあったょね?」
「…ニュートン力学なの。理工学部1年で学ぶ内容で初歩的な方程式ナンだけど…今回は、ある時点に無関係な因子が集中してる。時系列の分析にベイズ推定を応用したら面白いかなって…そう思わない?」
「思わない…ってか何を逝ってるのかワカラナイ。でも、事故が起きたのは、誰かがミスしたからだろ?」
「ソレを調べてるの。ソレにソンな単純な話じゃないし。あのね。偶然だって数学の上では現実なの。あり得ないコトにも、全て起きる必然性がアル」
「じゃ地球の創生は?地球上に生命誕生ナンて統計的にはあり得ないコトだろ?」
「あぁまたテリィたんの屁理屈が始まったwこーゆー話をしてると、何か思考をムダにしてる気分にナルわ。でも、良く考えて。マクロの視点に立てば、そもそも宇宙には物質もエネルギーも無限にアリ…」
「そして、この宇宙は"揺らぎ"と"歪み"に満ちている…あのさ、形勢が不利になると前髪イジるその癖ヤメろ。ポーカーでボラれるぞ」
「私、賭けゴトはやりません!…とにかく!アインシュタインに賛成なの。この世に偶然は無いわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
追跡捜査官ミリィはエアリと張り込み中。
エアリは僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"の妖精担当。
"地下図書館"のメイド長でメイド服だが、その背中には遥か未来目指すための羽根が…
「でも、服役して2年ですょ?前の男のトコロに戻りますかね?」
「あのね"女囚が逃げたら男を張る"。コレは宇宙の真理だから。アンタ、ソレでもヲタッキーズ?」
「だってイケメン喫茶のホストでしょ?彼は他にも太客くわえこんでるし」
「昔の男。コレが効くのょ収監されると。何しろ、刑務所からの指名通話は全て彼ナンだから…貴女、ラギィとは?」
「警部が秋葉原に来てからです」
「母親が病気だと聞いたけど治ったの?」
「亡くなりました」
「そう…この仕事は人と疎遠になるわね」
「でも、楽しい?」
「性に合ってるんでしょ。きっとラギィもょ」
「え。警部も?」
エアリがワケあり顔で苦笑スル。
「ラギィとは、脱獄囚の夫が眠る墓地で2週間張ってたコトがアルわ」
「へぇ。で、現れましたか?」
「薔薇を供えた瞬間に即、逮捕ょ」
吹き出すエアリ。
「その脱獄囚は?」
「死んだわ。組織に撃たれてね…見て!」
マンションのゴミ捨て場へ逝くホスト。
大きなゴミ袋を投げ捨てて帰って逝く。
彼が去るのを待って中身を漁るミリィ。
「あ。ミリィ追跡捜査官!ゴミを漁る時にも令状が必要ナンじゃ(人間の警察の場合はw)…」
「(人間をw)立件スル場合は、でしょ?脱獄犯の追跡には必要ナイわ」
「じゃ…せめてコレを使って」
エアリがゴミ漁り中のミリィにビニール手袋を渡すと、彼女は笑ってそのままゴミ袋へw
「ビンゴ!通販で取り寄せた男モノ勝負ランジェリーの空箱だわ。きっと連絡が来たのね。ライラが現れるのは時間の問題よっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、万世橋警察署に情報が舞い込む。
「護送車の前に飛び出した白いワゴン車が見つかりました。持ち主はイアス。庭師です。住居と事務所に電話したが出ません」
「車を乗り換えたのね。盗難届が出てないか調べて」
「合同捜査本部はココ?戒名は"蔵前橋通り脱獄事件"」
ソコへ、パツキン&ツインテの女が現れる。
「マノンの情報は?」
「ん?アンタは?」
「桜田門麻薬課のレミザ。あ、アタシはサイキックだから」
「え。なぜ桜田門が絡むの?」
「過去にマノンを追ってたけど途中から"リアルの裂け目"案件だってジャドーに横取りされた」
