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8.【SIDE:ティアナ】国を揺るがしかねない大罪

 大混乱の謁見の間。


「イリスちゃん、イリスちゃん! 聞こえる? 私よ、私!」


 ラフィーネの鋭い声が響き渡りました。


 取ってつけた私の祈りとは違う、長年の修練の果てに身につけた技術なのでしょう。

 神聖な魔法陣を描き、彼女はどこかに向かって話しかけました。



 え、お姉さまは生贄になって死んだはずでしょう?

 聖女の祈りは、死した人とも通話を可能にするとでも言うの?

 だいたい、こんな時にどうしてお姉さまに?


 疑問は尽きません。

 しかし「先代の聖女が、事態を鎮めるために何かをしている」と、縋りつくような視線が向けられました。


「え? 今、守護竜様が隣にいる。里で一緒にご飯を食べている? あなた、いったいどこで何をしているの?」

『その……竜人の里で、守護竜様にお世話になってます――』


 お姉さまの困ったような声が響き渡りました。

 え? 竜人の里で守護竜のお世話になってるって、どういうことよ?


「どうしてそんなことに!? ところでイリスちゃん、守護竜様の怒り原因は……?」

『それがその……。私の妹の祈りが原因です――。え、私のことをまた(・・)(おとし)めて今度こそ許せない? アルペジオ様、どうか落ち着いてください!』


 どういうことでしょう?

 お姉さまの言葉は、敬い恐れるべき守護竜に向けるものではありませんでした。

 それこそまるで親しい友人にでも向けるような親愛の籠ったものでした。



『私なら大丈夫ですから。国民が怯えているみたいですし、どうか穏便に……』


 お姉さまの言葉と同時でした。

 まるで今までの現象がウソみたいに、みなを怯えさせた地震が収まっていきます。

 私は信じられない気持ちで、会話の行く末を見守っていました。



「守護竜様の怒りは、妹の祈りが原因だったと。やっぱりね――突然、呼びかけてごめんなさい」

『いえ……。こちらこそお騒がせしました』


 そんな言葉を残して、ラフィーネの魔法が解かれました。

 竜の息吹も収まり、謁見の間には気まずい沈黙が訪れます。




 これではまるで、ほんとうにお姉さまの力で竜の怒りを鎮めたようではありませんか。


「こ、これは何かの間違いです! お姉さまの言うことなんて、すべてウソに決まっています。私の祈りによって、竜の怒りは鎮まったのです!」


 私は涙を流しながら、必死に訴えかけます。


「呆れました。いい加減な『祈りの儀式』で守護竜の怒りを買っておいて、よくもぬけぬけと……」


 それは両親やオスターをコロッと騙してきた必殺技。

 しかし私に向けられる目線は、ラフィーネを中心にして実に冷ややかなものでした。



「ふむ……。信じがたいことだが、聖女ティアナの言葉に偽りがあったと判断するしかないな。国に忠誠を誓うはずの子爵家が、国を欺き、竜の怒りまで買おうとは……国を揺るがしかねない大罪である!」

「そ、そんな――! お待ちください!」


「沙汰は追って下すこととする。今日は下がるが良い」


 国王陛下の言葉には、取り付く島もありませんでした。

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