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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第9章 act weird -奇妙な行動-
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母親たちの想い

あっという間に水着回が終了して夕食タイムに。

物足りなかったかた、ごめんなさい。

番外編か後々に追記するかもしれませんので、お楽しみに。


ところで、翔の家の広さはいったいどのくらいなのでしょうかね。

「いっただっきま~す。」


 時間は午後の5時。まさしく夕食時だ。

 絢爛豪華な夕食が並ぶテーブル。エビチリにパエリア、ロールキャベツに寿司。挙句の果てにはフライドチキンまである。いったいどうしてこんな豪華で多国籍な夕食になっているのかというと、俺たちがそれぞれ得意料理を披露した・・・なんてことはなく、親たちからの差し入れである。

 それにしても、だ。こんなにもバラエティーに富んだ夕食になるとは思ってもいなかった。それぞれの母親の得意料理が並んでいるのだろうけど凄すぎる。まるで、高級ホテルの食事のようだ。

 ここで誰の母親が何を持ってきてくれたのか挙げていこう。ちなみに全員揃って母親たちからの差し入れを玄関で受け取ろうと決めていた。それは茜からの提案で、『お母さまたちに失礼がないように』ということだ。やっぱり、茜はこういうとこに気が利くよな。さすがだよ。ということで、その時の様子を簡単に振り返って見ようと思う。


 まず始めにロールキャベツと野菜の御浸しを持ってきてくれたのは小町のお母さん。そして、俺たち全員から驚きの声が上がる。小町のお母さんはとても若い。どう見ても二十代にしか見えない。いや、下手したらお姉さんにしか見えない。小町の見た目がとっても若い(?)のも納得だ。


「あらぁ~、あなたが竹中くんね?やっと会えたわ。小町からいろいろ聞いてるから、一度会ってみたかったんだけど、一昨日は家に寄らないで買い物に行っちゃったでしょ?私、会えなくて残念だったのよ?お菓子も用意してたのに。ねぇ、小町?」

「ちょ・・・お母さん・・・今日は他に友達もいるから、もうっ、そういうのやめてよっ。」

「あらあら、ごめんなさいねぇ。でも、小町のお友達にあえてお母さんは嬉しいわぁ。これからも小町をよろしくお願いしますね。」


 そう言い残して小町のお母さんは帰っていた。まるで嵐のような人だった。しかも、様々な爆弾発言を投下していったものだからたまらない。この後、俺と小町への様々な追及が行われたのは言うまでもない。その先頭を切っていたのは実花ちゃんだ。やれやれ。


 次に寿司を持ってきてくれたのは俺の母親。ふむ。握ってきてくれたのかどこかで買ってきたのかはわからないけど、寿司なんてなかなか食べられるものじゃないからみんなのテンションは上がってくれた。


「夕人、ちゃんと仲良くやってる?」

「やってるにきまってるじゃないか。」

「そうそれならいいけどね。あ、これね。持ってきたからみんなで食べてくださいね。」

「わかったから、ありがとね。」

「ハイハイ。帰りますよ。それじゃ、皆さん、夕人と仲良くしてくれてありがとね。」


 まったく。母親っていうのはこういうものとはわかっているけど、友達の前だと恥ずかしい気がするのはどうしてなんだろう。


「夕人くんのお母さんって優しそうだね。それに美人だし。」

 そう言ってくれた環菜の一言が嬉しかった。


 それからエビチリとパエリアを持ってきてくれたのは環菜ママ。環菜ママは・・・そうだなぁ。前に環菜を送っていったとき(風邪をひいたときな?)にあったことがあるから久しぶりだ。綺麗なお母さんで何というか、和というより洋という感じのママ。持ってきてくれた料理がそれを物語っているのかもしれない。


「いつも環菜がお世話になっています。環菜の母親です。ちょっと難しいとこがある子なんですけどこれからもよろしくお願いしますね。」


 そう深々と頭を下げて俺たちに言った。そんなこと言われなくても環菜は俺たちの友達だよなぁ?みんなも『もちろんですよ』とか『いつもお世話になってます』なんて言っていたしな。ただ、帰り際に環菜に一言二言何かを呟いていた。いったい何を話していたんだろう?


