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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第2章 気がつけば・・・
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強制力とでもいうのか

思わぬ出会いから仲が良くなることってありますよね。


でも、当然、「思わぬ出会い」なんて早々起こるわけじゃない。


何がきっかけかわからない。


だからこそ、「思わぬ出会い」なんですよね。

 二年生になって数日。例の如くにクラス委員選抜の時期がやってきました。

 去年はいろいろあって学級会長なんて大任をやらされた。それも一年間。正直、今年は会長はやりたくないなぁ。結構しんどいし。あ、もちろん、楽しいこともあるけどね。だから今年は、ぜひ、杉田にやってもらいたいと思ってる。あいつは成績に関していえば、非の打ち所がない奴だから反対者は出ないだろう。運動神経はちょっとアレなんだけどな。


「では、今年もクラス委員の選抜をしましょう。」


 二年六組の担任、竹原先生だ。う~ん、社会科担当のこの先生は、頭頂部のアレが寂しい感じだ。まだ若いのに・・・。確か三十代半ばだったはず。噂では、うちの学校が生粋のヤンキー校だった時代に赴任してきて、髪の毛を毟り取られたとか。けど、それが真実なら、この先生は何年この学校にいるんだろう・・・。

 まぁ、それは置いといて、いかに杉田に会長をやらせるかが問題だ。栗林さんがいれば問題なくヤツをプッシュできたのだけど、いないものは仕方がない。んで、俺は何にしようか?いまさら風紀委員もないだろうし。ふ~む。

 おっ、いろいろと考えてる間に立候補者が出たみたいだな。なになに?


 学級会長 足草


 おい。これはまずいだろう?誰か、なんとかしろよ。そう思いながら教室を見渡してみると・・・ふーむ、みな、我、関せずって感じなのか?しかし、足草はまずい。担任もそう言いたいようだが立場上言えるもんじゃないだろう。マズいぞ。立候補者が既に立ってるから、推薦候補を募るとは考えにくい。どうする?


 再度、教室を見渡すと、杉田と目が合った。

 顎を使って『お前がやれ。』の合図を送る。

 杉田は人差し指を自分の顔に向けて『俺か?』なんて顔している。

 さらに、その指をそのままこちらに向けて、『お前やれよ。』という顔をする。

 俺は、左右の人差し指でバツ印を作りやりたくない旨を示す。

 杉田は、とぼけたような表情でこちらを見てくる。


 おい、よく考えろよ?あいつが会長になったらどうする?去年のオリエンテーリングでもやらかしただろ?ついでに、『忘れ物キング』だぞ?そんな奴にやらせられるかよ。


「竹中くん、何やってるの?」


 隣の小暮さんに問われる。確かに、傍目から見たら何やってるんだって感じだ。


「いや、足草が会長をやるのはマズい。非常にマズいんだよ。」

「そうなの?でも、他に立候補がいなんじゃ仕方なくない?っていうか、竹中くんがやればいいじゃん。」

「いや、俺はもう、十分やったよ。去年一年間やったしさ。」

「あら、それなら会長の仕事が良く分かってるってことじゃないの。やればいいんじゃない?」


 マズい。これもマズい。おかしな展開になってきている。しかし、正論を突き付けられると反論の余地が・・・。


「俺は、他の委員会をやってみようかなぁと思ってるんだよ。」

「他のって?」


 う、いや、それは口から出まかせだから・・・。


「えと、なんだろう・・・決めてない・・・かな。」

「そっかぁ、じゃ、竹中くん立候補しよう。はーい、横で竹中くんが会長やるって言ってます。」


 おおおおお。なんてことを・・・。


「おや?竹中くんも立候補しますか?」


 竹原先生が、まるで懇願するかのような表情で見ている。杉田、何とかしろよ。お前のせいだぞ?杉田のほうを見ると、両手を両頬に強く押し付けてアッチョンブリケな顔をしてる。くそぉ・・・杉田と小暮さんめ・・・。


「・・・はい、立候補します・・・。」


 なんとなく拍手が起こる。勘弁してくれよ・・・。


「では、会長の立候補者は、足草くんと竹中くんでいいですか?」

「異議ナシっ」


 そう叫んだのは杉田だ。あんにゃろめ。あぁ、二年生は緩く生きていこうと思ってたのに・・・。


「では、決を採りましょう。まず・・・足草くんがいいと思う人、手を挙げてください。」


 上がった手は一本。足草・・・お前だけじゃねぇかよ。


「では次に、竹中くんがいいと思う人。」

「イエ~~~スッ」


 黙れ、杉田。お前にやらせたかったのに。杉田の声につられるかのようにバラバラと手が上がる。


「では、会長は竹中くんにお願いします。」

「・・・はい、よろしくお願いします。」


 パラパラと拍手が起こる。けど、正直、足草に負けなくてよかった・・・。


「いいぞぉ、竹中っ」


 くっそ。杉田のヤツめ。こうなったら意地でもあいつに会長をやらせてやるからな。


「では、続けて副会長の立候補はいますか?会長は男子の竹中くんに決まりましたので、女子にお願いします。」

「はい、私やります。」


 お?誰だ・・・?


「玉置さんですね?他に立候補はいますか?」


 え?これって・・・これじゃ、まるで去年のデジャヴをみてるようじゃないかよ?


