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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第9章 act weird -奇妙な行動-
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プールの水は温水です

パスタは一体何を作ったのでしょう。

何種類あるのかわかりませんが、美味しく食べれるならばなんでもいい。

中学生男子の素直な感想でしょう。

「できましたよぉ~。」


 そう言ってパスタを持った大皿を持ってきたのは実花ちゃんだ。それに続いて茜と小町も大皿を持っている。どうやらさっき買い出ししたものをすべて使ったみたいだな。


「おぉっ、待ってましたっ。」


 翔はそう言ってソファから立ち上がり『あの二人も呼んでくるわ』とい言って居間から出て行った。茜たちは大皿をテーブルに置いていき、テキパキと準備を進めていく。取り皿やトングなんかも準備されてあとはもう食べるだけといった感じだ。そして、準備が整うのを待っていたかのように翔が大人二人を連れてきた。なんだかとてもいい人そうに見える。


「我々の分までお昼を準備していただきまして申し訳ありません。坊ちゃんのお言葉に甘えてご一緒させていただくことにさせていただきました。あぁ、自己紹介が遅れて申し訳ございません。私は浦川と申します。こちらの家の管理等を行っております。」

「同じく北見です。」


 そう言って二人の大人が俺たちに頭を下げる。こんな経験したことないぞ?どう対応すべきなんだ?こんな時に環菜がいたらきちんと対応できるんだろうけど・・・


「あ・・・いえ、こちらこそ、今回は僕たちのわがままで、急にお呼び建ていたしまして申し訳ありませんでした。来ていただけて本当に助かりました。こんなものしか準備できなくてすみませんが、ぜひ食べてください。」


 俺なりに頑張って挨拶をしたつもりだったのだが、これで良かったのだろうか。失礼な言い方ではなかったのだろうか。


「こんなものって・・・ひどくない?」


 実花ちゃんが小さな声で文句を言っているのが聞こえる。


「いえいえ、わざわざご用意いただき恐縮です。」


 どうしてこの人たちはこんなに畏まっているんだろう。それってやっぱり杉田のお父様がすごい人ってことなんだろうか。


「・・・えっと、浦川さん、北見さん。本当にいつもありがとうございます。こちらに座ってどんどん食べちゃってください。」


 翔の慣れたような感じが恐ろしい。


「では、失礼して・・・」


 そう言って浦川さんと北見さんは杉田に言われた席に着く。俺たちも各々思い思いに席に着く。


「それじゃ、いただきますか。」


 杉田がそう言ってみんなに食べるように促す。ん?みんな?いやいや、まだ環菜が来てないよ。


「いただきま~す。」


 さっそく実花ちゃんがパスタに手を付ける。そのまま食べちゃうのかと思ったら、取り分けてくれるみたいだ。実花ちゃんもやっぱり女の子なんだなぁ。思わず感心してしまった。


「ねぇ、環菜どうしたのかなぁ。」


 隣に座っている小町が聞いてくるけど、俺にだってわからない。


「さぁ、わからない。ちょっと声かけてくるよ。」


 そう言って席を立とうとしたが、小町に止められた。


「いいよ、私行ってくる。夕人は先に食べてて。」


 そう言ってピョンと立ち上がって居間から出て行った。他のみんなもなんとなく状況がわかっているみたいで特に何も聞いてこない。それにしても、環菜はどうしたんだろう?



 2、3分して小町が環菜を連れて居間に戻ってきた。


「ゴメンね?ちょっとやらなきゃいけないことがあって・・・」


 環菜はそう言ってるけど、やらなきゃいけないことって何だったんだろう?宿題とか?いやいや、それならみんなでやればいいよ。音楽とかの何かかな?そうなってくると俺たちは手伝えないしな。