ジャドーはアキバに開く"リアルの裂け目"から降臨スル恐怖の大王と戦う秘密組織だ。
「え。ジャドーも絡むの?まぁ"彼女達"の捜査協力は歓迎だけど」
「でも、ウチにも権利がアル」
「桜田門は、マノンを捕まえるだけじゃ御不満なの?」
「死刑にしたい。ジャドーは失敗した」
「でも、終身刑にしたでしょ?」
「死んだ護衛官の遺族に、そう伝えてょ」
「…とにかく、邪魔はしないで」
「しないわ」
「絶対?」
「えぇ」
睨み合い火花を散らすふたり。ソコへ電話。
「ラギィ。あ、ルイナ?わかったわ」
振り返るとサイキックの姿はナイ。
ラギィが捜査員を集めて宣言スル。
「ウチの現場ょ。桜田門には触らせないで」
第2章 山の老婆
その頃"潜り酒場"では僕の推しミユリさんがカウンターの中からルイナに話しかける。
「ルイナ。テリィ様とニュートンの運動方程式を解くのは楽しいだろうけど、今回は何を始めたの?」
「ソレがテリィたんと宇宙の集合の話をしてて急に思いついたのょ」
「やれやれ。テリィ様には2度と量子論の話はさせないわ。ゴメンね」
謝るミユリさんだが、ソレを遮ったのは交通課のモリナ巡査だ。
しかし、スーパーヒロインと天才科学者と婦警が全員メイド服w
実にアキバ的な風景だ←
「とんでもない!ルイナさん、何かヒラめいたのでしょ?同じメイド姿のヨシミで教えて」
「護送車の初速は、先頭の平台トラックより僅かに速くて両車の間隔は、毎秒約60センチずつ縮まるワケ」
「で、後から白いワゴン車が追い上げる?」
「YES。そして、護送車を追い越そうとスルけど、速度は護送車より時速20キロ速い。この時の護送車と平台トラックの間隔は約27メートル」
「白いワゴン車が十分に割り込める距離ね」
「でも、その間隔は急速に縮小し、突如、白いワゴン車が護送車の前へ飛び出す。護送車は、ガードレールにぶつかってバランスを崩し横転した…」
「なぜ急に間隔が縮まったのかしら?」
「第1の可能性は、護送車が速度を上げた」
「護送車の質量からしてあり得ないわ」
「第2の可能性は、先頭の平台トラックが速度を落とすと同時に白いワゴン車が護送車の前へと飛び出した。つまり、先頭の平台トラックが速度を落とすのが全てのキッカケね。コレはマルコフ連鎖」
メイドも3人揃えば文殊の知恵だw
「やぁ。何かわかったの?」
「テリィたんに言われて納得いかないコトを解明中」
「ソレはルイナの得意分野だ。問題は?」
「先頭を走ってた平台トラック」
「ソレが?」
「コレは事故じゃない。誰かが仕組んだの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
モリナ巡査に拉致されルイナも万世橋に駆け込んで話を聞いたラギィ警部は全員を呼集w
「護送車の初速から横転までの要因と出来事は、全てマルコフ連鎖ですっ!」
「え。マルコメ味噌?」
「違うぅ!連続する確率変数です。ある時点の確率は、直前の時間の値で決まるの。このマルコフ連鎖を支配するのは"遷移確率"です。護送車がある地点に来た時、先頭の平台トラックが道を塞ぎ、白いワゴン車が間に割り込む」
「事故じゃない?」
「ベイズ統計とコルモゴロフ方程式に拠れば」
ミリィ追跡捜査官がラギィ警部の方を見る。
「ラギィ。今どきの所轄って、こんな難しいコトやってンの?」
「うーん実は、難しい部分は全部"外注"ナンだけど」
「平台トラックが初速を保っていれば、白いワゴン車は普通に護送車を追い越せた。でも、違った。白いワゴン車の動きと連動して平台トラックは速度を落とし、そのせいで護送車は横転したワケ」
「2台の運転手はグルか?」
「確かに庭師も姿を眩ましてる」
「では、もう1人を探しましょう」
