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夜の帳が降りる頃に  作者: 白米おしょう
第3章 借り物の夢で
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第3章 3 『ナンバーズ』

 

 ※



  「……と、言うことがあったんだ。」


  十三時、昼食を終えて図書館にやってきた私を既に集まっていた友人達が出迎えた。


  本来読書をするための場所で、大勢集まっておしゃべりするような所ではないけれど、「どうせ誰も来ないから」とこだまさんも許してくれている。

  足繁く通っている私としては本当に申し訳ない。


  4人で小さなテーブルを囲み、それぞれシラユキに買ってきた物を贈ったあと、私たちは成り行きで買ってきたボードゲームに興じることになった。


  私は反対した。やるなら誰かの部屋でやろうと。だってここは図書館だもの。

  が、何故か長居しろとでも言わんばかりにこだまさんがオレンジジュースを差し入れてくれた。


  ……こだまさんも普段人が来ないから寂しいのかな?


  そのこだまさんは、特に輪の中に入るでもなくカウンターの向こうから私たちのことを見守っている。


  そんなこんなで現在--


  人生ゲームに興じる私たちの話題は、今朝私が遭遇した奴の事についてだった。


  私がスーツの少女の容姿や言動について説明すると、コハクは楽しそうに笑っていた。


  「大変な人に目をつけられたんだね。ヨミ。」

  「……知ってるの?」


  笑いながらルーレットを回すコハクにハルカが尋ねた。

  どうやら彼女には心当たりがあるらしい。素性など知りたいとは思わないが、聞いてみるものだ。


  「多分、『ナンバーズ』のNo.“09”だよ。その人……」


  ……『ナンバーズ』?


  またしても知らない単語。私とシラユキは互いに顔を見合わせた。


  「……なにそれ?戦隊モノのヒーローチーム?」


  ハルカも知らないようで、つまりあまり認知された存在ではないらしい。


  「『サイコダイブ』適正が最も高い十人の『ダイバー』達のことらしいよ。私も詳しくは知らないけど……」


  『サイコダイブ』適正の高い『ダイバー』達……

 

  「つまりエリート『ダイバー』集団?」


  私の解釈にコハクが頷いた。


  「へぇ…ウチの学校、そんなのあるのね。」

  「天照学園には全部で七つの学舎があるけど、その学舎にそれぞれ何人か居るらしいよ。」


  ハルカの呟きにコハクがさらに詳しい説明をしてくれる。


  どうやら私たちの学舎だけじゃなくて、この寄宿学校全体での『サイコダイブ』適正上位者十名を『ナンバーズ』と呼ぶらしい。



  「ソノウチノ、ヒトリガ、ワタシタチノ、ガクシャニ、イルンダネ。…スゴイネ。」


  すっかり大金持ちになっているシラユキが目を輝かせて言った。

  どうでもいいがこの子人生ゲームが強すぎる。挫折なく栄光へ向かっているぞ…きさまこのゲームやり込んでいるなッ!


  「……ふぅん、『サイコダイブ』適正が高い事の何がいいのか知らないけど。」


  あまり興味の無さそうなハルカがルーレットに従ってコマを進める。借金の保証人になっていたがその借用主の友人が蒸発したようだ。


  「色々と特権があるみたいだね。噂だけど、自由に外出できるらしいよ?私服でオーケーみたいだし…」


  自由に外出だと?


  「だからスーツだったのかな?ていうか、適正高いってだけでなんでそんな特別待遇に?」


  疑問を口にしながら私は入院中のことを思い出す。

  あの時--理事長が見舞いに来た時傍に控えていた少年…彼も同様に生徒バッチをつけながらスーツ姿だった。


  もしかして彼も『ナンバーズ』だったりするのだろうか?


  「理事長直轄の『ダイバー』になるかららしいよ?」


  そんな私の憶測をほぼ裏づけるようにコハクが説明する。


  「……リジチョウ、チョッカツノ、『ダイバー』?」

  「担任のマザーの管理じゃないってこと。工藤理事長が許可してるから、自由にできるんだってさ。」


  コハクの説明を聞きながら私もルーレットを回す。

  ……経理で入社した会社の社長と不倫。それがバレてクビになり社長夫人から慰謝料請求された。

  人生ゲームってこんなんだっけ?


  「理事長直轄……私たちと何が違うんだろう?」

  「さぁ、特別な仕事があるんじゃない?」


  ハルカとコハクが顔を見合わせて言う。


  「アッ、ケッコンシタヨ。」


  シラユキがルーレットを回した。どうやら旦那ができたらしい。


  「おめでと、御祝儀ね。」

  「はい、シラユキどうぞ。」

  「……ごめん私借金抱えて払えないわ。」


  コハクと私が祝儀を渡す中人生崖っぷちのハルカが言う。こいつよりゴールドが遅いことはないだろう。

  ……と思ったら慰謝料のせいで私の財布もピンチだ。何だこの人生ゲームは。


  話が再び『ナンバーズ』に戻る。


  「ナンバリングされてるくらいだから、順位とかあるのかな?」

 

  ハルカの疑問にコハクが頷く。


  「適正が高い順に一番下がNo.“10”、てっぺんがNo.“01”だって。ウチの学舎に居るのはNo.“09”の二年生、クロエさんだけだね。」


  二年生?


  「先輩だったんだあの人。」


  全然そんな雰囲気なかったから分からなかった。そういえば私のことを「一年」と呼んでいた。


  「へぇぇ…よかったねヨミ。エリート先輩に目かけてもらって。」


  心底どうでもよさそうなハルカの戯言を聞き流し私はコハクに視線を移す。


  「……どんな人なの?クロエ先輩って。」

  「人となりまでは知らないな…私は会ったことないし。」


  それもそうか。知り合いでもない限りクラスメイトと接する機会も少ない。まして上級生ともなれば尚更…


  「ちょっと!あたしバイク事故で死んだんだけど!?え?どういうこと?この場合どうなるの?」


  ハルカの人生にさらなる苦難--というか人生の幕が下りるのを横目にコハクがさらに続けた。


  「…あんまり関わらない方がいいかもね。」

  「?なんで?」


  コハクの言葉に首を傾げる。まぁ、別に率先して関わる気もないが…


  「あんまりいい噂聞かないもの。『ナンバーズ』。」


  私を脅かすようにクスリと笑うコハクにシラユキの心配そうな声が飛ぶ。


  「…コワイヒトナノ?」

  「ううん。そんな印象じゃなかったけど…」


  最も、ほんの数分会話しただけだ。それだけで人となりなんて分かるはずもないが…


  そもそも、なんで私に話しかけてきたのだろう?本当にビスケット取られたからなのか…?

 

  理事長直轄の『ダイバー』…


  言葉で聞いてもピンと来ない。つまりどういう人達なのだろうか?


  …理事長がわざわざ私を尋ねてきたのと関係あるのかな?


  --シラユキの『サイコダイブ』での疑問は結局解決していない。先生やマザーに尋ねてみようにも、理事長にあんな返答をした手前はばかられる。どこから話が漏れるか分からない。


  ……理事長といえば、彼女の見舞い品のクッキーを持ってくるの忘れた。


  「……ねぇ、これほんとに人生ゲーム?私が知ってるのと違う。人生ってこんなに過酷だっけ?」

  「人生も人それぞれだから……」


  ハルカがゲームの内容に不満を漏らしコハクが全く無責任な返答をしてあしらった。

  ハルカも死んだことだしこのゲームもそろそろ切り上げたくなってきた。

  ちょうどいい口実も思い出したことだし私はみんなに声をかける。


  「……そういえばさ、私が入院してた時理事長が来て……」


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