 最後は実花ちゃんのお母さん。


「実花ちゃ~ん、持ってきたわよぉ~。言われたとおりにフライドチキンいっぱい。みんな好きだもんね?」

「あ、ありがと~。何個買ってきてくれたの?」

「六人だって聞いてたから一人三個ずつで十五個くらいかしらねぇ。」

「・・・お母さん、それだと十八個いるよ・・・」

「あら?・・・そうねぇ。ちょっと間違えちゃったわぁ。」


 何というか、実花ちゃんが大人になったらこんな感じなのかと思う。ちょっとだけ抜けているけど許せちゃう感じ。本当に母親ってその家庭を映す鏡だよなぁ。

 さて、こんな感じで豪華な料理が揃ったわけなんだが、テーブルの席順がなぁ・・・。テーブルは三人ずつが向かい合って座れるもので、俺の正面の三人は左から環菜、翔、実花ちゃん。で、俺の左は小町で右が茜。なんでだろう。すごく身動きが取れない感じがするのは。


 ん?茜?どうしたんだろう。表情が暗い。


「茜、どうかしたのか?」


 あくまで小声で、茜にしか聞こえないように聞く。


「ううん、何でもないよ、夕人くん。」


 茜も小さな声で答える。


「そうか?なんだか少し元気がないような気がするけど。」


 いつも明るい茜だから少し心配だ。


「うん、大丈夫だよ?心配してくれてありがとうね。」


 そう言って俺のほうを見て笑顔で微笑むが、やっぱりいつもみたいな輝くような笑顔ではない。


「そっか、うん。気にするなよ。茜はクッキーを焼いてわざわざ持ってきてくれたじゃないか。全然気にすることじゃないって。それに、茜のお母さんは忙しいんだから。」


 たぶんそういうことだろう。昨日ちょっとだけ見せた本音には寂しさが垣間見えた。


「うん、そうだよね。」


 そう言ってテーブルで見えないところで俺の服を軽く掴んで言った。


「ありがと。」


 ピンポーン


 インターホンが鳴った。さぁ、ついに食べましょうというタイミングだったからみんな驚きを隠せない。


「あれ?誰だろう?ちょっと行ってくるわ。」


 そう言って翔が席から立ち上がる。


「誰か来たのかな?あたしも行ってこよっと。」


 実花ちゃんも一緒になって玄関へ向かう。これじゃまるで新妻みたいだな。『誰かな?』『荷物とか届いたんだよ』なんて思い思いのことを話している。


「茜~、お母さんが来たぞ?ちょっとみんな来てくれよ。」

「え?嘘?だって、お母さんは今日は東京にいるからいけないって言ってたのに。」


 茜の表情には驚きと嬉しさが入り混じったようなものが見られる。


「よくわからないけど、来てくれたんだね。みんなで玄関に行こうよ。」


 小町も喜んでいるみたいだ。この二人、今朝は険悪な感じだったけど、基本的に仲良しなんだよな。

 玄関には大荷物を持ったスーツ姿の綺麗な女性が立っていた。この人がきっと茜のお母さんなんだろう。玄関に向かって歩いてくる俺たちの中から茜を見つけて手を振っている。