「よくやったわ、ルイナ、モリナ巡査。じゃふたり共そのメイド服、着替えて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
秋葉原トラック運輸、通称"秋トラ"は首都高下をトラックヤードにしている。
社長のトラヲはドライバーからの叩き上げでアキバが市場だった頃からの古参。
社長自ら事故車を探してヤードを案内スル。
「で、おまわりさん。運転手の名前は?」
「クリマ」
「すまないが、知らない名前だ。フリーのドライバーをテンポラリーに雇用するコトもアルからな」
「蔵前橋通りの玉突き事故の時に"秋トラ"を運転してたドライバーの免許証の名ょ」
「パラリンピック中は、許可が下りなくて3日間1台も出してない。なぁ他の会社じゃないか?」
「ナンバーは202。このトラックね。走行距離の記録はつけてる?」
「モチロンだ。つけなきゃ違法で免許は取り消しだから…よいしょ!」
勢いよくドアを開けたら…死体が転がり出るw
「ウソだろ?」
「冷たい。死後数日だな。社長、下がって」
「え。走行記録は…え。もう不要?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
直ちに万世橋で目標設定会議が開かれる。
「殺された平台トラックのドライバーは、本名ブライ。麻薬所持の前歴あり。45口径で胸を撃たれてる」
「こっちは白いワゴン車を運転してた庭師の情報です」
「未だ生きてる?」
「恐らく。佐久間河岸の遣独潜水艦ブンカーに潜伏中のトコロを見つかり逃走中」
「ドイツまで密航スル気だったのね?」
「どちらにせよ、取り調べは出来ナイわ」
「しかし、ソコまでして何を隠そうとしてるのでしょう?」
「何を企むにせよ、性格分析ではライラじゃこのヤマは無理です」
「主犯はマノンね」
「うーん証人なミュゼ女医は大丈夫?」
「心配だわ」
「警部。ルイナさんがウチの鑑識に」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィは、鑑識にルイナを訪ねる。
「ルイナ!良く来てくれたわね」
「データを見て捜査方法の検討をしてたの。家族や仲間が鍵なワケね?」
「普通はね。でも、ソレは私達の仕事。貴女はソレに囚われないで考えて」
「ライラとマノンの目撃情報を分析してみた。彼女達の脱獄後に起きた暴力事件も参考にしてね」
「どう?今回も方程式で捕まえられる?」
「考え方が違ってたら訂正して。どこに現れる確率が高いか、先ず統計的に出してみる。家族や仲間のいるトコロは他より確率が高いハズょね?あ。方程式は使うだけで、プロの意見を無視する気は無いの。みんなが足で探す手間を省くだけょ」
ソコへ部下が飛び込んで来て警部に報告。
「ライラがホストの家に現れました!」
「いよいよ勝負下着でお出迎えね」
「突入チームを集めて」
第3章 脱獄犯を追い詰めろ
ホストのマンションにラギィとミリィのコンビが到着スル。
先行した突入チームは防弾チョッキを着用して指示を待つ。
「警部。ライラがホストの部屋にシケ込んだのは約1時間前です」
「そろそろ、よろしくやってる頃ね」
「ドアは施錠されてます」
「脱獄囚でもプライバシーは尊重しなきゃ」
「突入チーム、スタンバイ」
勇みたつ突入チームを見てミリィが慌てる。
「あらあら。ラギィ、私達のお楽しみは?2人でやりましょうょ!」
「うふ。相変わらズね。じゃOK?」
「モチロン。マスターキーを」
突入隊員がミリィにショットガンを手渡す。
斜め上から発射!施錠が吹っ飛び突入スルw
「万世橋警察署!動くな!」
「キャー!」
「脱獄囚にしちゃ可愛い悲鳴だな」
ライラではなくホストの悲鳴だw
ライラはサイドテーブルの銃に手を伸ばすが手の甲にショットガンを振り下ろされ絶叫!
