久々の共闘
アリアさんの鎖も、ポロンくんが解いた。確かめるようにアリアさんは手を動かし、はぁっとため息をついた。
「やられたな……。ありがとうポロン、ウタ。助かったよ」
「べーつにー! おいらは、アリア姉の仲間だし、フローラとは友達だもんな!」
「えっ? あ……と、友達?」
「あれ? 嫌だった?」
すると、フローラは一生懸命頭をブンブンと振り、僕らに訴える。
「い、嫌じゃない! 全然いやじゃない!」
「そっか! よかった!」
「……で、だ。ウタ、ポロン。話がある」
急にアリアさんが改まったようにいう。
「……ここにいる人数、少ないと思わないか?」
言われて、改めてぐるりと周りを見渡す。……確かに。この部屋には30人弱しかいない。いくら小さな街の南端だって、もう少し人がいてもいいはずだ。
「実は、他にもこういう部屋があるみたいなんだ。いくつあるのかも分からないが、私たちをさらったやつが、『一つ目の部屋』と言っていたような気がする。
一つ目、ということは、二つ目以降もあるんだろう」
「なるほど……じゃあ、これからその部屋を探して」
「待ってください! 部屋がいくつあるのかも分からないのに、探すんですか? もしかしたら、すごくたくさんあるのかもしれない」
フローラが冷静にそういう。うーん、確かに。むやみやたらに突っ込むのは無理があるし、危険だ。なら、どうすればいいんだろう……?
「それで、テラーがいってたことを思い出したんだ。メヌマニエは、幻覚のスキルを持った魔物だってことをな」
僕はうなずく。ポロンくんも、フローラも知っていたのか、うなずいた。
「信者たちがメヌマニエを信仰しているのは、その幻覚のスキルが効いているからだろう。つまり、メヌマニエさえ倒せればどうにかなる。ここはテラーに助けを求めて……」
「そうですね……でも、あんまり時間がないかも」
「どういうことだ? まだ女性たちは無事なんだし、急いでいけば夜明けには間に合うだろ?」
あぁ、そっか。アリアさんたちは儀式や、あのあと街でなにがあったのか知らないんだ。
「実は、今日はメヌマニエ教で儀式が行われるらしくて。その儀式が行われるのは、真夜中。つまり、夜明け前じゃ遅いんです。
それに……アリアさんたちがさらわれたあと、メヌマニエ教の襲撃があったんです。テラーさんが対応してくれたんですけど、MPを封じられて、HPを使ったんです。しかも、回復魔法効かないらしくて」
「追いかけるって言ってたけど、まだ来てねーもんな。半分以上使ってたみてーだし、間に合わねーかも……。
だから、おいらたちで行くしかねーんじゃないかな?」
僕が言おうとしていたことを、ポロンくんがいう。アリアさんならすぐに承諾してくれるかと思ったのだけれど……。
「……でも…………」
アリアさんの視線が泳ぐ。その先にいたのは、フローラだった。僕やポロンくんとは違い、ほぼ戦いの経験のないフローラ。フローラを危険にさらし、戦わせることに、あまり気が進まないようだった。
「……アリアさん、私なら、大丈夫ですよ」
そんなアリアさんを見て、フローラがいう。
「でも、お前は……」
「大丈夫です。私は……だって、言ってくれたじゃないですか。大丈夫だって。私はアリアさんを信じます」
……部屋で、なにか話したんだろうなぁ。そんなことを思いながら、僕は視線をそらす。僕らが入ってきた扉の向かいにある、大きな扉。鍵はかかっていなそうだが、とても重たそうだ。
「……先に、進みますか?」
僕が三人を見ると、真っ先にフローラが返事をした。
「はいっ! 進みましょう。私は行けます」
「おいらもいけるよ!」
「……アリアさん、」
「…………仕方ないな。行くか!」
三人の返事を聞いて、僕は扉を開け放つ。中は暗く、視界が悪かった。『暗視』を持っている僕やポロンくんでも、だ。
「…………」
「大丈夫か?」
「大丈夫です! ……絶対、大丈夫なんだから」
そして全員が中に入ると、両脇に並んだランプに火が灯る。
「…………これ……」
ポロンくんの口からそれだけこぼれ、絶句する。
部屋の中は、魔物でいっぱいだった。
種類も様々で、ゴブリンやオークなんてのから、小柄なキマイラまでいる。
「……どちらにしても、やるしかないか! いけるよな!」
「あぁ……。シャインっ!」
アリアさんが光魔法を放つ。凄まじい光が溢れ、魔物の勢いが弱まる。
僕は、剣と魔法で応戦しながら、フローラの様子を見る。……ポロンくんと同じ土魔法、アリアさんと同じ光魔法、そして、誰も持っていない闇魔法……それらを使いこなし、一体ずつ着実に、敵を仕留める。
これなら問題ない。そう思った瞬間だった。何体もの魔物が一斉にフローラを襲ったのだった。いち早く気づいたアリアさんが咄嗟にフローラの前に入り、身を挺してフローラを守る。
「っ……」
「アリアさん……!」
「フローラ! 避け――」
魔物が再び二人に襲いかかる。と、次の瞬間、二人に向かっていた魔物が光になって消え去った。
「…………ふぅ。間に合った」
声の方へ振り替えると、そこにいたのは、テラーさんだった。ほっと胸を撫で下ろしたようなテラーさんは、アリアさんに近づき、回復魔法を使う。
「て、テラー?」
「テラーさん! MP、使えるようになったんですか!? あと、HPは回復したんですか!?」
アリアさんたちの方へかけより、僕はテラーさんにそう言い寄る。
「MPは使えるようになったけど、HPは五分の一しかないよ」
「さらっと言ったけど、結構ヤバめですね!?」
「おいっ! なにのんきに話してんだよ!」
ポロンくんの声が聞こえる。見ると、再び魔物が僕らに襲いかかる。が、テラーさんの表情は余裕だった。
「大丈夫大丈夫。――助っ人は一人じゃないから」
テラーさんが言うやいなや、魔物の体が、真横に一刀両断される。そして、光となって消えた、その向こうに立っていたのは、少し古風なシルエットだった。
「よっ!」
「あ、あなたは……!」
そう、あの侍さんだ。持ち手に、赤と黒の装飾が施された刀を握りしめ、左手をひらひらと振っていた。
「全くもー、人使いが荒いんだからさー、テラーは」
「いいじゃないですかー、久々の共闘ですよ?」
「まーねー。っしゃ、ちょっくら暴れますか!
ってことで……陰陽進退替技っ!」
侍さんが刀を振るう、すると、侍さんがいる場所から次のドアに向かって道でも出来るかのように、魔物が一気に消え去る。
……えぇー、めっちゃ強いじゃないですかあなた。
「ここは任せなさい! これくらいの数ならちょちょいのちょいだぜ!」
……もう、あんまり考えてもダメな気がしてきた。
「三人とも! 行こう!」
「おう!」
「が、頑張ります!」
「……ありがとう、二人とも」
僕らは、扉へ向かって駆ける。
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「いやー、ひっさしぶりだねー、共闘するの」
刀を振るいながら一人がいうと、もう一人が答える。
「本当にね。ってか、まだ名前すら教えてなかったんだな」
「その方が謎の人物感増してよくね? ……ま、とにかく、今はこいつらを殲滅しましょうぜテラーさんよ」
そう言いながら刀を構え直す彼女に、もう一人は言葉を返す。
「そーね……。殺るか!」




