これがオミパってもんなのかぁ・・・
入り口で会費というものを払い、中に入っていくと
それなりに若い人達がワイワイしていた。
けれど、思ったよりもみんな単独行動に見えた。
「ねぇねぇ。みんな結構一人できているんだね。勇気あるなー」
「だって中には本気で結婚相手探している人もいるからね」
「まじで!そんな本気な人とカップルになったら悪いなぁ・・・」
「そう簡単にならないから。安心しな!」
軽く吐き捨てるように言われ、(ふ〜ん)と言う顔をして会場内を見渡した。
さっきの内田という人もやはりその中にいた。
そして友達とこっちを見ていた。
軽く手を振られ、慌てて小さく会釈した。
(なんだかなぁ・・・ あれってナンパかもなぁ・・・)
そんなことを思いながら、チラチラと他を見ていた。
(あ!きっとさっきカフェにいたのって内田さんって人も一緒だったんだ)
彼の後ろにさっき何度も目が合った人が、キョロキョロと辺りを見渡しているのが見えた。
だからさっき「何度も会いますね」って言ったのか〜。
会場に入った時に渡されたアンケート用紙を和江と真紀は必死に記入していた。
それを見ながら、
「ねぇ。これ全部書くの?すごい量だけどー」とちょっと面倒くさそうに言うと、
「それ書かないと始まらないの!相手に見せるんだから。それで決まるのよ?」と
手馴れた感じで真紀に言われた。
「ふ〜ん・・・・」
内容を見ると、身長・体重から趣味、好きな食べ物、休日の過ごし方、
年収、休み、家族構成、相手に求めるもの・・・etc
ビッシリと書く欄があり、見るだけで手が痛くなりそうだった。
「えーと、なんて書こうかなぁ・・・」
身長:162cm
体重:48kg・・・・ちょっとサバ読んじゃおうかな。ま、いっか!普通だよね。
趣味:ビデオ鑑賞
休日の過ごし方:友達とショッピング(ベタだなぁ・・・)
相手に求めるもの:話が合う。笑いのツボが同じ。一緒にいても楽なこと。
適当に書き進んでいると、アナウンスが入り係員のような人に誘導され
椅子に座らされた。
和江と真紀とは離れてしまったが、周りは一人で来ている人が多そうなので
あまり気にはならなかった。
ざっと見ると、男女共30人程度で合計60人くらいが会場の中に
いるような気がした。
「アンケート用紙の記入は終わりましたでしょうか。そろそろ始めたいと思います」
(えっ、もう?)キョロキョロしながら記入漏れが無いか慌てて
適当に埋めながらアナウンスを聞き流していた。
そのうち、目の前に座った人にいきなり用紙を渡された。
「は?」
「あの、、そっちのください」
慌てて手渡した。
ジックリと人の書いた紙を見ながら、こっちをジロジロと見るその人に
どうしていいのか分からず、愛想笑いをしながら相手の紙を見た。
(うわ。この人弁護士なんだ!てか年収すげー!けど、どうしてこんな所に
来てるんだろ?変な趣味とかあるのかも・・・
って、趣味が山登りって!うわー!絶対無理!誘われたら死ぬかも・・・)
そんなことを思いながらチラチラと相手の顔を見た。
「あの真羽さんはお子さんは何人欲しいとかってありますか?」
(いきなり子供って!)
そう思いながらも、そんな顔はできず、、
「あ、、、できれば2人くらいかな?」と答えた。適当だけど。
「そうですか。けどもうすぐ30歳なら急がないとダメですよね。
高齢になるといろいろ大変ですし・・・」
って!いきなり高齢とか言っちゃうこの人嫌い!
もう1枚渡された紙には、相手の番号と小さくメモをする所があり、
きっとこの話をする時の相手の印象などを忘れないように書きこむ為の
ものなんだろうと勝手に思い、相手の胸についている番号を確認し、
彼の番号の後ろに小さくコメントを書き込んだ。
(18番・弁護士。高齢って言った。超上から目線の為、絶対無理!)
