フォレストホテル正門前
「とんでもないものを引きあててくれたな」
フォレストホテルの正門前へ到着した二宮ら広域捜査官四名は、現場の状況を目にするなり、銃を抜いて臨戦態勢に入った。
おおよその話は柏樹から電話で聞いていたが、惨状は想像を超え、建物のほうからは銃声と思われる轟音が鳴り響いている。
「推理ショーを開くんじゃなかったのか?」
嫌味をこめて二宮が問うと、トラックにもたれ掛かっていた柏樹は苦笑して返した。
「勘弁してくださいよ」
「ここにいる連中と、きみのところのアシスタントは、どういった関係なんだ?」
「板野さんの元彼が……失礼。一度顔をあわせているので、板野さんのことはわかりますよね。彼女の元彼が、なんらかのかたちで関与しているようでして、その元彼から話を聞こうと考えて、板野さんがここへきたのは間違いなさそうです」仏頂面で柏樹は答える。
「元彼の名前は」
「松坂涼。植物の松に、坂道の坂。涼は、さんずいに京です。涼しいの涼」
「すぐに調べさせよう」
二宮はほかの捜査官を呼び寄せ、二、三こと言葉をかわしたのちに、柏樹へと向き直った。
「中にいるのは何人だ?」
「ハッキリした数はわかりませんが、〈TABLE〉の者が一名と、僕のアシスタント三名が入っているはずです」
「ほかには?」
「銃をもった連中が何者であって、何人いるのか、そのあたりのことはまったく」
「……わかった。きみは車内に避難しろ。詳しい話はツカハラが聞く。ツカハラ、彼を車の中に。小林も残って保護し、応援要請を頼む。谷沢はわたしと敷地内へ」
二宮の指示を受け、捜査官が散り散りに動きだす。
細い銀縁眼鏡をかけた男性捜査官が、柏樹を車の後部座席へと案内した。
荷台の扉を開いた別の捜査官は、黒い防弾チョッキをふたつ取りだし、ひとつは自分が着て、もうひとつは二宮に手渡した。
「危険と判断した場合は迷わずに撃て」
二宮はそういうと、防弾チョッキを着た捜査官とともに敷地内へ向けて駆けだした。
柏樹は深い溜め息をつき、捜査官らが乗ってきた車の後部座席に腰をおろして、洟をすすりながら建物を見つめた。
銃声が、いまはやんでいる。
その静けさが逆に恐ろしく感じられ、柏樹は身体の震えをとめるべく、腕を組んでシートに身体を預けた。




