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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第5章 友達って・・・
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バカ夕人って呼ぶなよ。チビ小町。

チーム北田と竹中の一戦。

なかなか強烈でした。


チーム竹中はどのような行動に出るのでしょうか。

「夕人くん・・・。ごめん。聞こえちゃってた。」


 茜が教室の入口で呆然とした表情で立っている。


「見てたのか?」

「うん、全部。ごめん。見る気はなかったんだけど。」


 茜がこんな困った表情をするなんて、よっぽどバツが悪いと思ったんだろうな。


「あれだけのことが起こってたら、そりゃ、誰かは見てるよな。」

「うん、結構聞こえてたと思う。」

「はぁ、どうしたもんかね。」


 何かいい考えはないものだろうか。


「夕人くんは、どうしたいの?」


 俺がどうしたいのか?そんなのは決まってる。


「俺には関係ないんじゃないか?そもそも、足草が悪いんだしさ。」

「そうかも知れないけど。悪いのは足草くんかも知れない。けどね。きっと、タイミングがなかったんだよ。北田さんには。だから、今日のタイミングを・・・なんて言ったらいいのかな。自分では言いにくい子だっているんだよ。みんながみんな、夕人くんみたいには強くないんだよ。」


 それは分からないわけじゃない。

 でも、タイミングがなかったにしてもさっきのはおかしいだろ?俺には理解できない。。


「そうだとしても、あのやり方っておかしくないか?」

「うん、それは私も思うよ。でもね。わかってあげて欲しいなと思う。知らない女の子を守るために立ち上がれる男の子なら、わかってあげられると思うんだ。北田さんの気持ちを受け入れなきゃいけないとは言わってないよ。当たり前だけど好きでもない人とは付き合えないもんね。それで良いと思うよ。けど、チャンスをもう一回だけ、一回だけでいいから。あげてもいいんじゃないかな。と、私は思うわけです。」


 茜ってこんな子だっけ。いや、それより、正論すぎて反論ができない。


「チャンスって言ったってさ。あんな風にされたら、もう無理じゃないか。」

「北田さんってそんな人だった?今まで見てきて。もしかしたら、彼女の考えじゃなくて、彼女のことを思う一心から周りの友達が先に動いちゃった。そういう風には考えられない?」

「わからない。俺は女子じゃないし。」


 茜の言ったことを考えてみる。確かに、北田さんはこんなことをする女子じゃなかったように思うけど。


「そうだね。私も彼女たちがどう思っていたのかは分からないかな。でも、もし、私が、例えばだよ?小町ちゃんが同じようなことになってたら・・・。あんな感じじゃないかもしれないけど、何かしちゃうかも。」

「そういうものかな。」

「さぁ、どうなんだろね。わかんない。そうなってみないと。女の子っていろいろ複雑なんだよ。男の子よりはね。」


 それは分かる。女子のグループなんかを見てるといやでもわかる。連帯意識というか、そういうのは男子なんかよりもずっと強いように思う。それに、不文律ふぶんりつみたいなものもあると思うし。例えばグループ同士のいざこざには他のグループが口を出さないとか。


「そうなんだろうね。」

「そうなんだよ。だから、とりあえず、今日は向こうの言い分に乗ってみたら?そして、ちゃんと自分の気持ちを伝えないとね。お互いに。」

「そうだね。けど、俺の答えは決まってるから。」

「うん、そうなんだろうね。でも、お昼の足草くんの時とはもう状況が違うでしょう?だったら、断るにしたってその言い方は変わるよね。」


 だとしても、簡単に割り切れるものじゃない。だけど少し、気分が軽くなった。


「ありがとう。茜。助かるよ、本当に。」

「そう?でも、ズルイ事はしちゃだめだよ。夕人くんが思ってるよりも、みんな夕人くんのこと見てると思うよ。」


 俺のことを見てる?それはどうだろうな。いろいろあったから注目はされたかも知れないけど、もう過去のことだ。今、俺とかかわりがある奴以外は覚えてもいないでしょう。それにズルイ事ってなんだよ。