「お母さん、どうして?今日は来れないって言ってたのに。」

「ゴメンね、来れないかなって思ったけど、仕事が思ったより早く終わったから急いで来たの。」

「無理しなくてもいいのに・・・」

「それで、ご飯は作れなかったけど、せめてお菓子でも持ってきたくて。」


 そう言って紙袋を茜に手渡す。


「ありがとう、お母さん。」

「いいのよ。子供のためにはいろいろしてあげたいって思うのが親なんだから。」


 茜の頭を撫でるその姿は、まさしく俺たちが理想と思っている母娘の姿があった。


「でも、ゴメンね?お母さん、また仕事ですぐに行かなきゃいけないの。」

「ううん、大丈夫。忙しい中わざわざ来てくれてありがとう。」

「じゃあね?また行ってくるから、よろしくね。」


 そう言って慌ただしく出て行こうとするときに、思い出したかのようにこちらを振り返って俺たちに言う。


「皆さん、慌ただしくてごめんなさい。これからも茜と仲良くしてやってください。お願いします。」

「茜さんは私たちの大切な友達ですよ。ご心配は無用です。」


 小町が小さな胸を張って茜のお母さんにいう。けど、この気持ちは俺たち全員が思ってたことだろう。言葉には出なかったけどみんなで強く頷く。


「ありがとう。じゃ、時間がないのでこれで失礼しますね。」


 そう言って玄関から出て行った。茜もその姿を見送って俺たちのところに戻ってきた。


「じゃ、これはご飯の後にでもおなかが空いてたらみんなで食べようね。」


 その笑顔は俺たちがよく知っている茜の笑顔よりもずっと素晴らしいものだった。


「良かったね、茜。お母さん、忙しい中わざわざ来てくれたみたいで。」

「うん、来てくれると思ってなかったから、ホントにうれしいっ。」


 そういうのと同時に俺に抱きついてきた。


「お、おい、やめろって。みんないるんだから。」


 俺は突然のことでどうしたらよいのかわからず、慌てふためいていた。


「こ、こらぁ、離れろっ、茜っ。」


 小町が必死の形相で茜を引き離そうとしている。翔と実花ちゃんは苦笑いで見ていたし、環菜は呆れたような表情でこちらを見ている。


「ちょっ、茜・・・いい加減に離れろって・・・」


 そう言って茜を引き離そうとするがなかなか離れてくれない。小町の必死な表情が見えるのが面白い。いや、面白いとか言ってる場合じゃない。


「だって、嬉しくって・・・」


 嬉しいからと言って俺に抱きつくなよ。俺は必死に引き離そうとするが、腕が組に絡みついていてなかなか外れない。なんとかもがいて引き離そうとしたときに、俺の手が柔らかいものに触れた。


「あっ・・・」


 そう言って茜が俺から離れていく。そして両腕で胸のあたりを隠す。もしかして、さっきの柔らかい感触って・・・?


「夕人くんのエッチ。」


 うわっ、俺が狙ってやったわけじゃないって。なんで俺が怒られなきゃいけないんだ?


