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燃ゆる真珠湾  作者: 雅夢
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エピローグ 中編

開けましておめでとうございます。

エピローグ 中編


 艦内のスピーカが伝える「全機発進、急げ!」の命令に、待機所に居た渥美一飛曹ら搭乗員は装備を掴むとそこから飛び出て愛機へ向かった。

 発進命令が発令されておよそ五分、風上に向かって三〇ノットで航行する「愛鷹」の飛行甲板から一番機が飛び立った。

 「愛鷹」が搭載する戦闘機は前述の通り全機「強風」であった。

 この機体は、燃料と機銃弾を満載すると五トンを軽く超える重量機だった、この為に二五ノットで航行中の航空母艦から離陸すると仮定した場合でも約一〇〇メートルの滑走距離を必要としていた。

 これは「伊吹」型軽空母の飛行甲板の半分の長さを必要とする事を意味していた。

 しかし、実際には「強風」は前端の約四〇メートル(正確には三八メートル)を使用して発艦作業を行っていた。


 何故それが可能であったか?

 それは発艦促進装置、英米式の呼称で言えばカタパルトの功績であった。


 実際、この促進装置が無ければ「伊吹」型では一度に飛行甲板上へ並べることが出来る機体は一〇機に満たず、現状の様に三〇機もの機体を並べて次々と発艦させる芸当は不可能であり一度に邀撃に上げることが出来る機体も一〇機以下と言う事に成る訳で、「伊吹」型軽空母を邀撃担当専用艦と足らしめているのはこの発艦促進装置と言う事が出来るのだ。

 この装置はリアウ門を巡る戦いの最中に導入され、以降帝国海軍の航空母艦全艦の標準装置と成っており、飛行甲板の短い軽空母や、低速の商船改造空母や護衛空母では常時使用する必須と言っても良い装備と成っていた。

 また、広い飛行甲板を持つ大型の正規空母でも、飛行甲板全体を使う事態や戦闘機を爆装して発艦させる際、被弾や海面状況の影響で発艦に必要な速度を出せない時も有用な装備であった。


 その有難い発艦促進装置にも勿論問題はあった。

 その一例が、促進装置の作動源のガスの加圧に時間が掛かる事であった、また射出に使用したピストンやケーブルを元の位置に戻すのにも時間を必要としたので連続使用時には発進間隔が大きく成ってしまうのだ。

 更に強力な加速が加えられるために機体と搭乗員にダメージを与える場合がある事も問題と言えよう。


 二番目の発艦は、小隊二番機の渥美太一一等飛曹長であった。

 彼の搭乗する「強風」の前には甲板上の切られた溝が前方に向かって伸びていた、これは発艦促進装置の牽引具が走る軌道だった。

 艦首側両舷に二基装備された促進装置の軌道は、僅かに左右で位置がずらされ右舷側の方が機体一機分前方へ設置されていた。

 これは飛行甲板の幅が二三メートルの「伊吹」型軽空母では最も小型の艦上戦闘機であっても左右に並べて置くことが出来な為の工夫であった。

 因みに「強風」の全幅は十三メートル、「烈風」のそれは十四メートルであるが「流星」や「瑞星」等は更に横幅が広かった。


 発艦士官は渥美機へ向かって、右手を肘から上へ折り曲げて手のひらを握ったまま回転させた。

 離床出力へ発動機の出力を上げろ、の合図だ。

 渥美一飛曹がその合図に従ってスロットルを押し込んで出力を上げると、暖機運転中にプラグに付着したカーボンが燃え上がって赤黒い炎と黒煙が排気管より噴き出すがそれも一瞬で、直ぐに黒煙は消え美しい透き通るような青白い炎が左右合わせて一八本の排気管から姿を見せた。

 やがて発艦士官は発動機の出力が安定するのを確認すると、手のひらを開いて渥美一飛曹へ向けた、それはその出力を維持しろの合図であった。

 その間に、甲板員は「強風」の両主脚前に設けられたフックとシャトルの間にVの字に張られた牽引ワイヤーに問題がないか点検し発艦士官へ問題なしの合図を送る、更に機体周辺や発艦促進装置の軌道上に異常がないのを確認の報告を受けた発艦士官は右手に持った旗を大きく振り上げると、素早く振り下ろした。


