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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第16章 人間は誰でも嘘をつくよ
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しゃーないなぁ、バカ夕人。

学校祭という一つのイベントが終わりました。

これで、中学生活の半分が終わったことになります。

つまりは折り返しということです。

 学校祭も終わって10月もそろそろ終わる。

 2学期の残るイベントといったら合唱コンクールと生徒会総選挙、それに期末試験くらいのもの。さしあたって最初のイベントは生徒会総選挙。新たな生徒会役員の選抜が行われるわけことになっている。


「おーい、夕人っ。」


 廊下の向こうから翔が手を挙げながら走ってくる。あいつがこんな声のかけ方して来るなんて珍しい。何かあったんだろうか。


「どうした?」

「いやいや、もうすぐ生徒会総選挙じゃないか。例の約束を果たす時が来たなと思ってさ。」

「約束?」


 なんだそれ?そんなものあったっけ?


「まさか忘れたのか?」

「忘れたっていうかさ。全然わからない。」

「おいおい。ひどいなぁ。お前が学級会長になった時に約束しただろう?俺は生徒会長になるから、お前は副会長として俺を支えるって。」


 そんな約束したか?

 ・・・いや、待てよ?そう言われるとそんな記憶もかすかにあるような。


「あぁ・・・あったかも。そんな約束。」

「あったんだよ。だからさ。俺は立候補する。生徒会長に。お前は副会長な。」

「マジ?」

「マジに決まってるだろう。」


 お前は一体何を言ってるんだとでも言いたげな表情でこちらを見る翔。


「俺もやるの?」

「お前がやらないなら俺もやらん。お前がいない生徒会なんてスパイスの入っていないカレーみたいなもんだ。」


 生徒会をカレーに例えるのはどうかと思うが。


「まぁ、翔は生徒会長に向いてると思うよ。けど、俺はどうかなぁ。」

「またまた、三期も学級会長を務めた夕人さまが何をおっしゃいますか。」

「う・・・そりゃ、そうだけどさ。学級会長と生徒会副会長は大分違うぞ?」

「違わねぇよ。今まで通りにやればいいだけだって。」


 そういうもんか?なんだか違うような気がするんだけど。


「わかったよ。考えとくよ。」

「考えておくじゃない。これは決定事項だ。んで、立候補するためにはいくつかの条件がある。これはさっき先生に確認してきたから間違いない。」

「お前、行動速いな。」


 翔は自分から積極的に行動するということは、本気だということだ。


「まぁな、もう決めていたことだからさ。」

「そっか。」


 翔がやる気になっていて、しかも俺を推薦してくれる。嬉しいことだ。


「でな?その手順というか条件っていうのはだな。まず、推薦人を20人以上集めること。応援演説をしてくれる後見人を見つけること。この2つだ。ま、ちょろいよな。クラスのみんなが反対するとは思えないしさ。後見人もそう難しくはないだろう。」