「まぁ、その辺はよくわからないけど、とりあえず、掃除するわ。」


 頭を掻きながら掃除に戻る。


「うん、そうだね。」

「あぁ、それと。」

「ん?」

「ありがとう。茜。」

「いいっていいって。友達でしょ?」


***********************


 掃除が終わった。ことのほかゆっくり掃除をしたつもりだったんだけど、十分もかからずに終わってしまった。もう帰るしかないのか。杉田でも戻ってくればなぁ。大事な時にアイツはどこに行ってるんだよ。

 自分の机で帰り支度を始める。それこそノロノロと。そこに足草がやってきた。目の前の椅子に後ろ向きに座って話しかけてくる。


「いやぁ、竹中。なんかすごいことになってるな。」

「あぁ(怒)。誰のせいだと思ってるんだよ。」

「俺のせいだってか?けど、もうしゃーないべ。やっちまったんだしさ。あとはお前が何とかしてくれよ。」


 コイツだけは許せそうもないな。


「お前と話すことはないな。俺の目の前から消えてくれ。」


 もう話は終わりとばかりに、カバンを机の上に投げ出す。


「そうだな。俺は帰るわ。じゃあな。明日、結果教えてくれ。」


 そう言って、足草はさっさと帰っていく。

 誰がお前に話すか、バカたれが。それにしても、北田さんと何話したら良いのかわかんねぇよ。やっぱり、向こうが何を言ってくるのか次第だな。俺から話すのはそれからだ。


「なぁ、バカ夕人。」


 今度は小町か。さっきまで足草が居たところに、まったく同じ状態で座る。


「バカ夕人って呼ぶなよ。チビ小町。」


 バカと言われて腹がたったわけじゃない。たぶん、イライラを小町にぶつけてしまったんだ。


「うん、別にチビ小町でもいいから。ちょっと聞いてよ。」


 そんな俺のイライラを小町は優しく受け止めてくれた。心の底では申し訳ないと思ったが、言葉には出来なかった。


「あぁ、もちろん。別に急いでないしな。」


 むしろ歓迎だ。けど、小町の感じがいつもの元気な感じじゃない。


「いや、急いでないのはどうかと思うよ?たぶん待ってるだろうから。」

「それは待たせておけばいいんだよ。俺には俺の用事があるだろう?っていうか、お前なんで知ってるんだ?」

「うん、もうその辺で噂になってるよ。足草が騒いでるから。」

「にゃろう。あいつ、いっぺん絞めなきゃいけないな・・・で?なんだよ、小町。なんか話あるんだろ?」


 急に、神妙な顔をして、顔を近づけながら言ってくる。小町の顔が超アップになる。可愛い顔だ。でも、いつものような輝きがない。


「あのさ、北田さんのこと、本当に何とも思ってないの?」


 それって、さっきも聞かなかったか?


「無いなぁ。友達っていうか、そのくらいにしか思ってなかったわ。」


 背もたれに寄りかかりながら天を仰いで言う。


「さっきの件があった後でもそうなの?」


 俺の服を掴んで『ちゃんとこっちを見て』と小さな声で言ってジッと俺を見る。近い。小町、顔が近い。お前の吐息が俺の顔にかかってるっ。


「む、むしろ、さっきの件があったから、だよ。」


 小町を少し遠ざけながら目を逸らして言う。


「そういうものなの?」

「俺はな。」

「そっか。・・・あ、あのさ。あたしたちは友達だよね?」


 急に声を潜めて俯きながら聞いてきた。


「何をいまさら。そりゃそうだよ。小町は俺の友達だろ?違うのか?」


 俺はずっとそう思ってきた。小町もそう思ってくれてたんじゃないのか?


「もちろん、そうだよ。・・・友達だよ。」

「だよなぁ。良かったよ。そう言ってもらえて。」


 思わず頭をポンポンと撫でてしまった。


「だからさ・・・そういうのはやめてよ。」

「あ、ごめん。ついな。いつもの癖っていうか。」


 そう言って手を引っ込める。


「なぁ、バカ夕人。ちゃんとケリつけてこないとダメだからね。」


 そう言って笑顔で右こぶしを突き出してくる。


「おう、そうだな。」


 俺も右こぶしをそれに合わせる。思ったよりも小さなこぶしだ。けど、なんだろう。小町や茜と話したおかげでかなり気持ちが楽になった。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


チーム竹中は陰ながら支える作戦のようです。


茜と小町の優しさと愛を感じます。

優しさというか厳しさ。

どちらも含まれているようなアドバイスだと思います。

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