新たに来たるもの
おまたせしました。
新たに来たるもの
航空機動艦隊、或いは機動部隊の最大の特徴はそれが搭載する航空戦力をその基地ごと移動できる事にある。
これのより神出鬼没で柔軟な戦力運用が可能になると考えられた、しかしながら当然、問題は有った。
その最大な点がその防御力の低さであった、何しろ空母の最も重要な装備の一つである飛行甲板は少数の例外を除き被弾に弱い板張りであったからである。
たった一発の爆弾でも当たり所によっては空母の離発着能力を奪い、その存在意義を奪う事が可能なのだ。
そこで、空母は周囲を多数の護衛艦艇と自身を守るための戦闘機を多数搭載することで対処するが、同時に前述の移動できる点も防御に一役買うこととなる。
常に移動する機動部隊はそれ自体が、自身の存在を隠しリスクを軽減させる結果と成るのだ。しかし、これは同時に搭乗員たちに特に帰投時に大きな負担を強いる結果を生む。
何しろ攻撃する対象(艦隊の場合)も帰着する対象も移動しているのだ。
確かに母艦の移動先は出撃前に知らされていたが、そこへ行きつくだけで一仕事なのだ。
行き帰りの航法計算、敵と味方の艦隊の移動位置の推測などには多数の作業が必要と成り特に単座の戦闘機では不可能と言えた(しかも行った先には生死を決める戦闘も待っていた)、対処としては専門の航法要員(帝国海軍では偵察員が担当)が搭乗した攻撃機や陸攻が行き帰りの先導することで一応の解決は出来たが、この方法では行きは良くても帰りは先導機と合流できる時ばかりでは無いので自力で行う必要が有った。
存在が判り難いと言う利点は、同時に帰る場所が判らなくなると言う弊害も併せ持っていたのだ。
しかしながら、今回の真珠湾からの帰投に限って言えば、極めて順調克容易なものと成った、と言ってよかった。
これは、日米開戦が見送りと成ったことで艦隊の存在を必要以上に隠す必要が無くなり、帰投用の誘導電波の使用が可能と成ったからである。
前述の様に、複座の九九艦爆や三座の九七艦攻であれば航法を担当する搭乗員(偵察員)が搭乗していたが、零式艦戦では唯一の搭乗員である操縦員がそれを行う必要があった、しかしながらこれも前述の通り極めて困難な作業であり相当の練度を必要としていた。
そこで有用となるのが誘導電波とその受信機(無線帰投方向測定器)であった。
零式艦戦を始め帝国海軍の艦載機にはクルシー式無線帰投方位測定機が搭載されており、誘導電波によって帰投方向を知ることが出来、航法に対する負担を小さくできたのである。
それならば最初から使えば良いだろう、と思うかもしれないが誘導電波は味方だけでなく敵も受信して位置を知る事の出来るものであった。
故に航空支配が確立しない限り簡単には使用できないものであった。
蛇足ではあるが、電波誘導が有用なのは戦闘機だけではない、これが使えれば偵察員の居る艦爆や艦攻でもその負担を大きく減らし生存性を高める事にもなるのだ。
既に、機動部隊の旗艦である「赤城」からは軍令部からの命令として『開戦の見送りと、それに伴う米陸海軍との交戦の禁止、機動艦隊には早期の帰還。』が伝達されていた。
「それにしても、あれは何だったのでしょうか?」
操縦していた松崎大尉は注意深く四方へ目線を走らせながら、総隊長でもある淵田中佐にそう問いかけた。
「何か、竜みたく見えませんでした?」
「竜か・・、どちらかと言えば蛇みたいな龍ではなくて西洋の竜・ドラゴンの様だったな、あれは。」
水木一飛曹の言葉に淵田中佐は真面目な言葉でそう答えた。
「竜にしろドラゴンにしろ、一体どこから来たんでしょう。」
「異世界って奴ですかね?」
更に疑問を積み重ねる松崎大尉に水木一飛曹は耳慣れない用語で応えた。
「異世界?」
「海野十三だか押川春浪の冒険小説にそんな話が有った気がしますよ。
