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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第48章 三年生、三学期
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茜の奇行

茜は基本的に積極的ですからね。

その行動もどこかぶっ飛んでいるところがありましたよね。

 二月まで残り僅か数日。あとは二回ある本番に向けて勉強をしていくだけだった。もちろん、二回というのは私立高校の入試と公立高校の入試のことだ。あえて言葉にしなくてもわかってもらえると思っていたのだけれどもな。


 とにかく、塾でも入試直前講習なんていうものが始まってきて土日も勉強漬け・・・という毎日だ。そう、勉強漬けなんだよ。つまらない。この時期になると授業もほとんどが自習っぽいものに変化してきていて、それぞれの受験に合わせた問題を問いていくというスタイルだった。正直に言えば、受験科目ではない技術科や家庭科、音楽や体育は癒やしの授業だと言ってしまっても過言ではないだろう。


 特に体育は最高だ。勉強で溜まっていた鬱憤を思いっきり発散できるからな。やはり運動は良いっ。汗をかくのは本当に気持ちがいいものだよ。と、今更ながらに気がついた。


「小町っ、パスッ。」

「オッケーッ。」


 俺の言葉に小町が絶妙なパスを出してくる。俺はそれを受け取り華麗にジャンプ。そしてリングに向かってボールを叩き込むッ・・・というほどのジャンプ力はないから普通にレイアップシュートだけれどな。ダンクシュートが打てるやつなんてほとんどいないって。


「夕人っ、ナイッシュー。」

「グッジョブだっ、小町っ。」


 俺たちは元気よく言葉をかわしながら小町にとってのハイタッチを交わした。


「くぅ・・・お前らが連携攻撃してくると簡単には止めらんねぇなぁ・・・」


 三好が悔しそうに口にしているけれど、どことなく楽しそうなのは気のせいだろうか。


「まぁねっ。私と夕人は相性バッチリだからねっ。」


 小町が今にも『ヘヘーン』とでも言い出しそうな感じで両手を腰に添えて威張りくさっているけれども、確かにバスケに関しては相性がいい。意思の疎通がスムーズにできるからとても楽しい。日常生活だったら翔とはこんな感じだけれども、いかんせん運動はなぁ。アイツと一緒に運動をするとストレスしか感じない。と、こんな事を言っちゃいけないか。


「相性バッチリって・・・お前らそういう関係?」


 三好が冷やかすように小町の方に近づいていきニヤリと笑みを浮かべた。


「え・・・それは、違うけれど・・・って、バスケの話だよっ。」


 まっ、体育はこんな感じでみんなのストレス発散の場だ。俺達みたいにバスケをしているやつもいるし、バレーボールをやっているやつもいる。みんなのやりたいことに折り合いが付けば何をやってもいいと言われているからな。俺はもちろんバスケを選択だ。マジで一択だな。


「そうだ。小町さ。この前の全国大会、なかなかいい結果だったんだろ?」


 小町にディフェンスに戻るように指示を出しながら問いかけた。


「あ、うん。まぁまぁだった。」


 小町はフリースローレーンあたりに戻ってきてディフェンスの姿勢を取りながらそう答えた。


「まぁまぁってさ。全国で十位だろう?凄すぎやしないか?」


 俺は三好の動きを目で追いながらも会話を続けた。


「まぁね。順位だけ聞いたらすごいって感じだけれど。残念ながら実力者たちはこぞって別の大会に出場しちゃっていたからね。何ていうか二軍戦って感じよっ。」


 小町は俺と会話をしながらドリブルで攻めてきた相手にピッタリとくっつき、ディフェンスをし始めた。良いディフェンスしてるな、小町。もう少し背が高ければ、こっちの世界でも生きられたように思うっていうくらいに見事な感じだった。


