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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第6章 優しさだけじゃ・・・
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はぁ?何やらせるつもりよ

前回の衝撃の展開から一夜明けて朝になります。


意味深な表現ですみません。

深い意味はありません。


もちろん、あのあと竹中は家に帰りました。

ご安心ください。

 翌日、ひどく重たい足取りで学校に向かっていた。

 北田さんが学校に来てたらどういう顔で会えばいいんだ。誰かに相談できるようなことじゃないし、俺の中できちんと整理しないといけない。だけど、考えたって簡単に答えが出るもんじゃない。

 見慣れた学校の正門が見えてきた。

 いつも通りの光景。

 いつもの日常。

 けどそれって簡単に壊れるかもしれないものなんだ。

 分かってはいたけどさ。



 あれ?向こうからちっちゃい子が走ってくる。あれって小町か?


「あ、夕人、おはよう。」

「小町か、おはよう。もう体調は平気なのか?」


 小町の体調は良くなったみたいだな。安心した。もしかしたら、いつもの仲間に出会うことで少しは答えがわかるのかもしれないしな。


「うん、おかげさまでね。夕人はカゼ、ひいてない?」


 笑顔の小町を見ると元気が出るな。


「あぁ、俺は元気だぞ。」

「・・・そう?ならいいけど。なんか、そうは見えないよ?」


 さすがに小町は鋭いな。


「いやいや、そんなことないぞ。俺は元気だ。」


 そう言って小町の頭をポンポンと撫でる。


「なんか、こうやってされるのも久しぶりだと悪くないね。」

「そうか?ならもっとやってやろうかか?」


 そう言っていつもより少し強くグリグリッとしてみる。


「うわ、やめてよ。背が縮むじゃんっ。」

「縮まねぇよ。こんなことじゃさ。」


 さらにウリウリっと押し込む。


「や、やめてぇ~。」

「おう。やめるか。」


 そう言って小町の頭から手を放す。


「このバカ夕人。髪がぐちゃぐちゃになっちゃうじゃない?」


 そう言って小町は両手で髪を整える。


「あ、そうだ。昨日な。環菜と杉田がダウンしたわ。茜も昨日休んでたし。」

「えぇ?あの三人も?」

「そうだよ。なんだかカゼが大流行だからな。小町が復帰して良かったよ。」

「みんな大丈夫かなぁ。」

「う~ん、昨日の帰りの環菜はかなりヤバかったよ。どんどん熱上がってきてさ。帰りなんか歩けなくなっちゃったからな。」


「え?そうなの?それはかなりマズそうだね。大丈夫かな?」


 小町は心配そうな表情で俺を見つめてくる。


「どうかなぁ。さすがに今日は休むんじゃないかなぁ。」

「そっかぁ。心配だね。」


 そう言って二人で生徒玄関に向かって歩き出す。いつも通りの日常が始まるといいんだけどな。無理だよなぁ。



 教室に入ると、やはりまだ、ちらほらと休んでる奴らが見るみたいだ。杉田と環菜はやっぱり来てないか。茜もまだ来てないみたいだ。


「やっぱり、来てないみたいだね。」

「そうみたいだね。」


 そんな話をしていた時に俺の横を無言で通り抜けていく人影が。北田さんだ。


「あ、北田さん、おはよう。」


 昨日のことを知らない小町が朝の挨拶をする。俺も挨拶だけはする。


「おはよう、北田さん。」

「あ、青葉さん。竹中くん。おはよう。」


 そう言って北田さんは自分の席に移動する。俺のことは見ようともしない。


「あれ、今のなんか変じゃない?」


 小町が小声で俺に言う。


「あぁ、そうだね。もしかしたら、まだ体調が良くないのかもね。」


 俺も小声で小町に言う。けど、そうじゃないことは俺にはよくわかってる。さっきの北田さんの行動がすべてを物語っている。


「そうなのかな。なんかちょっと・・・違うような気がするけど。」


 やっぱり小町は鋭いな。でも、俺からも何も言えない。


「そうかな・・・」


 そうに決まってるよな。昨日までと同じとはいかないよ。やっぱり、気が重い一日になりそうだ。


************************


 昼休み。やっぱり教室に居づらい俺は一人で屋上に来ていた。いつもならバスケをしに行ってるところなんだけど、今日はそういう気分にも慣れない。今日は杉田も休んでいたし、何かを相談できるとしたらあいつだけなんだけどな。


「やっぱりここにいた。」


 そう言って俺の前に現れたのは石井さんだ。


「ん?石井さんか。よくわかったね。ここにいるのが。」


 ふぅ。溜息まじりに言う。


「まあね。ここにいること多いでしょ。結構みんな知ってると思うよ?」


 確かに、俺たちはここにいることは多いけど。


「そうだね。」

「・・あの、昨日はありがとね。プリント届けてくれたんだよね。」

「あぁ、約束したからね。ちゃんと届けたよ。」


 その後のことは言えないけどな。


「・・・えっと、それだけだから。」


 俺には北田さんにしてあげられることなんてあなりなさそうだし、石井さんが仲良くしてくれたら・・・そう言えば、石井さんと北田さんってうまくいってないんだっけ。

 あ、そうだ。そう言えば俺はひとつだけお願いできるんだったな。


「そうだ、石井さん。ちょっといい?この間の約束、果たしてもらってもいいかな?」


 俺はどんな顔をして言ってるんだ?石井さんは一瞬、『え?なんのこと?』とでも言いたげな顔をしたけど、思い出したかのように『あぁ、あのことね。』といった。


「そう。あの時のことだよ。一個だけ言うことを聞いてくれるってやつさ。」

「何?確かに言うことを聞けって言われたけど、できないことだってあるんだけど。」


 妙に身構えて俺のことを厳しい目つきで睨む。


「そうだね。でも、お願いするわ。結構、厳しい事いうけど。覚悟はいい?」

「はぁ?何やらせるつもりよ。」


 大したことじゃないさ。たぶん。俺にはできないけど、石井さんならできることだよ。


「実はさ。ちょっといろいろあって北田さんとは決定的にダメな感じになったんだ、昨日さ。でも、まぁ、それは置いといて。そのことじゃなくてさ。北田さんとちゃんと仲直りしてくれよ。あいつの友達なんでしょ?」


 石井さんは驚いたような顔でこっちを見ている。


「ダメかな。」

「・・・わかったわよ。あの時の約束じゃ仕方ないよね。仕方ないから約束守ってやるよ。」


 そう言って俺にクルッと背を向けて石井さんは離れて行った。


「よろしく。」


 はぁ。疲れた。なんで俺がこんなに悩まなくちゃいけないんだよ。

 俺のせい?そう言われたって、今更俺を変えることなんてできないし。今の俺のまま、生きていくしかないよなぁ。

 でも、少しずつ変えていかなきゃいけないことはあると思う。どう変えていけばいいのかなんてわからないけど、きっと変えていかなくちゃいけないんだろうな。



 夏休みまでもう少し。この厄介な学校生活からいったん解放される。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


二年生一学期編はここまでになります。


今回は色々な出会いと、他人に巻き込まれていく竹中を描いてみました。

それにしても、竹中は成長してますよね。

一年生のときとは大違いだと思うのは、作者である私の贔屓目なのでしょうか。


ただ、今回の話では茜や小町、環菜とのカラミがあまり多く描けなかったのが残念です。


ですが、この後は番外編を書きますのでお楽しみに。


お意見、ご感想をお待ちしております。

よろしくお願いします。

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