どこかに有る私たちの世界とは違う世界、だったかな。」
押川春浪は日本の冒険小説の草分けであり、海野十三は冒険小説と共に日本SFの開祖と言われる作家で、英国のコナン・ドイル等の影響を受けて冒険小説を世に送り出し、青少年に多くのファンを持っていた。
作品のモチーフと成った架空の世界での冒険譚にはモンスターやドラゴンは必須であった。
「何だ水木、お前さん冒険小説なんぞ読んどるのか?」
「私じゃなくて子供たちが読んでいたんですよ。」
戦闘が終わり、懸念されていた開戦が回避されたことで機内での会話はリラックスしたものと成った。
「水木一飛曹、
第二次攻撃隊からは何か入ったか?」
「いえ、残敵掃討を行うと言ってきて以降は何も・・。」
淵田総隊長が指揮する第一次攻撃隊と入れ替わる様に第二次攻撃隊はオアフ島及び真珠湾へ到着、既に大物の敵は倒した後だった為、一時は爆弾を捨て帰投する話も有ったが、飛竜や騎竜はまだ残っておりその掃討に当たるとの連絡をしてきていた。
やがて、オアフ島の北方一九〇海里まで来たところで第一次攻撃隊は艦隊を視認した。
しかし・・。
「隊長ありゃ何ですか?」
「機動部隊が二つ?」
操縦員の松崎大尉の言葉に、前方を注視した淵田中佐の口からはそんな言葉が出て来た。
確かにそれは予想外の光景であった。
見慣れた空母機動部隊の近くに並進する小規模の艦隊が居たのだ。
帝国海軍の機動部隊が六隻の空母以外にも「金剛」型戦艦や巡洋艦を擁していたのに対して、もう一方の艦隊は中心に一隻の空母を置き、周囲を三隻の巡洋艦と六隻の駆逐艦が守る隊形をしていた。
「ありゃ、エンタープライズですよ。」
後席の水木一飛曹は双眼鏡で確認してそう報告した。
確かに、事前の諜報情報で二隻の空母の行方が分からなくなっていたが、一隻は直ぐ近くに居たことになる。
「やれやれ、何が幸いするか判らんものだな。」
淵田中佐は溜息交じりに心中を吐露した。
もしも、日米の開戦が予定通りに行われていたとしたら、真珠湾攻撃で空母を取り逃がしたことになる。しかも、その一隻が間近に居たとしたら手痛い一撃を食らっていた可能性が有ったのだ。
しかし現状では、真珠湾を出ていたが為に貴重な空母戦力は生き延びる結果と成った。
それは僥倖以外の何ものでは無かったのだ、更に付け加えるならその空母機動部隊の指揮官は牡牛の異名を持つ、ウィリアム・ハルゼー少将であった。
攻撃隊が戻って来ると、各空母は一斉に全速航行を始める、向かう先は風上、攻撃隊を着艦させ収容するのに必要な合成風を作るためだ。
淵田中佐の搭乗する九七式艦上攻撃機も部隊を率いて所属する空母「赤城」へ向かう。艦上では既に着艦と収容が行われていた。
最初に降ろすのは損傷機と燃料が残り少ない機体だ。
その後は足の短い(航続距離の短い)九九式艦上爆撃機から先に着艦を開始し、零式艦戦、九七式艦上攻撃機と続くが、指揮官である淵田中佐の九七艦攻は最後の着艦となる。
小隊二番機の阿曽機が無事着艦し、機体が飛行甲板前部に張られていた起倒式の滑走制止索の向こうへ移動すると、再び制止索が立ち上がり着艦用の拘束ワイヤーが元の位置へ戻り艦橋後方のマストに「着艦よろしい」の信号旗が掲げられる。
それを待って松崎大尉は、九七艦攻を着艦作業に入れた。
母艦後方から接近した九七艦攻は、母艦の右舷側上空を一航して前方へ出る、この時操縦員は操縦席の風防を開け座席を最上部まで上げて視界を確保する、そこから着艦作業の準備が完了すると機体は左に九〇度旋回(第一旋回)を行う。
