自宅に戻ると更地になっていたため、幼女と二人暮らしする。追伸:勇者絶対殺す
息抜きで書いたものです。
反響が良ければこの話を1話にして連載するかも。
魔王シュアルは絶句していた。
「な、なんだこれは!」
自宅である魔王城に帰れば、なんと城が瓦礫の山になっていたのだ。
「どうしてこうなった」
シュアルは数ある魔族を束ねる魔王だ。
それも税金を無駄遣いせず国民に還元し、国民の視点になって物事を考え、国民を1番に考える良き魔王だ。彼を嫌うものなどほとんどいない。しかしそんな彼にも国民に受け入れられない点があった。
それは他の種族と友好的な関係を結びたいと思っている事だ。
これまでの魔族は圧倒的な強さから、好戦的で周りの種族と関わりを持たない種族だった。そのため他の種族からは敬遠されがちだ。魔族側もそれでいいと考えていた。
だが、シュアルだけは魔族だけの力ではこれ以上国が発展しないと考え他の種族の国と交流しようとしたのだ。
そのためには道の整備もしないといけない。人を呼び寄せる目立つ物も作らなくてはならない。
しかし、変化を望まない国民は魔王からの仕事を拒否した。
シュアルは昼は国の仕事をし、夜はまともに寝ずに1人ぼっちで道の整備をしていた。
「〜♪せっかくだ草を生み倒した道じゃなく、石畳みの道にしてやろう!」
凝り性の彼はせっかくなら業者顔負けの物を作ろうとし、鼻歌を歌いながら、いつもよりも長くの時間、道の整備をおこなっていた。
だが、彼は普段の睡眠時間が限りなく短い事により眠りこけてしまう。
シュアルが目を覚ましたのは翌日の昼過ぎだ。
「……は!しまった、今何時だ。急いで戻らないと!」
そしてシュアルは今日は残業だな。と苦笑いしながら城に戻るのだった。
そして冒頭に戻る。
「な、なぜ城が街が崩壊している。だ、誰か!誰かいないか!」
シュアルは必死に叫んだもはや見る影も無くなった自分の国を駆けずり回りながら。
そして瓦礫に押し潰されている民を見つける。
「おい!大丈夫か!今助けるからな!」
何故、こんな事になった。俺たちが何をした。ただ周りと交流を絶っていただけじゃないか!なんの害も出してない!
「ま、魔王様…私はもう長くありません。それよりも事情をお話しします」
「命令だ喋るな!死にたいのか!」
シュアルは風前の灯火であるその男に喋るなと命令する。しかし…
「勇者が攻めて来たのです……人族2人とエルフと獣人の4人で。人族の男が片手間に魔法を唱えた瞬間に街は崩れて、剣を一振りすれば城が崩れました……」
男はそれでも喋り続け、シュアルにとって有益な情報を教えてくれる。
「もうこの辺りで生きている者は私ぐらいです。しかし、それも数分のもの……
私は貴方様の考えには賛同しかねましたが、こんなことになるなら他種族と交流を取っていた方が良かったです…ね……」
男はそう笑いながら言って死んだ。
「……仇は絶対に取るからな」
シュアルは静かに決心する。そして今出来ることをする。生き残りを捜すのだ。魔王の実力を持ってすれば生き残りを見つけるのは容易い。
シュアルは自身の魔力を使い周りに生きている者を捜す。しかし……
「なぜ、誰も生きていないのか…誰か!誰かいるなら返事をしてくれ!」
生き残りがいない事実を認めなくてシュアルは最初と同じように必死に叫びながら、捜索範囲を広げていく。
「見つけた!」
魔力が少なく見つけるのに苦労したが、それでも1人生き残っていた。
シュアルはその者を救助しようと、瓦礫を吹き飛ばす。だが、そこに居たのは
「獣人…?何故ここに」
獣人の幼女だった。
他に生き残りはいない。この獣人の幼女が唯一の生き残りだ。
落胆……してはいけない。我が国のせいでこの幼子に過酷を与えてしまったのだ。ならば責任を取らなくてはならない。俺はこの子の面倒を見なくてはならない。
シュアルは傷だらけの幼女を治療して、背中におぶり、自分達の国だった所を後にした。
薄暗い夜の森。焚き火を囲いながら、目の前には土下座する魔族の男。
かたや肉を頬張る幼女。
そこには焚き火の弾ける音がやけに響いた。
時は遡り
「あ、起きたかい?いきなりで悪いけど痛む所は無いかい?治療はあまり慣れてなくて不恰好でごめん」
目の前にいる魔族の男が話し掛けてくる。どうやら自分を治療してくれたようだ。不器用な包帯が巻かれている。一応助けられたので礼を言う。
「ありがと…ございます……」
しかし出て来た言葉は予想と違った。いや、言葉ではなく声だ。何故かやけに高い。
改めて自分の体を見…る……。
「え……?」
そこで見たのは銀の耳と尻尾を携えた幼き自身の姿だった。
さらに時は遡る。
「え!?魔王なんているの?名前からして絶対ヤバイじゃん!俺っち今から退治行ってくるよ!」
目の前の勇者、照月 俊は魔王の存在を知ったその日、退治すると言い始めた。
