スッキリしない目覚めの朝
新しい章に入ります。
その理由は二日目になったから。それだけです。
昨晩の茜と夕人はどんな話をしていたのか気になるところですが、二日目のプールという予定の方が気になります。
二日目の朝。はっきり言って寝不足だ。
あの後、妙にテンションが上がってしまった茜と明け方まで話し込んでしまったからだ。と言ってももう何を話したのかほとんど覚えていない。
というかそれどころじゃない。今は小町に説教されているところだからだ。なぜ説教をされているのかって?実は茜と話をしていたはずが眠くなって寝てしまったんだよ。もちろん居間のソファで。そして、小町に叩き起こされるまで起きなかったのだけど・・・目が覚めた時は俺の腕を枕にした茜が一緒に寝ていた。はっきり言ってこれには驚いた。俺が何かをしたわけじゃないけど、事実として見えている部分しか他人にはわからないし、俺にもわからない。
「どういうこと?夕人に茜っ。二人で何してたの?」
小町が朝から怒るのはもっともだ。でも眠い。今は六時か?まだ、誰も起きてきてないみたいで助かった。
「いやぁ、そんなに怒らないでよ、小町ちゃん。」
茜のその言い方は火に油を注ぐだけだと思うんだけど。というか、いい加減に俺から離れろって茜。
「夕人のバカっ。茜と一緒に寝るなんて。」
顔を真っ赤にして怒っている小町。それなのに俺の左腕に腕を絡めたままニヤニヤしている茜。
「・・・あのさぁ、とりあえず、茜は俺の腕から離れてくれよ。」
そう言って茜の頭をチョップする。
「あいてっ。またそういうことするの?昨日はあんなに盛り上がったのに❤」
「おい。なんだよその言い方は・・・」
変に誤解を招く言い方するなよ。
「バカ夕人っ、茜ばっかり・・・ずるいっ。」
そう言って茜を俺の腕から引き離して俺をガンガン叩いてくる。
「いててて。悪かったって。っていうか俺のせいじゃないだろ?茜が勝手に・・・」
「えぇ~、そんなこと言うの?ゆ❤う❤と❤。」
そう言って人差し指で俺を突いてくる。
「ちょ・・・茜。いい加減にしろって。そういう仲じゃないだろ?俺たちってさ。」
「ゔゔゔ・・・」
なんだ?この恐ろしい声は?茜と一緒に恐る恐る小町を見る。
「ご、ごめんね、小町ちゃん。昨日ちょっと夕人くんと話しててそのまま寝ちゃっただけだって。その、私ももう眠くて部屋まで戻れなそうで、それで、なんかいつも私家で一人だから、あの、寂しいのもあって・・・だからそのつい・・・」
こんなに焦っている茜を見るのも初めてだけど、こんなに怒っている小町を見るのも初めてだ。マズい。爆発する?そう思った。
「バカ夕人っ。」
そう言って俺の頭をバシッと思い切り叩いて居間から出ていく小町。マズいなぁ。誤解なんだけどなぁ。どうやって話したら良いんだろう。
「ゴメン。夕人くん。私、今から小町ちゃんに謝ってくるから、夕人くんはここにいてくれる?」
「俺も行くよ。」
そう言って立ち上がろうとする俺を制して茜が言う。
「ううん、これは私の悪ふざけで怒っちゃったことだから、夕人くんはいいの。私が全部話すから。」
「でも・・・」
「いいから。ここで待ってて。」
有無を言わせない茜がそこにいた。
「わかった。お願いします。」
「うん、ごめんね。」
そう言って足早に茜は居間から出て行った。
10分位経っただろうか。居間に取り残されたまま、ボウっとしていたら実花ちゃんが来た。
「おはよう、夕人くん。昨日はありがとね。」
「あ・・・おはよう、実花ちゃん。」
「?どうしたの?」
「いや、何でもないよ。ちょっと寝不足なだけ。」
そう言った途端にあくびが出た。さっきの話はしたくないなぁ。
「そうなの?ごめんね。やっぱり寝心地良くないよね・・・」
「いやいや、そうじゃないって。ちょっと夜更かししただけだからさ。それより・・・」
いや、やっぱり聞くのはやめとこう。二人のことは内緒にしておきたいだろうし。
「あ・・・えっと・・・そういうのはないよ?」
顔を赤くして否定する実花ちゃん。そういうのっていうのはアレだよな。よし。もうイイ。聞きたくないですから。
「エーッと、何も言わなくていいです。はい。」
「・・・うん。」
「じゃ、俺はもうちょっと寝るかなぁ。翔は?まだ寝てるの?」
「寝てるよ。」
よし、なら俺も寝るか。
「じゃ、俺はここでもう少し寝るわ。適当な時間に起こしてくれると助かります。」
「うん、わかった。じゃ、おやすみ~。」
「おやすみ~。」
朝の六時頃にする会話じゃないよな。
『夕人くん。どうして?』
「どうしてって・・・だから、そういうのはダメだって言ったじゃないかよ。そういうのは好きな人同士ですることだって。それに俺たちはまだ子供だから。」
『でも、私のこと好きって言ってくれたじゃない。』
「だから、それは友達としてっていうことで。」
『ヒドイ。そうやって女の子のこと傷つけるんだ。』
「俺は・・・そういうつもりで言ったんじゃないよ。」
『・・・・私のこと本当はどう思ってるの?』
「だから・・・いい友達だって。」
『・・・・・ぉーぃ。』
え?誰だ?あれ?