第一旋回が終了すると、更に左に九〇度旋回(第二旋回)し脚が降ろされる、第二旋回が終了すると母艦とは逆航する形で後方へ向かう事に成る、やがて左手に母艦後方を続航する駆逐艦(着艦に失敗した際に搭乗員を救助回収する役目を担っている、通所トンボ吊り)が視認できるようになる、今度はそれを目指して更に左へ九〇度の旋回(第三旋回)を行う、ここでフラップと着艦フックを下ろしてトンボ吊りの駆逐艦を目標に飛行を続け、駆逐艦の上空で最後の左旋回を行い機体を母艦の後方着艦位置へ持って行く。
この先は、主脚とフラップ、着艦フックは下したまま母艦の左右両脇に設けられた着艦指導灯に従って飛行甲板への着艦を行う事に成る。
松崎大尉は主脚と尾輪が同時に接地する三点姿勢をとって着艦の為に開けられた飛行甲板へ滑り込んだ。
飛行甲板の後端を過ぎるとやがて軽いバウンド共に機体は甲板に降り立ち一気に速度を落とした、尾部の着艦フックが甲板に浮かせて張られた拘束索の一本を掴んだのだ。
機体はその持った速度のまま拘束索を引き出すが、その両端に設けられた制動装置により一気に速度は奪われやがて静止した。
この拘束索は飛行甲板後部に一〇本近い数が有り前に行くほど制動力が強くなり急激な減速と成る、一般には後ろから三番目である三番索を目標にすると言うが、今回の松崎大尉着艦はその三番索にフックを掛けるお手本の様な着艦であった。
まさに指揮官機操縦員と言うべき練達の手腕であった。
発動機が切られてプロペラが止まると整備員が駆け寄って来て拘束索に引っ掛かっていたフックを外し機体の前方へ移動を始めた、倒された制止索を越えて機体はエレベーターへ運ばれる、既に後続の着艦は無いため、衝突防止の起倒式の制止索は倒されたままである。
「隊長、お帰りさい。」
淵田中佐が風防を開けると整備班長がそう声を掛けて、機体へ身体を固定していたベルトを外す手伝いをしてくれた。
「松崎、水木、後を頼む。
俺は艦橋へ行く。」
「了解しました。」
松崎大尉はそう答えると機体を停止させた、既に機体はエレベーターの上に有り整備員は左右の両車輪に車止めを噛ませ、両翼のロックが外されて主脚の少し外側から両翼端が上へ折りたたまれた。
これは翼長一五.五メートルの機体をエレベーターへ載せる為の工夫だった、これにより九七艦攻は全幅七.三メートルまで縮小することが出来きた。
連合艦隊の空母の多くは前部に幅一六メートルのエレベータが設けられていたが、中央や後方のものは一〇から一二メートルと狭くそのままでは載せられない為、さらに格納庫内での駐機スペースを縮小するためにもこうした仕組みは必要で、零式艦戦や九九艦爆を含め米海軍の艦載機でも両翼端の折り畳み機構は持っていた。
淵田中佐は停止した機体から降りると右舷中央に有る艦橋へ向かおうとして、甲板前部に置かれていた見慣れない機体に気が付いた。
見慣れないと言うのは語弊が有るかもしれない、何故ならその機体の存在は知っていて形はよく覚えていたからだ、ただ、実物を見るのは初めてだった。
単初の発動機を持つ葉巻型の機体に多座であることを示す長い風防、そして、両主翼と胴体に描かれた星の国籍標識。
それは米海軍のTBD-1デバステイター雷撃機であった。
同機は一九三七年就役の米海軍初の全金属製低翼単葉機で、帝国海軍の九七式艦上攻撃機とほぼ同世代と言える攻撃機(雷撃機)であった、但し、九七艦攻は昭和十四年(一九三九年)には発動機を「光」から「栄」へ変更した三型へ更新されていたため実質上は一世代前の機体でもあった。
そのTBD-1を横目で見つつ、艦橋へ向かうとそこで待つ一人の士官に気が付いた。
「源田・・。」
「淵田、お疲れさん。」
淵田美津雄中佐は、艦橋前で待つ親友と言っても良い男、源田実中佐に敬礼をして艦橋へ向かおうとしたが、それを源田中佐が呼び止めた。
「すまん、南雲長官は長官公室だ。」
「長官公室?」
「ああ、来客中でな。」
源田中佐は、そう答えながら肩越しにTBD-1を指さして苦笑した。
「ハルゼー提督のお使いでも来とるのか?
