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12.妹とダメーナ子爵家の末路

「聖女ティアナ、そなたは聖女でありながら祈りを欠かし、守護竜の怒りを買った。それだけでなく前回の祈りの儀式では、守護竜の逆鱗に触れて国を滅びの危機に追いやった。何か申し開きはあるか?」


「私の祈りはちゃんと守護竜に届いてました。私は嘘なんてついて居ません!」


 開口一番、ティアナがヒステリックに叫びます。

 もはや猫を被る余裕すら無いようでした。



「ああ、たしかにそなたの祈りは我に届いていたな」

「ですよね!」


「面倒だ。なぜ私がこんなことをしないといけないのか――そんな不満もすべて筒抜けだったな。次第に頻度も減っていった。……心地よい祈りはすべて、イリス嬢のものだったな」


 懐かしそうに口にするアルペジオ。

 ティアナとしても、まさか守護竜本人が出てくるとは、思ってもみなかったのでしょう。

 本人からそう言われては、ぐうの音も出ないようです。



「それなのに、生贄となる役目はイリス嬢に押しつけて、自分は聖女の恩恵を享受し続けようとは……よくもそのようなことが出来たものだな!」


 怒りで燃えるような瞳で、アルペジオはティアナを睨みつけました。

 怯えからでしょうか。

 ティアナは小さくなって震えていました。


「では聖女であるティアナだけが、守護竜と対話が出来るというのも……」

「もちろん嘘だ。我は祈りに言葉を返すことなど出来ん」


 国王陛下の質問に、呆れたように答えるアルペジオ。

 これまでの言葉がすべて嘘だったことが分かり、ティアナは真っ青になっていました。


 守護竜本人がここに居るのです。

 もはや言い訳のしようも無いようです。



 そんなやり取りを重々しく国王陛下は聞いていましたが、


「ふむ、申し開きも無いようだな。嘘を騙り、国に混乱をもたらした――ダメーナ子爵家からは貴族位を取り上げることとする!」


 そう宣言しました。


「そ、そんな――。私たちは知らなかっただけです!」

「ダメーナ家は、この国に変わらぬ忠誠を誓っております。どうかお考え直し下さい!」


 呆然とするティアナは言葉を発することすらありませんでした。

 一方の両親は、みっともなく国王陛下に縋り付きますが、一蹴されてしまいました。


 生まれ育った実家が取り潰しになろうというのに、私の心は驚くほど凪いでいました。

 とうの昔にあそこは、私の居場所では無くなっていたからでしょうか。

 アルペジオ様と暮らすあの家が、今の私の居場所なのです。



「ティアナ・ダメーナ。貴様は今回の混乱のすべての元凶だ。よって極刑とする」


 さらに国王陛下は、そう言葉を続けました。



「そんな! なんで私が処刑されなきゃならないのよ。元はと言えば、お姉さまが生贄として役目を果たさないのが、悪いんじゃない! この役立たず!」

「……それが、そなたの本性か」


 ティアナは、表情を取り繕うことすら忘れて、ヒステリックに叫びました。

 自分を中心に世界は回っていると、上手くいかぬものを片っ端から呪うような醜い叫び。

 それは耳を塞ぎたくなるような罵倒――それでも私は目を逸しませんでした。


「さようなら、ティアナ」


 私の隣には、私を認めてくれたアルペジオが居ます。

 もうティアナの罵倒は、私の心をなんら揺るがす事はないのです

 



「連れていけ!」


 ティアナは尚も、何かを叫んでいましたが、この場に耳を貸すものは居ませんでした。

 国王陛下の命を受けた衛兵がやって来て、ティアナは牢に連れて行かれたのでした。

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