「あら?22口径なの?」
「死んだ護衛官から奪った銃?」
「口径が違うわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そのママ、万世橋へと連行して取り調べる。
「懲役8年か。あと4年で仮釈放申請が出来たのに。人を殺しちゃ無理ね」
「アタシは殺してナイ」
「ダメダメ。護衛官を撃ったでしょ?2人の娘の父親だったのょ?」
「撃ったのはマノンだから!」
「相棒に罪をなすりつける気?」
「相棒?事故が起きるまで口をきいたコトもなかった。護送車が横転したら、急に近寄って来て怪我をしたフリをしろって。護衛官が助けに来てくれたトコロをマノンが撃った」
「と言うコトはマノンの仕組んだ事故だったってコト?」
「少なくとも、マノンは予め事故を知ってたわ」
「他に彼女は何を知ってるのかしら?護衛官は死んだのょ?アンタ、マノンの殺人罪までかぶる覚悟あるの?」
「マノンは…誰かを殺す気だったわ。そのための脱獄だと言っていたから」
ソコへ部下が来てラギィ警部の耳元で囁く。
「40分前に新幹線ガード下でマノンが目撃されました」
「よっしゃ!行くわょ!」
「ライラ、アンタは大人しく待ってて。直ぐ戻るから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今度の現場は流行りのイケメン喫茶だw
まぁ女子向けのコスプレキャバクラみたいな感じの店だ。
執事や秘書に扮したイケメンが、女子客とロープレする。
黒服にバッジを見せ店内の様子を聞き出す。
「しかし、マノンと言いライラと言い、脱獄するや即、萌えに走るとは。よほど萌えに飢えてるのね。"山の老婆伝説"は健在だわ」
「ソレは塀の外でも同じでしょ。黒服ちゃん、中の人数は?」
「従業員含めて全部で16人。写真のお客は奥の部屋の南東の角にいます。ねぇおまわりさん…」
「突入チーム指揮官、裏には?」
「桜田門からの応援2名を配置済みです」
「え?桜田門がもう来てるの?」
「共同捜査だと言い張られて…」
「ねぇおまわりさん!あと1時間で閉店です。せめてお客が帰ってからにしてください」
「ウルサイわね…どーする、ラギィ?」
「わかったわ…聞いて。全員外で待機ょ。監視を続行」
「了解」
全員がフッと気を抜いた瞬間、乾いた銃声w
「銃声だ。突入!GO GO GO!」
狭い出口から客とホストがワラワラと溢れ出して来るw
その流れに逆らって短機関銃を構え突入班が飛び込む!
「万世橋警察署!動くな!」
「ちくしょう!裏へ回った」
「追え!」
拳銃を構えたラギィとミリィが裏口へ走る!
