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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
番外編2 ifと言う世界があったなら
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番外編2-1 お友達は大事にしなきゃいけないわね。

 歴史には『もし・・・ならば』なんて言葉はない。そう言われる。でも、もしあの時、あんなことをしていなかったならば、結果は違ったかもしれないのに。そんな風に思うこと、誰しも経験があるはず。

 絶対に有り得ない世界。

 でも、もしがあったなら。

 そんな話です。

 あくまで『もしかしたら』の話になるので本編とはつながらない話です。


 今回はノートのお話。

 夕人のカバンに入っていたノートが誰のものだったのか。それだけで話は変わっていきます。

 ちなみに今回のいたずらの犯人はみなさん御察しの通り、実花です。

 では、茜じゃないノートが夕人のカバンに入っていた場合をご覧ください。

 返事だけして再び荷物の整理に戻る。えぇと、洗濯物はこの袋にまとめて入ってるからいいとして、夏休みの宿題関係はっと・・・あれ?なんだこのノートと数学の問題集は。俺のじゃないなぁ。なんでこんなのが入ってるんだ?その問題集に『玉置環菜』と書かれていた。


「はぁ?環菜?なんで?」


 ノートと問題集を見て首をかしげる。


「どうして俺のカバンに環菜のものが入ってるんだ?」


 独り言を呟きながらノートの中をパラパラと見ていく。几帳面な感じの綺麗な字でしっかり、びっしりと書き込まれている。


「うーん、さすが環菜。しっかりと勉強してるな・・・ほとんど終わってるみたいだしな。」


 おそらくは夏休みの宿題のことを言っているのだろう。


「フーム。どうするか・・・」


 環菜のノートか・・・環菜なら家に帰ったらすぐに荷物の整理とかしてそうだからな。もう、これらがないことに気がついてるかもしれないな。ということは焦ってるだろうな。翔の家に電話してたりして。で、翔も一生懸命探したりしてるかもしれないな。そう考えると、俺のカバンに入ってたってことだけは教えておいたほうがいいのかもしれないな。うん、そうだな。電話だけはしとこうか。


「お母さーん、電話借りるよ。」

「はーい。」


 えっと、環菜の電話番号はっと・・・連絡網を見ながら環菜の電話番号を探し、プッシュボタンを押していく。なんだろう、妙に緊張する。


 トゥルルルルルルッ・・・・


 呼び出し音がしばらく鳴ったところで電話から女性の声が聞こえてくる。


「はい、玉置でございます。」


 この少し高めの声は環菜のお母さんかな。


「あ、夜分に申し訳ありません。竹中と申しますが、環菜さんいらっしゃいますでしょうか。」

「あら、竹中くん?いつも環菜がお世話になっています。ちょっと待ってね。」

「はい。お願いします。」


 定型文の様な会話が行われて保留音が流れる。

 この曲はなんだろう?聞いたことがある様な気がするクラシック音楽だけれど、曲名まではわからないな。


「ごめん、夕人くん。環菜です。」


 環菜が電話に出た。なんだか少し焦ってるみたいな声だけど、どうしたんだろう。


「あ、環菜?別に謝る必要もないけど。」

「ううん、待たせちゃったかなって思って。」

「そっか。いや、別に待ってないし、平気だったんだけどね。」

「そう?そっか。よかった。で、どうしたの?電話なんかかけてきて。」


 実は環菜の家に電話をしたのはこれが初めてというわけではない。委員会での連絡事項やら、クラスのイベントの打ち合わせのことなんかで何度か電話をしたことがある。それもあって、環菜のお母さんにも俺のことはよくわかってもらえてると思うんだ。


「いやさ、俺のカバンの中に環菜の問題集とノートが入っていたんだよ。」

「え?ほんと?良かったぁ。私、どこに忘れてきたんだろうって考えてたとこだったの。」


 環菜はホッとしたのか安堵の息を吐いた音がしっかりと聞こえてきた。


「だよね。どうしてかわかんないんだけどさ、入ってたんだよ。」

「ほんとだね、なんでだろう?」


 環菜にもその理由の見当がつかないのだろうか。


「うん、でも、俺にはちょっとだけ心当たりがあるんだけど。」

「私も。」

「じゃ、きっとそういうことだね。」

「かも、ね。」


 二人とも犯人の目星はついている。が、証拠はないというところだ。


「で、どうする?必要なら持って行くけど。」

「え?いいよ、わざわざ持ってきてもらうのも申し訳ないし。明日、取りに行くよ。」

「取りに来る?そっか。じゃ、うちはちょっと遠いからさ、どっかで待ち合わせしようか。」


 俺は軽い気持ちで言っただけだった。


「え?待ち合わせ?」


 環菜は驚いた様な声を上げる。その声を聞いて俺の方が驚いた。


「あ、あぁ。そう言ったけど、別にそんなに驚くことないんじゃない?」

「あ、うん。そうだね、ごめん。」


 環菜の声のトーンが少し下がる。


「謝ることもないけどさ。んじゃ、何時頃がいい?俺は明日から四日間は特に予定もないから、明日じゃなくてもいいけど。」

「ううん、私はいつでも大丈夫。私も明日は何も予定とか入ってないし。」

「そう?じゃ、昼過ぎとかにしようか?もうちょっと早い方がいい?」

「私は本当に何時でも大丈夫だよ。夕人くんの都合のいい時間で。」


 俺の都合のいい時間か。いつだろうな。


「うーん、そうだなぁ。じゃ、一時くらいでどう?」

「うん、それで大丈夫だよ。どこに行けばいいの?」

「そうだなぁ、どこでもいいんだけど・・・じゃ、区民センターの図書館なんかはどう?」


 学校の近くにある図書館ならちょうどいいかな。環菜も遠くないし、俺もそこまで遠くない。


「うん、じゃそれでいいです。お願いします。ごめんね。ありがとう。」

「いや、いいよ。じゃ、また明日ね。」


 ふぅ。なんだかいつもの環菜だったな。


「あら、もう電話終わったの?」


 母親が唐突に声をかけて来る。


「あ、うん、終わった。」

「誰?玉置さん?」


 なんでわかるんだよ。


「そうだけど?」

「ふーん、そうなのね。玉置さんと仲良くしてるの?」


 今日の母親はいつもより追求が多いな。どうしたんだよ。


「友達だからね。」

「そうね、お友達は大事にしなきゃいけないわね。」

「そうだね。」

「じゃ、ご飯にしましょう。」

「はーい。」


 とにもかくも合宿三日目はこうして幕をおろしたのだった。

さてさて、環菜編のifルートです。

どうなっていくのか。楽しみです。

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