表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/93

白石 10

「レアものの点数は多くないが、個人所有にしては結構な数だよな。これだけの数を集めるのに、どのくらいかかったんだ?」

 ケースからだしたウルトラ怪獣、ジラースの襟巻きを弄りながら、荒木が尋ねた。

「子供のころから集めていたよ」と、峰岸氏。

 値段の話かと思ったが、収集にかかった時間についてらしい。

「見たところ、平成以降のシリーズは対象外のようだが。それってなにかしらの理由があるのか」

「いや。とくに理由なんてないよ」

「あ、そう」素っ気なく返して、ケースへ目を向ける。「平成以降にデザインされたウルトラ怪獣って装飾しすぎているものが多いから、おれは苦手だよ。だからおれも収集するなら昔のものかな。セブンに登場した宇宙人とか、デザイン的に秀逸だもんな」

「詳しいようだね」

「そりゃあな。長いことこの仕事に就いていると、詳しくなるさ。あんた、あれだろ? 造形デザインからハマってフィギュア収集をはじめた口だろ。ウルトラシリーズなのに、怪獣ばっかりだもんな。集めているのって」

「よくわかっているじゃないか」

「似たり寄ったりのウルトラ兄弟じゃ、デザイン的に萌えないってわけだ」

「萌えるかどうかは別として……まぁ、そうだな。ウルトラマンもウルトラマンセブンも、わたしにしてみればさほど違いのない、似たようなものかもしれないな」


「――!」


 ぼくは作業していた手をとめて、荒木へ目を向けた。

 荒木も見つめ返してきた。しかしすぐに視線をそらされた。間違いなく荒木も気づいたはずである。峰岸氏の――いや〝峰岸氏の名を騙っている〟この男が犯してしまった過ちに気がついたはずだ。

 話がスムーズに進みすぎていると思ったら、まさかこんな落とし穴が用意されていたとは。

 …………。

 まずい。

 非常にまずい状態に陥っている。

 必死に頭を働かせてみるけれども、峰岸氏が嘘をついた理由や目的がわからない。これまでに起こった事柄を最初から整理してみる必要がありそうだが、思考するほどに不安が増していく。


 ぼくは平静を装って詰めこみ作業を再開した。

 峰岸氏の名を騙った男の表情を窺いつつ、これからどうすべきか頭を働かせる。

 さぁ――どうする? どうしよう。

 どうすべきか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