「撃なたいで!」
「桜田門のレミザ?」
「奴なら逃げたわ!」
桜田門麻薬課のサイキック、レミザだ。
「どーゆーコト?説明して!」
「突入したらマノンが銃を抜き、アタシも撃った」
「突入したの?待機だと言ったでしょ?」
「知らないわ。所轄とは警察無線の周波数が違うモノ」
「あのね!アンタは脱獄中の殺し屋を取り逃した。誰かが死んだら桜田門の責任だから!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「犯人逮捕の最高のチャンスを桜田門のサイキック馬鹿女にブチ壊されたわ!」
「レミザは、桜田門の中でも無鉄砲で有名だそうです」
「そーゆー女が必要な時もありますが…」
地団駄を踏むラギィを捜査員全員で慰める。
「マノンの手下とかいないの?痛めつければ何か吐くかもしれないわ!」
「手下でも構わズ爆殺するマノンです。誰も警察には話しません」
「タダ待ってるよりマシでしょ?」
「今回、市民からの通報が割とマトモです。次も期待出来そうです」
「…待つだけなの?」
ラギィの肩に手を置くミリィ。
「証人が狙われてルンでしょ?危険は犯せないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバ市民病院。
「センセ」
「あら、警部さん。貴女、お休みはナイの?」
「センセこそ」
「私は、夜勤明けで上がるトコロょ。私が脱獄囚に消されてナイか見回りに来てくれたのね?」
「いいえ」
女医の顔が微かに曇る。
「何かあったの?」
「証人保護プログラムを受けてください」
「その件なら必要ないと言ったハズ」
「マノンは、一緒に脱走した女に誰かを殺すと言っていたそうです」
「でも、マノンは見つけたんじゃないの?」
「YES。でも、逃げられました。しかし、私達は必ず貴女を守ります」
「そうは言われても…」
「我々を信じてください。患者がセンセを信じるように」
「…OK」
病院から私服で出る女医をサングラスをかけたラギィが護衛。
ふたりがワゴン車に乗り込むのを物陰から見届ける粘着視線←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃"潜り酒場"では、煮詰まったルイナがラボを抜け出して御帰宅。
僕も御帰宅スルとカウンターの中のミユリさんがソッと指差し首を振るw
あ、流儀に従いふたり共メイド服だ←
「かなりイラついてるみたいだね?外の空気でも吸ってきたら?問題を整理出来るょ。そのママ煮詰まってもジレンマは解決しない」
「ジレンマ?あのね、テリィたん。このマップを見て」
「何コレ?」
何と"潜り酒場"の壁に外神田の地図があり無数の色つきのポイントで埋まっているが…
酒場に仕事を持ち込むな←
「あのね。黄色の点は護送車の時刻に起きた未解決事件。マノンの犯行かどうかとは関係ナシに集めた。問題は青い点ょ」
「通報に基づきマノンが現れた場所と時間が記されてる。しかし、ソレが何百もアルけど?凄まじい数だね」
「YES。全部、万世橋に寄せられた通報ナンだけど、問題はデータの精度。ホラ。午前9時には、遠く離れた3カ所で同時に目撃されてるわ」
「全体の通報が多過ぎて捜査指揮が混乱してるワケだ」
「そーなの。しかも、同時に3箇所なんて」
「ん?待てよ。決して不可能ではないな。量子論の世界では…」
「テリィたん、ヤメて」
仕方なくルイナと一緒に腕を組んで考える…
カウンターの中ではミユリさんが笑ってるw
「ん?僕の顔に何かついてる?」
「今のテリィたんの言葉で思いついたわ。確かに3箇所同時にはいられない。だから、条件に合わないデータは排除して…」
「ソレからベイズ解析だな」
「最新の目撃情報を基点にして、どれがモノホンかを決めてみるわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「おかえりなさいませ…あ、ラギィ」
「ただいま、ミユリさん。あら。テリィたん、来てるの?」