「二軍であろうとなんだろうと国内で十位だ。小町の上には九人しかいないってこったな。」


 三好の前に立ちはだかり、ドリブルコースとシュートコースを塞ごうとした。


「余裕だなぁ。話なんかしていて、俺を止められるのかい?」

「さてね。やってみるしかないだろう?」

「はっはぁ。甘いってっ。」


 その言葉と同時に、見事な三好のフェイクに引っかかり、あっさりと突破を許してしまった。


「こらー、バカ夕人っ。気が抜けてるー。」


 小町の声が耳に痛かった・・・


*************************************


「ということでだな。小町の全国大会好成績お祝いパーティを始めたいと思う。」


 偉そうにパーティなんて言ってはいるものの、ここは学校の近くにある区民センターに併設されている喫茶店。ちょっと出費は痛いけれどもそんな事を言っている場合じゃない。

 本当はもう少し早いタイミングでお祝いを出来たら良かったのだけれども、全員がこうやって顔を揃えられる機会がなかなか無かったということもあり、平日の学校帰りに喧しく七人でやってきたのだった。幸いにしてお客さんは俺たち以外にはいない。多少の元気の良さには目を瞑ってもらえるはずだ。


「いやぁ、好成績とか言われると恥ずかしいんだけれど・・・」

「何言ってんの。実際、スゴイじゃない。十位だよ?しかも全国大会だよ?凄くないわけがないじゃない。」


 小町の謙遜とも取れる言葉に環菜が本気の言葉を発していた。


「全くだ。これが俺たちの友達が成したことだっていうんだからな。なんだか自分の事のように嬉しいよ。」


 翔は絶望的な運動神経の持ち主だ。いや、持っていることを呪いたくなるような運動神経なんだけれども、今はその話はいらないよな。もっと有意義な会話をするべきだろうし。


「いやいや・・・なんだかそう言われると本当に照れくさいのよね。」


 小町は苦笑いを浮かべて環菜と翔の顔を交互に見た。


「まさか、全国で先に名前が売れちゃうとは思わなかったわぁ。」


 茜が言った言葉にみんなの笑いが漏れる。

 芸能人としての正式なデビューはこれからではあるけれども、去年の学校祭をきっかけに茜も着実にステップアップしていくはずだ。その点に関しては全く心配していない。もちろん俺の希望的観測も多分に含まれてはいるけれどもね。

 それよりも・・・茜が作り出す俺との距離が妙に近くなっている事の方が気になって仕方がない。去年のクリスマス会の夜なんて、危うく一線を越えてしまいそうになるところだった。


「でも、小町ちゃんも茜ちゃんもスゴイよねぇ。私なんか、絶対に無理だと思うもん。」


 俺の隣りに座っている明菜が目を大きく見開きながら二人の顔を交互に見ながらそう言った。ちなみに茜も俺の隣りに座っている。いやね?今回の七人は女子が圧倒的に多いから良いんだよ?良いんだけれどさぁ・・・腕を組んでくるのはやりすぎじゃないの?


「ま、あたしはこうなるってわかっていたけれどね。」


 実花ちゃんが顎に手を当てながら『ふふふ』と不気味な笑みを浮かべたところに環菜がツッコミを入れた。


「なにがこうなるってわかってたの?結果を聞いてから『やっぱりね。』っていうのはずるいわよぉ?」


 笑みを浮かべているからイラッとしながらツッコミを入れたわけじゃないってことはよく分かる。けれども、環菜のツッコミは痛いところをついてくるよなぁ。実花ちゃんの反論が楽しみだぜい。


「そうね。それはズルいわね。環菜の言う通り。一本取られまくりだわ。」

「取られまくりっていうのもおかしいって。」


 実花ちゃんと環菜は楽しそうに笑っている。俺もそんな楽しそうな会話を聞きながら思わず笑みを漏らしたのだった。


「ねぇねぇ、夕人くんが今回の発起人さんでしょ?なにか面白いこととかないの?」


 茜がわざとらしく耳元で囁いてくる。吐息が耳にあたってくすぐったいやら嬉しいやら恥ずかしいやら気持ちいいやら。もう訳がわからなくなりそうだ。


「いや、そんなに面白いことって言うか、そういうのはあんまり考えてはいなかったんだけれどさ。みんなでこうやって会って話をできる機会も限られてきているじゃないか?だから、みんなで集まることも目的だった・・・って言ったら小町に怒られるかな?」