顔は笑顔で・・・でも心の中は燃え滾る炎のようにイラつきながら
約3分、この失礼な弁護士との見合いを終えた。
「じゃ、また後でフリータイムの時にお話しましょうね」
「あ。ぜひ〜」
笑顔で弁護士は席を一つ隣に移ったが、
(絶対お前とは話すもんか!ばーか!)と思いながら次の人に頭を下げた。
キッチリとスーツを着こみ、人懐っこい笑顔で頭を下げるその次の人に
また用紙を貰い簡単にサラ〜と相手のことを見た。
普通のサラリーマンで年収も普通。
顔もスタイルも悪くない。趣味も映画鑑賞。
(あ、この人でもいいかもな〜)
そんなことを思いながら、笑顔でその人を見た。
「えーと。真羽さんて今、彼氏います?」
「いいえ?いませんよ」(いたらこんな所来ないだろって)
「前の彼氏っていつ別れたの?」
「もう2年くらい前かな?」
「その間って遊んでたりした?」
「は?それは・・・どんな意味で?」
すると顔を近づけて小声で周りに聞かれないように話しかけられた。
「いや、2年の間に、、、その、、、遊びでとかいた?」
「いた・・・とは」
「いや、ほら。その間ってずっと一人だったの?」
「まぁ・・・って友達はいましたけど」
(なにコイツ。バカにしてんの?)
「それ男?」
「ううん。女・・・って、男友達もいるけど、、、」
「それはどんな男友達?」
こいつは何を言いたいのだろう・・・
主語を言わない会話はなんだかイライラしてくる。
「真羽さんて堅いほう?」
「まぁ。それなりに」
「ならいいんだ。俺、軽くて頭の悪い子嫌いでさ。そっか」
うん。初対面でズケズケとそんなこと聞く頭の悪い男、私も大嫌い!
そう感じながら記入スペースにまたメモをした。
(17番。頭悪し。常識ねぇ〜)
それからも数人、それなりな普通の人と会話をしていった。
思ったよりも変な人はいなかったけれど、みんな真剣に
探しているんだなと感じた。
何番目かに座った人に下を向きながら用紙を渡すと、
紙も見ないですぐに話始めた。
「さっきカフェで一緒だったね」
「へ?」
顔を見ると、私がさっき一番好みだと思っていた内田さんの友達だった。
「あ、、はい!」
「お見合いパーティーの話してたから、もしかして同じ所かなって思って」
「だからなんだぁ〜。なんだかジロジロ見てるなって思ったの」
「うん。元気がね、、、あ、さっきの話しかけた奴がさ、アンタのこと気に入ったみたいでね」
「へぇ・・・・」
「あっちもずっと俺のこと見てるって言うから、「ないない!」って笑ってたんだ」
「うん、無い」
「うわ。アッサリだ」
「でもさっき付合いで来たから、なんならお互いのこと選ばない?って言ってた」
「嘘ばっかり。アイツが参加しようって言ったんだけど」
「そうなんだ?結婚相手探しに来ているの?」
「う〜ん。まぁ・・・俺は本当の付き合いだけど」
きっと彼は本当にそうだろうと感じた。
なんとなく女に不自由していない感じがするし、焦りが全然見えない。
そしてやっぱり近くで見た彼に私は見覚えがあったが、どうしても思い出せ無かった。
なんなく時間は過ぎてしまい、
「じゃ、また後で」と言われ隣の席に移って行った。
きっと彼は(内田のお気に入りだから譲るか〜)程度の
感じでしか、あたしのことを見ていなかったのだろうと感じた。
それを証明するように、あたしのアンケート用紙などほとんど見ていなかった。
それでもあのカフェで見かけた3人組の中で一番タイプだったのに、
こうもアッサリと興味が無い顔をされてちょっとガッカリだった。
本当は・・・あのカフェで私が見ていたのは彼だったのになぁ〜
それからまた数人、軽い感じで話をした。
だんだん馴れてきている自分を感じつつも一人一人笑顔で
「アナタに興味ありますよ〜」と言わんばかりの顔で対応した。
そんな所は我ながらシッカリしていると思っていた。
30人もの人と一気に話をするのは思ったよりも大変だった。
みんな同じ質問をし、同じようなことばかり話をしていた。
「ビデオ鑑賞ってどんなジャンルが好きなの?」とか
「休日はなにしているの?」とか・・・・
自分がボケ老人のように同じことを何度も言っているような気がして
だんだん面倒くさくなってきた。
けれど目の前の人はもしかして人生の伴侶を見つけにきているのかもしれない。
そしてもしかして、この中に自分の将来の結婚相手とかいるかも!