アメさんの空母から。」
淵田中佐もそう苦笑しながら、艦内へ向かうハッチへ向かったが源田中佐から返ってきた答えはそれを上回るものだった。
「いや、ハルゼー提督本人が来ているんだ。」
「米海軍の提督が帝国海軍の航空母艦に一人で乗り込んできたのか?」
それは噂に違わない行動力と言えたが、ある意味常識外れの行動力とも言えた。
「いや、通訳兼護衛と操縦員は連れてきたがな。」
そう答える源田中佐も半分呆れた物言いだった。
話を続ける間に二人は長官公室のドアの前に来た。ドアの脇には南雲中将の従卒が控えていて二人に気付くとドアをノックして声を掛けた。
「源田中佐と淵田中佐がお見えになりました。」
「入ってもらってくれ。」
聞き慣れた声を確認して、従卒はドアを開け「お入りください。」と二人に敬礼しながら伝えた。
中には部屋の主である南雲忠一機動部隊長官と草鹿龍之介大佐と「赤城」艦長の青木泰二郎の三人がテーブルについていて後ろには通訳を担当する士官が立って居た。
その前には、飛行服のままの短い頭髪と厳つい顔つきの白人男性が座っていた。
淵田中佐は、その人物を見て、『成程、ブル=猛牛とは上手いニックネームだ。』と感心した。
「彼が、第一次攻撃隊指揮官の淵田美津雄中佐です。」
南雲中将が、そう紹介すると背後に立って居た通訳官が素早く英語に訳してその紹介を伝え、それを聞いたハルゼー提督は、一度頷くと淵田中佐に視線を向けた。
淵田中佐は少し身構えて敬礼をした。
「貴官らのお陰で、多くの我が国の市民と将兵が救われた。
礼を言おう。」
その答えに淵田中佐は少し違和感を感じた、その話口は端的ではあったが想像とは違い穏やかなものであったからだ、彼はハルゼーをもっと粗野な人物だと思っていたのだ。
しかし、ハルゼー提督はそこで口調を変えこう言い放った。
「だが、お前さんたちが我々を攻撃しに来たことは忘れるつもりはない。
今後、もしもおかしな真似をしたら唯じゃすまさんから覚えておけ。」
やはりブル・ハルゼーだったと淵田中佐は内心思ったが、表に出しては頷くだけだった。
その後、空母の運用に関して意見交換をしている内に、第一次攻撃隊が真珠湾で撮影した戦果評価用の写真が現像引き延ばされて公室に届けられた。
「ほーっ、良く撮れてるじゃないか。」
写真を見たハルゼー提督の最初の感想は其れだった、但し馬鹿にしているのではなく感心しての感想である。
写真と一緒に各攻撃隊の指揮官も公室に衆参し彼らを交えて詳細な戦闘の経緯が説明された。
ハルゼー提督は、最初面白げな表情で話を聞いていたが、写真に写った飛竜や地竜、更に巨大な三つ首竜の姿を見て、それとの戦闘を生々しく語る指揮官たちの会話を聞くうちに神妙な表情を作って暫く沈黙していた。
やがて、顔の前で手を組むとおもむろに口を開いた
「今回、諸君らが味方としてハワイに現れたことを神に感謝するべきだろう。
奴らが現れなかったら、諸君らは手ごわい敵に成っていただろうから。」
そう言って、ハルゼー提督は対面に座る南雲中将へ視線を向けた。
「アドミラル・ナグモ、例の話を彼らに話してやった方が良くないかな?」
「そうですな。」
南雲長官はハルゼー提督の言葉に頷くと参謀長の草鹿大佐に「頼む。」と小声で言った。
「諸君らが出撃している間に大本営より連絡が有った。
一二〇八(十二月八日)〇〇時、海南島より出撃した陸軍上陸部隊が南シナ海洋上で何者かの襲撃を受け二六隻の輸送船の内「淡路山丸」「彩戸山丸「佐倉丸」など十四隻が撃沈ないしは大破された。
この損失にともない乗船していた上陸部隊も物資と共に失われマレー作戦は中止と成った。」
他国の提督の前で中止したとはいえ侵攻作戦の一端を明らかにしていたがその表情を見るにハルゼー提督はそうした帝国陸海軍の動きを察知していたことが伺えた。
「それも、例の奴らが?」