 上目遣いで様子を伺ってみると、小町は見事なくらいに上機嫌のようで腕を組みながら『よきかな、よきかな。』なんて言っている。


「ん、しかしそれだけじゃやっぱりつまらないよなってことで・・・俺からプレゼントを準備した。」


 俺の言葉に小町が目をパチクリと見開き、ことさらに驚いたような表情を浮かべた。


「夕人が?私に?」

「うん、大したものじゃないけれどな。」


 そう言いながらプレゼントの箱を取り出そうとして足元のカバンに手を伸ばそうとしたのだけれども、手の届く範囲にカバンがない。


「あれ?チョット待って?」


 そう言ってテーブルの下に潜り込むようにしてカバンを探す。


「えーっと・・・あ、コレコレ・・・」


 目的のカバンを無事に発見して中から小さめの箱を取り出す。そして、元の姿勢に戻ろうとした時、テーブルの下が男たちのパラダイスになっていることに気がついてしまった。そこには美女たちの美しい御御足がニュッっと生えていたのだ。まったくもって脚フェチでなくてよかったと思う。もしそんな趣向を持っている人間だったならば、思わずテーブルの下に潜ってしまうかも知れないと思うほどの絶景だろうから。


「ふぅ・・・」


 独り言のように息を漏らしたような声をわざとらしく出して、椅子に座り直そうとした時、ふいに誰かの足が動いた。

 それは明らかに、と言うには驚くくらいの行動だった。俺の隣の足がグイッと動き、秘密のベールをさらけ出すような感じになったのだから。

 すまないけれどもその時の俺の心理を描写するほど俺は冷静ではなかった。女子たちにバレたら明らかに『変態』の汚名を着せられた上に軽蔑されても仕方がないくらいに凝視してしまったのだ。暗くてはっきりとは見えなかったけれど、少し濃い目の色が見えたように思う。


「夕人くん、どうしたの?」


 妖艶な足が俺にそう声をかけてくる。

 いや、足じゃない。

 いや、足なんだけれども喋っているのは足ではなく茜だ。そもそもこんな事をやってくる人間は俺の記憶の中では約一名しかいないわけで。俺の隣の足が開いたわけだから茜じゃなければ明菜なわけで。んでもって明菜はこんな事をするとは思えなくて。そして、もしコレが環菜の足だったら死ぬほど驚いただろう。


