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それでも、俺のライラックは虹色に咲く。  作者: 蛍石光
第46章 いろんな事は忘れた頃にやってくる
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そしてまた日常

更新に少し時間が空いてしまいました。

残暑の時期に冬の話ですか。

季節感がずれちゃってますよね。

 ご無沙汰しておりました。竹中夕人です。つい最近、十五歳になりました。

 今回は何から話を始めたらいいでしょうかね。


 え?受験勉強のことですか?


 そうですね。ぼちぼちと言いますか、特に何かが変わったということはありませんね。今まで通りに学校で勉強をして、週三回の塾に通って。それだけですよ。


 はい?塾での出来事?


 何を聞きたいのかよくわからないですけれど、塾でのことだなんて勉強しているというか、それ以外に何かあります?


 え?なんですって?環菜と一緒じゃなかったかって?


 はい、そうですね。一緒ですよ。同じ塾に通っています。

 一緒に塾に通っているんじゃないかって?

 うーん、そうですね。そういう日もありますね。一応言っておきますけれど、毎回ってわけじゃないですよ?


 は?それじゃつまらない?もっと何かないのか?


 そう言われても困りますけれど・・・受験も近いので勉強をしていることが多くなったと言うか、そんな感じですね。


 え?なんですか?もう一度言ってもらってもいいです?


 チケット?なんのチケットのことですか?スケート?あぁ・・・アレはまだ使ってないですよ。冬休みになったら気晴らしにでも行こうかなぁとは思っていますけれどね。

 なんだかこんな感じで話をしていても埒があかないというか、そうですね・・・話しにくいというか。いつものような感じで日常を語っていくほうがいいような気がするんですよねぇ。どう思います?


 一つだけ質問に答えろ?


 いいですよ?なんですかその質問っていうのは。あぁ、ローザのことですよね。彼女は自転車を取りに来たみたいですよ。みたいというのも、実際には会えていないんですよ。でも、ある日ふと見ると自転車が無くなっていて、その代わりというかのように手紙がポストに届いてました。


 内容?質問は一つって言う約束でしたよね。それに、ローザの許可もなくその手紙の内容を話すなんてありえないって思いません?


 そういうことです。ただ、連絡先は教えてもらえたので電話くらいはできる関係だとは言っておきます。そんな感じです。その他のことはローザからの許可をもらってきてくださいよ。

 じゃ、そろそろ本編の方に入っていきましょうか。


**********************************


 さぁ、いつものように始めていくことにしようか。


 生徒会役員を引退したことで、放課後に微妙な時間の余裕ができるようになった今日このごろ。ちなみに季節は少し進んで十二月半ばになった。

 どうにも時間を持て余していしまっているのがよく分かる。なんにも用事はないのだけれども、無意味に学校に残ってしまうのは一年間で培われてしまったクセみたいなものだろう。

 だからといって教室で一人ボーっとしているわけじゃない。今日は何人かのクラスメートたちと勉強会を開催していたんだ。講師は杉田翔先生。

 うん、初めの頃は本当にそうだったんだ。翔が色々と板書をしながら、まるで塾の授業のような感じで勉強を教えてくれるという企画だったんだ。でもさ?天才の言葉っていうのは常に難しいんだよな。端的にいうと分かりにくいのだそうだ。例えば・・・

『まぁ、この辺の因数分解は直感で答えが出ると思うけど。』

 とか、言ってしまう。これじゃ、勉強を教えているとはいえないよな。直感で解けているのならば勉強なんてものは必要じゃないと思うんだよな。更には、

『証明問題はある程度のパターンしかないから・・・』

 などとの口にするものだから大変だ。そのパターンが見抜けるんだったら苦労はしないんだって話だ。まったくもって、天才は人に物事を教えるのには向いていないという良い例になったように思う。それで、今はどうなっているのかというと板書をするような講義形式の勉強会はやめて、皆で机をくっつけながらわからないところがあったら互いに教え合うという自習形スタイルになった。


「ね、夕人。この電流の計算問題なんだけれど・・・」

「ねぇねぇ、夕人くん。この英作文って、これであってると思う?」

「ちょっと夕人。」


 妙に声をかけられるんだよな。お陰で俺自身の勉強やら塾の予習が全然進まない。


「あー、待ってくれよ。俺は一人しかいないわけだから、一度に色々聞かれても答えられないって。環菜、その電流のヤツは以前にやったやつとほとんど同じだと思うから。それに、例の式に当てはめたら基本的には解けるよ。で・・・英作文?それは翔のほうが得意だと思うから見てもらってくれよ、茜。ごめんな。で、小町は何?」

「いやぁ、忙しそうだなって思って声かけた。」


 妙に真面目な表情を浮かべているけれどもどういうつもりなんだよ。忙しそうとか思っているならスルーしてくれればいいと思うのだけれど?


 とまぁ、だいたいこんな感じ。ちなみに今日の参加メンバーは俺と翔、茜に環菜、それから小町に実花ちゃん。その時によってはなっちゃんやむっちゃんに稚内くんもいることがある。とにかくこんな感じだから、受験に向けて・・・的な空気が俺達三年生の中に広がっていることは間違いない。そもそも私立高校の入試は一ヶ月後に迫っているわけだから、当然っていえばそれまでなんだけれどさ。


「さて、俺は塾があるから今日はこのへんで帰るよ。」

「あ、じゃ、私も帰ろっかな。」


 俺の言葉を待っていたかのように環菜が口を開いた。


「おっ、もうそんな時間なのか?まぁ、これは明日からでも使えるネタなんだけれどもな。『時間』という言葉の本来の意味はある『時』の一点と一点の『間』を意味する言葉なんだ。だから本当は『もうこんな時刻なのか』というのが正しいんだ。」


 得意げな表情で俺たちにご高説をされている翔ではあるけれども、誰もその内容に興味が無いのかこれと言った反応を示してはいない。もちろん俺もその一人だ。


「そっかぁ、もうそんな『時間』なんだね。」


 茜があえて『時間』という言葉を強調するかのように言ったことで、翔がほんの少しだけ凹んで見せていている。しかし、そこまでのことをしても誰も翔に同情を示さない。


「まったく・・・面倒くさいことばっかり言うんだから。」


 大きくため息を漏らす実花ちゃんの顔を横目で見ながら席を立った。


「環菜、夕人。また明日ね。」


 笑顔を浮かべている小町に『あぁ、また明日。』と言いながら、同じように席を立った環菜と一緒に教室を出たのだった。


「ね、夕人。今日は私、ちょっと先に行くね。」


 教室を出たところで環菜が突然そう言い出した。


「そうなのか?うん、わかった。」


 環菜とは同じ塾に通ってはいるけれどもいつも一緒に行くわけではない。まぁ、帰りは一緒だけれどな。それはともかく、環菜には環菜の用事や予定があるんだろう。俺としてもまっすぐに塾に行けるほうが時間のロスも少なくなるからいいんだよな。何と言っても十二月、いつ雪が降ってもおかしくないからなぁ。自転車に乗れるのもあと少しだろう。

 札幌の初雪は例年で十一月の頭。積雪になるのはだいたいクリスマス頃。だから最近はどんどん気温が下がってきていてとても寒い。今日の最高気温も六度とか、そんな感じだったと思う。


「うん、じゃ、そんな感じでね。」


 そういうのと同時に環菜は駆け足で俺の側から離れていった。


「あぁ、またあとでな。」


 こういう日もあるさ。さて、俺も家に帰って塾に行く準備でもしようかね。

短い内容だったので、もう一本行きます。

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