なーんて・・・ことはこれっぽっちも思わずに、淡々と数をこなしていった。
次の人になった時。
疲れがピークにきていたのもあり、前に座った人の顔を見ずに
まるで義務のようにアンケート用紙を渡し、相手のを受け取った。
「誰かお気に入りはいた?」
その声に顔をあげるとさっきの内田元気がいた。
「ん?まぁ・・・いたような。いないような・・・」
「俺も全然だな〜。やっぱ最終的に二人で食事ゲットしようよ」
いかにも「仕方無いよね〜」という感じの言い方をする彼に
「さっき折原さんだっけ?あの人から聞いたよ〜。あたし全然見てないから」
そう言って笑うと、ちょっとだけ顔をヒクつかせた。
「あ、いや。あいつの言う事なんか嘘ばっかだからさ!」
「ふ〜ん。誰がノリノリで参加したとかって教えてくれたなぁ?」
「いや、そうじゃなくてさ!えーと・・・真羽さんは・・・・」
話を誤魔化して人のアンケート用紙を覗きこみ、しばらくして
「プッ・・」と吹き出した。
「え?なに?」
「普通さ・・・バカ正直に体重とか書く人いないよ?まぁ、、見た感じも
中肉中背だから問題ないか。もしかして自分の体に自信あんのぉ?」
(えっ・・・てっきりみんな真面目に書いていると思ったのに・・・・)
「そ、、そうなんだ」
こんな所の常識なんか知るもんか!内心(ちくしょう!)と
思いながら笑って誤魔化した。
そのままお互いのアンケート用紙を何の気無しに見ていた。
(わ。この人って若く見えるけどもう32歳にもなるんだぁ・・・・
身長177cm。体重64キロか。歳のわりにスタイルいいかも。
あ〜ジムのトレーナーか・・・・そりゃ体も鍛えるわなぁ。
けど見た感じ、それなりなのにどうしてこの歳まで結婚してないんだろ?)
一気に頭の中に押し寄せた疑問を押さえながら、
軽く会話をして時間は過ぎた。
「じゃ、後からのフリートークでね。最後頼むよ〜。俺、腹へってるから」
そう言って内田さんはあたしの前から去って行った。
(ふ〜ん・・・ まぁ、ここのディナーも悪くないかもな・・)
そんなことを考えながら、一応は全員と話をしてみた。
それが終わると、係りの人がさっきの紙を回収にまわっていた。
(うわ!「ありえね〜」とか「絶対無理!」とかいっぱい書いたのに
これ回収すんの!ちょっと待ってよー!)
消しゴムが無いので、必死で上からガシガシと書いた文字を消した。
あたしの前に来た係りの人はその姿を見て、
「あ、気に入った方を3名まで○をつけてください」とニッコリと微笑み
○をつけるまでの間、待っていてくれた。
慌てて適当に3名を選び、何事も無かった顔をして紙を手渡した。
「では、1次集計の間、お好きにドリンクやお食事をお楽しみくださ〜い」
アナウンスが入り、ドッ・・と椅子に深く腰を下ろしグッタリとした。
「どう?誰かいたぁ?」
後ろからニヤニヤした顔の真紀を見て、
「ん〜?いるかいないか聞かれたら・・・いないかな?」
力無く答えて、二人で和江がジュースを運んでくる姿を見ていた。
「真羽さ、内田さんて知ってるの?」
いきなりジュースを持ってきた和江に聞かれ、さっきのカフェでの経緯と
喫煙所でのことを教えた。
「それって・・・もうカップル決定じゃないの?その友達ってどんなんだっけ?」
「え〜。私、ちょっとだけその内田って人いいな〜って思ったのに。
まぁ、、いっか。どうしてもって訳じゃないしね。じゃ、和江どっちの
友達がいい?私、吉沢さんのほうがいいな〜」
「嘘ぉ!私もそっちがいいー!折原って人なんか冷たそうなんだもん!」
(あのぉ・・・・ あたしに選択権は無いのですか?)
そう思いながら二人の会話を聞いていた。
グルリと見た感じ、例の3人組がニコニコとこっちを見ながら手を振っていた。
和江と真紀はその顔に合わせてニコニコと同じように笑顔で
3人に愛想を振り撒いていた。
そんな時でもあたしの中には・・・
(なんだか面倒くさいかもぉ・・・・)
そんな気持ちでやはり今一つノリ気にはなれなかった。