「いませんか?では、副会長は玉置さんでお願いします。」


 大きな拍手が起こる。おい、俺の時とはずいぶん大きな差があるじゃないか。まぁ、美人で才女の玉置さんだからな。仕方がないか。一年の学年末試験での順位は六位だっけ?俺が三位で杉田が一位。足草は・・・言うまでもない。


「では、ここからは二人に任せますね。」


 そう言って、先生は教壇をおりた。入れ替わりに俺と玉置さんが教壇に上がる。


「また一緒にできるね。ガンバロ?」


 小声で俺に呟いた。


「あぁ、そうだね。やるしかないのかぁ。」


 俺も小声で返した。


「あれ?私とじゃイヤだった?」

「そうじゃないけどさ・・・今年はゆっくりしたかったんだよ・・・。」

「いいじゃない。竹中くんは会長にピッタリだって。・・・東山さんもそう言ってたでしょ?」

「ちょ、なんでそこで東山さんが・・・」

「はい、ちゃんと進めてくださいね?お二人さん。」


 先生の一言で我に返る。


「すみません。」


 よし、やるか。気合を入れなおすために深呼吸する。


「では、続けて他の委員についても立候補を受けつけたいと思います。誰か立候補する人はいませんか?」


 俺が議事進行を務めてる間に、玉置さんは板書をしていく。もうすっかり板についた感じだ。おかげで進行に不安は何も感じない。何といってもこれで三期連続この組み合わせなんだから。



 予想以上に学級委員の立候補者がいた。これなら淡々と決まっていきそうだな。えっと、今のところの立候補者は、どうなってるんだ?


 風紀委員 杉田

 文化委員 小暮

 美化委員

 体育委員 青葉

 保健委員 

 図書委員

 放送委員 北田・足草


 杉田め。なんで風紀委員なんかに立候補してるんだよ。文化委員は小暮さんで、体育委員は青葉さんか。あとは、美化委員と保健委員だな。保健委員かぁ。東山さんがいたら立候補してたんだろうけどな。いやいや、何考えてるんだ、俺は。それより、進めていかないとな。頭を軽く振って考えを切り替える。


「他に立候補はいませんか?」


**********************


「いやぁ、やっぱり会長は竹中だよなぁ。」


 委員選抜が終わった後、杉田が俺のところに寄ってきてこう言い放った。


「俺はお前にやらせたかったんだけどなぁ。学年一位の杉田様に。」

「やめてくれって、俺はガラじゃないからさ。」

「い~~や、そんなことはないぞ?お前はやる時はやる奴だからな。」

「勘弁してくれって。学級会長をやる以外の言うことは聞くからさ。」


 ニヤリ。俺の表情が変わる。


「よし、その言葉に二言はないな?」

「竹中、貴様も言うようになったな。」


 おい、それは誰の真似だ?また赤い彗星か?


「言ったな?よし。じゃぁ、後期の生徒会選挙で生徒会長に立候補しろ。それでチャラだ。」

「ええぃ、冗談ではないっ」


 もう、本当に赤い彗星ゴッコはやめろっての。でも、まぁ、ここはヤツに乗ってやるか。


「大衆は常に英雄を求めているものさ。By白い悪魔」

「ならば、我、杉田が命ずるっ。竹中よ、貴様は副会長として、我を支えよっ。」


 変なポーズを決めつつ、俺の目をしっかり見て言ってくる。なんだ?奴の左目に妙な説得力があるぞ?どういうことだ?


「・・・わかったよ。」


 思わず受け入れてしまった。思わぬ強制力ギアスだ。


「ふっ。」


 なんだ?結局、あいつの思うがままかよ。チクショウ。あっと、忘れるところだった。これだけは聞いておきたいんだった。


「で、なんで風紀委員なんだよ?」

「風紀を整えるっての?俺にピッタリじゃないか。そう思わないか?」

「いや、全然。」


 実際は適任のような気もしないでもないが、これを認めるのは少し癪だった


「なんだよそれ。なんかひどくないか?」

「な~~に、やってんの?」


 ん?声が聞こえたような?あたりを見渡す。


「だから、それはやめろって言ってるじゃんよ。」


 青葉さんから軽いケリをお見舞いされる。


「いやいや、ある意味、これは礼儀かな、と。」

「はぁ、大体竹中さぁ、何やってるの?杉田みたいなバカなことはやめなって。」

「ふっ、坊やだからさ。」


 すぎた~。その辺にしとかないと青葉さんがキレっぞ?


「でもさ、楽しそうだよね?」


 楽しそうに見えてたならいいさ、小暮さん。


「けど、な~んか、杉田っていっつもなんかの真似してるんだろ?」


 あぁ、青葉さんの言う通りだ。まぁ、一種の病気じゃね?アニメ、というかテレビの見過ぎなんだよ、あいつは。


「まぁ、中二といえば思春期真っ盛りだからな。いろいろあるって。そうだな・・・中二病とでも名付けるか?」


 まったく・・・。自分で言ってりゃ世話ないよ・・・。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


竹中は三期連続で学級会長をやることになりました。

これが政治家だったら凄いことになってます。

ちなみに玉置さんも三期連続です。

ん〜、なんとなく、何かを感じますけど・・・気のせいですかね。


それにしても、板につくほど手慣れてるって、凄い息の合い方です。

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