綺麗な星の下で
もう少しだけ合宿の話が続きます。
夜も大分遅くなってきた。
今の時間は十一時。普段ならそろそろ寝ようっていう時間なんだけれど、今日は寝られそうにない。
どうしてって?
だって、翔くんちに戻ると同時に実花が驚くようなことを言ってきたからよ。
「あたしね、今日こそ翔に夜這いかけるから。」
びっくりした。その行動もさることながら、表現にも。夜這いって・・・実花は一体何時代の人なのよ。
「何言ってるのよ、ダメだって。夕人くんもいるんだよ?」
いや、夕人くんがいないなら良いっていうわけじゃないけれどね?
「だから、それは環菜に任せるから。去年は失敗したっていうか・・・しまった。今のは墓穴ほったかも。」
「え?墓穴?」
実花が何を言っているのかよくわからなかった。目が点になったっていう表現はこういう時に使う言葉よね。
「わからないならいいの。気にしないでー。そういうことだから協力よろしくね。」
笑顔で頼んできているけれど、これって協力していいの?それに夕人くんは?彼の協力無くしてこれは成り立たないでしょう?
あれ?こんな考えっておかしい?何処かで実花ちゃんの行動を認めちゃってる私がいる?
「えっと・・・私一人じゃ無理だよ。夕人くんは翔くんの部屋で寝るって言ってたよ?私だけじゃどうしようもないじゃない・・・じゃなくって、ダメだよ。そういうのは・・・」
私は慌てふためきながらも実花の行動を諌めたつもりだったんだけれども、全然ダメ。私が言っても効果なしって感じなの。もうどうしたらいいのやら。
「環菜が夕人くんを誘えばいいじゃない。」
こともなげに言ったけれど、それって何?え?本気?ダメだって、私なんかじゃ無理だって。
「な、な、な・・・」
どんどん顔が赤くなっていくのが自分でもわかるよ。だって、そんなことありえないっ。
「な~にをカマトトぶってるんだか。ちょっとだけ聞いたよ?なっちゃんと茜から。」
え?何を聞いたの?と言うか私、変なこととか言ったっけ?実花が目を細めながら私を見てるよ。
「なんのこと?」
ちょっと怖いけれど、聞いてみなきゃダメだよね。
「『都合のいい女でもいい』って言ったんだって?みんな驚いてたんだから。まさかあの『鉄の女、環菜』が実は熱い鉄だったーなんて言ってたよ?」
「うそうそ?みんなって誰?みんな知ってるの?」
どうしたらいいの?こんなことみんなに知られたら、私は生きていけないよ。
「ウソよ。茜を問い詰めたら白状しただけ。なっちゃんは何も言ってない。だから二人を責めちゃ駄目よ?それに、鉄の女とか言ったのは私のアドリブ。」
「え・・・えぇ?」
私って鉄の女?さっきもそう言ったっけ?もう全然わかんないよ。
「なんか夕人くんさ、あんまりローザ先輩と会えて無いみたいよ。これはね、私の情報。どうやって調べたのかっていうのはナイショ。ちょっとしたコネがあるんだ、ローザ先輩の高校にはね。」
実花って一体何者なの?
ただの噂好きの女の子と思っていたけれど、どうやらそれだけじゃないような気がしてきたよ。探偵さんみたいだよ。
それにしても、夕人くんはあんまり先輩と会えて無いって言ってた。それじゃきっと寂しくしてるよね。
「そうなんだ。」
幾分気持ちが落ち着いてきたところで、一旦大きく息を吐いた。
「ま、そういうことだから。もし、まだ夕人くんのこと狙ってるつもりなら正攻法だけじゃなく、他の手も考えないとね。茜や小町よりも確実に遅れを取ってるわよ、環菜は。」
実花が首を横に振りながら軽くため息を吐いた。
「そんなの、わかってるもん。でも、どうしようもないんだから。」
「まぁ、私は誰の味方もしないけれどね。強いて言えば翔の味方だから、つまりは夕人くんの味方ってわけ。女性陣たちには基本的にノータッチを貫くのが私のポリシーなんだけれどね。今回は特別。私に協力してほしいから、私も協力する。でも、今回だけよ。」
実花がウインクしながらそう言ってきた。
「でも、夜這いなんて・・・不健全っていうか。」
「はぁ・・・アンタはそうでも言わないと夕人くんを誘ったりしないでしょう?だからそう言ってるの。私は翔と二人きりになりたい。あんたも夕人くんと二人きりになる。それでいいじゃない?その時間をどう使おうがアンタの自由。まぁ、なんだか念入りに体を洗っていた環菜さんですからねぇ。本当はその気なんじゃないの?」
実花は呆れたような表情を浮かべているけれど、私ってまた騙されたの?
