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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第8章 Just between us -ここだけの話-
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テレビの向こう側の人

新しい章になりましたが、基本的には前章の続きです。


夕食後の話になっていきます。

しかし、初日はまだまだ続きます。

こう言った合宿で一番盛り上がるのは初日の夜と相場が決まっているのです。

 茜と環菜が作ったカレーは絶品だった。友達だけでの夕食っていう経験あるけど、友達が作った夕食っていうのは初めてだ。きっと、こんな経験は今後なかなかないだろう。ということは、今日という日を大切に過ごさなくちゃいけない。

 だからとは言っても特別なことをするわけじゃない。いつもと同じように話をしたり、テレビを見たり、お菓子を食べたりする。それだけで楽しい。

 ところで、今何をしているのかというと、みんなでお菓子をやっつけながらテレビを見ようってことになってた。そして、ここでも杉田邸のセレブっぷりに驚かされた。


「あれ?そう言えばテレビ無いね。この部屋。」


 小町に言われてはじめて気が付いた。確かに、食卓テーブルというには少し豪華なテーブルがあった部屋(?)にはテレビがあったが、この居間にはない。ソファーはあるんだが。


「あぁ、この部屋はテレビじゃなくてプロジェクターなんだ。一応テレビも見れるよ。」


 そう言って、どこかからリモコンを取り出してボタンを押すと天井からスクリーンが降りてきた。そうか。天井にくっついてた謎の機械はプロジェクターだったのか。それにしても、コイツのうちはどのくらいのお金持ちなんだろうか・・・


「あ、テレビ見れたっ。うっわぁ。映画館みたいっ。」


 実花ちゃんがそういうのも無理はない。薄暗くした部屋に映し出されるテレビの映像。なんだか音も部屋全体から聞こえるような気がする。すげぇな。この生活から普段の生活に戻れるのだろうか。


「じゃ、これでも食べていろんな話をしましょう。」


 そう言って茜がクッキーをテーブルに出してくれる。


「あれ?このクッキーって?もしかして茜が作ったの?」


 環菜がクッキーを見てすぐに聞く。


「うん、ほら、うちの親って共働きみたいなもんだからね。明日の夜ごはん持ってこれないから。だからちょっと作ってみたの。」


 事もなげに言うが、俺はクッキーなんか作ったこともないし、作ろうと思ったこともない。だから、どうやって作るのかわからない。けど、この見た目は、まるで売り物のクッキーみたいだ。


「いただきま~す。」


 実花ちゃんがさっそく一枚口にほおばる。


「う~~ん、おいしいっ。茜ちゃん、すごいっ。」


 そうだろう。美味しいに決まってる。だって、カレーも美味しかったしなぁ。


「茜ってこういうの得意なの?あ、俺ももらうね。」


 俺もクッキーを手に取りながら聞いてみる。


「どうぞどうぞ。食べてくださいな。えっとね。私にはお姉ちゃんがいるんだ。で、そのお姉ちゃんに教えてもらったの。」

「へぇ~。茜のお姉さんってお菓子作りの達人なんだね、きっと。でも、お姉さんの話って初めて聞いたね。」


 クッキーのつくり方を教えてくれるような仲良しだったら、学校でも茜から話を聞くような気がするんだけどなぁ。


「うん、まぁ、ちょっと年が離れてるからね。今は十九歳。」

「そんなに離れてないと思うけど。どっかの大学とか行ってるの?料理学校とか?」


 杉田も興味があるみたいで茜に質問をぶつける。他のみんなも聞きたいみたいだ。


「あぁ~、そうねぇ・・・。ま、いっか。みんな友達だもんね。」

「え?なにそれ。どういうこと?」


 小町がクッキーを食べながら驚いたように聞き返す。


「あんまり言いたくないなら話さなくてもいいけど?」


 環菜が茜のことを気遣う。


「え?あぁ、そういうのじゃないよ?なんかみんな誤解してない?」

「だって。誤解って言われても。ねぇ?」


 そう言って横に座っている環菜が俺の顔を見る。良かった。いつもの環菜だ。


「えっと、ちょっと待ってね。」


 そう言って、テレビのリモコンでどこかのチャンネルに切り替える。何人かのゲストみたいな人がいるが何の番組だろう。


「これが私のお姉ちゃんだよ。」


 そう言って指でさされた女性は最近テレビで見ることが増えてきた女性タレントだ。モデルもしているみたいで、そのトーク力の高さと美貌と抜群のスタイルで人気が急上昇中。一方で、プライベートな情報は一切公開されておらず、わかっているのは年齢とスリーサイズだけ。もちろん本名も公開されていないというなかなかミステリアスなタレントさんだ。

 って冗談だろ?


