「ざまぁ」までカウントダウン入りました!
なんのかんのと時間は過ぎて、ようやく俺達は王都についた。
「王都ついたどぉぉぉぉ!」
唐突に俺は王都の検問所前で大声でガッツボーズを取ってみた。
・・・・回りから白い目で見られただけだった。
「ちょ!アンタ!なにしてんのよぉ!!」
びっくりしたミレイが慌てて俺の口を塞ごうとしてくる。
「いや、なんとなく。王都っていったらこれだよね?」
「はぁ?何年前のギャクやってんのよぅ。」
凄みを増した顔でミレイが俺を睨む。
美少女から睨まれてなんだか変な属性が発生しそうになるが俺は大人だ。ねじ伏せていたって普通にふるまう。
「あやうく王都に入れない所になるところだったわよ。」
アンジェリカがプリプリと怒りながら検問所から戻ってくる。
「いや~すまんすまん。なんかもうヒマすぎて!ついね。」
「つ・い!じゃないわよ。今度やったらどうなるかわかるわよね」
美少女も良いが、それなりの女性の凄みもまた・・・おっと、これから先は夜になってからの大人の時間に!
「へいへい。わかりましたよ~」
俺は呑気に検問所をくぐり、まずは歩くことにした。
え?徒歩で?と思われるかもしれないが、素直に男爵家に行かないように上から通達されている。
まずはのんびり歩いて市中で買い食いなんかしていこうかなっと。
王都では、俺達がやらかしてることがそんなに伝わっていないようで歩いていてもそれほどジロジロとみられることが少ない。
そのまま歩くと道は城下町につながっており、当然俺達がいた所とは比べ物にならないぐらい店がにぎわっている。
「さって、、いつものように個別行動か?」
「ちょっと待って。とりあえず確認するわ。」
アンジェリカは懐から例の手帳を取り出す。
「特に指令は無いようだから好きにしてもいいわよ。夕刻の鐘が鳴る前にまたこの場所に戻ってきて」
「へーい」「はぁい」「うっす」
どうやらミレイとアンジェリカは服を見に行く様子だ。ダイノジは・・・お、珍しく俺と行動するのか?
ダイノジがそっと俺の耳元に口を寄せる。
「例のところ行きませんか?」
さびれた裏路地。
俺達二人はその一角にある看板の出ていない入口をそっと開く。
「さっさと入っておくれ!大切な商品が逃げちまう。」
入口で構えているばあさんがパイプをくゆらせながら手で扉を閉めろと言ってくる。そうしてその手はそのまま俺達二人に向けられる。
「1時間2000円。延長するならそのたびに1000円だよ。指名するならさらに1000円。オモチャが欲しいならさらに500円」
ヤニで茶色い歯を見せニヤついた顔を浮かべながら俺らを見てくる。
ダイノジは4000円を差し出し
「茶色い子をたのむ。全部込み」
ばあさんは金を受け取ると、奥に居る子たちに声をかける
「ルーメシアン!指名はいったよ。オプション付き!」
ばぁさんは無言で右へ行けと指示する
「で、アンタはどうすんだい。」
俺は懐から2500円を出し
「どの子でもいい。オモチャ付で」
そしてさらに2000円を握らせて
「連れと一緒に楽しみたいんだ。いいよな?」
ばあさんは「アンタも好きだねぇ」と下卑た笑いを見せると同じように右へ行くように言われた。
布で仕切られた空間をすすむと、そこには。。。。
茶色い短毛のかわいい子がダイノジの上にのり、一生懸命じゃれついていた。
普段表情の変わらない終始無言のダイノジもこの時はだらしない顔をして可愛がっている。
そして奥からグレーで長毛のこれまた美人さんが足取り軽く俺に近づいてくる。
『いらっしゃい』
そういわんばかりに体をこすりつけ愛想を振る彼女(?)