 飛行甲板の左舷前方の待避所に設けられた発艦管制所の制御盤の前に立つ発艦促進装置伝達士官は、発艦士官が振り下ろす旗に従ってコンソールのボタンを押し込んで「射出」のシグナル信号を伝達した。

 その信号は、そのまま艦内の格納庫直下にある管制室に送られ、その信号を受けた促進装置担当士官が駆動レバーを引き促進装置を作動させた。

 各関係部署の連携により無事、促進装置は油圧で駆動されたシリンダーを高速で前進させ、ワイヤーと滑車で伝えられたその動きは渥美一飛曹の「強風」に対して大空へ飛び立つのに必要な速度を与えた。


 促進装置に依って一気に加速した機体は、一瞬にして朝日が射し始めた北海海上へ飛び出していった。

 渥美一飛曹は、その加速に耐えて進路を維持し高度を上げて行く。

 途中で離陸位置へ降ろされていたフラップを収納し、操縦席の椅子を離着艦位置から巡行位置へ戻し、カウルフラップを閉位置に戻すと主脚と尾輪を引きむレバーを上げ位置へ戻した。

 渥美一飛曹はこれら発艦後の作業が問題なく行われたのを確認すると、ゆっくりと左へ旋回しながら先行した小隊長機を追った。

 やがて、彼は先に発艦した小隊長の三橋雄一少尉の搭乗する「強風」を確認、自機を二番機の位置へ向けた。

 小隊長機へ接近すると「強風」独特の大柄ながら引き締まった機体が操縦席の風防越しにハッキリと見えて来た。

 帝国海軍独特の上面を暗緑色、下面を明灰色に塗り分け翼と胴体に日の丸を描いた「強風」はその二〇〇〇馬力を発揮する巨大な発動機と大量の燃料を収める巨大な胴体と、生産性を優先させる為に両端を断ち切った様な角張った直線で構成された巨大な主翼を持っていた。

 その機影は、お世辞でも零式艦戦や「烈風」の様な流麗な美しさを感じさせはしなかった、が逆に大柄で武骨な姿は逞しく力強く見えた。

 渥美一飛曹は、一部の人間が「強風」を「ネコ」と渾名しているのを知っていた。

 確かに、丸っこい胴体と大柄な見た目を裏切って中高速域での旋回性能等の運動性能の良い「強風」には相応した渾名かもしれないが、「強風」の巨大で厳つい機首を見る限りは「虎」や「ライオン」等の猛獣や原型機が持つ「地獄ネコ」と言った愛称の方がぴったりくると渥美一飛曹は思っていた。

 ついでながら、もう一つのあだ名が「性悪女」或いは「阿婆擦れ」なのだが、おそらく「強風」乗りにそう言えば問答無用で袋叩きされるだろう。

 彼らにとって「強風」ほど献身的に操縦士の為に戦ってくれる戦闘機は無いのだから。

 それ程までに彼らはアメリカ生まれの戦闘機を信頼し愛していた。

 川西「強風」、その原型は米海軍の新型艦上戦闘機F6F-3、愛称は「ヘルキャット」と言う。

 本来、F6F「ヘルキャット」はF4Fの後継機として開発された機体であった。もし、あのまま日米での戦争が行われていたら零式艦戦にとって手ごわい相手と成った機体である。


 その機体が零式艦戦の後継機として採用されたのだから皮肉な話である。


 こうした皮肉な事態が生じたのは、クーラ・ルフ帝国との戦闘の中で現有の零式艦戦が飛竜に対して戦果として見たい程には優位性が無く早晩陳腐化を迎えると軍令部が判断した故であった。

 帝国海軍は昭和十五年(一九四〇年)より三菱に内示を行い開発を進めていた十六試艦戦が二〇〇〇馬力の発動機の開発に手間取って開発が難航していた事に危機感を抱き、米国に対してプラットアンドホイットニーR2800エンジンの供与と日本国内でのライセンス生産を打診した。

 この申し出は最終的に米国側も了承、R2800エンジンはこれまでも同社の発動機をライセンス生産を行って来た中島飛行機に於いて「輝」発動機として生産されることとなった。