「い、いや・・・なんでもない。」


 とにかく俺は一気にテンションが上がろうとしている小夕人を理性で抑えつけようとしながらその場に立ち上がった。


「さ、これだよ、小町。」


 小さな可愛らしい包み紙に包まれた小箱のようなものを手渡した。


「あ・・・ありがと・・・夕人・・・」


 あれ?嬉しくなかったのかな?いつもの小町からは想像できないほどの小さな声だったことに驚いた。


「えっと・・・あの・・・開けても?」


 おずおずと聞いてきた小町に可愛らしさのようなものを感じながら『もちろんさ。』と口にして席に腰を下ろした。

 小町は俺が着席するのを待ってから丁寧に丁寧に包み紙を開け始めた。


「やけに慎重だねぇ。そんな包み紙なんかビリビリって破っちゃえばいいじゃない。」


 実花ちゃんがノロノロと作業をしている小町にチャチャを入れた。


「う、うるさいわねっ。プ、プレゼントなんだから丁寧に開けなきゃでしょ?」


 いつもの小町だ。うん、この元気の良いところを見れるとホッとするよ、全く。


「ね、夕人くん。」


 茜が声をかけてきた。びっくりするほど小さな声で。


「ん?」

「見た?」

「見えてない。」

「うそ。見たよね?私のパンツ。」


 相変わらずの小さな声。それに茜らしいといえば茜らしいけれども、それでもやっぱり大きな違和感は拭えない。


「茜・・・俺はもし見えていたら素直に言う。」


 真面目な表情を浮かべたつもりだったけれど、こんな表情での会話だと余計に変態度が増しているように思わないわけでもない。


「見たいの?夕人くんになら見せてもいいよ?それ以上も。」


 薄ら笑いを浮かべている茜が少し怖い。どこまでが本気なのか、それとも全てが本気なのか。全くわからない。


「どうしたの?夕人くん。」


 もう一人の俺の隣の女子、救世主・明菜のおかげで我に返る。


「あ、いや何でもない。」

「そう?」


 明菜は納得していないような表情を浮かべていたけれども、突然、何かを思いついたかのようにパァッと笑みを浮かべた。


「あ、そっかぁ。小町ちゃんがどんなリアクションをするのか楽しみにしてるんだよね?」


 おおぅ。明菜が純粋な子で良かったぜ。あやうく俺の変態、痴態がバレてしまうところだった。ふぅ、やれやれ。


「そ、そんなところかな。」


 とりあえずは無難な返事をしておくことにしよう。この場を誤魔化したまま乗り切るために。


「あれ?違ったの?」


 俺のバカ。なんでここでどもってしまうのか。全くもって自分自身が嫌になる。


「明菜ちゃん。夕人くんはね?私の魅力に参っちゃってるの。」


 茜が謎の言葉を発したが、明菜は軽く口を開いて何かを言いかけ・・・そしてそのまま口を閉じた。更には目を逸らす始末。なぜ・・・何も言ってくれない?


