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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第6章 優しさだけじゃ・・・
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麦茶はいつ、どこで飲んでも美味しい

一難去ってまた一難ということになるのでしょうか。

北田さんへのプリントを届けるという使命。


別にそんなに難しいことでもなさそうですが、アレのあとですからね。

やっぱり、意識しちゃいますね。

 北田さんお家は確か107号室だったな。ってことはここだよな。

 はぁあああ。

 深いため息をついてインターホンを押す。


 ピンポーン


 どこの家もインターホンは同じような音だ。

 ・・・ん?誰もいないのか?出てこないぞ?

 もう一度インターホンを鳴らす。


 ピンポーン


 誰も出ないな。よし。それじゃ仕方ない。プリントは郵便受けに入れて帰ることにしよう。


「はい。」


 しまった。誰か出やがった。これじゃ帰るわけにもいかない。


「あの、北田さんのクラスメートで竹中と言います。配られたプリントを持ってきました。」


 誰か出たって、よく考えたら母親だろうなぁ。一応、失礼のないようにしないとな。


「え?竹中くん?なんで?」

「あれ?北田さんなのか?」

「うん、そう。」

「プリント持ってきてくれたの?」

「あ、うん。石井さんに頼まれてさ。」

「そうなんだ・・・ちょっと待ってね。」

「あ、いや、プリントは郵便受けに入れておくからあとで見てくれよ。明日提出のもあるんだ。」

「うん、ちょっと待って。」

 そう言って、ブツっとインターホンが切れた。まったく。体調悪いのにわざわざ出てくるかぁ?



 なんだよ。やけに待たせるなぁ。もう10分くらい待ってるんじゃないか?いや、10分は言い過ぎたかな。



 長い。いつまで待たせるんだよ。

 いい加減に帰ろうかと思った時、玄関の扉があいた。


「ごめん。ありがとう。うちは両親が共働きだから、今誰もいないんだ。」


 具合が悪いのに一人だったのか。それは大変だな。そう思って彼女の様子を見る。思ったより具合は悪くなさそうだ。どうしてかわからないけど少し上気したような顔で、薄手のTシャツの上にカーディガンを羽織っている。


「体調、悪くないのか?」

「うん、昼過ぎからだいぶ良くなった。ありがとう。心配してくれて。」

「いや、ま、調子よくなったならよかったよ。明日は学校これそうなのか?」

「うん、熱も下がったから、このままだったら明日から行けると思う。」

「そうか。それは良かったな。」


 と、目的をまだ果たしてなかったな。カバンからプリントの束を取り出して渡す。


「ほら。石井さんからだよ。」

「ありがとう。」

「じゃ、俺の用事はそれだけだから。帰るな。」

「あ、待って。せっかくだからお茶でも飲んでいってよ。」

「お茶ぁ?いいよ。どうせこのまま帰るし。」


 もう疲れたんだよ。ここに来るまでいろいろあったし。


「ううん、それじゃ、悪いから。お願い。ちょっとでいいから上がっていって。」


 そういって俺の腕を掴んで懇願する。


「はぁ、わかったよ。じゃ、一杯だけもらうよ。」


 そう言って彼女の家に入る。そう、これが一体どういうことなのか俺は全く分かってなかったんだ。


*****************************


 北田さんの家は彼女以外誰もいなかったせいかなんとなく空気が冷たい。

 一人でいるってこんな感じなのか?俺の母親は働いていないから大体はうちにいる。だから、人が住んでるっていう感じが家自体にあるような気がする。

 それに比べてこの家は・・・なんだろう。人がいるっていう感じがあんまりしない。食卓テーブルの椅子に座らされながらそんなことを考えていた。


「はい、竹中くん。麦茶だよ。」

「あ、ありがとう。」


 麦茶を出されてはじめて喉が渇いていたことに気が付いた。そのせいもあって一気に飲み干してしまった。


「すごいね。もう一杯、いる?」

「あ、あぁ、ありがとう。いただきます。」

「うん、待ってね。」


 そう言って彼女は冷蔵庫から麦茶の入ったポットを持ってきてからになったコップについでくれた。そして、俺の横の椅子に座って切り出した。


「わざわざ持ってきてくれてありがとう。」

「別に、そんなお礼を言われるようなことじゃないよ。石井さんに頼まれただけだし。それについでだっただったからさ。」


 しまった。余計なことを言った気がする。


「ついで?他にも用事あったの?」


 説明するのがめんどくさいな。いいか。適当にごまかしておけば。


「あぁ、ちょっとね。大したことじゃないんだけどさ。」

「ふ~ん、そうなんだね。」


 そう言って北田さんは椅子から立ち上がる。


「そう言えばさ。『ちょっと待って』って言われてからかなり待ったんだけど何してたの?」


 時計を持ってたわけじゃないから正確にはどのくらい待ったのかわからなかったけど、結構待ったのは間違いない。だから聞きたかったんだよ。


「え?」


 そう言って振り返った北田さんは真っ赤な顔をしてた。


「・・・お風呂に入ってたの。」


 そうだったのか。そりゃ、仕方ないか。


「そっか。いや、ごめん。知らなかったから。」

「あはは、そりゃそうだよ。知ってたら変だよ。」


 そう言われればそうだ。俺も照れ隠しにちょっとだけ笑った。けど、そうならもう帰ったほうがいいな。


「あ、麦茶ありがとう。じゃ、俺はそろそろ帰るよ。」


 そう言って飲みかけの麦茶を一気に飲み干して椅子から立ち上がった。


「え、待って。ちょっと見せたいものがあるの。」


 見せたいもの?なんだろう?


「見せたいものって何?」

「あ・・・うん・・・その・・・部屋にあるんだ。ちょっと待っててくれる?」


 また待つのかよ。それにしても待たせてまで見せたいものってなんだろう?


「ちょっとだけなら待つよ。」

「い、一分だけ待ってて。」


 そう言って、北田さんは慌ただしく玄関のほうに走っていった。玄関のほうに部屋があるのかな?


「わかったよ。」


 聞こえたかどうかは分からないけど、とりあえず返事だけしておく。

 1分くらいならすぐだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


思っていたより北田さんは元気そうでした。

それに会話も実に普通です。

一安心しました。


あとは、『みせたいもの』というのを見て、帰ればミッションコンプリートです。


ところで、小町や茜、杉田にはプリントが届いたのでしょうか。

ちょっと疑問です。もしかして、竹中が届けるのでしょうか。

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