 これにより発動機の問題は解決し、十六試艦戦は「輝」エンジンを搭載する機体として開発される事と成った。

 しかし、安堵する暇は無かった。

 昭和十七年(一九四二年)の夏以降、南シナ海のリアウ門を巡る戦いの戦場へ新たな飛竜が出現すると零式艦戦は一気に旧式化し戦力には成り得なくなっていまったのである。

 だが期待の十六試艦戦は未だ試作機が飛行前と言う状況で戦力には成り得なかった、苦渋の選択を迫られた海軍は十六試艦戦の就役までの間を埋めるために中継ぎとしてグラマン社製のF6Fに白羽の矢を立てたのである。

 こうして帝国海軍版F6F・「強風」が誕生となるのだが、当時米グラマン社は米海軍と海兵隊、生産設備が壊滅状態の欧州各国への納入する機体の生産に追われて手一杯な状態であった。

 そこで、帝国海軍向けの機体は当時は二式飛行艇の生産が終了して生産能力に余剰が有った川西飛行機でライセンス生産を行う事が検討され、発動機は既に中島で「輝」として生産されていたことも有って特に問題も無く、「強風」は俗に言う青い目の国産機として生産される事と成ったのである。

 F6Fは、帝国海軍に於いて艦上戦闘機「強風」一一型(A7K)として正式に採用され、初期を除き全機が川西飛行機で生産された。

 しかし、日本側も黙ってライセンス生産をしているだけでは無かった、一一型の生産を担当した川西飛行機は菊原静男を中心にした技術陣はそれまでの構造上のなどの内容を見直し一部の強度過剰な構造を変更することで約五〇〇キロの減量に成功していた、軽量化した機体に帝国海軍の搭乗員の意見を入れて操縦席のレイアウトに変更を加えて、武装を長銃身でベルト給弾とした九九式二〇ミリ二号四型四基と原形機には無い自動空戦フラップを盛り込むなどの改修を行った改修機は最高速と上昇力、旋回性のが向上してグラマン側もこの改修案を評価しF6Fの強化型であるF6F-5として採用した。

 日本ではこの改修案は「強風」二一型として正式採用されA7K2の機体略号が付けられている。

 尚、欧州解放作戦時に帝国海軍の空母に搭載されていた「強風」は多くが、発動機を出力強化型である「輝」二二型・P&WR-2800-10Wに変更した「強風」二二型へ進化していた。

 「輝」二二型は、燃料を噴射式に変更し緊急時に出力を上げる水メタノール噴射装置を装備した離床馬力二二〇〇hpへ強化したモデルであったが、水メタノールの噴射時に発生するムラを中島が試作発動機NK9の開発時に考案した過給機のインペラ内に噴射する方式で解消する工夫がされていた。

 こうして正式に採用された表向きは米国製、実質は日米合作の新鋭戦闘機「強風」で有るが、当初の搭乗員の評判は芳しいものでは無かった。

 何より厳つく大柄で、俗に言う「大男総身に知恵が回りかね」を地で行きそうな外見に加えて、仮想敵国となる筈だった国の戦闘機と言う事で反発が強かったのだ。

 しかしながら、命令で搭乗を余儀なくされた者達からその印象を変える者たちが現れた。

 大柄ながら見かけに似合わない旋回格闘性能、七〇〇キロを超える急降下と引き起こしに余裕で耐える丈夫さ、二〇ミリ機銃の命中率向上に役立っていると考えられた単純だが強固な主翼などこれまでの純日本機にはない特徴は次第に多くの搭乗員たちの心を掴んでい行く結果と成った。

 また、油漏れの殆どない油圧装置や発動機は地上整備員や甲板員たちからも好評であった。

 結局、この青い目の「地獄ネコ」は十六試艦戦・「烈風」の就役が遅れた事も有って欧州解放作戦時於いても帝国海軍航空部隊の主戦力と成っていた。


「ノスリ、ノスリ。我タカノス。

 音・感、明良なりや?」

 邀撃地点へ向かう我々の小隊へ母艦である「愛鷹」の戦闘指揮所から無線が入った。無線機本体の更新とアースなどの搭載方法が改善された結果、帝国海軍の機載無線機も充分使えるようになっていた。

