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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第7章 Two of us -俺たちの中の二人-
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よぉ〜く狙って

皆さんはこんな経験あるでしょうか。


ゲームコーナーでゲームにハマりすぎての散財。

きっと誰もがする経験だと思います。


ただ、結果として楽しめたならそれでいいはずですよね。

欲さえかかなければ楽しめるはずなんです。

特に、喜んでくれる人が一緒にいたなら。

 小町たちと待ち合わせをしていたのは、銭湯内にある休憩所。

 ここは銭湯というにはいささか立派な施設だったから、食事ができるスペースもある。それに夏休みだからなのだろうか。子供連れの家族も多くみられる。俺と杉田は空いてる場所を探して適当に腰を下ろした。

 小町たちはまだ来ていないみたいだ。女の子の入浴時間が長いのは普通だよな。


「まだ、あがってきてないみたいだな。」


 杉田も俺と同じことを考えてたんだろう。それにしても、こんなに人がいるとは思わなかったし、ゲームコーナーもあるとはな。クレーンゲームなんかもあるし、結構遊べちゃうんだな。


「あ、杉田。あそこのゲームコーナーに行かないか?」

「そうだな、ちょっと行ってみるか。」


 腰を下ろしたばかりの休憩所からすぐに出ていく姿は、さぞかし落ち着かない奴らに見えたことだろう。


「これって取れるのかねぇ。」


 素朴な疑問を杉田にぶつける。


「さぁ・・・取れるんじゃないのか?」

「やってみるか?」

「俺はいいや。別に欲しいの無いし。」


 そう言われて中にいる人形を見ると、動物をモチーフにしたと思われる不細工なぬいぐるみが何個も入っている。それに交じってウルトラマンやちびまる子ちゃんがモデルと思われるぬいぐるみも何個か見つけられた。


「けどさ、なんか面白そうだよな。」

「そうか?これの原価ってきっと三〇〇円くらいだぞ?だから、三回で取れないと負けなんだよ。取れる自信あるのか?」


 夢のないヤツめ。そういう考えも大事だとは思うけど、いつもそんな理詰めじゃだめだと思うけどな。


「言いたいことは分かるけどさ。こういうのってちょっと燃えてくるな。」


 そうは言ったものの、俺自身も別に欲しいぬいぐるみがあるわけなじゃい。物珍しいから見ているのもあったし、何よりただ待っているのは暇なんだよ。


「なぁ、他のゲームも見てみないか?」


 杉田に促されて他のゲームも見てみる。

 う~ん、よくわからないのが多いな。麻雀とかはさっぱりだし。

 ん?あれってなんだ?パンチングゲーム?グローブもついてて・・・殴るのか?なになに?ソニックブラストマン?なんかすげぇ名前だけど・・・ほぅ、三発殴って敵を倒す的な感じかな。

 そしてこっちはなんだ?


「杉田?あれはなんてゲームなんだ?」

「ん?さぁ。見てみようか。」


 そう言って二人で真新しいゲーム台によってみる。


「あ、ストⅡじゃないか?あれ。」


 杉田が何を言ったのかわからない。


「え?なんだって?」

「ストリートファイターⅡだよ、たぶん。格闘ゲームだよ。やったことはないけど技を出して敵を倒していくゲームらしいぞ。」


 ほう。なんだか難しそうだな。それにどう見ても設置されて間もない機械のように見える。


「難しいのか?これって。」

「いや、わからん。やったことないしなぁ。あ、ここになんか技の種類かいてあるぞ?えっと・・・波動拳?ってなんだ?この矢印。意味わからん。」


 どれどれとか言いながら見てみる。うん。確かにわからん。↓↘→+Pってなんだ?


「う~ん、誰かがやってれば少しは分かるんだろうけどなぁ。」

「だよなぁ。ま、いっか。見ててもわからないしなぁ。」


 けれど俺らはしばらくこのゲーム台のあたりをうろうろしていた。もしかしたら誰かがやるかもしれない。そうしたらあの謎の記号の意味も分かるんだけど。そんな期待をしていたんだけど・・・


「あ、いたっ。もうなんでこんなところにいるのよっ。」


 実花ちゃんだ。女の子たちも風呂からあがったらしい。どうやら俺たちが休憩所にいないから探しに来たようだった。


「ごめんごめん。ちょっとゲームコーナーを見てたら面白そうなのがあってさ。竹中と二人で見てたんだ。」

「探したんだよ?どこにいったのかと思ったんだから。」


 実花ちゃんはそんなに怒っているようには見えない。むしろ、まったく仕方がないなぁというような表情をしているように思う。この二人って本当にお似合いだよな。


「それよりさ、小町ちゃんがあそこのクレーンゲームとこにいるから行こう?」


 確かに。クレーンゲームのところに小町がいる。ゲームの中にあるぬいぐるみを見てるみたいだな。興味あるのかな?俺は小町のところに駆け寄って声をかけた。


「よっ、小町っ。なんか欲しいのでもあるの?」

「あ、夕人。うん、なんかこれ可愛いなと思ってみてたんだ。」


 そう言って小町が指さしたのはムーミンのぬいぐるみだ。さっきはこんなのあったか?全然気が付かなかったけどなぁ。


「欲しいの?」

「うん、ちょっとね。」

「そっか。じゃ、やってみるか。」


 そう言って100円玉を投入して、アームを目標に定めて動かしていく。・・・・お、なんかいい感じかな?・・・・・もうちょっとこっちかな?いや、こんなとこでいいだろ。よしっ、ここだっ。アームは下にグイグイ伸びていきムーミンに直撃。しっかりとおなかのあたりを掴んだ。