「バカ夕人っ、デレデレするなっ。」


 バチーンと頬に衝撃が走る。久しぶりの感覚だ。この痛みは春先に椎名先輩に叩かれて以来だよ・・・まったく。


「夕人くんって、エッチなんだね。」


 環菜の冷たい視線が痛い。


「もしかして狙ってたの?」


 実花ちゃんよ、そりゃないでしょ。


「もうっ、こんな時に・・・ダメじゃない。あとで、ね❤」


 おいおい、そりゃ誤解をまねくからやめてくれ、茜・・・


「バカッ。」


 思い切り向こうずねを蹴り上げる小町。


「これだから男子ってダメなんだよねぇ。」


 勝手なことを言いながら居間へ戻っていく女子たち。玄関に残されたのは翔と俺。


「はぁ・・・俺の扱いってひどくないか?」


 そう言って翔に助けを求める。


「うんうん、うらやましいぞ?このラッキースケベ。」


 そう言って俺の肩をポンポンと叩く。


「いや、さっきのは不可抗力だろ?勘弁してくれって。」

「まぁ、朝の寝言といい、さっきの出来事といい、羨ましいぞっ。俺も美味しい場面に遭遇したいっ。」


 何を言ってるんだよ。それどころじゃないんだって。わかってくれよ。


「あぁ・・・俺のキャラクターが崩壊していく・・・って、おい、寝言って?俺なんて言ってた?」

「さぁ、なんだったかな?」


 翔がトボけたように両手を頭の後ろに持っていきながら先に歩いていく。


「おい・・・頼むって・・・」

「大丈夫だって。あいつらも分かっててやってるんだからさ。からかわれてるだけだって。」

「そうかなぁ。」

「そうだって。・・・・で、どんな感じだった?やっぱり・・・SUPER BIG?」

「はぁ・・・」


 俺っていつの間にかみんなにとってのいじられキャラに変貌していたのか?いつからこんなことになったんだろうなぁ・・・


「で、どうだったんだよ、夕人よぉ。」

「うるさいなぁ。覚えてないって。」


 本当はしっかり覚えている。驚くほどのサイズだったことは。でも、翔には内緒だ。


「お前、しっかりしろよな。あんな貴重な体験なのに。」

「わかってるよ。」


 そんな会話をしながら居間に二人で戻る。四人は何事もなかったかのように席に座っていて、小町が居間に入ってきた俺たちに声をかけてきた。


「おっそーい。早く食べようよ。」


 さっきまでの空気が嘘のようだ。やっぱり俺はいじられてただけなのか?

ここまで読んでくださってありがとうございます。


前回の失敗を踏まえて、今回は絶対にきちんと話してくれそうなゲストを呼んでいます。

では、こちらにどうぞ、玉置環菜さん!はい拍手!

パチパチ


環菜:拍手をいただきありがとうございます。ところで、ここはどこなんですか?

蛍石:ここはですね、夢と現実の狭間です。

環菜:はぁ、ちょっとよくわからないんですけど。

蛍石:まぁまぁ、その辺りは置いておいて。インタビューしたいのですけど、いいですか?

環菜:えぇ、私が答えられることでしたら。

蛍石:もちろん、答えられることしかお聞きしませんって。大丈夫です。

環菜:わかりました。では、どうぞ。聞いてください。

蛍石:ありがとうございます。いきなり核心に迫るのも芸がないかと思われるかもしれませんが、夕人のことをどう思っているんですか?

環菜:夕人くんですか?そうですね、すごくいい人だと思っています。

蛍石:それは異性としてですかね?

環菜:そうですね。異性としてもいい人だと思います。

蛍石:おっと、それはつまり?好きということでいいんですよね?

環菜:・・・はい。あ、これって夕人くんには聞こえないんですよね?

蛍石:その辺はバッチリです。夕人は時計型麻酔銃で撃たれて眠ってしまってるので。

環菜:時計型麻酔銃?

蛍石:・・・聞かなかったことにしてください。

環菜:はい、わかりました。けど・・・

蛍石:では、話を戻しましょう。環菜ちゃんはモテるって話を聞いてますけど、今まで何人くらいに告白されたんですか?

環菜:え?なんですかその質問。

蛍石:教えてくださいよ。中学に入ってからのことでいいですから。

環菜:そんな・・・覚えてないんですけど・・・そうですね・・・6人くらいだったと思います。

蛍石:一年ちょっとで6人?そりゃすごい。私も知らなかったんですけど?

環菜:そりゃ・・・全部を話したわけじゃないですから。

蛍石:まぁ、そうですよね。で、全員をノックアウトしたと。

環菜:え、ノックアウトっていう言い方はどうかと思いますけど、でも、そうですね、はい。お断りしました。

蛍石:それって夕人たちは知ってるんですかね?

環菜:さぁ、どうなんでしょうか。もしかすると実花ちゃんあたりから聞いたりはしているのかもしれませんけど、私からは特に何も言ってないですね。

蛍石:うーん、そうなんですか。あ、そうそう。もう一つ聞きたいんですけど、いいですか?

環菜:はい、どうぞ。

蛍石:では、オホンッ。

小町:環菜〜、お昼ご飯できたよ〜。

蛍石:えぇ、またいいところで邪魔が入るの?

環菜:いいところ?ごめんなさい、小町ちゃんが呼んでるので。お昼ご飯も作るの手伝ってなかったですし、心配してるかも。もう行かなきゃダメですね。

蛍石:・・・そうですね。

環菜:では、また機会がありましたら。

蛍石:はい・・・


なんてことでしょう。

またもや失敗です。でも、はっきりと環菜の口から6人に告白されたと聞き出せただけよかったとしましょう。

何と言っても新情報でしたしね。

それにしても、これだけ大掛かりにセッティングして聞き出せたのかこれだけとなると・・・

次回以降はインタビューできないかもしれないですね・・・

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