「え・・・?」
念入りって、別に・・・そんなつもりだったわけじゃないよ。ただ、今日も暑かったし、塾にも行ったし。だから汗臭くなってたら嫌だなって。そう思っただけだよ。
でも、二人きりになれるっていうのは少しだけ嬉しいかな。
「それじゃ、夕人くんには私から話をしておくから。夜の十一時に居間にいること。いい?約束だからね。」
そう言って実花は翔くんの家の中に入っていった。私は玄関に一人取り残され、どうしたらいいのか考えていた。
そして今の時間は十一時。
実花にお尻を叩かれるようにして居間にやってきていた。ソファに座ってただひたすら待っていたけれども、なんだかすっごく落ち着かないんです。
あ、そうだ、今日は可愛い下着だったっけ?とか考えて、いやいや、夕人くんならそんなことになるわけがないとか、でも、もしかしたら、とか一人で頭の中をグルグルにしながら考えてたんだけれど、考えれば考えるほど自分が何を考えているのかよくわからなくなってくる。
そして、一つだけわかったことがあった。私って自分で思っていたよりもエッチな子だってこと。だって、修学旅行の時、あんなことを言ったわけで・・・それはもちろん言葉だけのつもりだったんだけれど、だけど、でも、もし・・・夕人くんがそういうつもりなら・・・いいかなぁなんて思っている自分もいたりして、でも、やっぱりダメだよ、そんなことはって思っている自分もいて。
そして、ここで実花に言われた通りにちゃんと待っている自分がいるのは、やっぱりそういうことを期待してるのかなって思っちゃったりして。それで自然に体が落ち着かなくなってモジモジしてしまっていたりして。
あぁ、もうっ。なんなのよ、私。もっとちゃんとしなきゃっ。
そう思って両手をギュッと握りしめて顔の前に持ってきて一人不思議な気合を入れようとした。
「あれ?環菜?」
「ゆ、ゆ、ゆ、夕人くん?」
最後に気合いを入れられなかったよー。なんでこのタイミングで来ちゃうのよっ。
「おかしいな・・・実花ちゃんに話があるって言われたんだけれどなぁ。」
「へ、へぇ?そうなんだね。へぇ・・・」
それはきっとウソなの。ううん、きっとじゃなくって、確実にウソなの。それにしても、私ってウソが下手・・・
「あ・・・なるほど。そっか、今年もそういうことか・・・」
夕人くんは大きく息を吐いてうなだれて、そうして『まいったなぁ。』なんて言いながら私の方に歩いてきた。
「あ、あの、夕人くんっ。」
私は緊張の頂点に達してしまったみたいで声をうわずらせながら彼の名前を呼んだ。
「なに?」
夕人くんは自然体。いつもと何も変わらない。
私って魅力ないのかな・・・ちょっとだけ可愛いパジャマを着てきたのに・・・って、私どうしてパジャマなの?普通にジャージとかそういうのでよかったんじゃない?だって、夕人くんはTシャツにハーフパンツって格好。体育のときとあんまり変わらない格好だよ。ダメだぁ・・・もう、何やってるのよ、私・・・
だからって、今さらそんなことを考えたってもう遅いよね。うん、もういいよ。諦めるっ。
そうそう、体育と言えば三年生の三学期は受験とかのせいでスキー関係の授業がないんだよね。それで、その代わりにバスケの大会があるんだ。夕人くんはバスケが上手だから大会にもでるのかなぁ。あの大会にバスケ部の人たちは出られないから、夕人くんの独壇場とかになっちゃったりしてっ。
とか全然関係ないことを考えてみたりして、自分を落ち着かせようとしてみたんだけれど・・・もう、自分でも何を考えてるのかわかんないよ。
「環菜?」
私が一人でトリップしている間に夕人くんは私の真ん前に立っていた。
「は、はいっ。」
「どした?」
夕人くんが私の顔をの覗き込みながら尋ねてきた。その表情はいつも通りのもの。私だけが緊張しちゃってる。
『環菜が夕人くんを誘えばいいじゃない。』
実花の言葉を思い出すと、頭が爆発しちゃいそうな気がする。私は、本当にそんなことがしたいと思っているの?
