表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

【第3話】昔の悪夢

ここは……ラフェド様のお家でしょうか?

だとすれば、夢……ですね。


「なぁ、愛里」

「ラ、フェド……?」

耳まで真っ赤にするラフェド様。それと……もう一人の女性?

あっ……思い出した。私は、この光景を『知っている』


「髪に、埃がついているぞ」

なんで。


「取ってあげるから、じっとして?」

待って。


「目を、瞑って?」

やめて。


“ちゅっ”

やめてってば!


「俺の愛里になってくれないか?」

駄目!


「愛里でいいのなら……喜んでっ!」

「あぁ、でも、愛里は自分の名前呼びをやめてくれないか……?」

聞きたくないの!


「どうして?」

知りたくないから!


「俺が……愛里を世界で一番愛していて、独り占めしたいからだ。愛里が『愛里』って自分のことを言って、惚れられる男もいると思うから」

婚約者は私です!


「ラフェド……?」

偽りの涙を流さないでよ!


「私も、大好きっ!」

ぎゅっと二人で抱き合っている時のラフェド様の顔は、私といる時よりもまるで楽しそうだった。二人を止めたかった。でも、止めて、ラフェド様に嫌われたくなかった……!


言い訳なのはわかっているし、自業自得だ。私がその光景を見たのは……十歳だったっけかな?


私は、それ以来、前世の人格が蘇っちゃったんだっけ。




□□□□□




「……エラ様っ!」

誰かの声?


「ミカエラ様っ!」

リ、リー、リーン……。


「ごめんなさい、寝坊してしまいましたか?」

この世界に時計はないから、時間経過軸がわからない。昼と夜はあるのに。


「いいえ、その……魘されてましたから」

彼が控えめに言うのだから、『アレ』は相当私の心に残っているのでしょうね。


「少し、悪夢を見ていました。ですが、もう大丈夫です!」

「……そうですか」

きっと、大丈夫。少し心残りはあるけれど、多分大丈夫。


「私でよければ、ミーラ様のご相談に乗りますから」

「平気よ! それに、リ、リーンも呼び捨てでどうぞ?」


「ですが、淑女に失礼……っ!」

「いいえ、私が許しているんですし」

遠慮がちにリ、リーンは私の名を呼ぶ。


「ミカエラ……?」

一発で呼び捨てに名前を言われてしまったのは悔しいけれど、彼に呼ばれる名前は何か嬉しかった。何か、とても暖かいものがある気がして。


「で、悪夢……というのは?」

「リー、リーンに話すほどのものではないでしょうし……」


「私は、無理強いはしません。今、ミカエラは辛そうな顔をされていますし」

「……え?」

そんなに顔色が悪いなんてと鏡の前に行こうとすると、リー、リーンに止められた。


「ですが、私はミカエラの味方です」

「リー、リーン……?」

ははっと笑うリーンに私は躊躇う。ミーラ様の従者だからと、そこまでしてくださる理由がわからない。


「今、私の名前を言えないミカエラの、味方です」

リー、リーンは私に優しすぎる。


優しい微笑みが、きっと。私の光は、また奪われる。

私は争っても悪役なのに。


「優し……すぎますよ…?」

涙を流してしまった。もう、最悪だ。


彼は、なんだか可笑しそうに笑っている。なんなんだ、この人は。フラれたばかりの傷薬なのでしょうか?

「では、ミカエラの気が良くなるまで、、お嬢様のお話させていただいてもよろしいですか?」

知りたかったので、私はコクンと頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