「お~ずいぶん人懐こい子だなぁ」
抱き上げると嫌なそぶりも見せずゴロゴロと喉が鳴る。
・・・・そう、ここは猫カフェ。
この世界では猫や犬といった愛玩動物を所有できるのはいわゆるお金持ち、上流階級の特権となっている。
俺達冒険者や一般庶民が飼うことは分不相応であるとみなされている。
・・・でも・・俺達だってモフモフしたい!!!
そんなニーズが意外とあることが分かり、俺とダイノジは男爵に提案してここに猫カフェを開業してもらっている。
表立って猫の店とは言えないので秘密裏にしておりここに来れるのも男爵や俺達から紹介を得た人だけ。。である。
ダイノジは結構この店に入れ込んでいる様子で機会があるたびにこの店にはせ参じているらしい。
他の客といえば、とある騎士団の副隊長であり男勝りのあの人とか、冒険者ギルドマスターの右腕と呼ばれる超頭の切れるあの人とか、
ふだん動物を愛でるように見えない人やお堅い人も常連だという。
男爵側にもメリットはある。普段よほどのことではない限り接点のない所の主要な人物の弱みを握ることもできるし、ちょっとしたお小遣い程度の金銭も稼げているからだ。ただ、ここでの弱みは余程のことがなければ使われることは無い。持ちつ持たれずの関係というわけ。
時間ぎりぎりまで猫ちゃんを堪能し俺は店を後にした。ダイノジは物足りないようで延長してまだ店にいる。
裏路地から表通りまで歩いていると、妙な気配を感じた。
2人の子供が奥から走ってくる。
「!!!」
俺はすぐに壁越しに隠れるとその2人を見守る。
リュカと耳と尻尾のある少女だった。
恐らく、あの子が獣人の少女なんだろう、アンジェリカの言っていたように話は進んでいる様子だ。
「そろそろ・・なのかな・・・」
ぼそりとつぶやく。約二か月ぶりに見たリュカだか体格は変わることは無いが以前よりも鋭い目つきをしていて精悍な感じがした。
「どいつもそうだけど、成長してんだなぁ・・」
無事な姿を見て安堵するとともに一抹のさみしさを感じる。相手にすれば俺達はこの世界を汚す悪なんだけど
仲間で居た頃もそう見せないようにしてるんだけど、やっぱ元仲間だからなぁ。
この世界で居れる時間が少なくなっていることを感じつつ、リュカ達が居ないことを確認してから
俺は再びぶらぶらと歩を進め道すがらの屋台でよくわからない肉の串焼きを買った。
かみしめると肉の油がじゅわと染み渡り、かかっている酸味のタレと香辛料のようなピリッするものが絶妙に絡み合い非常に美味だった。
あまりの旨さに複数本を買いそのまま立ち去ろうとする。
「あ、あの。。お代は。。。。」店の女性があわてて追いかけてくる。
俺は意味もなく剣を鞘から抜き突きつける
「ひっ!!!!!」
「あーん。オレを誰だかわかってないのか?勇者バラインタインだぞぉ~。」
何度もやっているが、本当にバカっぽく演じるのは疲れる。いやーさっきの猫ちゃんマジかわいかったなぁ。串焼きもうまいし。
こうして意識を別にそらしていないと、良心の呵責に押しつぶされそうになる。
ごめんよ~店員さん~~~
心の中で詫びつつ、無駄にならないように焼いていた串を全部かっさらい、定員さんが怪我をしないように見計らいながら屋台をコテンパンにぶっ壊す。
泣き崩れる女性店員とその騒ぎを見に来た野次馬を背に俺は地面に金の入った袋を置き、待ち合わせの城下町広場へとゆっくりと向かった。
金銭に関してですが、この世界の住人の場合は金貨、銀貨、銅貨で表記され、異世界から来た人達はその元の世界の単位で表示されます。なのでバランタインが円で支払ってもばぁさんには銀や銅貨で受けっとっていることになります。