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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第2章 気がつけば・・・
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いつかどこかで見たような景色

平穏な時間というのは、いつだって突然終わりを告げるものです。

その「終わり」の理由が人それぞれと言うだけで。


皆さんにもそんな経験、ありませんか?


けれども、覚えておいてください。

何かの「終わり」は必ず何かの「始まり」だということを。

 二年生になって二週間くらいたったある日の昼休み。北海道には桜の便りはまだ届いていないが、いつものような平和な日々が続いていた。


「おいっ、竹中ってのはいるか?」


 な、なんだ?突然教室に響く怒号。のんびりと小暮さんと話してた俺が驚いたことは言うまでもない。


 はて?こんな経験、以前にもあったような?一年生の時に似たようなことがあった。でも、あの時は俺じゃなくて玉置さんに用があった三年生の先輩が来たんだっけ?今回は、俺?しかも、この声って、女の声?


「おい、出て来いって。」


 なんなんだ?いったい。


「ねぇ、竹中くん。なんかやったの?」


 小暮さんが俺に聞いてくる。ってか、やったこと前提なのかよ?だけど、身に覚えがないことは答えようもないぞ。


「さぁ?なにもやった記憶がないけど。なんだろうね?」


 とりあえず、クラスのみんなが委縮してるようだから、事態の収拾を図らないといけないよな・・・。仕方がないなぁ。


「えっと、俺が竹中ですけど、なんでしょう?」


 そう言って席から立ち上がって声の主を見る。しかし、そこには記憶にない女子が立っている。しかも二人も。


「いいから、こっちに来いっ。」


 何が何だか、さっぱりわからない。なんで俺が呼び出されるんだ?


「はいはい、今行きますから。あんまり騒がないでもらえます?みんなビビっちゃってるでしょう?」


 俺も慣れたもんだ。思わず自嘲してしまう。


「わ、わかったわよ。とりあえず、ちょっとこっちに来てよ。」


 声の主の女子は、幾分声のトーンを落として、俺を呼ぶ。教室の入り口まで移動して、その女子と向かい合う。思ったより、背は高くない。160センチ位あるかどうか。髪は短くカットされていて、その髪型はバレー部員を彷彿させる。目鼻立ちはしっかりしていて、端正な顔立ちだ。しかし、その色はまるで雪のように白い。見慣れないその顔色に少しだけ違和感を覚えた。そして、彼女の目からは、強い意志を感じる。いったい俺に何の用なんだろう。


 もう一人の女子は・・・。そう思ってもう一人に目を向けると、色白女子の後ろに隠れるように立っている。そのせいか、あまりよく見えない。けど、身長は目の前の女子よりも少し大きめで髪は長めだ。不思議な組み合わせだな。思わずそう思った。


「あんたが竹中?」

「そうですけど・・・」


 いきなり左頬に衝撃が走る。いったいなんだ?平手打ち?なんで、殴られるんだ?俺は?唖然として、平手打ちをぶちかましてきた女子を見つめる。


「じゃぁね。・・・そうそう、あたしは椎名ローザっていうんだ覚えておきな。」


 そう言ってその女子たちが立ち去って行った。


「な、なんだぁ?」


 わけがわからないが、少しずつ怒りが込み上げてきた。


「なんだよ。わけがわかんねぇよ。」


 そう呟きながら、とりあえず自分の席に戻る。


「ねぇ、竹中くん。やっぱり、なんかやったの?」


 再度、小暮さんに言われる。


こっちが聞きたいよ。


「おれ、何かやったの?」



 放課後。

 さっきの出来事についてみんなと話していた。さっきの出来事というのはもちろん、俺が平手打ちを喰らった件だ。俺の周りに集まっていたのは、杉田、小暮さん、玉置さんに青葉さん。さらには一組の栗林さんまでいる。


「なんにも身に覚えはないのよね?」


 そう言ってきたのは玉置さん。


「あるわけないだろうよ。」


 俺もさすがに頭に血が上っている。


「けどさ、なんにもないのに平手打ちはしてこないだろうさ。」


 青葉さんの言うことは分かるんだけど、身に覚えがない以上何も言いようがない。


「・・・・・」

「え?なになに?また、竹中くん、面白いことになってるの?」


 状況がわかってない栗林さんだけが違うベクトルのテンションだ。


「いや、昼休みのことなんだけど・・・・」


 杉田が栗林さんに状況の説明を始めた。あの二人はとりあえず放っておこう。


「なんかさ、竹中くんに覚えがなくても、向こうは何かあるんだろうね。でなきゃ、あれはないでしょ。」


 小暮さん。だから、その何かがわからないんだってば。


「にしてもさ。いきなり平手打ちってないよ。なんか腹立つ。」


 青葉さんが怒ることないと思うんだけど、味方がいてくれるのはうれしい。


「どちらにしても、あれはひどいよね。理由も言わずにビンタなんて。」

「そうだよ、環菜ちゃん。あれはちょっとひどいよね。」


 あれ?いつの間に小暮さんと玉置さんは仲良くなったんだろう。


「いっそ、やり返しちゃえばいいんだよ、竹中。」

「それはダメだよ、小町ちゃん。男の子は女の子を殴ったらダメなんだよ?」


 小暮さんは正論を言う子なんだな。それにしても青葉さんとも仲良しなのか?


