座り心地はいかが?
四天王が倒れるのに、いったい何秒だったろうか。本当に一瞬。その一瞬で、全部終わってしまった。恐るべし個性の塊'sである。
……それにしても、だ。
「やっぱり、いくらか殺意高すぎません?」
「だって、見た目があいつとあいつとあいつだよ? うざいじゃん?」
「まぁ何となくイラっとしますけど……」
「ストレスを溜め込むのは良くないよ? ぶっとばそうよ!」
「テラーさんも、そういうの笑顔でいうのよくないと思います」
「まぁ、先、進もう?」
「ドロウさんそれでいいんですか?」
「チョコー!」
「今は本当に関係ない!」
どうしよう、こんな具合で魔王まで瞬殺だったら……。いや、瞬殺出来そうだな、このメンバー。
そんな事実に苦笑いしつつも、僕らは先に進んだ。四天王を倒したってなれば、やっぱり次に来るのは魔王だ。
……そんな僕の考察も間違ってたわけではないようで、しばらく進むと、『いかにも』って感じの魔方陣が書かれた扉を見つけた。
それを見たアリアさんが、こんなことを口にする。
「……ビアードか」
「ビアード?」
「闇属性で一番高度と言われている罠だな。こうやっておおっぴらに書けるのも、解除の方法がないからだ。
これに触れれば、一瞬にして体に毒が回って、5秒もしないで死に至る」
「そ、そんなに怖い罠なんですか……?」
「そうだな……」
「え、じゃあどうするの!? 先進めねーじゃん!」
と、そんな風に話すUnfinished。一方で、
「ビアードだね」
「ビアードだな」
「ビアードー!」
「ビアードかぁ」
「ビアード……よし!」
「「「「「壊そうか!」」」」」
「はぁっ?!」
「え、待って、え!? 壊すってどういうことですかぁ?!」
「ん? そのままの意味だけど?」
「なんなら私、ドラゴン呼ぶよ?」
「いやいやいや、でも触ったら毒が」
「そーんなへましないぜ!」
「ポイズネーションの方が威力強いし?」
「チョコ最強!」
そんな、当たり前になったけど当たり前じゃない塊'sの奇行に戸惑っていると、おさくさんが何か良い(悪い)ことを思いついた様子で、ジュノンさんに近づく。
「ジュノンジュノーン、ちょ、やりたいことあるんだけど、やっていい?」
「変なことじゃなければいいけど……」
いやジュノンさん、今までの行動で、あなたがそれを言える立場でないことは、僕ら、分かっているんですが。
「ほんと? じゃーやるわ! みんな危ないから離れててねー」
「え、おさくなにやるの?」
「まーまー、見てなって!」
魔方陣から僕らを遠ざけ、自らはその目の前に立ち、おさくさんは自分の両手を……右の、腰辺りに……? それで手の中にエネルギー玉のようなものを…………あれ?
「ま、まさかそれって!」
「いくぜー!
かーめーはーめー波ーーーーーっ!」
声に合わせて手を前に突き出すと、一気に力が放出され、魔方陣が砕け散る。
り、リアルなやつだ! リアルなかめはめ波! す、すっごい! これは男の子心くすぐりますなぁ……って、そうじゃない!
「著作権ーーー!!!」
「ふぅ……鳥山明さんの漫画、ドラゴンボールでの必殺技だよ! 知らない人はいないよな!」
「ちゃんと出展出した!」
「おさく遊びすぎでしょ」
「いいなー、私もやりたかったなー」
「魔法使いのかめはめ波はヤバイでしょ」
「そーかなー」
「……ウタ」
「深く聞いちゃダメですアリアさん」
「奇遇だな、私もそれを言おうと思っていたんだ」
扉もろともぶっ壊れたその先には、巨大な玉座がひとつだけぽつんと置いてあった。それを見た瞬間、塊'sのみなさんがジュノンさんを見る。
「ジュノン」
「査定を」
「お願いします」
「眠い」
「寝ないでアイリーン。……ま、折角だしね」
「査定……?」
すると、ジュノンさんは無言で、おもむろに玉座に近づくと……
「よっと」
「座ったぁ?!」
そのまま腰かけてしまった。え、いいの!? 魔王の椅子だよそれ!? しかも無駄に似合ってしまってる!この風格で「魔王じゃないよー怖くないよー」って言われても全く説得力がない!
「……あ」
「お?」
突然ジュノンさんが声をあげる。そして、何度か椅子の上でもふもふと跳ねたあと、大きくひとつ、ため息をついた。そして、
「座り心地、さらに悪っ!」
「だからお前は! 他人の椅子に勝手に座っておいて!」
「あ、魔王出てきた」
「あれが魔王なんですか!?」
「確かに魔王っぽい……?」
「ジュノンの方が魔王だな」
「俺が! 魔王! だ!」
「ここであったが四年目ー、ってことでさっさと終わらせようよー」
「アイリーンさん! やる気やる気!」
「ねーむーいぃー」
「というか椅子! 貴様らが座り心地悪い悪い言うから! 少ない征服資金の中から絞り出して新調したんだぞ! 格段に座り心地よくなってるはずだぞ!」
「えー、ごわごわしてるしー、固いしー、全然よくなってない。むしろマイナスだよ」
「うっ……」
しょんぼりする魔王さん。……なに、魔王ってこんな感じでいいの? こんなギャグみたいなやつでいいの? あ、もしかして最後のお助けキャラみたいな?
そんな風に思っていると、その人はおもむろに巨大な剣を取り出した。
「まぁいい。勇者たちよ! 今度こそは貴様らを倒してみせるぞ!」
あ、やっぱり魔王だったみたいです。
「まーたいってるね」
「ねぇ、座り心地わーるーいー」
「勇者よ、あのときのようにもう一度聞いてやろう。今俺の味方になれば、世界の半分をお前にやろう!」
うわっ、どっかで聞いたことある台詞! すると、座ったまま魔王を一瞥したジュノンさんが、はぁ、と、ため息をつき立ち上がり、ほんの少し微笑みながら魔王にいい放つ。
「だから、お前を倒して全世界を手に入れた方が早いだろ?」
……あっれ、この人勇者……あっれぇー?