「おい。寝言言ってるけど、大丈夫か?お前。」
?翔?なんだ?どういうことだ?周りを見渡してみる。実花ちゃんに小町、茜に環菜もいる。あれ?
「あれ?なんでみんなここにいるんだ?」
訳がわからないぞ?
「お前、ソファで寝ながら寝言言ってたぞ?」
「寝言?」
ってことはさっきのは夢ってことか?っていうか何言ってた?
「寝言だって?なんて言ってた?」
「ん~、なんかねぇ。友達がどうとか言ってたよぉ。」
実花ちゃんが首をかしげながら言う。良かった。変なことは言ってないみたいだ。
「っていうか、夕人。ここで寝てたの?」
小町が笑いながら聞いてくる。少しずつ目が覚めてきた。そうだ、さっき小町に茜と寝てたところを見られて怒られてたはず。あれ?小町、怒ってないのか?
「うなされてたねぇ。大丈夫?」
茜も笑顔だ。
「あ・・・あぁ。大丈夫だけど。」
「まぁ、夕人よ。とりあえず顔洗って来いよ。朝飯にしようぜ?」
翔がそう言って俺の手を引きソファから立ちあがらせようとする。
「そ、そうだな。そうするよ。」
翔の手を取って立ち上がる。
「あ、今何時?」
「七時半だよ。」
環菜が答える。そか、あれから一時間くらいか。なんか変な夢を見た気がするけど、思い出せない。とりあえず、まだ少しボウッとする頭を軽く振って洗面所に向かう。
「朝飯の準備しとくからなぁ。顔洗って着替えて来いよ。」
「う~~っす。」
そう言って洗面所に向かった。
はぁ・・・寝言か・・・何言ってたんだ?友達がどうとかって実花ちゃんが言ってたなぁ。洗面所で歯を磨き、鏡を見ながらさっきの夢のことを思い出してみる。不思議なもので夢っていうのは一度醒めてしまうとまったく思い出せないものだ。
「考えるだけ無駄かねぇ。」
「何が無駄なの?」
驚いて横を見ると小町が立っている。
「小町か・・・誰かと思った。」
「なんの夢見てたの?」
「あぁ、それのことだよ。考えても無駄だなって。思い出せないんだよ。」
「ふ~~ん。」
歯磨きしながらだと話しにくいな。
「あ、もうちょっとで歯磨きも終わるから、話ならその後でもいいか?」
「ううん、大したことじゃないから今でいい。」
「そっか?でもちょっと待って。」
そう言って急いで口をゆすいでタオルで顔を拭く。
「話って、やっぱり茜とのことか?」
恐る恐る聞いてみる。
「うん、茜から聞いた。夕人は本当に寝ちゃったんだってね。茜が言ってた。だから茜と話してもう解決した。」
「お・・う。そか。それなら・・・いいか。」
「うん。・・・よくないっ。」
うわっ。小さい声だけど迫力あるなぁ。
「ごめん、別に何がどうってことでもないんだけど・・・」
「それは茜からも聞いた。・・・その・・・キスしたとか・・・ほら・・・そういうのじゃないって・・・」
顔を真っ赤にしながら小声で言う小町。っていうか、おい。茜よ。なんでそういう話の展開になってるんだよ。そうじゃなくって別の説明をするべきだろうよ。
「えぇと、小町?そもそも、俺と茜はそういう仲でもないからな?あるわけないぞ?っていうかさ、何?そういうことしたとか思ってたわけ?」
「・・・だって・・・朝からあんなの見たら・・・」
あんなのってなんだよ。寝てただけだろう?って違うか。一応、男と女だもんなぁ。そう思われても仕方がないのか・・・いや、そう思われるのは困るぞ?
「誤解させた俺も悪いけど・・・そういうのはないよ。断言する。」
「うん。」
「わかってくれたみたいで良かった。茜とも仲直りしてくれた?」
「・・・うん。」
なんだか意味深な『うん』だなぁ。結構まずいことになってんじゃないか?
「仲直りしてない?」
「交換条件で、仲直りした。」
「交換条件?」
なんんだそりゃ?さっぱり話が見えてこない。
「それは内緒。でも、もう、あんなことしちゃダメだからねっ。」
そう言って小町が洗面所を出て行く。イマイチしっかりと状況が分かったわけじゃないけど、とりあえず危機は脱したということでいいのだろうか。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
うーん、目が覚めたら女の子が横で寝ている。
それって誰であっても疑いの眼差しでしか見れないですよね。
それにしても、茜は何を考えているのでしょうか。
もしかすると、今後は台風の目になってくるのかもしれません。




