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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第7章 Two of us -俺たちの中の二人-
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電話中の会話って誰かに聞かれると恥ずかしい

第2部の開幕になります。


今までは基本的に学校内での話が中心でしたが、今回は勉強合宿でのお話。

合宿といえばお泊まり会。

お泊まり会といえばお遊び。

さて、本当に勉強会になるのでしょうか?

 今年もようやく夏がやってきた。

 一学期はあまりにもいろいろなことがあったが、終わったことなんてもうどうでもいい。いや、どうでもいいというよりは、それを糧に少しでも前に進む必要があるだろう。まぁ、とにもかくにも中学生になって二回目の夏休み。もう、過ごし方も慣れたもんだ。宿題は早めに終わらせて夏休み後半を有意義に過ごす。これこそ正しい夏休みの過ごし方というものだろう。とはいえ、実際はそんなにうまくはいかないのが現実だ。読書感想文を一日で仕上げるのは不可能だし、塾の夏期講習もある。思ったより中学生の夏休みには休みが少ない。まぁ、こんなことを言ったら社会人の先輩たちに怒られるんだろうけど。


 今年の夏休みは、いつもの仲良し六人組でお泊り会を決行する予定だ。幸いにして泊まる場所に関しては俺の友人が提供してくれるので心配はいらない。それに、友人宅に留まるということと、集まるメンバーが品行方正ということで、親の説得も楽だった。おっと、また自己紹介が遅れてしまった。俺の名前は竹中夕人たけなかゆうと。日之出ヶ丘中学二年生。二年六組の会長をやらせてもらっている。成績は優秀なほうで、運動もまぁそれなりにこなす。と言ってもなにがすごいというわけではないのだけれどな。誕生日はまだ迎えていないので、まだ十三歳だ。仲良し六人組というのは俺が名付けた名前なので実際はそう呼ばれたことはない。少なくとも俺にその記憶はない。けれど、そのメンバーは紹介しておきたいと思う。


 まず俺の親友でクラスメートでもある、杉田翔すぎたかける。こいつは学年一の頭脳の持ち主で最低の運動神経の持ち主。ちなみに俺は杉田の成績と比べるとちょっとだけ負ける。(とは言っても学年二位なんだが)コイツにはいつも本当に世話になっている。数え上げればきりがないのでここで話すのはやめておく。そして将来の夢はガンダムを作ることだそうだ。


 それから杉田の彼女である栗林実花くりばやしみか。天然で情報通、噂話も大好きな女の子。成績はいたって普通だけどその憎めない性格から友達も非常に多い。俺たち六人の中で唯一クラスが違うことに怒りを覚えている。


 次に、学年一の美貌とスタイルを持つ小暮茜こぐれあかね。将来はモデルか芸能人かと噂される明るいスーパー女子。美人は性格に難ありなんて言われることもあるが、茜に関してそれは絶対に当てはまらない。俺たちの中ではお姉さん的存在な時もある。成績がかな~り残念なところが彼女のコンプレックス。


 それから、青葉小町あおばこまち。身長百五十センチ未満というミニマムな体の持ち主。可愛らしい女の子で元気印を絵にかいたような女の子だ。一時期は男の子っぽい話し方をしていたが、最近は女の子らしくなってきたという周りの声が聞こえてきていた。


 最後に玉置環菜たまきかんな。彼女は勉強、運動、性格とありとあらゆるところでトップクラスというハイスペック女子。しかも美貌まで兼ね備えている。そのおかげで一年生の時にちょっとした騒動に巻き込まれた。まぁ、俺とはその騒動がきっかけで親しくなった。


 メンバーの紹介はこんなところでいいだろう?改めて全員のことを紹介するのって結構難しいものなんだよ。けれどはっきり言えることは、俺たちはとても仲がいいということだ。これからもきっと、仲良くやっていけると思っているんだ。


***********************


 今日は七月二九日。夏休みに入って何日か経った昼下がり。俺は珍しく(?)焦っていた。


「ヤバい。水着がない。」


 確かタンスのこの引き出しの中に入っていたはずなんだけど。おかしいなぁ。落ち着いて考えてみよう。前に使ったのはいつだ?去年は使ったっけ?


「夕人、あんた何探してるの?」


 母親が呆れた顔でこちらを見つめている。


「水着探してるんだよ。ここに入れてなかったっけ?」

「この前捨てるって話したじゃない。去年も使ってなかったでしょ?」


 そうだっけ?それじゃ、俺は何のために部屋中ひっくり返したんだ?そう思いながら部屋を見回す。まるで泥棒が入った部屋のようにめちゃくちゃだ。ふぅ、片付けなきゃいけないか。でもまいったなぁ。


「明日から杉田んちに行くでしょ?その時にいるんだよなぁ。」

「なんで、そういうことを急に言うの?」

「イヤ、だって、ここにあると思ったんだよ。」


 まいったなぁ。どうしようかなぁ。これから買いに行くか?いや、でもお金がないんだよなぁ。


「じゃ、買っておいで。お金あげるから。今度からはそういうのは早めに言うのよ?」


 そう言って母親がお金をくれる。ありがとう、お母さん。


「ありがとう。さっそく行ってくる。」

「ちゃんといいのを見てくるのよ?来年も使えるやつを買いなさいよ。」


 よっしゃあ、これで買いに行ける。けど、どこに行けばいいんだ?全然わからない。誰か知ってる奴いないかなぁ。杉田は?いや、そういうのは分からなそうだな。あいつは運動音痴だし、そういうの買いに行かなそうだ。茜は・・・お洒落な水着しか着なそうだし、いや、見たことないし勝手な想像だけど。あ、そうだ。小町なら知ってるんじゃないか?あいつは体操とかやってたはずだし、そういう店を知ってるんじゃないか?そうだよ。小町に聞いてみよう。


