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10.守護竜の心

※ 9話、間違えたエピソードを投稿してしまっていたため、修正しております(9.「嬉しい」という言葉だけで前向きになれます)

※ 未読の方はお手数ですが前エピソードからお読みいただけると幸いです

 いつの間にか、ラフィーネとの通信は途絶えていました。


 大地を揺るがさんばかりの守護竜の怒り。

 王宮で発生した混乱も、ラフィーネとの通信で容易に想像できました。


「……済まない。ときどき呪いのようにイリス嬢への悪口が届くのが、あまりに不愉快だったんだ」

「私の妹が、とんだご迷惑を――。どうしてそのようなことをしたのか……」


 祈りは守護竜への感謝を伝えるものです。

 どのような理由があれ、人を呪う気持ちを届けるなど言語道断。



「だとしても感情で動いた挙句、肝心のイリス嬢を怯えさせるとは。こんなことでは国を守護する者として失格だな……」


 アルペジオは自嘲するように、そんなことを言いました。



「そんなことはありません。もともと聖女の祈りを対価に、人が一方的に恩恵を享受していたのです。その祈りが未熟なら、お怒りになるのも当然のことです」

「そうか……」


 私がそう口にしても、アルペジオの表情は晴れませんでした。


 守護竜はすべての人間から敬われ、時には恐れられるような存在。

 しかし私には、アルペジオがそのような遠い存在には思えませんでした。


「……それに、私は嬉しかったですよ? アルペジオ様が、私のために怒ってくださったこと。恐ろしいなんて思いません」


 もっとも、これは私の個人的な感情です。

 アルペジオにとって、何の慰めにもならないだろうと思っていましたが、


「そうか――それなら良かった」


 彼は安堵したように、そう呟きました。

 それからアルペジオは傍に居た私を、そっと抱き寄せました。


「あ、あの。アルペジオ様?」


 ここからでは、彼の表情は見えません。

 それでも彼の暖かさと息遣いを感じ、私は頬が熱くなってしまいます。



「まさか我の方が、励まされようとはな……」

「す、すみません。生意気なことを言ってしまって!」


 慌てる私を見て、アルペジオはくすくすと笑います。



「いつからだろうな。祈りの主に興味を持ってしまったのは――」


 何も変わらない対価として届くだけの祈り。

 誰からの祈りかなど、気にしたこともなかったと彼は言う。

 人間と守護竜の契約でしかなく、それで構わなかったのだと。



「なのに、いつの間にか日々の楽しみになってしまったんだ。

 聖女でもないたったひとりの祈りが。

 いつしかその祈りの主が、特別な存在になってしまった」


 懐かしむように口にするアルペジオ。



「だからこそ、屋敷での扱いを知った時は、怒りが抑えきれなかった。

 気持ちの籠らない『聖女』の祈りは、心に響かなかった」

「アルペジオ様……」


 私の祈りが特別なもの?

 いまいち現実感を欠いた言葉に聞こえましたが、それでも目の前にいるアルペジオの体温は本物でした。

 


「どうかこれまでの分も、幸せになって欲しい。我の願いはそれだけだ」


 その言葉からは、確かな真心を感じました。

 アルペジオが私を大切に思っていることは、疑いようもありません。



「私の祈りで喜んでくださるなら、それが私の幸せです」


 ――最初にきたのは、驚き? 喜び?

 なんだか心がふわふわと浮つきました。

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