なんど転生しても主人公を主人公にさせるっ!
「リュカ 貴様は今日限りでパーティから抜けてもらう」
食堂の薄暗い隅の一角で勇者、、、バランタインはそう告げた。
リュカと、呼ばれた小柄で端正な顔をした少年は、ぐっと顔をしかめうつむいている。
「アンタが足をひっぱるから、いつもアタイ達がその尻ぬぐいをしてんだヨッ。いい加減もうがまんならないんだってーの」
そう、さらに追い打ちをかけたのはバランタインの隣にすわる少女、、に見える女性。
手にしたジョッキを机にダンっ!と叩きつけた。
その拍子に、ジョッキからとびちる飲み物が辺りと、リュカの顔にかかる。
「あら、ごめんなさいね~ぇ。」
リュカの隣に座る妙齢な女性がなんのためらいもなく、床を拭く雑巾で机とリュカをぬぐう。
「アン!」
バランタインはさらに凄みを増した顔でリュカとアンと呼ばれた女性を見る。
3人は一番奥にリュカを座らせその三方を囲み、今まさに詰め寄っていたのだ。
「ぼ、、ボクだって、こ、このパーティの為に、いっ、いろいろとやっていて、、」
「はぁ?じゃあ今日のアレどういうこと?私が攻撃に行ってんのにアンタ私の前でうろうろして、あれだけそういうことスンじゃねぇって言ってんのに」
「そっ、それはバ、バ、バフを掛けようとして、、」
「あーーーーーーうっさい!!」
「バフなら私の方が早くて効果が高いって言っていますわよね」
雑巾を持った手がきつく握られ、ブルブルと震えながらアンはつぶやいた。
「は、はい、、そ、そうなんですが、、、、」
リュカは今にも消え入りそうな声で反論しようとしていたが、それを遮るようにバランタインは
再度リュカに告げた。
「とにかく、お前は俺たちのパーティでは使えないってことなんだよ。レベルもちっとも上がらないし、クソスキルしか持ってないし。わかるよな自分で」
リュカはうつむいたまま何も言わない。
「そういうわけで、みんなで話し合って今日限りでパーティ抜けてもらうことにしたんだわ。なんで、さっさと荷物まとめて出てって欲しいんだよね。
あ、もちろん装備品やお前に預けてるダンジョンドロップ品は置いて行けよな」
「ド、ドロップ品はとにかく、そ、そう、装備品はオ、オ、オ、オレが自分で買った、、、」
「あああああん?そもそも装備買うお金だってアタイ達が稼いだようなもんでしょ?」
「、、、、、、」
リュカの横にいたアンが席を立ち、退席を促す。
リュカはうつむいたまま、席を立ちあがった。が、しかし、その顔は苦渋ではなく歓喜にあふれているようにも見えた。本人はうつむいてバレてないと思っている様子だが正面にいたバランタインにはわかっていた。
のろのろと階段を上るリュカをみながらバランタインはわざとリュカに聞こえるように残った二人に声をかける。
「しみったれた野郎が居なくなってせいせいしたな。今日はお祝いだ!酒場で飲みなおそうぜ!」
酒場ルルン
バランタインはウィスキーのようなアルコール度数の高い物をちびちびと飲みながらカウンター越しに一息ついた。
「あーーーーーー今回もなんとかなったなぁ」
そういうとまた、ちびりとコップを傾ける。
「アタイ達がここで飲んでる間にリュカの奴、宿屋を出るはずだから、、あーん、早くお布団でゴロゴロしたいよー」
「はいはい。ミレイ、もうちょっとのがまん!それにしてもまぁうまくいったわね」
バランタインの横では先ほどの女性二人がわきあいあいとしている。
「おらおら、じゃれるのはいいが、まだ序盤だからなぁ。次はなんだっけ?リュカが仲間見つけて、隠してた才能で成り上がってきたところで再会だったかな?」
「えーっと、次は王都に行ってそこで再会の予定ね。仲間っていっても獣人のお嬢さんと仲良くなった段階みたいよ。私たちは王都でリュカがお姫様と仲良くなるように仕向ける役目ね」
アン、、もといアンジェリカは懐から小さな手帳のようなものを開いて確認する。
「えーーまたハーレム系なの?ほんと主人公っていい身分よね」
ミレイは果汁の入った飲み物を飲み干すとおかわりを頼んだ。
「あーー飲めないアルコール飲んで気持ち悪い、、、、、」
アンジェリカがそっとミレイの背中をさする。ほの明るい光がミレイを包む。
「さっすが聖女様 二日酔いもきれいになくなるわぁ♪」
アンジェリカは微笑むとそっとミレイの髪をなでる。
「オレも癒してくれよおぉぉぉ」
そういいながらよりかかってくるバランタインをアンジェリカはさっとかわす。
無常にもバランタインはそのまま床に。
「おっさん。キモっ」
アンジェリカの肩越しにミレイがつぶやいた。