「貴重な"48時間休暇"だから寸暇を惜しんで御帰宅さ。ソッチは?捜査に行き詰まってるとか?」
続いて御帰宅して来たのは、ラギィとミリィなんだが、実は僕はコレがミリィと初対面w
「コチラはミリィ追跡捜査官ょ」
「やぁ僕を追いかけてるの?」
「もう追いついたし」
ふたりはミニスカポリスのコスプレ。御屋敷の流儀で、女子は全員メイド服着用なのに…
「以前にもラギィと組んでたの?」
「えぇ」
「新橋の頃?僕、今の会社が新橋ナンだ…ラギィ、話せるか?」
「モチロン。ミユリさん、ミリィの相手をお願い」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「この数日どうしたんだ?ミユリさんが心配してて。僕に様子を見て来いってさ」
「何が?ってか私の心配をしてたの?」
「ミユリさんがね。ラギィが御帰宅しないからだ」
「仕事ょ」
「脱獄囚を追ってルンだろ?」
「YES。でも、心配しないで。今回だけだから」
「前にも、今回だけと逝ったコトあったょな。あの時も心配した。何週間も連絡がなく居所もわからない。なぁ誰かを追うコトは自分の人生から逃げるコトと等価だ。だから、追跡って結構怖いンだ…」
と、ソコへルイナが無邪気な興奮顔で飛び込んで来る!追跡の話が佳境だったンだけど…
「ラギィ!タイヘンなコトがわかったわ!」
「大事な話みたいだ。僕は御屋敷で待ってるょ。ミユリさんと…」
「ダメょテリィたん!ムーンライトセレナーダーも出動間違いナシだからっ!」
僕の推しミユリさんは、普段はメイド長だけど、実はスーパーヒロインに変身スルんだw
「それで?」
「壁に張ったマップには、ココ36時間のマノンの目撃情報が記されてる」
「あら?マップがもう1枚増えてるわwソッチは?」
「アルゴリズムにかけて情報を選別し、信頼性の高いデータだけで作成したマップょ」
「何がわかるの?」
「マノンの行動。時間も描き込まれてるからマノンの行動を順番に追える」
「…だから?何のインスピレーションもわかないわ」
「あのね。目撃場所から読み取れるコトは、マノンの縄張りじゃナイの」
「待って。行動が…円を描いてる?」
「YES。ソレも同心円ょ。コレは獲物に忍び寄る肉食動物の行動パターン。つまり"狩り"ね」
「え。もっと絞れる?"狩り"の獲物は何?」
「ミュゼ女医の病院か?」
「ミュゼ女医本人?」
「パターンから外れるデータをアルゴリズムで排除すれば場所が限定されるわ。この辺りね。旧金澤町界隈」
「"Zガールズ"の縄張り?麻薬の密輸入に絡んでる東南アジア系のギャングだけど…ミュゼ女医とは無関係だわwリーダーは、チャミと言う悪党で厚生省が追ってる」
「この同心円の中心に"Zガールズ"の溜まり場とかはナイかしら?」
「確かに奴等がアジトにしている廃教会がアルけど」
その時、鈍い爆発音と共に地響きが…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「見て!キノコ雲よっ!」
「爆発?マノンがチャミを爆殺?」
「先を越されたわ!」
"潜り酒場"は、アキバ駅に直結スル超高層ビルの最上階だがソコソコ揺れる。
ラギィが指差す先、眼下に広がるアキバの街の一角に、キノコ雲が立っているw
「こちら、コンピューター衛星シドレです。外神田エリア、ブルーのレッドの3に中規模爆発。"リアルの裂け目"の発生なし」
アキバ上空3万6000kmの軌道にいるジャドーの静止衛星からの緊急通報が入る。
ヲタッキーズはジャドー傘下の民間軍事会社なのでリアルタイムでリンクがアル。
シドレ。量子コンピューター衛星。このシドレが"リアルの裂け目"の発生を探知スルと直ちにジャドー全ステーションに急報…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数分後、爆発現場に全員が着替えて再集合。
ラギィとミリィは刑事っぽく、ルイナは白衣でミユリさんは…黒のヘソ出しセパレートw
ムーンライトセレナーダーに変身だ←
「もともと教会の廃墟だったンだけど、コレで晴れて全壊、コッパ微塵ね」
