黄(ファン)13
それ以前――おれがこの仕事に就く前に穴掘りや草抜きやグール監視を担当しとった男は、薄汚い中年ジジイで、さらには同性愛者やったと聞く。そいつは一緒に仕事をしとったシンタロウとかいう名前の若い男をスタンガンで脅して、盗んだ車で一緒にどこかへ逃走したらしい。っていうか、連れ去ったそうや。閉鎖されとる九州に他所への出口なんてあらへんし、ガソリンスタンドかて全部使いモノにならんのやから、戻ってくるか、路上でくたばるかしか道はないのに、なにを考えとるんか理解できん。そんとき、現場に居合わせたカンバヤシの話によると、イカれたオッサンは、シンタロウと二人っきりの楽園を築きたくて逃走した――シンタロウはいまごろ、どっかの柱に縛りつけられてオッサンに愛でられ、愛でられ愛でられ愛でられまくって号泣しとるに違いない、と笑いながらいうとった。ほんま虫酸が走る。イカれとるんや、ここにおる連中は。皆が皆、揃いも揃ってイカれた連中ばっかりや。そんな中で平静を保とうなんて無理な話やろ。与えられた仕事もイカれとる。真面目にやっとったら発狂してまうわ。自分自身を失わんためには、一緒になってヘラヘラ笑って、頭ん中空っぽにしてアホになるのが一番や。見ても見んふり、聞いても聞こえんふり。なんも悩まず、なんも考えず、なんも知らん。おれは知らん。おれは関係ないて思うとらんとやっていけへん。穴掘って、愚痴こぼして、草抜いて、愚痴こぼして、防護服着せられて、愚痴こぼして、監視を命じられて、しんどいわ眠いわ同じ姿勢きっついわァて愚痴こぼしとけば、それでええねん。ええはずなのに、なんで。なんでや。なんでこんな雑念ばっかし。おれは余計なことばっか考えてしもうとるんや。
「雨、降りそうです」とウディ。
降ったら泣くで、ほんまに。