「え?ちょっとそれってホント?だって畔上くろうえグレーシアでしょ?あのモデルの。」


 環菜のおかげでそのタレントさんの名前は分かったけど・・・


「そうなの。本名は小暮あかりっていうのよ。でも、世間的には秘密ってことになってるの。だから内緒でお願いね。」


 そう言って片目を閉じながら人差し指を唇に当ててサインを送る。しかし、俺たちは恐ろしい秘密を知ってしまったことで騒めかずにはいられなかった。


「ちょっと、それってスゴイ爆弾発言じゃない?」


 実花ちゃんが言うのも当然だ。俺なんか驚きすぎて声も出ない。


「そっか。アナグラムかぁ。」


 杉田が空気を読まない発言をする。


「なに翔。アナグラムって?」

「あぁ、アナグラムっていうのは文字の並べ替えの暗号のことだよ。ほら、こんな感じでお姉さんの名前をアルファベットにして・・・で、並べ替えると・・・こうなる。でも、きっとKとCはあえて変えてあるんだろうなぁ。」


 なんだ?あの短時間でそんなこと考えてたのか?いったいコイツの頭はどういう作りなんだよ。俺には全く分からなかったぞ?


「あらら。よくわかったわねぇ。事務所の人たちが何日もかけて考えてつけた名前だったのに。」


 そう言って茜が笑う。でも、なんだか納得がいった。茜が時々すごく大人っぽく見えたり話したりすること。それからとてもスタイルが良いことも。


「やっぱり、似てるんだねぇ。ほらっ、笑ったとこなんかそっくりだよね。」


 実花ちゃんがそう言ったのを聞いてか、全員で茜の顔を見る。茜が『そんなに見られると恥ずかしいねぇ。』なんて言ってる。確かに、今までなんで気が付かなかったんだろう。


「いやぁ、私のお姉ちゃんって才色兼備でね。昔はよく、お姉ちゃんに頭の中身を全部持っていかれたって思ったもんだよ。」


「確かにねぇ。茜の中身は持っていかれてるっぽいねぇ。」


 実花ちゃんが止せばいいのに余計なことを言う。


「ほほぉ、他の誰かに言われたなら納得もできるけどねぇ。実花にだけは言われたくないっ。」


 そう言って実花ちゃんのコメカミを拳でグリグリとする。なんだか悲鳴も聞こえてくるけど自業自得ってことだろうねぇ。誰も助けを出さない。


「それにしても。俺たちってすごいことを知っちゃったんだよなぁ。」

「そうだねぇ。頑張って内緒にしないとね。」


 そう言えば、環菜が隣にいて俺と普通に話している。昼間のあの環菜はなんだったんだろう。


 しばらくは茜の話で俺たちは盛り上がった。お姉さんは高校生の頃から少しずつ仕事を始めるようになっていたこと。母親はその仕事にいつも一緒に行ってたこと。そして、今もお姉さんの仕事に一緒に行くことがあること。それで、家にはあまりいないということ。

 なんだか、そんな話を聞いてしまうと茜が大変だということがよくわかった。家事のほとんどを自分でやっているというんだからスゴイ。茜のことを見る目が変わりそうだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


驚くべきことが暴露されました。

茜の姉は芸能人でした。

これって超スクープだと思うんですが、それを話せるくらい仲間のことを信頼しているんですね。

そして、仲間たちはその秘密を約束通りにきちんと守っていくのでしょう。


しかも、おかし作りまで得意で美人ときたもんです。

性格もいい感じですし、非の打ち所のない女子。

そう見えますね。


うーん、パーフェクトガールと言えないのは・・・お勉強を頑張らなきゃいけないからでしょうか。

運動はできるんですけどね。

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