 因みに「ノスリ」は邀撃第二小隊を「タカノス」は「愛鷹」を示す符丁であった。

「我ノスリ一、

 音声明瞭、感度良好なり。

 指示こう。」

「タカノス了解、敵は飛竜と剛竜、合わせて四〇。

 現在、ミサゴ(第一小隊の符丁)と方位〇七四にて交戦中。」

 「愛鷹」の戦闘指揮所から流れて来る状況説明に耳を傾けながら、大腿部に括り付けたボードのメモへ要点を纏めて記してゆく。

 敵は、上空警戒中の第一と第三の二個小隊八機に行く手を遮られる形で東の方向へ向きを変えていた。

『妙だ。』

 渥美一飛曹は書き込まれた状況と地図を見比べて、眉をひそめた。

 この状況で出撃したと言うのに敵は邀撃に会っただけで、東に逃げようとしそれを追って空中警戒隊は艦隊上空から離れようとしている。

「ノスリ一、よりタカノス。

 罠の可能性は無いか?

 敵が脆すぎる。」

 どうやら小隊長の三橋少尉も同じことを考えていたらしく敵の動きの罠の可能性を嗅ぎ取っていた。

「タカノスよりノスリ一へ、

 その判断はこちらでする。

 しかし、同感だ。

 貴隊は現在位置で警戒されたし。」

 「愛鷹」の戦闘指揮所からの指示に「了解」で応えて通信を切ると、小隊長は周波数を切り替えて小隊専用の周波数へ換えるとすぐさま指示を送って来た。

「聞いての通りだ。

 おそらく別動隊が来る、それも電探に掛からんように低空でな。

 各機、周囲への警戒を怠るな。」

 交信が終わると各機は機銃の試射を行い、やや開いた間隔の四機編隊で大きく旋回しながら周囲を警戒した。

 敵はおそらく低空を進攻して来る、しかし、だと言って下ばかりを気にするのは危険である、こうした哨戒飛行は相当神経的に負担と成る。

『早く来い。』

 渥美一飛曹は心の中でそう呟いた時である。

「方位一一〇方向に敵影!」

 三番機の河瀬六郎一飛曹の弾むような声が受聴器に響いた。

 急ぎ、報告の方向へ視線を向けると敵の飛竜の姿を確認することが出来た。

 数は一〇騎ばかり、高度は予想通りに一〇〇〇メートル以下の低空で艦隊へ向かっていた。

 それだけではない、目を凝らして見るとまだそれ以外にも動くものが居た。

「その後方にもう一群居ます。数三〇!」

 それが敵だと確信した渥美一飛曹はそう報告した。

「前は護衛の翔竜、後ろは通常の飛竜、自爆攻撃隊だな。」

 小隊長の三橋少尉は一瞥してそう判断した、先ずすべきは艦隊にとって脅威と成る自爆攻撃隊を阻止する事だった。

 しかしながら、敵も黙ってやられはしない。

 前衛の翔竜の内、六騎が編隊を離れて第二小隊へ向かって来た。

「お迎えが来たな!

 こちらも行くぞ!」

 翼を翻して敵へ向かう三橋少尉の機体を渥美一飛曹は追った。

 リアウ門を巡る戦いの頃より、帝国海軍の編隊はそれまでの三機編隊から高速戦闘に対応した二個分隊で一個小隊で編隊を組む形へ変わっていた。

 渥美一飛曹は最初三橋機の後方についていたが、敵の目前で小隊長機を追い抜きそのままて飛竜へ向かった。

 先のリアウ門を巡る戦いの最中に出現した敵の新種の飛竜は大別して二種、通常の飛竜よりも一回り身体が大きくて飛翔速度が速い飛竜は翔竜(英名・Hi-Wyvern)、その翔竜よりもさらに大型で強靭な鱗で二〇ミリ機銃弾でも容易に撃破できない飛竜は剛竜(英名・Strike-Wyvern)と名付けられ、日米英連合軍がこれまで築いて来た航空優勢を瞬く間に覆した、そんな翔竜の一群が渥美一飛曹の前に立ち塞がろうとした。

 しかし、その直前で渥美一飛曹は操縦桿のボタンを押し込んで思い切り引いた。

 そのボタンは自動空戦フラップ作動スイッチで、速度と荷重を感知して自動的の三段階の位置へフラップが出る様に出来ていた。

 操作に応じて中位置まで展開したフラップにより想像以上の小さな半径で機首を上げたのを確認した渥美一飛曹はそこでボタンに掛けた指を離した。

 操作がキャンセルされたフラップはそこで収納される、一瞬で行われたその動作を確認した渥美一飛曹はそこでスロットルを絞り機体を捻り込んで急降下へ入ると、敵の鼻先へ機銃を一連射してそのまま鼻先を通り過ぎて行った。

