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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第14章 バッカじゃないの?
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そこまで割り切れるもんなのか?

学校祭の演劇。

入れ込み方は人それぞれです。


ただ、クラスの雰囲気がよければ協力してくれるクラスメートが増えるものだと思います。

 その日の放課後。翔と茜を呼んで演出についての相談をしていた。もちろん、小町もいる。


「相談ってのはさ。おときの全裸シーンについてだよ。」


 おときというのは小町が演じる役名のことだ。俺が演じるのはズク。・・・不思議な名前だ。モズクみたいな名前だし。


「あー、それな。俺もさ、どうしたもんかと思ってたんだよ。」


 思ってただけなのかよ。


「私はね。音声だけで対応しようかなって。」


 ふむ。茜はそう言うがそれではインパクトがないだろう。


「夕人は考えてるんだよね?」

「お?それは聞きたいな。」


 翔が乗ってくる。


「でしょう?そこで相談なんだよ。俺が考えてるのはさ・・・」


 朝練の時に小町に話した内容を説明する。


「なるほどなぁ。それなら小町も脱がなくていいんだな。」


 いや、脱ぐシーンとかはあったっけ?


「だから、お前は小町って呼ぶなよ。」

「相変わらず、つれないねぇ。」

「まぁまぁ、それで、どこに使うの?その仕掛けは。」


 茜が毎度のことのように翔と小町の慣れあいをサラッと流す。


「うん、それが大事なんだ。俺はさ。家の縁側に作るといいかなって思うんだ。障子の代わりに使えないかなって。」

「お。それはいいなっ。それだと、あんなシーンやこんなシーンまで作れるかもしれないしな。」


 翔が何を考えてるのかわからないが、何かを閃いたことに間違いはない。


「何考えてるの?」


 小町が翔に冷たい目線を送る。


「あぁ、物語では描かれてないところあるだろ?例えばあっという間に三年経つとことかさ。そういうとこでちょっとだけラブシーンを入れると観客の食いつきが良くならないか?」

「「ラブシーン?」」


 女子二人が声を合わせて言うもんだから、屋上にいる他の生徒たちから白い目で見られた。


「えっと・・・それは小町ちゃんと夕人くんの?」


 茜が当然の質問を投げかけてくる。


「いや、ズクとおときの、だよ。」


 翔は事もなげに答える。


「そうだけど・・・結局はあの二人がやるんじゃないの?」


 茜は『分かってるけど・・・』と何度も言っている。


「まぁ、これは俺の希望なんだけど、二人が嫌ならもちろんカットだな。」


 そう言われて、俺からオッケーは出せないだろう?そう思って小町のほうを見る。小町も同じことを考えていたのか俺のほうに目線を送ってきた。


「・・・内容によるよ・・・」


 小町が俯きながら絞り出した答えはこれだった。


「だよなぁ。まさか、中学校の学校祭で濡れ場ってわけにもいかないしさ。そこはソフトタッチに行きたいよな。」

「ソフトな感じ?」


 茜が翔に聞き返す。


「そう、せいぜいキスくらいだろうなぁ。それで観客は大盛り上がり間違いなしっ。」

「キスか・・・」


 小町が怖い顔をしながら考えている。俺からは何も言えないぞ。


「とは言っても実際にする必要はないんだ。だって影絵だろ?なら、顔をちょっとずらしても写る像はたいして変わらないからさ。でも、どうしてもしたいならラップを使うっていう手もある。」

「ラップ?」


 茜が不思議そうな表情で話を聞いている。小町は真剣な表情だ。俺は・・・無表情を装っている。


「そう。ラップを口に当てて直接触れないようにするんだ。まぁ・・感触は伝わるけど。そこらへんは演出担当の茜次第かな。写っている像が自然に見えるならどうやっても構わない。」

「そう?なら、何回もリハーサルしないといけないね。」


 茜はどういうつもりでそんなことを言うんだ?リハーサルって・・・何回も小町とキスするってことか?


「わかった。それくらいならできると思う。」


 一大決心をしたように小町が言う。そりゃそうだよな。学校祭の劇で生徒全員が見守る中で公開キスだぞ?

 うわっ、よく考えたらすごいことなんじゃないか?


「いや、待ってくれよ。それって必要なのか?」


 慌てて翔に詰め寄る。


「必要といえば必要だな。それに、最初に薄衣を脱ぐシーンも必要だから、少しだけ脚本を変える必要もあると思ってる。だって、脱ぐシーンもその影絵を使わないといけないだろ?俺たちの小町を辱めるわけにはいかないんだから。」


 そりゃそうだけど・・・それだけで十分に歓声が上がると思うんだけどなぁ。


「わかった。それも含めて杉田と茜には脚本の変更をお願いするよ。二人がいいと思った内容なら夕人も・・・・私も大丈夫。ちゃんとやるよ。」


 おいおい、本気か?俺は一言もやるなんて言ってないぞ?


「小町ちゃんがここまで言ってるのに、夕人くんがやらないなんて言わないよね?主演男優さん?」

「う・・・わかったよ。二人に任せる。練習するから・・・決まったら教えてくれ。」

「うんっ、任せといて。」


 茜が両手を握りしめて『任せてっ』と言ってくる。だぶん、茜に任せておけば大丈夫だろう。


「よし、じゃ、俺はこれから夕人の提案していたものを調達に行ってくる。明日にも全部そろえとくからさっそくリハな。茜はそれまでに演出と脚本の変更をお願い。二人はこのまま屋上で練習な。」

「わかった。」

「オッケー。」

「了解。」


 ということで、翔は山に芝刈りに、茜は川に洗濯に・・・ではなく、道具の調達と演出の変更を行うために屋上から去っていった。残された俺と小町はというと・・・


「じゃ、練習しよっか。決まってないこと考えても仕方ないしね。」


 小町は全く気にしていないみたいだ。


「お、おう・・・でも、いいのかホントに。あんな演出になって・・・」

「いいよ。そのほうが面白そうだし。それに本当に脱ぐわけじゃないんだしね。」


 いや、そっちもそうだけど。


「いや、そうだけどさ。ほら・・・キスって・・・」


 やっぱりイヤなんじゃないか?ある意味公開処刑なんだぞ?


「私は・・・ありかなって思ったよ。茜が演出してくれるんなら安心だし、演技での話だからね。」


 そういうもんなのか?俺はやっぱり、どうなのかと思うんだけどなぁ。


「そうなのか?いや、確かに茜が演出って言うので安心感はあるけどさ。」

「夕人は、イヤなの?」


 そう言いながら俺の顔を下から眺めて笑顔で聞いてくる。


「いや・・小町がいいなら。」

「だって、これは演劇なんだよ?その中での出来事は全部、ズクとおときの間で起こったことなんだよ?夕人と私がしたことじゃないの。言ってることわかる?」


 わかるけどさ。言いたいことは分かるけど、そこまで割り切れるもんなのか?


「わかったよ・・そう思うことにする。」

「そうだよ。じゃ、始めよっか。」


 割り切れと言われて簡単に割り切れないとこもあるけど・・・テレビドラマに出てる俳優さんってすごいんだなぁ・・・なんて考えていた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


キスシーンですか。

最近こういう展開多くないですか?

それは私が悪いのですか?


いえ、翔が考えたことで、私が考えたことではありません。


以上です。

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