「その・・・実花は・・・」
「あー、それはさ、まぁ・・・何ていうか、さ。」
夕人くんは右手で軽く頭を掻きながら、私から目を逸らして窓辺の方に歩いていった。
「とりあえず、俺の寝床はなくなったってことなんだわ。」
そして、軽くため息を吐きながら乾いた笑いを浮かべた。
「それって・・・」
「去年もさ、おんなじことあってさ。ま、去年はここで茜とずっと話をして過ごしてたんだ。」
そうだったんだ・・・それで、ここで茜と寝ちゃってたってことなんだ。小町と茜が大喧嘩してたのってそういうことだったのね。
「そうなんだ。」
「そう。それでさ、小町に死ぬほど怒られてさ、大変だったな。」
「へぇ〜。」
夕人くんは窓辺に立ちながらソファに座ったままの私と話をしている。私も、そっちに言ってもいいかな。いいよね?隣に立つくらい。
私はゆっくりとソファから立ち上がって夕人くんのそばに歩いていった。
「なに、見てるの?」
夕人くんの横顔を見ながらそう尋ねた。
「いや、何ってわけじゃないよ。ただちょっと星が見えるかなって思ってさ。」
そう言って窓を開けて外の様子をうかがった。ここの窓はとても大きくて、庭にそのまま出ることができる。
「じゃ、外に出てみようか。」
私はそう言って窓と夕人くんと窓の隙間からひょいっと外に出た。
なんとなくだけれど、夕人くんからいい匂いがした。
「思っていたよりも涼しい。でも、寒いって感じるほどじゃない。そりゃそっか。だって夏だもんね。」
「そうだなぁ・・・でも、あんまり見えないかな。」
夕人くんの言う通りで少し雲がかかっているから、一面の星空とは行かないけれど。
「そうだね。でも、綺麗だよね。」
「そうだなぁ。あ、プラネタリウムっ。」
いきなりそう言って、そして黙り込んだ。何か考え込むようなことがあるのかな、夕人くんには。
「どうしたの?」
「いや・・・プラネタリウムってどこにあったっけなって。そう思っただけだよ。」
「青少年科学館じゃない?」
「やっぱり、そうだよなぁ。」
そうして溜息を吐く。どうして星空の下でプラネタリウムの話なんかするの?