 敵は渥美一飛曹に愚弄されたと憤ったのか内の二騎が翼を翻して渥美機を追い始めた。

 翔竜の最高飛翔速度は約六三〇キロと予測されていた、「強風」のそれも六三〇キロであるからほぼ同速であるが、急降下時には七〇〇キロを超える「強風」は降下時には充分優速であった。

 しかし、渥美一飛曹は充分敵を引き話すことなく機体を引き起こして水平飛行に移り、緩やかな曲線で右へ左へと旋回を続けた。

 彼の機体を追って来た二騎の翔竜は、その動きに釣られる様に旋回を繰り返しながら距離を詰めて火球弾を放つが距離が遠い為脅威には成らなかった。

 そして、渥美機を攻撃する為に前方に集中していた彼らは、三橋少尉の乗機が逆回りの旋回で彼らの頂部方向から迫ている事に気が付かなかった。

 飛行軌道が交錯する寸前、三橋機は四門の二〇ミリ機銃の一連射を放った。

 一〇発程の二〇ミリ機銃弾が、一機の翔竜の騎乗部付近に集中して着弾した、勿論障壁が張られていたが五発ほどでその障壁は砕け散り、残りの銃弾は騎手をその鞍ごと粉砕し、更に翔竜の鱗を貫き体内でその炸薬のエネルギーを解放した。

 一瞬で僚友を失った翔竜の騎手は、向きを素早く変えると飛び去った小隊長機を追った。

 この戦闘機動は、米海軍のジョン・サッチ少佐が考案した事からサッチウィーブと呼ばれ二機の戦闘機が相互に援護しながら戦闘が出来る機動であった。

 この機動の特徴は、状況に応じて攻撃と援護が素早く切り替えれる事だった。

 従って敵の動きを確認した渥美一飛曹は、先程の自分と同じように誘う様に左右に旋回を繰り返す小隊長機の軌道を予測して逆回りで同じような旋回軌道で交錯するように機体を操縦した。

 彼は、計基板上の射爆装置の目盛りが十五メートルに合わされているのを確認すると旋回に合わせてハーフミラー内を上下左右に動くレクチルを同じく旋回する翔竜に重なるように機体の旋回を微調整した。

 この射爆装置は三式射爆照準器改二と呼ばれ、米海軍のMk18を参考に従来の射爆照準器に慣性修正機能を持たせた改良型だった。

 旋回時の射撃はその弾の着弾する位置を経験を基に感で修正性なければならなかったが、この装置では小型のジャイロスコープを組み込むことで未来位置を自動で示すことが出来た。尤も、現在の様にレーダーやレーザーによる測距やコンピューターによる修正が無いこの時代の照準器は未だ原始的でありこの照準器の示すところへ合わせれば命中できるわけでは無かった、しかし、それでも旧来のものよりも遥かに照準の修正が容易なのは確かであった。

 照準器のミラー内に翔竜の姿が一杯になった段階で、渥美一飛曹はスロットルレバーのトリガーを引いた。

 「強風」の両翼の四門の二〇ミリ機銃が機銃弾を放ち、曳光弾の灯が生き残った翔竜背部の騎手に突き刺さるのが見えた。

 背中から貫かれて落ちて行く翔竜を確認して、渥美一飛曹は小隊長機と合流するように高度を上げた。

 周囲では未だ同じ小隊の河瀬一飛曹の率いる第二分隊や「愛鷹」の他の小隊も翔竜やその後方に居た飛竜との空中戦を続けていた。


 しかし、そろそろ時間切れだ。

 邀撃隊の各機は、戦闘を中断して敵の編隊から離れて距離を取った。


予定では昨年中に完結する予定でしたが、年末は何かと忙しくて筆が進みませんでした。

加えて内容が気に入らなくて5回ほど書き直したので更に時間が掛かってしまって・・・。


後一話で今度こそ完結します。

と言う事で毎回同じこと言いますが、誤字脱字が有りましたら感想で教えて下さい。

勿論、感想意見も大歓迎です。

では今年もよろしくお願いします。

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