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【第2話】シスコン、ダイヤ様

「あの、ミーラ様。私達はまずどこへ向かっているのですか?」

取り敢えず、多分ミーラ様のお父様のリーグル陛下の所なのだろうが、聞いてみる。


「休憩混じりに、ダイヤお兄様の所へ行くわ」

ミーラ様のお兄様の名を呼び、目と眉を潜めるミーラ様。あまりミーラ様は好意的に思っていないのかもしれないが、前世も今世も、お兄ちゃんという存在に憧れていた私にとっては、凄く気になる存在ではある。


「うふふ、お兄様ですか。羨ましいです」

やはり、ちっちっちとミーラ様がそれは違うと言わんばかりに言う。

「そんな良い存在じゃないわよ、特にダイヤお兄様ときたら!」


彼女曰く、お兄様のダイヤ様は顔が整っているにも関わらず、二十歳になっても婚約者を作らないくせ者で、リーグル帝国で教師をされている。

女性への気配りが上手でモテるのになぜ結婚しないとリーグル陛下もお困りなのだとか。


「とにかく、兄は顔だけなのですわ」

「でも、裏を返せば一途なのではないですか?」

「ふふふ、兄を賞賛できるのも今のうちですわ」

またも目に光が宿っていない。ミーラ様は心に闇を抱えていそう。


「着きましたよ、ミーラ様。ミカエラ様」

リーン様の声が響く。やはり、良い声。個人的にめちゃくちゃ好き。


「リーン、ありがとう」

「リーン様、ありがとうございます」

「あははっ、礼儀がしっかりしていて偉いね、ミカエラ様」


「子ども扱いですか? 私はこれでも十六歳なのですよ? 子どもじゃないこと、証明してあげましょうか?」

冗談混じりにそんなことを言うと、

「私の方が十九歳と年上なので、年上の余裕を見せてあげましょうか?」

「っっっ!?///」

と、色気をたっぷり含んだ言葉が返されたので、リーン様に絶対にこんな冗談を言うのはやめようと思う。


「お、ミーラじゃないか! と、あとは……?」

「私の友達、ミカエラ様です。あと、ダイヤお兄様、なんですか! そのふしだらな格好は!」

ミーラ様が指摘したダイヤ・リーグル様はお風呂上がりだったようで、白いシャツが水で少し透け、鍛えられた細マッチョがうっすら見えており、シャツのボタンを3つ程外されていた。その上髪がオールバックで、凄くアレなワンシーンのように見える。


「ふぁっ……」

今世で使用済みのピンクのアレなど一応少しだけ触れてはきたが、全体的に触れてこなかった私には少し過激で、神々しく見えるダイヤ・リーグル様に対し、間抜けな「ふぁっ……」という回答しかできなかった私とはなんなのでしょう。


「さっさと着替えて来てくださるかしら? ダイヤお兄様。その格好は破廉恥よ、まさに王族の恥だわ」

「そこまで言わなくても良いだろう? ミーラは恥ずかしがり屋だなぁ」

「この状況でそんなことを言えるお兄様のお頭……ふっ、お察ししますわ」

「な、なんだ? その可哀想なものを見るような目は!」

あ、兄妹喧嘩が始まってしまった……喧嘩するほど仲が良いのだろうな、とほっこりしてしまう。




□□□□□




ミーラ様がお淑やかに就寝する中、眠れない私は少し外に出る。その時、

「ミカエラ……様?」

暗いせいで顔は見えないが、恐らくダイヤ・リーグル様だろう。

「はい、名前のままで良いですよ。苗字のミシェルドって何か腑に落ちないので」

実はお兄ちゃんに名前呼びさいという野望があるだなんて口が裂けても言えない。


「あの、ミーラのことだけど」

「ミーラ様がどうかされたのですか?」


ダイヤ・リーグル様はふふっと笑う。笑い方まで似ているのか、血筋って凄い。

「昔から勘違いされやすいんだ、ミーラは。だから、ミーラの友達として、ミーラと仲良くしてやってくれ」

と言われ、私はキョトンとしてしまう。


「……勿論ですよ? ミーラ様は私の大切な友達ですから。ダイヤ・リーグル様は妹に対して優しいお兄様なのですね!」

やはりシスコンなのではないか、ダイヤ・リーグル様。仲が良い兄妹と確認できたことが嬉しくてついニコニコしてしまう。


「そうか、ミカエラ様はミーラのこと、大切な友達と思ってくれているのか。それはミーラの兄としてとても嬉しいよ。それから……」

「それから……?」


「ダイヤと気軽に呼んでくれ。ミーラの大切なお友達とは堅苦しいのは嫌だし」

「わかりました、ダイヤ様、そう呼ばせていただきます」


本当のお兄ちゃんみたいな振る舞いに、私は感嘆したくなるのを我慢する。しかもイケメン。理想の兄そのものすぎて、例えダイヤ様が結婚してなくても、ミーラ様が羨ましいと思えてしまう。高スペックな兄なんて、誰もが一度は憧れる。


「ダイヤって、呼び捨てでも良いけど……」

「流石にそれは……っ!私男性を名前呼びとか、(前世も今世も)したことないのです、それに、未婚の男性を呼び捨てで呼んでしまったら、勘違いされてしまう可能性もありますので……」

「ふふっ、後者は構わないが……それは残念だ」

ダイヤ様、残念だなんて私には勿体無いお言葉です……。それに、後者は構わないという発言は、私以外の女性なら勘違いしてしまいますよ。


「ダイヤ様、ミカエラ様。そろそろ就寝された方が良いかと」

う、うわっ! この凄く良い声は!

「びっ、びっくりした〜。リーンか。驚かすなよ」

「お嬢様もぐっすりで、『パンケーキ、もうたべられないよぅ』と仰ってましたよ」

ミーラ様の好きな食べ物はパンケーキなようで、それを知れて嬉しい……。あと、どんな夢を見ているのだろう、ミーラ様。


「そうだな、もう寝るか。また明日な、ミカエラ様」

「はい、それではお暇致します」

ダイヤ様は左に、私とリーン様は右に曲がる。


「それでは私は見張りを致しますので……」

「え、リーン様、相当お疲れのようですが……」

この後に及んで見張り……?リーン様は多分もうクッタクタだと思う。

「従者たるもの、見張ってなんぼですから」

「わ、私でお手伝いできることありましたら、教えてください」

流石に手伝わないわけにもいかないし、荷物運びとかなら鍛えられた腕で手伝える。それよりも重いいろいろな力仕事が出来そう。


「そうですね……」

「はい、なんでしょうか?」

「リーンとお呼びください、あと……」

「今度の馬車で膝枕してください」

リーン様の声が耳に囁き、思わず昇天しかける。

「えっ?そんなことでよろしいのですか?」

男性の名前を様つけや君付けなしで言うのは初めてだけれど……。それプラス膝枕とは……クッタクタの方が明らかに天秤にかけても重く、腑に落ちない。


「はい、それが今一番嬉しいことです」

「わ、わかりました、リ、リ、リー、リーン……」

「あははっ、嬉しいです」

は、恥ずかしい。穴があったら入りたい。


「そ、それでは失礼します! リ、リー、リーン」

「はい、おやすみなさいませ」

もう、何も考えずに寝ることにしよう。流石にこれは失態をさらし過ぎる!

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