「もしかして、ローザ先輩のこと考えてる?」
「あー、いや?そういうことじゃないけれど。」
夕人くんはウソが上手じゃないからバレバレだよ。
「あんまり会えないとか?」
私の言葉を聞いて漏らしたその溜息は、その通りだよって言ってるって思っていいんだよね。
「まぁ、いろいろあるってことだよ。」
「いろいろねぇ。」
そのいろいろには、どんな思いが込められているのかまでは私なんかにはわからない。
「その話はいいんだ。それよりさ、学校祭のことを話したいんだけれど、いいかな?」
それってつまりはローザ先輩の話はしたくないってことかな?それならそれでいいんだけれどね。
あ、ずっと立って話しているのも疲れちゃうからって、また縁側のようなところに戻ったんだ。二人で並んで星空を見ながらのお話。
そうして私たちは今年の学校祭について何か面白い事ができないかっていう話をしたの。
ゲストを呼ぶっていう話は面白いと思ったし、そんなに悪いものじゃないと思う。
でも、全体的にはどうなんだろう。どうしても受け身な感じであることは否めないし、全員が参加できるイベントとしては物足りないっていう夕人くんの気持ちはわからないでもない。けれどね?それは欲張り過ぎなんじゃないかな?どうしてもこういうイベントには参加したい人とそうじゃない人がいるんだから。それはそれでいいんだと思う。
それよりも、最後に夕人くんがちらっと言っていたことが面白いと思う。生徒会メンバーでの出し物。それはなかなかに盛り上がるんじゃないかなって思うけれどね。
「そうか・・・なら、その路線で考えてみようかな。」
夕人くんの中でなにか面白いことでも思いついたに違いない。こうやって話ができるのは嬉しいけれど、できることならもっと普通の話もしたいなっていうのは贅沢なのかな?
「ねぇ、夕人くん。」
「なんだ?」
「星、綺麗に見えるよ。」
話している間中、ずっと気になっていた星空。すごく綺麗に見える。夕人くんと見られたからかな、いつもよりも星空はすごく、スゴく綺麗に見える。
「あ、ホントだな。いつの間に・・・」
今の私と夕人くんの距離はこのくらいなんだろうなぁ。
ちょうど私たちの間には人が一人入れそうなくらいの距離。微妙な距離。いつかはこの距離が縮まる日が来るのかな?
でも、きっと私から何か行動をしないと絶対にこの距離は変わらない。
ううん、それどころか、きっともっと遠くなっていくと思う。
だったら・・・
「私ね、色々と考えたんだ。」
「ん?どうした?いきなり。」
ほんの少しだけ離れて座っている夕人くん。その距離、今からでも少しだけ縮めたい。せめて、昔みたいの距離くらいまで。
「私はね、好きな人がいるの。」
「・・・へぇ・・・」
「でもね。その人は他の人のことが好きなんだって。」
「そっか。」
今までと何も変わらずに星空のもとに座っている二人。
その絶妙な距離感は今でも変わらない。
とても親しくもあり、けれどもっとも遠い二人だった。
「うん、でね?私はその人とたくさん話をしたいんだ。もっと色んな話をして、その人のことを少しでも分かりたいなって。そう思ってるの。」
「他人の考えていることってさ。そう簡単にはわからないだろう。それに、理解しようとするなら理解してもらわないとダメなんだろうなって。俺は思うよ。」
「そうだね。きっとその人もそう言うだろうね。一方通行じゃダメだってね。」
私は立ち上がって少し歩き出した。
確か、こっちにはプールがあったはず。水が張られているのかはわからないけれど。夕人くんも私と同じように立ち上がってゆっくりと歩いてきてくれた。
「そうだな、一方通行もダメだよ。けれど、それってどうやったらわかるのかな?俺も他人が何を考えているのか、自分がどう思われているのか。それがスゴく気になるからね。」
「そこなんだよね。難しい。私はそれが一番苦手なの。全然わからない。」
「環菜でもわからないか。」
「うん。夕人くんもわからないんでしょう?」
「あぁ、わからない。」
「だからね、私は考えたんだ。全部をわかろうなんてことはね、絶対に無理なの。だからね、少しだけ、少しずつでいいから分かっていきたいし、分かってもらいたい。ちょっとずつでいいの。」
夕人くんはどんな表情で聞いてるのかな。
ううん、どんな表情をしていてもいい。だって、これは私のことを少しだけ知ってもらうための話なんだから。
「ちょっとずつか。」