彼は日本と言う異世界から、転生して来たいわゆる転生勇者だ。こちらの世界に来るにあたり、女神様から莫大な力を貰い、勇者をしながら日々を謳歌している。適当な性格ながらもその強さに私も惹かれていて、心の中で思っている相手だ。初めてを捧げてもいい。
「え!?ちょ、待って下さい。私も行きます!」
彼女はイネス。勇者となった彼に魔法の基礎を教えている人族の宮廷魔術師だ。
既に俊よりも実力が低いのに俊の旅路について来ようとする者だ。
「魔王だなんてまた無茶な事を……仕方ないし私も行くぞ」
彼女はエルフの弓使いラーシャ。俊に一目惚れしてから、村を飛び出し、旅に同行している。しかも俊と肉体関係を持っているようで、少し羨ましい。
「私も付いて行こう。誇り高き銀狼の力でどこまで戦えるか試したい」
そして私。誇り高き銀狼の獣人として生まれたスディ。銀の長髪をなびかせ戦場を駆ける剣士だ。
そのような下りがあり、4人で魔族の国に行ったのだが…
「はは、たったの2発で終わってしまうとはな。私達の立つ瀬がないな」
そう呟くも3人からの返事は返ってこない。
スディは不思議に思い、振り向く。そして聞こえて来るのは
「俺、犬て嫌いなんだよねー」
「え?」
耳を疑う言葉が俊から聴こえる。だが、私は正確には狼なので意味合いが違うのかもしれない。
「あーわかります。特に銀色の犬なんてしつこくて嫌になるますよね」
「そうだな。そんな者と一緒にいてはエルフの品格が疑われるな」
イネスとラーシャもそれに同意する。
「勝手に付いて来られると奴隷を飼っていると勘違いされて評判が下がるんだよね。自分が迷惑だと分からない奴は子供からやり直したらいいと思うんだ」
「あ、それいいですね。賛成です」
「まぁ妥当だろうな」
スディは既に逃げ出していた。3人から逃げているのではない。愛していた者から拒絶される事実を逃避するためにその場を逃げているのだ。
だが、女神様から力を貰った俊に敵うわけなく、あっけなく魔法をくらい、気絶する。
そして目が覚めて話は戻る。
スディは本当に子供になってしまったのだと痛感する。あそこまで酷く捨てられたのだもはや勇者に思う所などない。しかし、これからの衣食住はどうしたものか。
「ウサギの肉があるからお腹が減ったら食べるといいよ」
目の前の魔族にそう言われ、肉を食べ始める。以外に上手い。思いっきりかぶりつきたいが、子供の小さい口では上手くかぶりつけず、ちびちび食べる事になる。
「食べている間に自己紹介をしようか。俺の名前はシュアル。魔王をやっていた者だ」
思わず吹き出しそうになる。何処にでもいるようなくたびれた優男が魔王とは信じられなかった。
「あ、信じてないね。でもいいんだ。もう護るべき民もいなければ、建物も無い……ま、そんな俺のことより君の話をしよう。君、名前は?」
魔王と名乗った男、シュアルは私を元気づけようとしているのか笑顔を絶やさず話し掛けて来る。
「私の名前はスー」
私はスディと名乗らずスーと名乗る。
「そうか…スーちゃんか……本当にごめん」
シュアルは何を思ったのかいきなり土下座をした。
流石に意味が分からずオロオロする。
「正直、俺たち魔族が勇者に攻められる理由は分からない。確かに何代か前は悪逆の限りを尽くしてきたとは聞いている。しかし、ここ数100年は外界との関わりを絶っていただけだ。これを理由に攻められるとは考え難い。それでも!君を俺たち魔族の都合に巻き込んでしまって悪かった!君の人生を奪ってすまない!詫びとしては軽いが、君をこれから守っていくつもりだ。食事を作り、勉強を教え、せめて独り立ち出来るまでは面倒を見る」
そう言われ、私は酷く悲しい気持ちになり、罪悪感と恐怖に襲われる。
魔族を襲ったのはただの軽い気持ちだったのだ。名前からして悪と決めつけ、勇者に合わせて力試しと理由をつけて襲ったのだ。
本当は私の正体をバラしたかった。私達の軽い気持ちで、全てを奪われた犠牲者の彼に詫びたい。
けれど……けど………
怖い。
殺させるのは別に良い。それだけのことはしている。殺されるのならば慎んで受け入れるつもりだ。
だが私はまた捨てられたく無いのだ。勇者に捨てられたことが完全にトラウマになっている。私を受け入れ、守るといった彼に勇者と同じように捨てられたくないのだ。
本当に私はどうしようもなく最低だ。
シュアルはスーからの返事が無い事に酷く怯えているのか泣き出しそうだ。
せめてこの優しき魔王を悲しませたく無い。
「私には家族が居ません。だから心配することもありません。なのでこれからよろしくお願いします」
スーは笑みを浮かべ、そう答える。
シュアルはそう聞いた瞬間に涙をこぼし始めた。
なるべく悲しまないように言葉を選んだつもりが逆に悲しませてしまったようだ。
「ありがとう!ありがとう!」
彼は涙を浮かべ、そう言い続けた。
こうしてシュアルは罪悪感により、スディはトラウマにより、お互いに依存する関係になりながら旅に出るのだった。