「麻取が追ってたけど、コレで摘発は無理だわ。"Zガールズ"は全員死亡?」
「大量の麻薬が萌え尽きた嫌な臭いだわ。コレで、組織は完全に壊滅ね」
「しかし、マノンは何故チャミを消したのかしら。何かあるハズだけど」
「チャミの麻薬ビジネスを乗っ取ろうとしてたとか?」
「最初からヨソ者のマノンが"Zガールズ"につけ込む隙ナンか無いわ」
「じゃ敵対する麻薬シンジケートから殺し屋として送り込まれたとか」
「状況整理しましょう。護送車事故の関係者は護衛官と運転手。でも、きっと他にも護送に関わってた人がいるハズょ」
「だとすれば内部の人間ね。となると、大勢いるわょ?刑務所の職員、看守…」
「護送車で連中は4列目に。ライラは窓側に。マノンは通路側。ねぇ貴女、マノンやって」
「こう?」
「私はライラ」
その場で護送車ゴッコ?が始まるw
「はい。ココで護送車は横転。私は未だ手錠をしたママょ?」
「私は護衛官。貴女、手錠のママじゃ私の銃に手が届かないじゃないw」
「というコトは…最初から手錠はハズれてた?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
蔵前橋重刑務所。
「貴方が移送計画書にサインを?」
「はい。あのぉ貴女、ムーンライトセレナーダーですょね?後でサインを…」
「その前に!移送手続きと施錠確認のサインは貴方」
「はい。出来たら岩手の母にもサインを…」
「手錠の鍵を外しておいたでしょ?」
「え。な、何を言ってるのか…」
「マノンは、護衛官から銃を奪って射殺したのょ?手錠されてちゃ、普通は銃は奪えないわょね?」
「事故で千切れたんじゃ?」
「ソレはナイわ。ねぇ15年間、真面目にやってきた貴方が何故マノンの脱獄の手助けをしたワケ?脅されたの?」
「万世橋警察署のラギィ警部ょ。理由は何であれ、貴方は殺人共謀罪。わかってる?でも…協力すれば、検事に口添えをしてあげても良いわ」
「同じく追跡捜査官のミリィょ。ソレともココで服役スル?元看守と知れれば、アンタは一晩で消されるわ」
「…弟が捕まった」
「え。誰に?」
「麻薬所持をデッチ上げられた。奴は前にも同じ手口でやってる。奴に逆らえば、弟こそ蔵前橋に来ちまう」
「待って。誰の話をしてるの?奴って誰?」
「桜田門麻薬課のサイキック、レミゼ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「レミゼとチャミのつながりは?」
「チャミは麻取の情報屋でした」
「"Zガールズ"が情報屋を?」
「レミゼの名前が出て、厚生省は内偵を始めてた」
「で、バレる前にマノンにチャミを殺させたのか」
「レミゼとマノンは旧知の仲だそうです」
「で、マノンの見返りは?」
「自由…かしら」
「チャミを爆殺させるには、もっとエサが必要ね」
「自分を刑務所送りにした、証人のミュゼ女医?」
「でも、彼女なら証人保護プログラムで今は隠れ家にいるから安心だわ」
「ソ、ソレがレミゼは、ウチとの共同捜査というコトで厚生省のデータも見れる立場ですw」
「マズい!ミュゼ女医が危ない!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今も場所は逝えないマンションの屋上に舞い降りるムーンライトセレナーダーとエアリ。
エアリは妖精なので背中の羽根を広げムーンライトセレナーダーを運んでひとっ飛びだ。
「気をつけて。人が倒れてる」
「撃たれてるわ。私達ヲタッキーズょ。しっかりして!」
「うぅ。突然襲われて…爆弾を仕掛けられ、奴は非常階段から逃走した」
護衛官をエアリに任せ、ムーンライトセレナーダーが非常階段へ飛び込む。
パツキンの女子を人質にとりながら、数階下を駆け降りるマノンが見える。
「ヲタッキーズょ!マノン、もう諦めて!」
「ムーンライトセレナーダー?アラサーなのにヘソ出しナンて恥ずかしくナイの?」
「余計なお世話ょ!"雷"キネシス!」
必殺ポーズから放った電撃は、マノンの手から起爆装置を弾き顔面を直撃!
