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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第14章 バッカじゃないの?
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私がやるわ

学校祭演劇の配役決定の場面になります。


火の鳥に配役は・・・何がありますかね。

 この後圧倒的多数を獲得した火の鳥・羽衣編を演じることに決まった。

 そうと決まると中学生の行動力は素晴らしい。さっさと提案者の翔を監督に決定し、美的センス抜群という不思議な理由で演出は茜に決定。配役をどうするかということになっていった。その配役というのが意外に少ない。

 ・主役(男女一名ずつ)

 ・地侍(三名)

 ・ナレーション

 何とたったの六名。あとは裏方。そして決定権は監督にほぼ委ねるというクラスの意思。恐らく立候補制にすると足草問題が勃発するということなんだろう。監督に人事が委ねられた時点でこの先を仕切るのは翔の仕事だ。俺は教壇から降りて翔に全権を移譲する。


「さて、俺が監督をやるってことなったんで、ここからは俺が進めるね。で、さっそくなんだけど、主役の女の子は本当は茜にやってもらいたいんだよな。何といっても、この劇の女主役は美人っていう設定なんだよ。だから、演出ではなくて主役をやってもらいたいんだけど、どうかなぁ?」


 なるほど。主役は美人か。つまり茜は美人っていうことを宣言したわけだ。なかなかやるな。でもその言い方だと一部の女子から反発が出るんじゃないのか?ほら、案の定・・・


「えぇ~、それってどうなの?美人って言ってもさ、他にもいるじゃん。玉置さんもそうだし小町だってそうじゃん。」


 うむ。否定はしないぞ。でも、あとは物語のキャラとのすり合わせだと思うんだよな。


「いや、そうなんだけどさ。髪が長いっていう設定もあるんだよ。茜なら肩くらいまであるし。」

「それなら小町もだよ。ほら。」


 そう言って小町の近くの女子が小町の結んでいた髪をほどく。


「え?なにするのっ。」


 ポニーテールにされていた髪が一気に解かれる。確かに。小町の髪は長い。髪を下ろすと腰までとはいかないが、背中の半分くらいまでの長さがある。


「ちょっと、なんで勝手に・・・」


 男子から歓声が上がる。これって、小町で行っちゃえ的な歓声なのか?


「むむ、確かに小町の髪は長い。しかも美人とは言わないが可愛い。」

「ちょっと、美人じゃないってどういうことよっ。」


 小町がムキになって反論する。相変わらず、こういうところが可愛いんだよなぁ。


「それは言葉のあやということで・・・」

「理由になって無いっ。」


 小町が口を尖らせてフンッと横を向く。


「まぁまぁ、小町ちゃん。そんなに怒らないで。私は主役とか、そもそも劇とか苦手だからやらないから。ね?それに、小町ちゃんに合ってると思うけどなぁ。」


 茜がその場を取り繕うために行ったのではなく、本当に苦手だから勘弁してほしいっていう表情でいう。きっと、思っていることを素直に言っているんだろうな。


「え?マジ?じゃ・・・どうすっかなぁ。先に他の配役でも決めるか?」


 その後あっという間に地侍の三人は決定した。クラスでも比較的お調子者の三人。もちろん足草は入っていない。あいつが入るとまとまるものもまとまらないからな。


「次は主役の男だな。これは俺から提案があるんだよ。」


 翔が何か企んでいるようにクラスの皆に提案する。


「この役ってさ、ちょっと頼りなさそうなのに、いざとなると頑張っちゃうような奴なんだよな。でさ、そんなヤツ俺は知ってるんだよ。」


 ほう、誰だ?そんな奴クラスにいたっけ?


「だからさ、夕人。お前やれ。」

「は?」


 まったく予期してなかったから驚きすぎてアホな反応しかできない。


「あぁ、そう言えばそんな感じかもね。」

「うん、悪くないかも。」


 なんで否定的な意見が出ないんだ?


「俺がやってもいいぞ?」


 足草がそう言った途端、クラスの全員からブーイングが起こる。みんなの気持ちはわかるけど、もうちょっと穏やかに・・・


「っていうことで、夕人に決定な。」

「「「異議ナーシ。」」」

「あ、おい。ちょっと待てって・・・」

「夕人よ。クラスのみんなの総意だぞ?それを無視するのか?」


 翔が多数決という数の暴力を押し付けてくる。


「いや、でも、俺なんかがさ。」

「まぁまぁ、やってみろよ。俺たちも大道具係とかやるしさ。女子たちも衣装とかそういうの手伝ってくれるだろうしさ。」


 男子から応援の声が上がる。


「そうだよ。竹中くんなら結構いい感じかも。」

「だよね。イケメン過ぎないのがまた、いいかも。」

「おい、イケメンじゃないのは自覚してるけどさ。それって褒めてないよね。」


 女子の一言っていつもきついんだよなぁ。


「なんか漁師っぽいから。」


 なんだそりゃ?意味が分からない。


「あ、実は主役の男は漁師という設定だ。ピッタリだな、夕人。」


 翔が親指を立てながら俺に合図を送ってくる。


「そうだよ、お前やれよ。」


 もうクラスの雰囲気は完全に俺で決定だ。この状態で拒否なんてできないだろ・・・仕方ない。腹をくくるか。


「わかったよ・・・みんながそこまで言うなら、やらせてもらう。」


 わーっと拍手と歓声が起こる。俺ってクラスのやつにこんな風に思われてたのか。ハァっとため息を吐く。


「さぁ。男の主役は決まったから、あとは女子だね。」


 本来は翔が言うセリフなんだろうけど、茜が代わって言った。確かに、女子の役を決めるんだから、女子が仕切って進めた方がスムーズかも知れないな。


「それで、私は申し訳ないんだけどちょっと無理かなぁ。今までこういった演技とかしたことないし。」


 よく言うよ。あの時の演技はすごかったっての。


「えー、茜がやらないんじゃさ、もう小町しかないじゃん。」


 女子が口々に小町押しを宣言する。


「小町ちゃん、やってみない?」


 茜が笑顔で頼み込む。


「・・・わかったわよ。私がやるわ。」


 嫌々だけどみんなが言うならと言いたげなセリフだが、顔がまんざらでもないと語ってるぞ?


「よぉーし、これで決定だな。じゃ、そういうことで学校祭を盛り上げていこーぜっ。」

「「「オーッ。」」」


 クラスがまとまったような気がした。

 翔の人心掌握術っていうのか?そういうのは本当にうまいよな。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


夕人がクラスで受け入れられているということがよくわかる瞬間でした。

そして、夕人の顔って漁師っぽい。

さて、皆さんはどんな顔をイメージしたのでしょうか。


イラストなんかを見せてくれると感激です。

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