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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
番外編2 ifと言う世界があったなら
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番外編2-3 コーヒーって意外にお高いのですよ?

環菜と夕人はどこに移動したのでしょうか。

それに話の内容っていうのも気になりますね。

「ここ?」

「うん、ここ。」


 そこはいわゆる喫茶店というお店。ガキンチョの俺は存在こそ知っていたものの今まで入ったことはなかった。うん、中学生の俺たちが入ってもいいところなのか?ここって。


「喫茶店だよね。ここ。」

「そうだよ。前にお母さんと来たことあるんだ。」

「ふーん、俺はこういうとこに入ったことないんだよ。」

「そうなの?大丈夫だよ、ここのマスターさんは優しい人だから。」


 そういう問題なのか?っていうか俺コーヒーとか飲めるかな。マスター?誰だそれは。

 いろいろな不安が頭をよぎったが、とりあえずは環菜の顔を見続けている。


「そっか・・・」

「あ、大丈夫。コーヒーも苦くないし、あんまり高くもないよ?」

「どのくらい?」


 貧乏性みたいだな、俺の聞き方。俺の財布の中には小銭程度のお金しか入っていないはずだから仕方がないよな。


「えっとね、私たちだと一杯二百円にしてくれるよ。」

「それってどういうことだ?俺たちだと?」

「うん、学生さんもきてくれるようなお店にしたいんだって。それで、中学生は二百円。高校生は三百円なんだって。」


 へぇ。なんか良心的なお店なのかな。とはいっても、相場がわからない俺には意外に高いんだなっていう感じしかなかった。だって、缶ジュースは百十円なんだぞ?でも・・・涼しいだろうからな、公園なんかよりはずっといい。


「わかった、いいよ。入ろっか。」

「うん。」


 そう言って環菜はドアを開けて入っていく。俺も恐る恐る中に入った。


「いらっしゃい。お、環菜ちゃんじゃない。元気かい?」


 気のいい感じの男性が声をかけてくる。笑顔が素敵なおじさんって感じの人だ。この人がマスターっていう人なのか?名前じゃない、よな?


「うん、おじさん、私は元気だよ。」

「そっかそっか。今日は暑いからね。いつものでいいのかな?って今日は彼氏を連れてきてくれたのかい?」


 彼氏?なんだそりゃ?いきなりすごいことを言われたと思うのだけれど、どうしてかうまく言葉が出てこない。


「ち、違うよ、彼氏とかじゃなくって友達。」

「そうかいそうかい。こりゃ早とちりしちゃったな。ごめんよ?」

「はぁ・・・」


 あっけにとられて言葉も出ない。少し残念なような、でも安心したような。そんな気持ちだった。


「なぁ少年、君は何を飲むかな?今日は暑いからオススメのアイスコーヒーかな?」

「そうしよう?ね?夕人くん。」


 環菜は場慣れしているみたいだけど、俺は初体験の連続だ。ビビりすぎて何も言えない。


「あ、うん。じゃ、それでお願いします。」

「はいよ。じゃ、今日は他のお客もいないし、特別にサービスしちゃおう。環菜ちゃんがお友達を連れきてくれたしな。」

「え、いいの?ありがとう、おじさん。」

「いいってことよ。じゃ、できたら持っていくから、好きな席に座って待っててな。」


 そう言っておじさんはカウンターに歩いていく。俺と環菜は窓辺の二人がけの席に向かい合って腰を下ろすことにした。


「ここ、良く来るの?」

「そうでもないよ。お母さんと何回か来ただけ。」

「ふーん、でも名前も知ってるみたいだったし。」

「うん、あ、おじさんはね、私と同じマンションの人なの。だから知り合いってわけ。」


 なるほど。お店に慣れているっていうわけじゃなくて、おじさんと話すのに慣れているってことか。ん?この言い方だと語弊があるか。


「そっかぁ。」


 なんとなく緊張の糸が切れたようになって大きく息を吐いた。


「やっぱり、緊張するよね。」

「そうだね。緊張するよ。」

「私もね、友達と来るのは初めてだから、ちょっと緊張した。」

「そうなの?小町とかと一緒に来たりしないの?」


 俺はどうして小町って言ったんだろう。


「え?小町ちゃん?・・・ん、ないよ。」


 急速に環菜から元気が失われていくように感じた。小町の話題はあまりしないほうがいいのかな。


「そっかぁ。それにしても、こんなところにこういうお店があるなんて知らなかったなぁ。」


 そう言って話題を変えながら中を見回す。木目が強調された壁に絵がかけられていて、オブジェのように本棚が置かれている。流れている音楽は詳しくは知らないけどクラシック音楽みたいだ。中学生の俺がいうのも変な感じだけど、すごくオシャレで温かみのあるお店。そんな感じだ。


「ね?結構いいところでしょう?」


 環菜が元気を取り戻したかのように笑顔で話しかけて来る。


「そうだね。いい感じかなって思うよ。」

「お、少年。ありがとうな、おじさんは嬉しいよ。」


 そう言ってアイスコーヒーを二つとサンドイッチを持って来てくれた。


「え?サンドイッチなんて頼んでないよ?」


 環菜が驚いたようにおじさんに言った。


「サービスするって言っただろう?いいんだよ、気にしなくて。ゆっくりして言ってくれよ。で、できればコーヒーをお代わりしてくれると、おじさんは嬉しい。」


 そう言って笑いながらカウンターに戻って行った。


「ありがとう、おじさん。」

「なんかすごいな。サービスって言ってたけど、コーヒーも量が多くない?」


 なんていうかジョッキみたいなコップに波波に注がれている。


「うん、すごいね。私も想像以上。」

「これで二百円でいいの?」

「多分・・・」


 環菜もちょっと自信がなくなったみたいだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


移動先は喫茶店でした。

環菜の知り合いが経営しているお店。

それにしてもこんなに安売りして、平気なんでしょうかね。

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