表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第7章 Two of us -俺たちの中の二人-
36/235

遊びは綿密に予定を立ててから

翔の豪邸に全員集合しました。

環菜の行動には少し疑問符が残りますが、何か思うところがあるのでしょう。

とりあえずは勉強会という名目での合宿のはずですから、勉強をするはずですよね。

「とりあえずさぁ。夏休みの宿題をやっつけましょうか。」


 珍しく茜が勉強に関することを提案してきた。


「そうだね。そういうめんどくさいことは早めにやっちゃったほうがいいよね。」


 実花ちゃんが手をたたいて歓迎の意を示す。これもまた珍しい。


「お、じゃあ、やっちゃう?でもさ、俺的には今後の予定を決めてからにしたいんだけどいいかな?」


 杉田は控えめに大人の提案をした。

 そうだよな。これから三日間、どう過ごすかは本当に重要だ。だって、こんなことって二度はないかもしれないんだから。


「そうよね。それはみんなで話して決めたいね。」


 環菜の声を久しぶりに聞いたような気がする。そして、相変わらず俺のほうを見ようとしない。何なんだ?


「よし、じゃ、みんなここに座ってくれ。」


 そう言って杉田はリビングというには広すぎる広間に案内する。各々が六人掛けのテーブルの席に着く。ホスト席には杉田。そこから時計回りに実花ちゃん、茜、俺、小町、環菜といった感じだ。


「さて、みんなが席に着いたところで、俺が考えてた計画を話したいと思う。聞いてもらえるかな?」


 杉田の話し方、なんだかいい感じだ。


「もっちろんっ。」


 実花ちゃんは杉田の顔を見ながらご機嫌そうに言った。他のみんなも頷いている。もちろん俺も同じ気持ちだ。


「ありがとう。それじゃ、聞いてくれ。まず、今日。これからのこと。夕方から銭湯に行きましょう。もちろん強制じゃないけどね。ちょっと遠いし。で、戻ってきたらみんなが持ち寄ってくれた食材を使ってカレーを作ってカレーパーティー。そして夜はまぁ、適当にって感じ。」


「そこって結構遠いのかなぁ?」


 小町がみんなの気持ちを代弁する。あんまり遠いと大変だもんな。


「う~ん、昔ながらの銭湯で良いなら近くにあるんだけどね。ちょっと大きな銭湯だと地下鉄で一駅離れてる。」


「遠くもないけど、近くもないねぇ。」


 茜がもっともなことを言う。もっともすぎて反論もできない。


「まぁ、これは行きたい人だけでいいと思う。家にもシャワールームと風呂場があるから適当に使ってくれて構わないしね。あ、俺の母親がタオルを大量に準備してくれたから使ってくれていいみたいだよ。」


 シャワールームと風呂場?別々にあるのか?どうなってるんだ?


「え?二つあるの?」


 小町が俺の心を読んだかのように杉田に問いかける。


「あぁ、あるんだよ。不思議だよなぁ。」


 杉田は首をかしげながら言うが、自慢のように聞こえないのは杉田の人柄がなせる業だ。


「すごいね。杉田くんの家って部屋が何個あるんだろね。」

「まったくだ。モデルルームでもこんなすごい家はないよな。もしかして、杉田の親父様って社長様?」


 ずっと思っていた疑問をぶつけるチャンスだと思った。


「あぁ、そうらしいよ。何をしてるのかはよくわからないけどな。」


 おそらくみんな思っただろう。杉田ってもしかしてセレブなんじゃないのかと。


「みんなでお風呂に行っちゃったらご飯遅くなっちゃうよ?私は杉田くんちに残ってご飯作ってようかな。」


 こんなすごいこと言うのは誰だろうと思ったけど、まぁ、環菜だよな。やっぱり。


「それもそうだね、環菜を一人にはできないから私も残ろっかな。こう見えても料理は得意なんだよ?って言ってもカレーなら誰でも作れると思うけど。」


 そう言ってペロッと舌を出しながら茜が言った。この二人は女子力が高そうだもんなぁ。


「え?二人がいかないなら私も残ろうかなぁ。」


 小町も女子力をアピールしたいのか?


「実花ちゃんと小町ちゃんは行っておいでよ。いくら豪邸の台所とは言っても二人もいれば十分だよ。何とかなるって。」


 茜が言うと角が立たないのはなんでかなぁ。この中でお姉さん的ポジションだからなのかな?


「そう?じゃ、お言葉に甘えてもいいかな?実は銭湯って言ったことなくって、行ってみたかったんだよね。」

「あ、あたしも行ったことなかった。」


 実花ちゃんも行ったことないのか。

 実は俺もないんだけれど、それは内緒だ。深い意味はないけど。


「じゃ、悪いけどご飯は二人に任せてもいいの?」


 杉田がしっかりと話を進めてくれる。俺はただ聞いてればいいのかな。


「任せといて。おいしいの作っておくね。」


 腕まくりをする仕草をしながら茜がやる気満々に言った。それにしても、今日の環菜はなんだか静かだな。体調でも悪いのかな。


「うん、ありがとう。よろしく頼むね。あとで台所のことは教えるよ。じゃ、次に行ってもいいかな?」


 全体を見渡して、先に進んでも良さそうな雰囲気を確認して続ける。


「明日なんだけど、みんなに水着を持ってきてもらったんで、プールに行きましょう。」


「プールってどこにあるの?」


 実花ちゃんが『遠いのは嫌だよ』とも言っている。


「大丈夫。実は庭にプールがあるんだ。そんなに広くはないけど、遊ぶには十分だよ。」


 おそらくみんな思っただろう。コイツ、間違いなくセレブだなと。


「プールがあるのか?自分ちに。」


 どうやら、俺たちの常識はこの家には通用しなそうだ。


「けど、掃除しなきゃいけなくってさ。明日の午前中に手伝ってほしいんだ。」

「いいよぉ。手伝う。」


 小町が即答した。俺も賛成だ。自分で掃除したプールで遊ぶなんてめったにない経験だしな。


「みんなどうかな?」

「うん、いいんじゃない?私も手伝うよ。」


 茜も俺と同じ考えなのかな。実花ちゃんと環菜も頷く。


「じゃ、明日はそんな感じで。で、明日の夜ごはんなんだけど、なんだかみんなの親御さんがいろいろ持ってきてくれるって話だったから、それでパーティーですかね。そして、最終日。天気次第なんだけど、藻岩山だっけ?あの近くの。そこのロープウェーに登ってみたいんだよね。結構個人的な意見なんだけど。どうかなぁ?」

「いいね。その杉田の提案に乗った。」

「ありがとう、竹中。みんなはどうかなぁ。他にやりたいことあるなら行ってほしいんだ。みんなで考えたいし。」

「うん、いいんじゃない?なんだか楽しい三日間になりそうね。」


 いつもの環菜に戻ったのかな?ともかく三日間の予定は決まったみたいだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

思った通りに勉強会にはならないようですね。

ま、予想通りといったところでしょうか。


それにしても翔のリーダーシップはさすがといったところでしょうか。

夕人の出る幕がありませんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