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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第15章 でも、それが正しいですわ
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やれやれ・・・

主役特権でしょうか。

シャワーの時間です。


おや?みなさん、何かを期待していますね?


やれやれ・・・

 シャワールームは体育館近くにあるから、控室=用具室からは歩いてすぐの距離だ。


「いやぁ、それにしても茜の演技はすごかったなぁ。将来は女優とかも目指してみたら?」

「そっかな・・・必死にやっただけだよ。」


 あれ?いつもの茜と比べると返事がそっけない。


「でも、あの演技だったら小町も満足してるよ。」

「うん。そうだといいな。小町ちゃん、きっと悔しかったと思うから。」


 茜は小町の代役だったもんな。そのプレッシャーもあっただろうし、小町のためにも頑張ろうっていう気持ちがあったからこそってことかな。


「そうだね。でも、やっぱり茜の演技は上手だったよ。小町には悪いけど、あの色気っていうの?そういうのはやっぱ小町には難しいからなぁ。」

「あー、そういうこと言うんだ?小町ちゃんに言いつけちゃうぞ?」


 そう言って体ごと俺に迫ってくる。


「おいおい、あんまり近づくなって。今の俺は絵具まみれだから汚れるぞ?汗も結構かいたしさ。」


 そう、絵具は乾いている部分もあるけど、汗をかいている部分は乾くことなく湿っている。


「あ、ホントだね。でも、私も結構汗かいたし。どうせこれからシャワーはいるから平気だって。」


 そう言って俺の腕にしがみ付いてくるくる。


「おい、だから、今はダメだって。」

「今はぁ?」

「いや、だからさ、絵具が付いてるからやめろって。」

「じゃ、絵具がついてない時なら?」


 そう言って斜め下から俺の顔を見つめてくる。


「その時もダメだ。」

「えぇ~、イジワルだぁ。夕人くんてばイジワルだ。」


 そう言って俺から離れて行ってプイッと横を向く。まったく。茜はどこまで本気で言ってるのかわかったもんじゃないからなぁ。


 あの劇の最中の茜は本当に綺麗だった。そうだ、俺は茜とキスしたんだ。それを思い出すと今さらドキドキしてくる。茜は美人だし、性格もいい。二年生の男子の中では学年でトップクラスの美女として認知されていることは間違いない。そんな茜と劇の演出でとは言えキスしたわけだ。役得と言ったらそれまでだけど・・・でもなぁ・・・その前にもキスしてるし・・・茜には好きだって言われたし・・・あの時は、なんだかうやむやになっちゃったけど、俺、告白されたんだよな?


「ねぇ、何考えてるのかなぁ?」


 ふと気が付くとシャワールームに着いていた。ここは男子と女子のそれぞれ別のシャワールームになっている。本来、ここは生徒の使用は禁止となっていて普段から施錠されている。だから入るのは初めてだ。今回の演出上、俺が絵具まみれになるということで翔が直接交渉して使用許可を取ってくれている。そのカギもさっき預かってきた。


「いや・・・ちょっと・・・ね。」

「ふーん。ね、一緒に入ろっか。」

「あぁ・・・いやいや、何言ってるんだよ?それはダメだってっ。」


 いきなり何を言い出すんだよ。


「えー、だってさ、誰か入って来たら怖いじゃない。だからさ、見張り?そんな感じでいてくれると助かるんだけど・・・ダメかな?」

「鍵かければいいだろ?こうやって、男子用と女子用に分かれてて別々のカギがあるんだから。」


 何を言ってるんだよ?外から見えるわけでもないんだからさ。


「そうだけど・・・なんかイヤなの。」

「はぁ・・・なんでだよ。大体、俺もさっさと絵具を洗い流したいんだって。さっさと入ろうよ。もちろん別々に。」

「わかった。じゃ、先に入ってきていいよ。私ここで待ってる。夕人くんは私がシャワーの間ここで待ってるってことで。」

「はぁ、それならいいけど。」


 そういって、男子用シャワールームのカギを開けて中に入る。その時、後ろからドンッと突き飛ばされ、勢いよくシャワールームの中になだれ込むように入ってしまった。転ばなかったからよかったものの・・・突き飛ばしたのは茜か?


「あいててて・・・ちょっと勢いよく押しすぎたかなぁ。」

「え?茜?なんで?」


 俺を突き飛ばしただけじゃなくて、一緒に入ってきたのか?ここに?マジで?どういうつもりだよ?


「なんで茜もいるんだよ。」


 冷静を装って茜に質問する。


「え?・・・あははぁ~、なんでかなぁ~。」


 そう言って頭に手をやりながら誤魔化して笑う。そして素早く立ち上がり、後ろ手に入り口の鍵を閉める。


「お、おい。何してるんだよ。」

「・・・だから・・・一緒に・・・」

「バカ。何言ってるんだよ。ふざけてないで女子用のほうに行けって。」

「ふざけてないっ。」


 大きな声で否定する茜。そのあまりの剣幕に何も言えない俺。


「怖いの・・・狭いところは・・・」


 閉所恐怖症?狭い個室なんかじゃ恐怖を感じるっていうアレのことか?


「閉所恐怖症なの?」


 コクンと頷く茜。そっか。それはきついのかもしれないな。


「これでも少しは良くなったんだよ。前は家のトイレとかもダメだったから。」

「そうなのか。それはシンドイな。」


 そう言いながら立ち上がる。


「学校のトイレとか・・・我慢して使ってるし。旅行とかこの前のお泊り会とかも頑張ったんだけど、やっぱりまだ怖くて・・・だから、話とかしながらだったら・・・その、何とかなるかなって。」


 そっか。ふざけてたわけじゃないのか。けれど・・・この状況って・・・誰かに見られたら言い訳のしようがないぞ?


「わかったよ。ちょうどいい具合にシャワーの場所は二か所あるからさっさと終わらせよう。そして早く出よう?」


「うん。」


 そう言って入り口近くのスペースに入っていく茜。タオルと着替えは近くにあるテーブルに置いたみたいだ。


「やれやれ・・・」

ここまで読んでくださってありがとうございます。


茜の秘密が一つ明らかになりました。

閉所恐怖症。

その理由が気になるところです。


みなさんご期待のお色気シーンは次回以降に持ち越しです。

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