「かなぁ?少し不安だけど。」

「案ずるより産むがやすし。行動あるのみ。虎穴に入らずんば虎子を得ず。」


 何を言いたいんだ?まずはやってみろと言うことか。


「とりあえず、推薦人を集めようぜ。もう専用の用紙はもらってきたからさ。」


 翔が2枚の紙切れをピラピラと俺に見せる。


「わかったよ。一緒にやってみるかっ。」


 翔と一緒に生徒会運営か。なんだかおもしろいことになりそうだ。




「みんな聞いてくれるかなぁ。」


 教室に戻るなり、翔は教壇に立ってクラスのみんなに声をかけた。言い忘れていたが、今は昼休みが終わる少し前。教室にはほとんどのクラスメートが揃っている時間だ。


「どうしたんだよ、杉田に竹中。2人揃ってさ。また何か面白いことでも考えたのか?」


 クラスの男子の一人が翔の呼びかけに応えるかのように返事をした。


「実はさ、そうなんだ。俺たち、生徒会役員に立候補しようと思うんだ。」


 教室の中が一気にざわつく。


「お前らならいいんじゃない?」

「きっとやると思ってたよ。」

「なんか楽しくなりそうだな、来年の学校祭は。」


 男女入り混じった声が次々と聞こえてきて、みんなから拍手をされる。既に俺たちが当選した時の話まで聞こえてくる。


「えーっと、それでだなぁ。この紙に俺と夕人の推薦人を書かなきゃいけないんだ、しかも自署で。だからさ、みんなお願いできるかな?」


 翔の一言でみんなが教卓に集まってきた。やっぱり翔の人望はすごいな。


「竹中は副会長なのか?」


 クラスの男子に聞かれる。


「あぁ。翔が会長で俺が副会長に立候補する。」

「そっかぁ。お前らのコンビって面白いもんなぁ。」


 そんな風に見えてたのか?それにしてもコンビって。


「期待してるよ。」

「面白いこと、やってくれよ?」

「なんで竹中が会長やらんの?」


 色々な声が聞こえてくる。


「あぁ、俺はさ、なんとなく生徒会長って感じじゃないんだよなぁ。ほら、学級会長も玉置さんあっての俺って感じだっただろ?サポート役、本当はそれが俺の役目なんじゃないかなって。」


 聞こえてきた質問にとりあえず応える。なんだか教卓の周りはクラスメートが集まってきていててんやわんやの状況だ。

 でも、みんな、我先にという感じで推薦書に名前を書いてくれる。そのおかげであっという間に20人以上の推薦人の署名が集まった。もしかすると、クラス1組分以上の署名があるかもしれない。署名欄が足りなくて、用紙の裏側にまで署名されている。すごく嬉しい。


「みんなありがとう。あとは俺たちの応援演説をしてくれる後見人っていうのをお願いしたいんだ。誰か頼めないかな?」

 翔の話し方はとても自然で、それでいて圧迫感も感じさせない。俺なんかより本当に人の上に立つべき人間だと思う。


「あ、じゃあ、杉田の後見人は俺がやるよ。」


 そう言ったのは稚内貴志わっかないたかしくん。1年生最初の定期試験で学年1位を取った秀才。それ以降は・・・翔が圧倒的すぎるだけだ。彼も常に10位以内をキープしている。


「ありがとう。嬉しいよ。」


 そう言って翔は稚内くんのところまで駆け寄っていって手を握る。


「いや、そんなことないって。ただ、杉田くんが適任だと思っただけさ。」


 なかなかクールな言い方だなぁ。


「えっと、じゃ、俺の後見人をしてくれる人は?」


 そう言ってクラスを見渡す。おいおい。翔の時みたいにすぐに手を挙げてくれないのかよ。悲しくなってくるぞ?


「しゃーないなぁ、バカ夕人。私が後見人をしてあげるよ。」


 俺のことをこんな呼び方する奴は小町しかいない。


「そっか、ありがとう。小町。お願いする。」


 そう言えば、さっき推薦人を募った時も小町がいち早く俺の書類にサインしてくれていたな。


「杉田が生徒会長に立候補するなら俺もしなくちゃいけないべさ?」


 ん?『べさ?』もしかして、足草か?声が聞こえたほうに目線を向けると足草が立ち上がってまるでウルトラマンが変身するときのようなポーズをしている。


「何を対抗意識燃やしてんだ?」

「お前ができるわけないだろ?」


 クラスメートからの冷たい意見にもめげず続けて言う。


「そういうことで、俺もこれから推薦書とかいうの貰ってくるから頼むべさっ。」


 そう言って足草が教室を出て行って騒めく教室。


「やべぇ、アイツ本気なんじゃね?」

「まっさかぁ。そこまでじゃないでしょう。さすがにわきまえてるって。」

「いや、だって足草だぞ?」


 様々な感情が言葉となって飛び交う。確かにあいつなら・・・何を考えてるのかわからない男だからな。やりかねない。けど、20人以上の推薦人なんて集まらないだろう。まして後見人なんて、絶対に無理だろう。俺はそう考えていた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


生徒会役員選挙。

今後の展開に大きな影響を及ぼしそうです。

それにしても、杉田が会長で竹中が副会長。

ついにこの二人の真価が試される日が来た。そういう感じですかね。


足草は・・・何をしてくれるのか。

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