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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第10章 Heated battle -白熱戦-
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オセロ大会という名の王様ゲーム

オセロ大会はまだまだ盛り上がるみたいです。

翔と夕人はただの傍観者です。

女たちの戦いです。


え?意味合いが違うって?

どうなんでしょうね。

「あ、そうだ。いい考えがあるよ?」


 そう言ったのは茜だ。どんないい考えがあるんだろう。


「なになに?どんな考え?」


 小町が興味津々といった感じで聞いている。


「えとね。杉田くんと夕人くんははっきり言って弱すぎてダメダメじゃない?」


 ひどいこと言ってるぞ?けど、事実だから何も言えない・・・


「うんうん、そうだねぇ~。」


 実花ちゃんまで乗ってくる。


「でね?環菜ちゃんと実花ちゃんは接戦だったじゃない?だから、最初の三戦はなかったことにして、四人でトーナメントにしない?そのほうが楽しそう。」

「あ、それいいかもね。」


 環菜が手をたたきながら賛同の意思を示す。そう言えば環菜に元気が戻ってきてるみたいだ。昼過ぎから元気がなかったのに、何かあったのかな?


「うん、それがいいかも。夕人たちじゃ勝負にならないもんね。」

「ね、どうかな?」

「いいよ、私は誰が相手でも負けないし。」


 小町のこの自信はどこから来るんだろう。


「あたしは環菜ちゃんに負けてるから環菜ちゃんがいいなら。」

「私は構わないよ?茜ちゃんのアイデアで行きましょうか。」

「さんせ~。」


 どうやら女子たちの中で勝負の内容が決まったみたいだ。それにしても、こうなると俺たち負け犬どもは何をしていればいいんだろうな。


「じゃ、組み合わせをもう一回決めなきゃね。じゃんけんでいいかなぁ?」

「うんうん、でもさ、優勝した時の・・・その、私のキスってのはやめない?」


 確かにねぇ。女子同士のそんな姿なんて見たくも・・・・いや、見たいかもしれない。


「そうだねぇ~、変えよっか。何がいいかなぁ。」


 いやいや、そのままでもいいんでないでしょうか。翔にも同意してもらいたくてアイコンタクトを送る。しかし、翔はこちらを見ていないようだ。


「そうだ、こんなのはどうかなぁ。」


 小町が何かを閃いたみたいだ。きっと何か恐ろしい内容を思いついたんだろうな。


「どうぞ、小町ちゃん。」

「えっとね、優勝者は一つだけみんなに命令ができるっていうの。」


 それはいわゆる王様ゲームというやつではないですか。それに何でもというのはいわゆる何でもですか?

 ・・・あ、俺には参加資格すら与えられていなかったんだ・・・ふと翔に目線を送ると俺と同じことを考えていたんだろう。俺以上にガックリと肩を落としている。


「うん、それは面白そうだね。でも、それってあの二人にも有効なの?」


 環菜が何を考えているのかわからないけど、もし俺たちにも適用されるルールならこれほど危険なゲームはない。


「いやぁ~、参加してない二人にはかわいそうでしょ。」


 ナイスです。実花さま。助かります。

「そだね。このゲームに参加してない二人には何の選択権もないけど、このルールを適用するのはかわいそうだよね。」


 小町っ、今までちっぱいとか言ってバカにしてすみませんでした。


「そっかぁ。そうだよね。ちょっと残念だけど、仕方ないか。」


 環菜ってちょっと怖いぞ。俺と翔にも強権を発動するつもりだったのか?優勝したら、何をやらせようと思ってたんだ?


「環菜ちゃん、あの二人にやらせたいことでもあったの?」


 茜がちょっとだけ意地の悪い質問をする。


「そういうわけじゃ・・・ないけど・・・」


 環菜がバツが悪そうに答えた。


「なら、四人でのルールにしようよ。ね?」


 女の子たちでルールは決まったみたいだ。あとは組み合わせを決めるだけみたいだけど・・・それも決まったみたいだ。まずは『環菜と茜』。次は『小町と実花ちゃん』という対戦カードになったみたいだ。

 さて、どんな結果になるんだろう。俺の予想としては茜の優勝かな。理由はさっき対戦した時すごく強かったから。あ、でも、小町も自信ありそうだったしな。・・・俺は弱いから予想しても仕方がないか。


「なぁ、夕人よ。誰が優勝すると思う?」


 やっぱり同じことを考えていたか。


「そうだなぁ・・・茜かなぁ。」

「なるほどね。俺は実花を応援するけどな。」


 ニヤニヤしながら俺の顔を見る。なんだよそれ。特に深い意味はないんだぞ?


「茜は強かったからなぁ。」

「お、小町‐環菜戦が終わったみたいだぞ?」

「よっしゃぁ~。」


 小町が両手の拳を上に向かって突き上げて喜びを表現する。ということは小町が勝ったってことかな。


「う~ん、小町ちゃん、強いねぇ。」


 実花ちゃんも驚いている。


「ホント。これは手ごわいね。」


 茜も次の対戦を意識しての発言だ。でも、それって実花ちゃんには負けないってこと?


「ダメだったぁ。小町ちゃん強すぎ。」


 環菜も完全敗北を宣言する。そんなに強いのか?ちょっとだけ盤面をのぞいてみる。うっわ。ほとんど黒じゃないか。この強さは尋常じゃないな。きっと環菜も俺より絶対に強いわけだから、俺が対戦相手だったら完封されるんじゃないのか?ってか、オセロに完封があるのか知らないけどさ。


「ふむ。オセロは角を取れば勝てるわけではないのか・・・」


 そりゃそうだろう?有利にはなるけど必ず勝てるわけじゃないよ。たぶん。


「じゃ、次の対戦行ってみようか~。」


 小町は元気だなぁ。今日は眠たくないのかな?