指揮官を代表して村田少佐がそう問うた。
「救助された将兵の中に、巨大な生き物を見たと言う証言が有った。さらにその後上空援護に向かった陸軍航空部隊の飛行第59戦隊・飛行第64戦隊の一式戦闘機「隼」が飛竜と空中戦を行っている。
この事から、大本営は『怪竜』軍によるものと見ている。」
「『怪竜』軍ですか?」
淵田中佐はその言葉を聞き返した。
「大本営と軍令部では一連の所属不明の竜に対して『怪竜』の仮称をつけそれらの戦闘集団を『怪竜』軍と呼称することにしたそうだ。」
名前が無いと言いにくからな、といって草鹿大佐は苦笑した。
「結果的に、陸軍に依るインドシナ・マレー侵攻は取りやめとなったが、問題は『怪竜』軍の襲撃を受けたのが我々だけでは無かったことだ。」
草鹿大佐の言葉を引き継いで南雲長官がそう言った。
「我々だけでは無い?」
「現在は未確認であるが、マレー半島の英軍も『怪竜』軍の攻撃を受けて壊滅状態と成っているらしい、こちらは脱出してきた豪州軍兵の話だな。」
思わず聞き返した板谷少佐の言葉に草鹿大佐が答え・・。
「それだけではない。」
その後を今度はハルゼー提督はが続けた、海軍の士官の多くはその成立から英国の影響を多く受けてきた関係上、英語を話せる者が多かった、今回も英語が解る士官はハルゼー提督の言葉に反応し、それ以外は直後の通訳の言葉に耳を傾けた。
「ステーツ(ユナイッテド・ステーツの略で合衆国のこと)が掴んだ情報では、これまでにハワイと東南アジア以外にも独ソ国境と北海、北アフリカ、ウラル山脈など世界各地でそのドラゴンどもの姿が確認され多くが交戦に入っていると言う話だ。」
「世界各地で?」
「そうだ、もう人間同士で戦争なんかしている時では無いのかも知れんな。」
そういって、ハルゼー提督は立ち上がると集まっていた一堂に敬礼をすると南雲長官へ礼を言ってエンタープライズへ戻る事を告げた。
その時である、慌ただしい足音とそれに続いて電信文の綴りを手にした士官が慌てた表情で公室へ入ってきた。
「失礼します。」
その士官は中に居たのが予想以上に上級の、しかも米軍の提督までいる事に驚いていた様子だったがそれでも彼は職務を全うしようとした。
「利根四号機より緊急電です。」
そう言って彼は艦長の青木大佐に、電信文の綴りを渡した。
青木大佐はそれを素早く読むと、顔色を変えて南雲中将へ渡した。
南雲、草鹿両名の反応も青木大佐と同様であった。
電信文には次の様に記されていた。
『発 利根四号機 宛 機動部隊司令部
〇五一一時(日本時間)、オアフ島バーバース岬南西一五〇海里ニテ黒色ノ渦ラシキモノヲ発見セリ。
中ヨリ巨大ナル影ノ出現ヲ確認、上空ニ飛竜多数アリ。』
「ミスタ・ハルゼー。」
利根四番機からの電信文の内容を通訳から聞いていたハルゼー提督は、急に身を翻して公室のドアへ向かおうとした。
それを南雲長官が呼び止めた。
「敵が現れた、俺は自分の船へ行く!」
「御自分達だけで戦うおつもりか?」
「あれはスターツの敵だ、お前さんたちは関係ないだろう。」
そこまで言ったハルゼー提督は、悪戯小僧の様な表情を浮かべて言葉を続けた。
「ただ、そちらがついて来たいなら勝手にしろ。」
「勿論、お供しましょう。」
歴戦の将帥らしからぬ好々爺然としたその顔に笑みを浮かべた南雲中将は、そう言い切った。
何とか一週間で更新できました。
今回は戦闘シーンの無い説明回ですが、色々な世界情勢も少し書きました。
それと、今回はアメリカ側から例の名物親爺が出てきています、この人、日本嫌いでなければ物凄く魅力的な人なんですが・・。
と、言う事であと少し続きます・・・、終わる終わる詐欺見たくなって申し訳ないですが後少しお付き合いください。
そしていつも通りですが誤字脱字が有りましたら感想などで一報ください。
もちろん感想意見もお待ちしています。