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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第9章 act weird -奇妙な行動-
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社長の息子ってこんな感じなのか?

友達と遊ぶために父親の会社の人間を呼ぶ。

とてつもなくすごいことだと思うんですけど、どうでしょう?

 それからキッチリ30分後に翔のお父さんの会社の人と思われるスーツ姿の壮年の男性と若い女性の二人組がやってきてテキパキと作業していった。

 よくわからないが、子供だけで使うにはプールは危険だっていうのもあるようで、俺たちがプールで遊んでいる間、二人は翔の家で待機していてくれるらしい。なんだか本当に申し訳ない。確かに、何か事故が起こったら俺たちだけでは対処できないけど、これって本当に普通の対応なのか?

 しかも、やってきた二人の話し方にも違和感があった。

 だって、『坊ちゃん』とか呼ばれる人間は初めて見たぞ?


「水が溜まるまで一時間くらいかかるってさ。プールのことに関してはあの人たちに任せていいみたいだから、俺たちは一足先に昼ご飯にしようか?」


 昼飯って。まだ11時だぞ?少し早くないか?それにあの人たちのお昼ご飯はどうするんだよ。


「お昼ってまだ早いんじゃない?」

「そうだけどさぁ、特に何もすることないじゃないか、環菜。」


 翔さぁ。何もすることないっていうけど、あの人たちを置いたまま行くわけにもいかないだろう?呼び出したのは俺たちなんだからさ。


「それかも知れないけど、あの人たちのご飯はどうするの?」


 さすが気遣いの茜。それですよ。俺が言いたかったのも。


「・・・そうか。そうだよなぁ。う~ん、それじゃ、俺ちょっと聞いてくるわ。」


 そう言って二人組のほうに歩いていく翔。俺たちは唖然として見送るしかなかった。


「杉田くんって・・・いろんな意味でスゴイね・・・」


 茜が発した言葉を否定できる奴なんてここにはいないよ。何といっても俺たちは翔を除いて全員庶民なんだから。


「ねぇねぇ、夕人。」

「ん?なに?」

「あのさぁ、プールの水って冷たいのかなぁ。」


 そうか、水道から直接水を入れているならかなり水温が低いよな。


「もしかしたら・・・そうかも。」

「それって、辛いよねぇ。鳥肌立ちそう。」


 小町が大げさな訳じゃない。北海道では真夏でも海水浴場になっている海の水すら冷たいんだ。長い間海に入っていたら、寒くなってくるもんだ。


「おまたせ~。二人は順番で食事に行くから気にしなくていいってさ。なんだったら、私たちが何か買ってきましょうかだって。」


 おいおい、本当に至れり尽くせりだなぁ。さすがにそれはマズいだろう?


「翔~、さすがにそれはダメだって。むしろ私たちが何か準備しないとダメだよ。」

「そ、そっか。そうだよな、実花。うん、じゃ、ハンバーガーの買い出しにでも行く?」


 それでいいのか?翔よ。なんかもっとこう、大人の人たちに喜んでもらえるようなものを買うべきなんじゃないか?・・・とは言っても何も思いつかないなぁ。

 こういう時に役に立たないんだよなぁ、勉強の知識ってさ。


「何か作ろうか?食材さえ手に入ったら私が簡単なものなら作るよ?」

「そうだよ、私も手伝い位ならできる・・・と思うし。」


 茜と小町がこういう話をすると姉妹みたいに見えなくもない。もちろんお姉さんは茜だ。


「そうは言ってもなぁ。何作るつもりなの?」

「そうねぇ・・・簡単に作れるものならパスタとか?茹でればいいだけだし、ソースも売ってるから30分もあれば作れるよ。」

「あ、それなら私もできるかも。」


 うんうん、俺がこういうのもなんだけど茜と小町のコンビって見ていて和むなぁ。


「そっかぁ。・・・それじゃ、悪いけどお願いできるかな?もしかしたら台所に何かのストックがあるかもしれないから、探してみようか。無かったら買い出しってことで。」



 台所をみんなで探索する。パスタというかスパゲティーの麺は見つかったけどどう考えても量が足りない。結局買い出しに行く必要があるということで、留守番班と買い出し班に分かれることになった。

 買い出し班には荷物持ちが必要だろうということで俺か翔のどちらかが行くことになる。さらに品物を選ぶために料理をしてくれる女子が行くということになった。つまりは俺と翔のどちらかが行くのかを決めるだけど言うことだ。


「翔よ。俺が残っても仕方がなくないか?彼らから何か話があったりしたときにお前がいなかったら困るだろ?だから、俺が行ってくるよ。」

「そうだよなぁ。悪いけど頼めるか?」

「気にするな。俺たちはここに泊めてもらってるしな。それに、俺は荷物持ちだしさ。料理をしてくれる茜と小町にお礼を言うべきじゃないか?」


 あれ?そう言えば、環菜が全然話さないな。いつもなら『私も手伝うよ。』っていうはずなのに。どうしたんだろう?


「本当にありがとな、茜に小町。」

「まぁまぁ、気にしないでよ。こんなことでしかみんなを助けてあげられないしね。」


 そんなことないと思うぞ?茜はいつだっていいアドバイスをくれるしな。


「そうそう、夕人の言う通りに泊めてもらってるんだからこのくらいはしないとね。・・・でもやっぱり、あんたに小町って言われるのはムカつくわぁ。」


 小町のこのセリフも久しぶりだ。けど、なんで翔に名前で呼ばれるとムカつくんだ?


「いいからいいから。それよりも小町さ、買い物に行こうよ。茜もさ。」

「そうだね。こんな時間勿体ないもんね。」

「このあたりのスーパーってどこかな?地下鉄の駅の近くのフードセンターかな?」


 そうだ。店の場所がわからないと買い物のしようがないよな。


「だと思う。ちょっと遠いんだけどお願いな。」

「大丈夫だって、そんなにやわじゃないよ。」


 茜の明るい返事で、俺たち三人は買い出しに出ることになった。あ、でもお金足りるかなぁ。


「あ、忘れてた。夕人~、これ持って行ってくれ。」


 そう言って翔が俺に渡してきたのは財布だ。


「ん?どういうことだ?」

「親父たちから、食料の買い出しに行くことがあるなら使えって渡されてたお金があるんだ。そこそこ入ってると思うから、必要なものがあったらいろいろ買ってきてくれよ。飲み物もなくなりそうだしさ。」

「そうなのか?なんだか悪いなぁ。でも、俺もお金あんまり持ってなかったから助かる。」

「実は私も。」


 笑顔で軽く舌を出しながら茜が言った。


「ご両親によろしく言っといてくれよ、本当にさ。」

「いいっていいって。うちの親も俺が友達連れてくるって言ったら本当に喜んでたからさ。」

「そうなのか?」

「ま、この話はいつかな。それより時間無いから頼むよ。」


 翔にも何かいろいろと事情があるのかもしれないな。そう言えば、あいつが転校してきた理由って聞いたことないな。親父さんの転勤が理由だと思ってたけど、社長さんにも転勤ってあるのか?


「そだな。じゃ、行ってくるよ。」

ここまで読んでくださってありがとうございます。


それにしても、翔の家にやってきた二人の大人。

とても仕事ができそうな人たちのような気がしますね。


でも、坊ちゃんって・・・

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