「あ、お母さん、ちょっと電話使うね。」


 小町の電話番号はっと・・・え~と、これだ。

 

 トゥルルルルルルッ・・・・

 

 いるかな?小町。いなかったらどうするかなぁ。


「はい、青葉です。」

「あの、竹中と言います。青葉さんのクラスメートなのですが、小町さんはいらっしゃいますでしょうか?」


 これで小町がいなかったらどうするかな。


「あら?あなたが竹中くん?小町からいろいろ聞いてますよ。とても優秀なんですってね。」


 おい、小町。お前、お母さんと何の話してるんだよ。


「あ、いえ・・・そんなことは・・・」

「そんなことないわよ?小町がね、男の子の話をすることなんて滅多にないんだから。」


 家で俺の話をそんなにしてるのか?そういうのやめてくれよ。


「あ、そう・・なんですか?」

「そうなのよぉ。でも、ほら。うちの小町って子供っぽいでしょ?もうちょっと女の子らしくなって欲しいんだけどねぇ。」

「そ、そうですか?いや、でも、その、そんなことはないと思いますけど・・・」

「あら、竹中くん。そう言ってくれると小町も喜ぶわ。」


 なんで、俺は小町のお母さんとこんな話してるんだ?そう思っていると受話器の向こうが騒がしくなってきた。


『ちょっと、お母さん、誰と電話してるの?』

「あら、竹中くん、小町が来たみたいだから電話代わるわね。」

『え?竹中くんなの?ちょっとっ、なんでお母さんが話してるの?それって私に来た電話なんじゃないの?』

「そうだけど、あんたがいつもお母さんに話してる竹中くんなのよ?お母さんだって話してみたいじゃないの。」

『あ、もうっ、なんでそういうこと電話で言うの?もう信じられないっ。早く代わってよっ。』

「あらあら、じゃ竹中くん、小町に代わるわね。」

「あ、はい・・・」


 なんだか、小町にとってあんまり俺に聞かれたくないことを聞いちゃった気がするな。


「あ、竹中くん?ごめん。えっと・・・聞こえてた?」

「聞こえてた。全部。」

「うそぉ。全部?」

「たぶん。っていうか俺の話してんの?」

「・・・うん、ちょっとだけ。」


 ちょっとだけか。そういうことにしとくか。


「まぁ、俺も学校の話とかを家でするからなぁ。」

「うん、そうだよ。そういうこと・・・」

「それにしても、竹中くんって久しぶりに言われたな。いつも、バカ夕人って言われてたからさ。なんか違う意味で新鮮だわ。」

「だって。いいじゃない、そんなの。・・・それより、どうしたの?急に電話なんてしてきて。」


 そうだった。なんで電話したのか忘れるところだった。


「実はさ、ちょっと教えて欲しいことあったんだよ。」

「教えて欲しいこと?夕人が?なに?」

「実はさ、明日持っていく水着がないんだよ。それで、買いに行こうと思ったんだけどさ。どこに売ってるかわかんなくてさ。」

「はぁ、今さら?」


 いまさらで悪かったな。


「うん、さっき水着探してんだけど、見つからなくて。親に聞いたら捨てたって言われてさ。」

「へぇ、夕人ってそういうとこあるんだね。ちょっと意外。」

「なんでだよ。別に普通だろ?」

「だって、前もってちゃんと準備してそうな感じがしてたからさ。そっかぁ。そうなんだね。」


 普段は前もって準備するさ。今回は特別だ。


「まぁ、それは良いから。売ってるとこ教えてよ。」

「いいよ。何だったら一緒にいこっか?」


 な、なんですとぉ?それはありがたい。正直、店の名前だけ教えられてもどうしようとか思ってたところだったし。


「うん、頼むわ。助かるよ。」

「んとさ、そしたら、どのくらいで出られる?」


 そうだなぁ。俺はすぐにでも行けるけど。


「俺はいつでも。何なら今すぐにでも。」

「え?今すぐ?・・う~ん、わかった。ちょっと待って。」


 小町は何かを思い出したのか受話器をどこかに置いたみたいだ。どこかに走っていくような足音も聞こえる。


『おかーさーん、これから出かけるよ~。』

『あら?竹中くんと出かけるの?』


 小町よ、保留ボタンとか押さないと、電話って全部聞こえるんだぞ?


『うん、買い物に行ってくるっ。』

『あらあら、じゃ、竹中くんに迎えに来てもらったら?』

『そうだね、そうしよっかな。』


 バタバタと走って戻ってくる音が聞こえる。


「オッケー、夕人。じゃあさ、うちに来てよ。待ってるから。」

「お、おう。分かった。じゃ、一〇分くらいで行くよ。」

「うん、待ってるねぇ。またねぇ。」


 ガチャン。電話が切られた。何だろう。小町ってやっぱり子供っぽい気がする。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


今回は小町との会話からスタートしました。


そして、小町のお母さんとの会話で、久しぶりに設定を思い出していただけましたでしょうか。

この時代はまだ、携帯電話が普及していない時代のお話になります。

コンビニもそう多くなく、お店の閉店も早い。

そんな時代の話になります。


今とは違う繋がりかたをしていたクラスメートたち。


そんなところを楽しんでいただけると嬉しく思います。

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