「うん。でもね、その人は心を開いてはくれないの。たぶん、いや、絶対に私に非があったんだと思うの。私はね、彼の心を傷つけて、それでも自分のわがままな想いを押し付けようとしたことがあったの。きっと彼はそのことでとってすごく心を痛めることになって。それは私を嫌いになるには十分なものだったと思うんだ。」
「・・・」
「でもね、色々あったけれど彼は今も私の近くにいてくれている。それは、私がお願いしたことを実践してくれているのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。それは私にはわからないんだ。」
「その彼って人は・・・そんなにいい人じゃないかもしれないな。」
夕人くんが思いがけない言葉を口にした。
「え?」
「だって、環菜が言った通りなら、彼の心はスゴく傷ついたはずなんだ。そんな奴が環菜の願いを聞いたりするわけ無いんじゃないか?きっと、そのお願いっていうのは・・・たまたま彼もそう思っていた。もしくはそうせざるを得なかったとか。そういうことなんじゃないかな?」
「なるほど、さすが夕人くん。私は自分の都合のいいように考えてた、そういうわけだ。なるほどね。それじゃ、うまくいくわけないね。私、何にも分かってないってことだもんね。」
そっか。私は根本から間違ってたってことなんだね。それって・・・つらいよ。
「でも、きっと彼は環菜がそばに居てくれたことをありがたく思ってるさ。頼れる友人としての環菜の存在。きっとスゴく大きな存在なんだろうと思うよ。」
「そう思っていてくれたなら、嬉しいな。」
うん、嬉しいよ。その気持ちは本当に・・・
「そっか・・・」
「でもね、私はそれだけじゃイヤなんだ。」
「ん・・・」
「私は、その人のことをずっとそばで見ていたいって思うの。もちろん、これから先の人生ことをずっとだなんて、そんな大それたことを言うつもりはないの。でも・・・一緒に・・・居られたらって。」
二人の間に少しだけ沈黙のときが流れた。
それはそれぞれが自分の気持ちを整理していた時間だったのかもしれない。
「環菜はそう考えているのかもしれないけれど、彼は環菜のことをどう思っているのかな。その・・・彼には好きな人がいるって言ってたじゃないか。」
「そうだね。」
「だったら・・・難しいだろう?普通に考えてもさ。他にいい人を探すっていう事はできないのか?」
「・・・いつかはできるのかもしれない。でもね、今はできないよ、夕人くん。」
私はそう言ってその彼の顔を、目をしっかりと見つめた。
「環菜・・・俺には彼女がいるんだ。だから、環菜の気持ちには応えられないよ。」
「わかってる。それもわかってるんだよ。でもね、知って欲しかったの。それだけでいい。私は夕人くんのこと、好きだよ。一年生の時からずっと好きでした。」
夕人くんは困ったような表情を浮かべている。
それはそうだよね。
私は彼女がいる人に告白したんだから。
でも、もうまったく可能性がないなら、私には絶対に届かない存在になっちゃったって言うなら・・・はっきり言って欲しい。
「前に話したよな。東山さんのこと。」
「うん。」
彼の顔をしっかりと見ておこう。彼が何を言うのか、その一言一言をしっかりと胸に刻みこんでおこう。それが今の私にできることなんだから。
「やっと彼女を思い出にできたと思う。そして、それ以前のことも。だから、これ以上は・・・言わせないでくれよ。」
「そ・・・か。」
「友達でいて欲しいって言った環菜の言葉。俺は覚えている。でも、だからってそれに縛られたことはないよ。だから、ごめん。友達でいようよ、今は。」
そう、夕人くんの気持ちが聞きたかった。
私の想いは彼には届かない。わかってはいたけれど、悲しい気持ちになる。茜もこんな気持ちだったのかな。
「わかった。友達・・・で。」
でも、不思議な事に胸につかえていた物が一つ、無くなったような気がする。これで、違う意味で前に進めるんじゃないかなって。私はそう思った。
さっきまでと変わらない星空なのに、今はもう、さっきまでとは違うものに見えるよ。
けれどね・・・私は、まだ、諦めきれないの。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
もう少し話が続きそうな気配ですけれども、合宿編は今回で終わりです。
え?どうしてかって?
それは・・・次章でのお楽しみということで。