ボワッと空気が萌える音がして、瞬時にマノンの顔面は黒焦げ髪チリヂリw
「ヒ、ヒドい!顔はヤメて…次から」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マノンが非常階段で真っ黒焦げになった頃、ようやくパトカー組は現場に到着スル。
ラギィとミリィのコンビは拳銃片手に隠れ家へ走り、ミュゼ女医を無事に保護スル。
「私なら平気ょ」
「ホントに?」
「ラギィ!ムーンライト何チャラとか言うスーパーヒロインがマノンを捕まえたって!逮捕しに行く?」
「…病院まで送らせます。テリィたん!」
「わかった。でも、来る時ちょっち擦りむいて…」
「まぁ!大丈夫?手当てしなきゃ!」
「良い先生を知ってますか?」
「えぇモチロン。貴女のかかりつけ医になりたいミニスカ白衣の似合う女医を知ってるわ…テリィたん、ありがと」
ミュゼ女医は、ヤタラ潤んだ瞳で僕を見るw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コレまた場所は教えられナイ今どき珍しい24時間営業でやってるハンバーガースタンド。
両手いっぱいの大袋を抱えて店から出て来る女子は…桜田門麻薬課サイキックのレミゼ。
「レミゼ、動くな。袋を捨てて手を上げろ」
拳銃を目線で構えるラギィとミリィ。
「あらあら。ねぇ桜田門のサイキックと爆弾魔、どっちが信じられると思う?」
「モチロン爆弾魔ね。はい、後ろを向いて。来て」
第4章 さよならの代わりに
翌朝の万世橋の駐車場。
バイクに跨がるミリィ。
「あら?もう行くの?」
「渋谷円山町で薬物依存症」
「ねぇ秋葉原で仕事をしたら?」
「私に落ち着けと言うの?」
「悪くない話でしょ?本気ょ」
「ヤメてょ。ラギィこそ、追跡しょ?」
「ソレこそナイわ」
「逃亡犯を次第に追い詰め、手錠をかける時の興奮は?」
「懐かしいけど…家族みたいなヲタク達と連絡も取れズ、話せない生活の方が辛いわ。秋葉原が合ってるのね」
「そう。ソレなら良いわ」
「気をつけて」
「貴女も」
爆音。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場。
僕とミユリさんは組んで、ルイナとチェス。
2 on 1 に加えてルイナは何やら読書してるw
「良い手だわ、テリィたん」
「でも、集中出来ないだろ?読書しながらじゃ」
「私は平気ょ。危ないのはソチラ」
ルイナは、全く負ける気がしないようだ。
まぁ僕達もまるで勝てる気はしないけどw
「勝ちもしないが負けもしない、ってのが僕の人生ナンだ」
「2人がかりでも私には勝てないわ。ミユリ姉様、ごめんなさい」
「私は、みんなが顔を合わせて、ソレで楽しく話せれば、ソレで良いと思うの。ね?テリィ様」
「ところで、ルイナ。今回は相手がサイキックだったンだけど、彼女の超能力が何だったのか知ってる?」
ルイナは、読んでいた本から顔を上げる。
「そう言えば…何?」
「念臭。現実には存在しない臭いを感知スルらしいょ」
「ええっ?ソンな超能力ってアルの?」
「うーんエスパーって割と自己申告制な面がアルからね…チェックメイト」
「え。あ、そうか。私の気を逸らすために2人で仕組んだのね?!」
「私は、何もしてナイわ」
「ぼ、僕か?でも、コマを動かすだけがチェスじゃないンだょ」
「私、2度とチェスはヤラない」
「ソンな、1度負けただけで…」
と、ソコへ!
「こちら、コンピューター衛星シドレです。旧末広町エリアに"リアルの裂け目"発生。ブルーのレッドの3」
「ヲタッキーズ、GO!ホットスクランブル!」
「あぁ仕事じゃ仕方がないわ。いってらっしゃいませ、御主人様に御嬢様!」
おしまい
今回は、海外ドラマでよくテーマとなる"追跡の専門家"を軸に、追跡捜査官、彼女に追われる脱獄囚、その脱獄囚を操る警視庁麻薬課のサイキック、サイキックを追い詰める警部、天才科学者などが登場しました。
さらに、追跡という物事の性格、天才科学者の孤独、追跡捜査官の生き様などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第4次コロナ宣言下でパラリンピックを迎えた秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。