千里眼
「……大丈夫か?」
「大丈夫です……大丈夫じゃないけど、大丈夫です」
「それだいじょばないよな」
朝から僕の顔色が悪いのか、アリアさんに心配されっぱなしだ。しかし、決して言わないが、察してほしい。そもそもの原因がアリアさんだということに。
「まぁ、それはともかくだ。今日はあれをお願いするんだから、体調は整えておけよ」
「はーい……」
……ん? あれって何かって? そりゃもちろん、あれのことだよ。
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「よし、じゃあ頼むぞ」
「いいよー! お代はチョコレートー!」
「チョコ、いっぱい買ってきました!」
「よかろうー! じゃあ、やるねー!」
お代はチョコレート……もちろん、宿泊代のことじゃない。そっちはそっちでちゃんと払った。まぁ、もう一泊するんだけど。……その前にアイマスクとかほしい。あと耳栓。
ってまぁ、とにかく今はそれではないのだ。
アイリーンさんにお願いしているのは、『千里眼』だ。これで、ある人と場所を見つけてもらう。
ディランさんやもう一つの『勇気』のことについても知りたかったけど、そちらに関しては『いくらチョコレート積まれてもやらないよー』とのことだったので諦めた。自分達で頑張れよ的なことなのだろうか?
「んーーーーーー……あ! みーつけた!」
「分かったんですか!?」
「うん! ちょっと待ってねー、地図持ってくるからー!」
その後、地図に印をつけてもらい、僕らはギルドへ向かった。ラミリエの外に出る必要があるので、ついでに依頼でも受けようかと思ったのだ。
「……あ! アリアさん! 薬草採取の依頼がありますよ! しかも二つ! 量は多そうですけど、報酬は金貨三枚ですって!」
「嬉しそうだなー、お前」
「だってこれなら泣かないで済むじゃないですか! すみませーん! この依頼なんですけどー!」
「……ったく、少しはなれないと、自分の身が危ないぞ」
二人それぞれ依頼をとったあとは、身分証を提示し、急ぎ足でラミリエの外に出る。木々が多く、視界は良くないのだが、だからこそ、納得もいく。
地図を頼りに、しばらく奥の方へ歩いていくと、僕らが探していた人が木の根もとに座り込んでいた。アリアさんと目配せして回り込む。
「……よっ!」
「うわぁぁ?! な、なんだよ! まだ何か用かよ!」
「まだって、話し終わる前に逃げたのはポロンくんじゃ……」
「うっ……そ、そりゃ、捕まる前に逃げるのが盗賊の鉄則だろ!?」
「捕まってたけどね」
「そうだな」
「う、うるさいうるさいうるさい! おいらはお前らと話なんてしたくないやい!」
そうして駆け出しそうになったポロンくんの腕を、僕とアリアさんが掴む。
「まぁまぁまぁまぁ」
「まぁまぁまぁまぁ」
「ぷるぷるぷるぷる」
「なんだよ気持ち悪いな! 離しやがれ!」
「……まぁまぁまぁまぁ」
「まぁまぁまぁまぁ」
「ぷるぷるぷるぷる」
「ちゃんとした言葉を話せぇぇぇ!!!」
まぁ、もうお分かりだとは思うが、僕らが探してもらった『人』とはポロンくんのことであった。アイリーンさんいわく、『あんまり食べてないみたいだから、少しくらい時間がたっても遠くに行かないだろうしー、逃げ足も遅いと思うよー』だそうだ。
全くもってその通り。アイリーンさんにこの場所を聞いたのは1時間ほども前だが、印の場所からほとんど離れていない。そして逃げ足も、前より遅い。……口だけは元気だが。
「くっそぉ……また捕まったぁ。今度はどこ行く気だよ! 先に説明しやがれー!」
「薬草採りながら、ラミリエに。なー!」
「なー!」
「ぷるー!」
「答えになってるようでなってないような!? ってか! ラミリエって、おいらのこと突き出すのか!?
というか薬草採りながらって、なんだよそのビミョーな感じ! 連行するならもっとちゃんと連行しろー!」
「レンコン?」
「れ・ん・こ・う!」
「……れんこーん! れんこーん! れんこーん!」
「うっそだろ!? って、腕掴んだまま行進的なのするのやめろ!
……お、おい! お前こいつの変な言動やめさせろよ!」
「…………ポロン、」
「な……なんだよ…………。まさか!?」
「れんこーん! れんこーん! れんこーん!」
「お前もかあ!!!」
「っとまぁ、冗談はさておき」
「今の冗談ですまされると思ってるの!?」
「さっさと行くか、ウタ。鑑定は任せたぞ」
「了解でーす!」
「ちょ! 腕掴んだまま歩くな! そしておいらはまだ許してないぞ! とりあえず10個くらい突っ込ませろーーー!!!」
「まぁまぁまぁまぁ」
「まぁまぁまぁまぁ」
「ぷるぷるぷるぷる」
「何これ! 永遠ループって怖くね!?」
騒ぎ立てるポロンくんをあやしながら、薬草を採っては鑑定しを続けながら、僕らはラミリエへ戻っていった。お! ノルマ達成、やったね!
そして、街への入り口が見えると、ポロンくんが今までにないほどの抵抗をした。
「まっ、待てよ! おいらは捕まりたくねーんだ! 門番がいるんじゃ捕まって終わりだよ! 頼むから離してくれよ!」
「悪いがポロン、お前には色々聞きたいことがあるんだ。だから逃がすわけにはいかない」
「…………」
ムッとした様子のポロンくんに優しく微笑み、アリアさんは言う。
「だからまぁ、私に任せておけ」
「……は?」
そしてポロンくんの手を離し、門番に近づき、言った。
「こいつ、森の中で行き倒れてたんだ。身分証とかもなくしたらしくてな。私が必ず面倒見るから、入れてくれないか?」
「はっ! アリア様がそういうのであれば!」
「ありがとう」
手招きするアリアさんと、未だに腕を持ったままの僕を交互に見てポロンくんはポツリと言う。
「……どういうことだよ」