「よしっ、行けるんじゃないか?」

「あ、すごいっ。取れるかな?」


 小町も歓声を上げる。アームはムーミンをしっかりと抱きしめながら上がってきて・・・そして穴に落とした。よしっ、取れたぞ。はっきり言って、取れると思ってなかったから、あまりのビギナーズラックに驚いた。


「やった。」

「夕人、すご~いっ。」


 小町は手をたたきながら飛び跳ねている。俺は景品取り出し口からムーミンを取り出して小町に渡す。


「はい。これ。」

「え?貰っていいの?ありがとう。嬉しいなぁ。」


 そう言って小町はムーミンを顔の目の前まで持ち上げて見ている。風呂上がりの小町は、髪をアップにして、ほんのり桜色に染まっている。なんだかとても魅力的に思えた。


「ちょっとぉ、翔。私にも取ってよ。」


 実花ちゃんが杉田におねだりを始めたみたいだ。けど俺が取れたのは運が良かったからだぞ?もう一回やっても取れる気がしない。


「はぁ?今の最高のパフォーマンスを見せられた後に俺がやるのか?無理だろう。勘弁してくれよ。」

「イヤだ。そこのまるちゃんとってよ。あっちのでもいいよ?」


 これはマズいことになりそうだぞ?あんな感じになった実花ちゃんはだれも止められない。


「ねぇ、夕人。ホントに貰ってもいいの?」


 小町が俺の顔を見上げて聞いてくる。


「うん、だって、そのために取ったんだから。」

「嬉しいなぁ。初めて夕人から貰っちゃった。」


 そういうことになるのか?あんまり深く考えてなかったけど。でも、喜んでくれて何よりだ。


「あぁ、もう。翔のヘタクソっ。」

「うるさいって。お前があれやこれやうるさいからだろ?」


 二人はなんだかケンカしながらも楽しんでいるみたいだ。



 あの後、杉田と実花ちゃんは10回以上挑戦したみたいだ。そして何とかひとつだけゲットしたみたいだけど・・・お疲れ、杉田。

 そして、その後なんだかテンションが上がってしまった俺たちは地下鉄駅の近くにあるスーパーのゲームコーナーにいた。ここにもクレーンゲームがあって、やっぱり実花ちゃんが杉田にぬいぐるみをねだっていた。二人がクレーンゲームにこんなにはまるなんて思ってなかった。いや、ハマってるのは実花ちゃんだけかな?


「なぁ、小町。あっちの見てみようか。もう一台クレーンゲームあるよ。」

「え?う~ん。もういいよ。一個とって貰ったし。これで満足だよ。」


 そう言って満面の笑顔で俺を見る。


「そう?ならいいけど。」

「うん。」


 そう言って小町がまた俺の横にすり寄ってきた。


「どした?」

「えへへ。気が付いてた?このシャツ。」


 そう言ってきているシャツをアピールしてくる。あんまり胸元を引っ張ると見えちゃうぞ?


「もちろんだよ。昨日買ったシャツだよね。」

「もうっ、気が付いてるなら言ってくれればいいのにっ。」


 口を尖らせながらも俺の腕に自分の腕を絡めてくる。


「それにしても、アイツらはいつまでやる気なんだろう。」

「ホントだよね。そろそろマズいよね。」

「うん、お金的にも、時間的にもね。」


 今の時間はもう7時過ぎ。本当ならもう戻ってるくらいの時間だ。


「ホントだね。心配してるかも。そろそろ帰らないと。」

「だよね。いい加減やめさせて、帰らないとね。」


 そう言って俺と小町は杉田たちのもとに歩いていった。

 実花ちゃんはやっぱり、『こっちからだって』とか『あ~、オシイッ』とか言ってるみたいだ。


「実花ちゃん・・・そろそろやめとこう?杉田くんのお金、無くなっちゃうよ。」


 杉田はさっきの銭湯でのゲームと合わせると30回近くやらされている。俺もいい加減可哀そうになってきた。


「そうだよ。それにそろそろ時間がマズいよ。」

「いやいや、これを取るまではやめられないって。」


 いかん。杉田が周りが見えなくなるほど熱中している。ヤツのこんな姿、今まで見たことがあるだろうか。

 イヤあるな。うん、普通にある。

 じゃなくて、やめさせないと。


「杉田さぁ。待ってる二人もいるし。戻ろうよ。」

「いやいや。ここで引いたら男がすたるわっ。」

「何でもいいから。今日はここまでにしようぜ。な?」

「・・・そうだな。ちょっと熱くなりすぎた。」


 まったくだよ。熱くなり過ぎだ。単価300円とか言ってたくせに、いくら使ったんだか。


「急いで帰らなきゃね。」


 小町も実花ちゃんを説得する。


「そだね。ごめん。翔、みんな。」

「いいさ。とりあえず急いで帰ろう?今からだと急いでも8時近くになっちゃうからさ。」


 この後俺たちは急いで杉田の家に戻ったんだけど、着いた時には8時をしっかり過ぎてしまった。

 茜と環菜に俺たち四人が怒られたのは言うまでもないよな・・・

ここまで読んでくださってありがとうございます。


それにしても、夕人のラックはなかなかですね。

あまり考えすぎずに行動したのが良かったんでしょうか。

普段からこんな感じで行動をしていればいいんでしょうけど、彼には無理でしょうかね。

これでも、かなり成長していると思うんですが。


一方、翔です。

彼は考えすぎですね。良くも悪くも。

おそらくは理詰めで計算してゲームをしているんでしょうけど、それだけじゃうまくいかないんですね。

日常生活は夕人よりもうまくやっているような気がするんですが。

なんとなく対照的な二人を描いて見た章でした。


そして、ここで第7章を終了にします。

次章からは夕食以降の話になります。

まだまだ合宿は続きます。

きっと面白い展開もあるでしょう。

是非期待していてください。

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