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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第2章 気がつけば・・・
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可愛くしてたほうがモテるんだよ?

先輩(女子)にからまれ続ける竹中。

でも、一年前とは違って友人たちが積極的に支えてくれているようです。


この事件は無事に解決していくのでしょうか。


ツライことがあっても仲間がいれば耐えられる。

大切なのは自分を思ってくれる仲間。

だから、仲間を思いやる心が大切なんです。

 五月の連休もおわり、ようやく桜が満開な頃。ゴールデンウイークとは言ってもせいぜい四連休くらいだ。もう少し長い休みが欲しいとは思うけど仕方がない。祝日が増えるなんてことは考えられないし。

 とにかくそんな頃のホームルームでの出来事。


「来月は、宿泊研修があります。そろそろ、細かい内容を決定していく必要があります。」


 担任の竹原先生が口火を開く。

 宿泊研修が六月にあるのは知っていた。ただ、その内容がなかなか教師たちから伝わってこないからもどかしかった。だから、いざ、内容が発表されるとなると、それに対する熱気が教室中を支配するのは当然のことだ。


「今年は、一泊二日で小樽に行くことになりました。」

「え・・・小樽?なんか近くね?」

「電車で三十分じゃん。」

「もっと遠くじゃないの?」


 あちらこちらから不満が噴出してきた。けど、バスで一泊二日ならその程度が限界だと思うんだけどなぁ。


「静かにっ。とにかく、今日は宿泊研修の際の班を決めたいと思います。班の数は全部で六班。六人の班と七人の班を作ってください。」


 竹原先生が話し終わる前には、凄まじい喧騒になっていた。


「やれやれ、やっと班決めか。遅かったなぁ。」

「だよね。班くらいもうちょっと早く決めててもいいよね。」


 小暮さんと同様に盛り上がりたかったんだが、俺はあまり浮かれてもいられなかった。相変わらず、椎名先輩からの攻撃は続いていたし、村雨先輩も椎名先輩みたいな攻撃はしてこないが一緒に現れるようになってきていたからだ。けど、以前みたいにアホのような攻撃は少なくなった。その代わりなのかどうかわからないが、学外で待ち伏せされることが多くなった。特に登校時の待ち伏せはめんどくさいことこの上ない毎日だった。


「でさ、竹中くんは誰と班組むの?」


 小暮さんの一言で現実に戻らされる。


「さぁ、杉田と一緒がいいんだけどね。あとは・・・どうだろうなぁ。」

「むむっ、われを呼んだかね?」


 おお、杉田。良いところに来た。でも、我ってなんだよ。


「また、一緒の班、組もうぜ?オリエンテーリングの時のようにさ。」

「そう、慌てるなよ。俺もそのつもりだって。」

「杉田ぁ。」

「竹中ぁ。」


 しっかり抱き合って涙する二人・・・なんてことにはなりませんよ、ええ、もちろん。お互いハイタッチの変形版、グータッチをしただけだ。


「仲いいんだけど、なんだかねぇ。」


 小暮さんも呆れている。


「まま、そういうなって。それより小暮さんはどうするの?」

「私はね、環菜ちゃんと小町ちゃんかな。他は決まってない感じだよ。」


 ブイサインを出しながら言ってくる。


「ならさ、一緒の班にしようぜ?竹中いじりしようよ。」


 あれ?杉田ってこんなキャラか?


「お、その提案、乗ったぁ。」


 この勢いは青葉さんだな?お約束の見えないふりをしようとした瞬間。


「おーーい、いい加減飽きたって言ったよね?」


 その言葉と同時に、腹部にアッパーが入った。結構、力があるんだな。青葉さん。ちっちゃいくせに。


「小町ちゃん。女の子は可愛くしてたほうがモテるんだよ?ね、環菜ちゃん。」

「べ、べつにモテなくてもいいんだよ。」


 何をいまさら赤くなってんだか。


「ま、男子もその方が良いって言うなら考えないでもないけどな。」


 ソッポを向きながら言う青葉さん。それは俺と杉田に聞いてるのか?


