メモは無くさない場所にしまいましょう
小町との買い物中です。
夕人の水着は結構すぐに決まりましたね。
でも、女の子のお買い物は・・・お気に入りが見つかるまで続きます。
そういうものです。
結局、小町のシャツを探していろんな店をまわった。
街の店も何件か回ったけど、あんまり気に入ったのはなかったみたいだ。それで、結果として今いるのはイトーヨーカドー。確かに手ごろな感じの服がたくさん売ってる。
小町はといえば何が楽しいのか、ずっと笑顔で『このネコのシャツ、可愛いっ』とか『あっちのクマのもいいっ』とか言いながら売り場を歩き回っている。
「ねぇねぇ、これはどうかな?」
お、これはちょっといい感じかもしれない。薄い黄色のシャツで白で模様が入った感じだ。
「うん、いいんじゃないかな。」
「ね、こっちは?」
「あ、それも悪くないね。」
今度は淡いピンクにいろいろな色がはいったシャツだ。
「・・・なんだか、どうでもいいみたいに聞こえる。」
不服そうな顔をして足で軽く蹴ってくる。
「え?そんなつもりはないんだけどな。」
マズい。機嫌が悪くなっちゃうぞ?
「あれって、どうかな?」
ショートパンツを指さして言う。
「あ、あれはいいかも。ちょっと履いてみよっかな。」
顔にパアァっと笑顔が戻る。ふぅ、これで一安心だ。
「うん、そうしてみなよ。向こうに試着室あったしね。」
とまぁ、こんな感じで小町の洋服探しはまだまだ続くみたいだ。
あれから一時間は経っただろうか。
結局、小町は気に入ったシャツを数枚購入した。女の子の買い物って長いんだなってことを実感した一日だった。
それで今いるここはフードコート。実はここのフライドポテトは絶品なのだ。安くて大盛り、さらにスーパーで買った飲み物や食べ物の持ち込みオッケー。こんな場所を学生が好まないはずがない。二人でポテトを食べながら、明日のことをいろいろ話していた。それこそ、三日間もあるんだから何しようかとか、どんなものを持っていったらいいだろうとか、そんな話をしていてそろそろ帰ろうかというところだ。
「今日はありがとうね。水着が買えて本当に良かったよ。もし買えなかったらどうなるところだったか。」
「そうだねぇ。まさか裸ってわけにはいかないしね。」
「みんなが望むならやらないでもないぞ?」
ちょっとだけ小町の冗談に乗ってみる。
「いやいや、それはマズいって。それより、私の買い物のほうが長くなっちゃってごめんね。」
買い物が長かったのは確かだけど、楽しかったから悪い気はしない。
「それは全然かまわないって。気に入ったのあってよかったね。」
「ホントだよ。良かった。明日着て行こうかなぁ。」
「いいんじゃない?可愛かったしさ。」
お世辞じゃない。可愛かったぞ、シャツが。
「ホント?じゃあ、そうしちゃおっかな。」
小町があまりに嬉しそうにしているから、『可愛いのはシャツだぞ?』なんて言うのはやめておこう。藪蛇になりそうだ。
「それでね、話は変わるんだけど。明日はみんなで待ち合わせしてから杉田くんちに行かない?」
「それはいいけど、茜たちには今から連絡するの?」
「そ、ここの公衆電話から連絡しよっかなって。」
「電話番号も覚えてるの?すごいね。」
「実は、お財布にメモが入っているのだぁ~。」
そういって小町は財布から電話番号が書かれてると思われるメモを取り出した。
「じゃ、ちょっと待ってて、電話してくるから。」
そう言って俺の返事を待たずに公衆電話に向かって走っていく。思い立ったら、即、行動なんだなぁ。
5分位待っただろうか。小町が戻ってきた。
「みんなに連絡ついたの?」
やっぱりそこが気になるよな。みんな家にいるとは限らないし。
「うん、ダメだった。」
そう言って軽く笑う小町。だよなぁ。みんなと連絡取れるとは限らないよなぁ。
「誰と連絡取れたの?」
「それが、全員ダメだった。どうしよう。」
「どうしようって言ってもなぁ。もう明日のことだからさ、無理じゃない?前に決めたように2時に杉田んちに集合でいいんじゃないの?」
この前も杉田んちに勉強会で集まってたから場所がわからないってことないと思うし。
「いやぁ、私がよくわからないんだよね。」
右手の人差し指で頬を軽く掻きながら笑って言う。
「そっか。わかった。じゃ、一緒にいこっか。」
「良かったぁ。よろしくねっ。」
そう言って飛びついてくる小町。最近、小町のスキンシップが多くなったような気がするけど、気のせいか?
ここまで読んでくださってありがとうございます。
夕人の天然が炸裂していますね。
それに、小町もいつも以上に元気です。
みんなに連絡がつかないのは家に電話をしているからです。
携帯電話がない時代ならではのことですね。
それにしても、小町の行動に妙な積極性を感じます。
とは言っても、可愛らしく感じるのは小町の性格がなせる技なんでしょうかね。




