7.【SIDE:ティアナ】祈りの儀式、守護竜の怒りを買って大地が揺らぐ
慌てる私をよそに、ラフィーネは言葉を続けます。
「イリスちゃんの祈りで、守護竜は喜んでいました。だからダメーナ子爵家が、正式にティアナさんを聖女の後継に選んだときには驚いたのです。同時に感動しました――今代の聖女は、イリスちゃんを上回る才能の持ち主なのだと。ですが……この様子では――」
「そんな馬鹿な話はありません! お姉さまの祈りなんて、すべてウソっぱちです!!」
お姉さまが祈りの真似事をしていたことは知っています。
だからといって、それが守護竜に届いているなど、あるはずがありません。
誰もがラフィーネの言うことを信じ始めていました。
私はオスターを置いてきたことを後悔し始めました。
「そこまで言うのなら分かりました。私が『祈りの儀式』をお見せします!」
なにも不安に思うことはありません。
数年前にしていたことを、思い出せば良いだけです。
私が聖女である以上、きっと守護竜は応えてくれることでしょう。
「この場でよろしいでしょうか?」
私は許可を取るとその場に跪き、祈りのポーズを取りました。
思えばこれまで聖女の役割や守護竜に対して、まともに向き合ったことはありませんでした。
今このときも「この場さえ切り抜けられれば良い」と格好だけの祈りです。
それだけでなく、祈りながらついつい愚痴のような感情まで湧き出てきます。
すなわち「お姉さまが生贄としてすら役に立たないから、こんなことになったのよ」と。
何が守護竜の怒りを買ったのかは分かりません。
しかし効果はてきめんでした。
――悪い方向に。
まるで守護竜の怒りを表すように。
これまでに無かったほど特大の『竜の息吹』が立ち昇りました。
さらには激しい感情を吐き出すような、聞くものを恐れさせる咆哮が、国中に響き渡ります。
「な、なんだ!」
「何が起きているのだ!?」
「竜が、竜が怒っているんです!」
集まった人々は、容易にパニックに陥りました。
私も祈りのポーズのまま、呆然と辺りを見渡しました。
守護竜の怒りは、それだけでは収まりませんでした。
――大地が揺らぎました
その怒りの大きさを表すように。
最初は小さく、やがては王宮全体が震えるほどに。
ぐらぐら、ぐらぐらと。
「な、なによこれ――!?」
「あなた、なんてことを。止めなさい! 止めなさい!」
呆然と固まった私を、ラフィーネが飛びつくようにして止めました。
――ある者は世界の終わりだと、頭を抑えました。
――ある者はただただ逃げ惑い、混乱に拍車をかけました
――ある者は守護竜の怒りを受け入れ、ただただ終わりの時を待ちました。
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