「まぁ、俺には実花ちゃんがいるからなぁ。」


 なんというノロケだ。殺意が湧いてくるな。


「た、竹中は、どうなんだよ。」


 俺に聞くかぁ?


「そうだなぁ。今の青葉さんの感じも嫌いじゃないなぁ。でも、小暮さんの言うことも一理あるかなぁ、とは思う。」

「なんだよ?結局どっちなんだよ?」


 何ムキになってるんだよ?


「いや、だからさ。どっちでも青葉さんなのは変わらないってことだよ。」

「はっきりしない奴だなぁ・・・。男ならはっきりしろよ。」


 そういってむくれだした。なんだかんだ言っても青葉さんの性格は可愛いんだよ。大体、俺と杉田は今のボーイッシュな青葉さんじゃなく、女の子らしい青葉さんも知っている。いつからこんな感じになったのかは覚えてないけど、どちらにしても『いい子』なのは変わらないんだよな。


「小町ちゃん、竹中くんにそういうこと聞いてもムダだよ?」

「そうみたいだねぇ。環菜ちゃん。」


 玉置さんと小暮さんは二人で青葉ちゃんを撫でている。


「まぁ、そこら辺のことは置いといてさ。これで五人だね。あと一人か二人だね。」


 そうだ、杉田。あと一人が問題だよなぁ。宿泊研修を楽しめるかどうかの重要な選択だ。間違えるわけにはいかないぞ?


「そうだねぇ。でも、そんなにヒドイ人っていないんじゃない?」


 いやいや、それは去年の足草を知らないから言えるセリフだ。玉置さんは苦笑いしてるけど、俺と同じこと考えてるんだろう。



 去年の春。健康診断と時を同じくしてこんな検査があった。ギョウチュウ検査と呼ばれる検査だ。これは、体内に寄生虫がいるのかどうか調べる検査なんだが、配布されたシールを肛門にあてて、それを学校が回収。どこぞの保健所かなんかが検査をするというものだ。今考えるとなかなかえぐい検査なんだが、足草がまさかのことをやってくれた。朝にひねり出したものを丸々一本持ってきたのだ。これにはさすがにクラス全員ドン引きしたもんだ。まったく、思い出しただけで気分が悪くなってくる。そんなことがあったから、しばらくは『ウ○コ野郎』とか呼ばれてたが、さすがにそれは良くないと思って俺と杉田でやめさせたという経緯がある。

 結局は、その後の足草の行動から『忘れ物キング』なんて不名誉なあだ名が定着したわけだが・・・。



「何考えてるの?」

「どうせ、あたしのことが小さくて見えないなとか考えてたんだろう?」

「いや、今は考えてなかった。」

「今はぁ?じゃ、いつもは考えてるのかよ?」

「違うって。今のは言葉のあやだよ。」

「ふーん。どうだかねぇ。」


 そんな馬鹿なやり取りを遮るように声をかけてきた子がいた。


「あの・・・私も一緒の班でいい?」


 みんなで声のしたほうに振り返った。そこにいたのは北田さんだった。


「あ、なっちゃんじゃない。」


 小暮さんはクラスの全員を名前からとったあだ名で呼ぶつもりなのかな?


「これでちょうど六人か。」


 そう言ったのは杉田だ。確かに、これでちょうど六人だ。ん?玉置さんの表情がいつもとちょっと違う?そう思った瞬間に玉置さんが口を開いた。


「そうだね。じゃ、このメンバーで行きましょうか。」


 あれ?俺の勘違いだったかな。玉置さんから感じた違和感は。


「いいんじゃないの?。」


 杉田がこういう時に反対するわけがないんだが、あいつのノリもいまいちのような気がする。


「ありがとう。よろしくね。」


 そう言って微笑む北田さんは、俺には普通の女子に見えた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


事件は解決していませんが時間は流れていく。

そんな感じの話になりました。


宿泊研修というイベントが始まるみたいですね。

何か、新しい展開が起こりそうな気配を感じます。

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