「まぁ、相手の名前しかわからないしな。理由も何もわかりようがないって。」


 そう言ったとき。


「あ、私、知ってるよ、その人。三年生の椎名先輩でしょう?すっごい色白の。」


 一斉に栗林さんに視線が集まる。


「え、おい。なんでお前が知ってるんだ?」


 杉田も驚きを隠せないようだ。


「よぉし、学年までわかったんなら簡単だ。あたしがいっちょやってきてやるよ。」

「おいおい、それはやめてくれよ。話がめんどくさくなるじゃないか。」


 今にも飛び出していきそうな青葉さんの腕を掴んでその場にとどめる。なんで、この子はこんなに熱い子なんだろうなぁ。初めて会った時はもう少しおとなしい子だと思ったのに。


「そうだよ。ダメだよ、小町ちゃん。」


 小暮さんは、青葉さんの頭を撫でながらなだめている。小暮さんが頭を撫でるのは平気なんだな。


「それで、その椎名先輩っていうのはどういう人なの?」


 玉置さんが本題に戻してくれた。


「えっと、私が知ってるのはね・・・・」


 栗林さんの説明は、どうにも話がごちゃごちゃしていてわかりにくかったんだが要約するとこんな感じ。


 一、名前は椎名ローザ(しいなローザ)。どうやらハーフらしい。

 二、女子バレー部のキャプテン。

 三、ちょっぴり(?)ヤンキー。

 四、美人だけど彼氏なし。


 ということだ。そっか、色白なのはハーフだったせいなのか。まぁ、四つ目の情報はどうでもよかったんだけど、この内容が一番詳しかった。栗林さんってもしかして情報通なのかな?


「で、もう一人の女子の情報は?」


 玉置さんは冷静だ。


「んとね。確か・・・・」


 こちらも不要な情報が多すぎたからまとめてみる。


 一、名前は村雨窓花むらさめまどか

 二、女子バレー部員。

 三、椎名さんの腰巾着。

 四、彼氏がいるのかは不明。


 すごいな。なんでこんなに知ってるんだ?うちの学校の番記者かなんかなの?


「村雨ってどこかで・・・。でも、この情報から分かるのは、あの二人が友達で同じ部活ということだけよね。」


 玉置さんは冷静に分析している。


「だね。これだけじゃ、なんで竹中くんにあんなことしたのかわからないよね。」


 小暮さんが身も蓋もないことを言う。


「ごめんなさい・・・」


 栗林さんがさっきまでの元気をすっかりなくしてしまったみたいだ。


「まぁ、何もわからないよりも前進したと思うけどな。」


 ナイスフォローだ。杉田。


「でも、やっぱり、俺には心当たりがないなぁ。」


 たとえ名前がわかったとしても、顔を知らないわけだから、俺にとっては何かを思い出しようがない。


「だからさ、考えたってしょうがないじゃない。部活に乗り込むしかないでしょ。」


 青葉さんは行動が先走り過ぎだろ。


「竹中くんには、まったく身に覚えがないのよね。しかも、二人の顔すら知らなかったと。」

「あぁ、玉置さんの言う通りだよ。だから困ってるんだよ。」

「あのさ。ちょっと思ったんだけどさ。」

「なんだよ、杉田。言ってくれよ。」

「竹中は知らないって言ってるけどさ、本当にまったく接点がなかったらわざわざ教室までくるもんかね?」

「そうはそうだね。」

「だからさ。なにか、どこかに見落としてるとこがあるんじゃないのか?」


 杉田の言うことはもっともなんだけど、わからない。


「つまり、普段の生活以外での接点ってこと?」


 なんてことを言うんだ、小暮さん。


「それじゃ、俺が二重生活をしているみたいじゃないか。」

「いや、ほら。塾とか委員会とか。そういうことだよ。それで・・・二重生活って何?」

「二重生活ってのは、昼と夜とで仕事が全く違うとか、文字通り二通りの生活をすることだよ。」


 相変わらず、すげぇな。杉田の的確な説明は。


「そっか。委員会よっ。私には後ろに隠れてた人の顔が見てなかったからわからなかったけど、村雨さんって言う名前、どこかで聞いたことあるって思ったのよね。」

「委員会ってことは、代表会議でのこと?」


 玉置さんはそういうが、俺には一切記憶にない。いつも寝てるからか?


「そう、確か、そうだったと思う。」

「けど、それが接点だとしてもさ、なんで、あんなことになるわけ?」


 青葉さんは苛立って貧乏ゆすりをしている。このまま乗り込んでもいいんだぞってを表情をしながら。


「うん、それなのよねぇ。」

「いや、みんな、迷惑かけてごめん。でもありがとう。俺も思い出してみる。何もないとは思うけど。」

「じゃ、私はそれとなく情報を集めてみるね。」


 これ以上の情報が集まる可能性があるの?栗林さん、ほんとにすごいな。


「めんどくさいけど、それが一番いいみたいだね。まぁ、乗り込むときは言ってよね。協力するからさ。」

「いやいや、それじゃ解決しないからさ。」


 青葉さんの押しの強さがちょっと怖い。


「でも、私にも心当たりないのよねぇ。委員会でのことは・・・。」


 玉置さんの言葉で、みんなの表情が暗くなる。手掛かりなしってことなのか・・・。


「ってことは、竹中が何かをやらかしたってわけじゃないのかね。」


 杉田の発言には救われるけど、いったい何が原因なんだろう。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


何処かで見たようなシーンになりました。

でも、今度の相手は同じ上級生でも男子じゃなくて女子。しかも、竹中に用事があった。

つまり、似て非なる状況ってことですね。


しかも、大きな違いが他にも。

あの時、竹中を取り巻いていた状況と違って今回は頼りになる友人たちがいる。


独りじゃない


すごく、大切なことなんだと思います。

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