「そうなの?まぁ、それはいいから食べよ?」


 茜が上手に環菜を輪に入れるように促す。さすが茜だ。まったく自然に環菜に声をかけた。


「うん、ありがとう。」


 そう言って空いていた場所に座る。小町も俺の隣に戻ってきた。


「お疲れ、小町。」


 小さい声でそう言った。


「うん・・・」


 小さな声で答える小町のその言い方には少しだけ違和感を覚えた。


「どうかしたの?」


 あくまで自然に、環菜には気が付かれないように小町に聞いてみた。とは言っても他のみんなは話しながら食べているから俺の様子なんて気にしてないだろうな。


「うん。なんかね。」

「どした?」

「環菜ちゃん、考え込んでるみたいだったから・・・」


 考え込んでる?ふ~ん、また何か一人でいろいろ考えてたんだろうけど、そういうときの環菜ってどう接していいのかわからないんだよな。


「そっか。・・・まぁ、そのうち分かるんじゃない?」

「だといいけどね。」

「なんだよ?そんなに気にするなよ。誰でも考えることはあるって。」

「・・・うん、そうだね・・・」


 小町もいつものノリがない。けど、今ここでどうこうできることでもないし。


「ま、とりあえず、食べようよ。あ、小町はちっちゃいから届かないよな?俺がとってやろうか?」


 わざとそう言って小町の元気を引き出そうとしてみる。


「・・・久々に言ったね?ちっちゃいって。」


 よし、俺の目論見は成功したみたいだ。


「まぁな、どれにする?」


 あえて茶化すように言う。


「バカ夕人っ。自分で取れるからいいもん。」


 そう言って小町が大皿に手を伸ばす。


「ほうほう。では頑張ってくれ。」


 そう言って自分の取り皿にあるパスタを口に運んでいく。うん、美味しいな。美味しいごはんっていうのはいつ食べてもいいもんだ。それが普段あまり食べないものならなおさらだ。元気になってくる。みんなもそんな感じなのかな?うんうん。かなりがっつりと食べてますな。中学生の俺たちはいわゆる育ちざかりってやつだ。食べた分だけ大きくなるはず。


「小町は、いっぱい食べるのに小さいなぁ・・・」


 しまった。思ったことがそのまま口に出た。小町の動きがピタッと止まる。


「ほほぅ・・・夕人はそういうこと言うんだね・・・?」


 マズい。これは久しぶりにマズったかもしれない。これはどう切り抜けるか。


「まぁまぁ、小町ちゃんはこれからだもんねぇ。」


 実花ちゃんがいいタイミングで助け船を出してくれた。


「そうそう、これからだよね~。」


 茜も大きく頷きながら実花ちゃんに同意する。


「そうだよ。私はこれから成長するんだから。今に見てなさいよ?バカ夕人。あんたがビックリするくらい綺麗な女に成長してやるんだから。」

「はいよ。楽しみにしてるわ。」


 これ以上、小町を刺激してもいいことはないだろうな。首をすくめて負けを宣言する。


「皆さん、仲がよろしいんですね。」


 北見さんが笑顔で話しかけてくる。


「そうなんですよ。俺たちは仲良しなんですよ。」


 翔が全く物怖じをせずに言う。


「まったく、羨ましいですな。」


 浦川さんも笑顔を俺たちに向ける。そう言えばこの人の笑顔は初めて見たような気がする。きっと普段は厳しい人なんだろうけど、優しい人なんだろうな。


「あ、そう言えば聞きたかったことがあるんですけど。」


 小町が急に思い出したかのように質問を投げかける。


「なんでしょうか?」


 笑顔のまま小町の質問に答えようとする。


「やっぱりプールの水って冷たいんですか?」


 そうだ、買い物に行く前にも確かそんな話をしていたのを思い出した。水道から直接引いた水は冷たいだろうなぁ。北海道の水道水は夏でも結構冷たいからなぁ。


「大丈夫ですよ。暖かくはないかもしれませんが、温水器で暖めて循環させていますので。」


 温水ってこと?ビニールハウスもないのにそんなすごいことになってるの?どうなってるんだよ、翔んちは。ホントにすごすぎるぞ?


「こちらのプールを使用するのは今年が初めてでして、その実際の状態を体験していただいて、あまりにも寒いようでしたら、温室化すると社長からはお聞きしております。」


 北見さんが事もなげに言うが、それがどれだけすごいことなのか、どのくらいの費用が必要なのかがわかる中学生は残念ながらここにはいない。ただ単に『スゴイな』くらいにしか思えなかった。だから、俺たちは翔以外全員絶句してしまった。


「なんだよ。それなら去年作ってくれればよかったのに。そしたら今年は絶対に寒くなかったのになぁ。」


 まったく・・・スゴイ家庭だよ・・・。

 それにしても、環菜の奴は一体どうしたんだ?笑顔を全然見せないじゃないか。何があってそんなにだんまりなんだ?

ここまで読んでくださってありがとうございます。


浦川さんと北見さんという大人の二人が初登場ですね。

実際には前章くらいから登場していましたが、名前が出たのは初めてです。


ちなみに北海道の水道水はとても冷たいです。

夏でもひんやりするくらいですから、プールにそのまま使うと大変なことになるでしょうね。

はっきりいって、温室化してからの方がよかったのでは無いかと個人的には思っています。


さて、次はついにみなさんの期待する水着回となるのでしょうか。

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