「茜はもう・・・そんなことばっかり言ってぇ。」


 環菜が笑いながら茜の言葉を一蹴した。


「あれれ?違ったの?メロメロなんじゃないの?」


 茜の言葉に一瞬固まりかけた空気が和らぎ、そして笑いが起こった。小町は相変わらず包装紙と格闘を繰り広げているようだ。そんなに厄介な包み紙だったのだろうか・・・


「あー、その、なんだ?小町よ。いつまで包み紙と格闘してるんだよ。」


 一刻も早くこの謎な状況から抜け出したいと思って小町に話を振ってみた。


「あとちょっと・・・よしっ、キレイに取れたっ。」


 ようやく包み紙を剥がし終えた小町が小さい小箱をじっと見つめている。


「・・・何やってる?」

「いや、何が入ってるのかなぁって考えてたの。」


 真剣な面持ちで小箱を睨みつけているけれども、そんなものは開けてしまえば解決することじゃないか。


「そんなにスゴイものは入っていないぞ。」

「わかってないねぇ、夕人くんは。」


 俺の言葉にため息を漏らしながら首を左右に振って実花ちゃんが苦言を呈してきた。


「わかってない?」

「そう、女の子はねぇ、男子からプレゼントを貰うとドキドキするものなのよ。まして・・・」

「い、今、開けるからっ。」


 実花ちゃんの言葉を遮るように小町が大きめな声を上げて、小箱からプレゼントを取り出した。ほんのりと頬が赤く見えたのは気のせいだろう。


「わぁ、かわいいっ。」


 そう言ったのは小町ではなく茜だった。


「ほんとだー、かわいいねぇ。」


 環菜も小町の手元を覗き込むようにしながら頷いている。


「いやぁ・・・そんなに大騒ぎするようなものじゃないんだけれどね。」


 俺はあまりの注目具合に気恥ずかしくなってそう言ってみた。


「ううん、うれしいよ、夕人。ありがとう。」


 小町は俺の目を真っ直ぐに見つめながら言った。


「何買ったら良いのかわからなくてさ・・・そんなものしか準備できなかったよ。」

「ううん、なんなのか、なんてそんな事はどうでもいいの。うれしい。」


 俺が買ってきたのはある動物をモチーフにしたガラスの置物。そんなに高いものじゃない。なんと言っても中学生の小遣いで買えちゃうくらいの代物なのだから。


「可愛いね、ちっちゃいワンちゃんだ。」


 環菜は小町が手のひらに乗せて眺めている小さめのモノを見ながらそう言った。


「うん、ワンちゃんだね。」


 小町も頷きながら小さな声で言った。どうして小さな声なのかはわからないけれどな。


「前に小町が欲しそうにしてたのとは違うけれどさ。似た感じのがあったから。」


 俺の言葉に小町は軽く頷いていたけれども、茜が『ん?』って感じに声を上げた。その声で、俺は失敗したって気がついたんだ。


「あー、まぁ、前にさ。そんな話をしたことがあったんだよ。」


 誤魔化してはみたものの、茜の目つきがいつもとは違って厳しい感じがする。何ていうか、少し目を細めたような感じで睨まれているっていうのが正直な感想。


「へぇ・・・いいなぁ。かわいい。良かったね、小町ちゃん。」


 明菜の言葉に小町が無言でうなずいている。


「でも、夕人がねぇ。こんな可愛いものを買ってくるなんて思わなかったかも。」

「おいおい環菜。それは中々の言いようじゃないですか?」


 環菜の言葉に笑いながらそう返した。特に深い意味があるわけじゃないとは思うし、俺自身にも特に意味があるような言葉じゃなかった。ただ、いつもと同じ様な会話。そんなつもりでいた。


「まぁねー。だって、こんな可愛いもの買ってくるだなんて、まるで彼女さんに買ってきたみたいじゃない?」


 環菜の言葉に俺と小町がほぼ同時に固まってしまった。


「そうだなぁ。確かにそんな感じに・・・」

「あんたは黙ってるのっ。」


 翔が何かを言いかけたところで実花ちゃんが慌てた様子で口を押さえた。そのおかげで翔は実花ちゃんの指をかじってしまっていた。


「痛っ。何すんのさっ。」


 声を上げて慌てて自分の手を翔の口元から離した。


「お前が変なことをするからだろう?」


 そんな事を口にしながらも翔は『大丈夫か?』と言いながら実花ちゃんに話しかけていた。


「まぁまぁ。そんなこともないんじゃない?男の子が女の子に何か買おうって思ったら、自然と可愛いものを選ぼうとすると思うけれど?」


 明菜がニッコリと笑顔のままみんなの顔を見回してそう言ってくれたおかげで、おかしな空気はいくらか改善されたように思うけれども・・・環菜、どうしてそういう言い方をするのかなぁ。


「あーあ、いいなぁ、小町は。私もそんな感じの欲しいなぁ。」


 茜が大げさに両手を広げるようにして、それからそのまま両手を頭の後ろで組むような仕草を見せた。それはやけに白々しい感じの仕草で、妙に引っかかるような言い方だった。


「あ・・・茜もこういうのか好きなのか?だったら、今度・・・」

「私の誕生日はもう終わっちゃったし。それに・・・」


 俺の言葉を遮るように言葉を口にしたかと思うと、急にその場で立ち上がった。


「私も小町にプレゼントを持ってきたけれど、なんか・・・もう、どうでもいいかなって思ってきた。」


 そう言って無造作にカバンから可愛らしい包袋に入ったものを取り出し、ポイッと小町に向かって放り投げた。小町は驚きながらもその包を落とすことなく受けった。


「あ・・・ごめん。その・・・ありがとう、茜。」

「別に・・・大したものじゃないし。じゃ、私は用事あるから。帰るね。」


 俺たちの顔を見ることもなく、カバンを手に取り茜は俺達の前から去っていこうとした。そして、そんないつもと違う茜の姿に誰も何も言えずにいたのだった。

ここまで読んでくださってありがとうございます


今回は少し短めです。


それにしても、茜の行動はよくわからないです。

実花だけが何かを察しているようにも見えましたけれど。

朴念仁の夕人には当然訳がわからないでしょう。


というか、中学生男子に別れと言っても無理ではないかと思いますけれどね。

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