「次はあたしたちだね、茜。」

「そうだね、がんばろっ。」


 なんだか、爽やかな戦いになりそうな予感。しかし・・・


「へぇ~、そう来るんだぁ~。」


 と実花ちゃんが挑発する。


「まぁねぇ。ふふふ。」


 簡単に受け流す茜。思っていたよりも本気の勝負みたいだ。考えてみたら、俺たちの中でナイスなプロポーションを持つ二人だ。実花ちゃんはいつも茜を意識しているみたいだし、もしかしてライバル意識みたいなものを持っているのかな?茜はどう思っているのか知らないけど。


「あ、今のはマズかったかなぁ。」


 茜がマズい手を打ってしまったのか?俺にはあまりよくわからない。


「心理作戦かも・・・茜、強いよ。」


 小町が解説を始める。オセロってこんなに熱かったっけ?というかなんでこの四人はこんなに熱くなってるんだ?俺と翔のやる気とは明らかに始めから違ったけど、ここまで熱くなっている理由がわからない。


「う~~ん、これはちょっと勝てないかもぉ~。」


 実花ちゃんが諦めともとれる一言を漏らす。そうなのか?まだまだ分からないような気がするけどなぁ。そう思った途端、あっという間に形勢が茜に有利になっていく。あれよあれよという間に茜の勝利で終わった。


「茜ちゃん、つよぉ~い。」

「そんなことないよ、実花ちゃんも強かった。」


 なんだろう。すごく満足げな二人を見ているとこちらまでいい気分になってくる。


「そっか、決勝は小町ちゃんと茜だね。」


 環菜がマジメな顔でいう。本気でオセロ勝負になっているけど、今回のオセロ大会って遊びなんじゃないの?このままオセロ部でも作るつもりか?って思うくらい本気なんだけど。


「茜には絶対負けないから。」


 小町の顔からいつもの笑顔が消えていて茜のことをキッと見つめている。


「私も・・・負けたくないよ。」


 茜も笑顔はなく、小町のことをジッと見つめている。何だろうこの緊迫感は。


「私だって負けたくなかったのに。」


 環菜まで?もう試合は終わったじゃないか。もしかして二回戦をするつもりなのか?そうなると俺と杉田は何をしてたらいいんだろう。


「なぁ、夕人。茜と小町、気合入ってるなぁ。」

「そうだなぁ。なんだか不思議なくらい気合入ってるよな。」


 翔も感じたんだな、二人の不思議な感じ。少し異様な雰囲気で決勝戦が始まった。



「勝った方がみんなにひとつだけ命令できるんだよね。」


 茜が突然切り出す。小町に対してプレッシャーでも与えたいのかな。


「そうだよ。だから・・・負けられないの。」


 お互いどんな命令を出そうと思っているんだ?緊迫感が半端ない。


「これに勝てたら、私も変われる気がするんだ。だから小町ちゃんには負けない。」


 おいおい。これは夏休み中のお泊り会でのお遊びだよ?なんでそこまで?


「えっと・・・なんでそこまで・・・」

「夕人は口を出さないでっ。」


 小町に一蹴される。小町も本気だ。


「そうだよ。夕人くんは黙って見てて。」


 茜にも黙っているように言われた。なんだよ。全国大会の決勝戦みたいな雰囲気になってるぞ?いや、そういうのがあるのかは知らないけど。


「はぁ~、なぁ~んかすごぉ~く熱くなってるねぇ。普段は仲良しの二人なのにね。」


 実花ちゃんが俺の耳元でコソッと伝えてくる。


「そうだよね。買い出しに行った時もすごく仲良さそうに見えたからさ。なんでこんなに燃えてるのかなぁって。」

「そうだねぇ~。いろいろあるんじゃないのかなぁ。」


 いろいろねぇ。あの二人に何があるんだろう?性格は二人とも明るくて優しいし、何かで対立してるなんてとこは見たことないけどな。ただ、どちらが勝っても俺と翔はノーダメージだからどうしても他人事になってしまうんだよ。

 そうこうしているうちに試合が始まった。先手は茜で黒。

 序盤は黒が有利に進めているように見える。白の小町は茜の攻めに対して守る一方のように見えていた。中盤に差し掛かってきて小町が追い上げてくる。ほぼ互角のように見えるけど、どっちが優勢なんだろう。はっきり言って全然わからない。俺ならここに打つかな?というところに二人は打たないから、予想すらままならない。

 どうやら終局が近づいてきたみたいだ。うーん、茜に軍配が上がりそうに見える。けど、勝負は終わってみなければわからない。


「・・・・負けちゃった・・・」


 小さな声でそう宣言したのは小町だ。その差は二枚。ほどんど互角だったということだ。


「・・・ふぅ。勝てた。やったぁ。」


 そう言ってその場で飛び上がる茜。


「すごぉ~い、強いんだねぇ、茜ちゃん。」


 実花ちゃんも驚いたように目を丸くしている。小町は座ったまま動かない。下を向いたままだ。もしかして、泣いてる?


「ということで、第一回オセロ大会優勝は、茜ちゃんでぇ~すっ。」


 そう言って茜の手を取って高く上げる。う~ん、熱い戦いだった・・か?よくわからない雰囲気のままオセロ大会は幕を下ろした。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


オセロ大会は茜の優勝で幕を下ろしました。

茜は本当にオセロが強いみたいですね。

ということは王様ゲームの王様は茜に決まったということになるのでしょうか。


ちょっと安心できそうな結果でよかったと思っていますが、みなさんはどうですか?

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